一等星の煌めきを   作:不思議ちゃん

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きゅう

 何も解決策は無いまま迎えた当日。

 かのんと唐さんのグループ、『クーカー』の出番はそこまで来ていた。

 

「もしステージに立ってかのんが歌えるってなったら、唐さんの手でも握ってあげたら?」

「そうデスね! 合図は確かに必要デス!」

「あ、うん。そうだね」

 

 ギリギリまで二人のそばにいてどうにかならないかと思ったが、無理そうである。

 かのんは緊張が高まってきているのか、顔色は悪いし強張っているし。

 余裕もなければ、視野は狭くなっている。

 

「かのん」

 

 両手で頬を挟み込み、俯いている顔を無理やり上げて目を合わせる。

 

「俺の顔が見えるか?」

「み、みえりゅ」

「隣には誰がいる?」

「クゥクゥ、ちゃん」

「そう、かのんと一緒にステージに立つ相棒だ」

 

 一人じゃないと伝えただけだが。

 意志というか、熱というか。

 少しだけ、それがかのんの瞳に灯ったのが見えた気がした。

 

「それじゃ俺も千砂都のところに戻るよ。二人とも、変に考えすぎないで楽しんで」

 

 クーカーの前のパフォーマンスがそろそろ終わりそうであるのを感じ、最後に二人へ簡単な言葉をかけてその場を後にする。

 

 カバンの中のものを観に来ている人たちに配らなきゃと思いながら戻る道すがら、結女へ練習を見に行っている時に何度か見かけた金髪ロングの女の子と黒髪ポニテの女の子を見かけた。

 

 そんな隠れて見ている方が目立つと思いつつ、その姿をスマホで撮影しておく。

 盗撮だと言われたら、怪しかったから証拠として押さえたとでも言い訳しよう。

 

 前のグループのパフォーマンスが終わり、クーカーの準備が終わるまでの間にペンラを配りながら千砂都の所へ戻って行く。

 

「あれ?」

「あ? なんだよ」

「いや、ごめん。勘違いだったみたい。これ、よかったら次のグループの時に使って」

 

 見覚えのある赤髪と青髪の女の子二人組。

 あまり接点も無かったし、向こうは覚えていない様なので渡すものを渡して後にする。

 

「おかえり、優くん」

「ただいま。間に合って良かった」

「二人の様子はどうだった?」

「ステージには立てそうだけど、歌えるかは半々かな」

「十分だよ。だって、かのんちゃんは歌うから」

 

 そう口にした千砂都はジッとこちらを見てくる。

 それは俺との間に交わした、賭け事の約束を覚えているかどうかの念押しであった。

 

 もし歌えたら今後も継続して見学に来ること。

 歌えなかったら終わり。

 といった内容である。

 

 これまでにも簡単な賭け事みたいな事はやってきたが、人の挑戦を対象にはしてこなかった。

 千砂都自身が関わるもので、出来たらどこかへ連れて行って、何か奢ってなどはあったが。

 

 人が真剣にやっている物事に対し、茶化すようなことは無かったのだけど。

 そんな千砂都から今回は持ちかけられた。

 

 俺が練習を見に行くことによって何かあるのか、はたまた別の意図があるのか。

 それは分からない。

 

「っ!?」

 

 バッとステージの明かりが消え、目の前にいた千砂都ですら一瞬見えなくなる。

 すぐにステージへと目を向ければ、真っ暗となった場所に二人の影が薄らと見え、混乱しているのが分かった。

 

 視界の端で千砂都がペンラを光らせたのを捉え。

 それに続いて俺も灯せば、振り返り見ずとも徐々に灯りが広がって行くのを感じた。

 それに唐さんが気付き、かのんへと伝わり。

 

 ──歌える。

 

 そう呟いたのが聞こえた気がした。

 

 

 

 まるでその世界に入り込んだかのような錯覚を覚えるほど、引き込まれた。

 口から紡がれる音、軽やかな動き。

 そして二人がとても楽しんでいると分かる笑顔。

 その全てが心地よく感じた。

 

 これまでの辛さはこの為に。

 これまでの努力はこの為に。

 これまでの研鑽はこの為に。

 

 ああ──いいなぁ。

 

 一途に情熱を注ぎ込み、それが報われるのを見るのが大好きだ。

 それを近くで見続けることが出来るのなら、喜んで手伝おう。




誤字報告、ありがとうございます。
大変ありがたいですが、自身の中での言い回し、前後でつながっているなど、他の人には変に感じても直さずそのままにします。
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