トレセン学園の料理長   作:砂糖と蜂蜜の牛乳割り

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 これから、主人公にはもっと酷い目に遭ってもらいます。
 ですが安心してください。
 料理長は特別な訓練を受けているので、どんな過労にも、どんな過酷な環境だろうと適応し、不老不死の肉体で不眠不休の仕事ができる完璧超人です。
 なので、どんなウマ娘の無茶な要望でもこなせるし、心優しい藤坂は部下をしっかり休ませて自分が働く。でも疲労もなく、次の日はケロッとしてる……。

 主人公は化け物です。
 そのことを念頭に置いて読んでください。お願いします。




大繁盛! ゴルシ焼きそば!! 巻き込まれた料理長!!!

 

 

 

 

 

 オグリキャップにニンジンケーキを振る舞った、翌日の昼過ぎ。

 藤坂と調理スタッフが昼のピークを終え、休憩を入れていた時それは起こった。

 

 

「料理長はいるか!!!」

 

 

 突然、厨房にドデカい声が響く。

 藤坂達はその声のする厨房入り口付近に目を向けると、視界に映ったのは実に真剣そうな表情をした背の高い芦毛のウマ娘であった。

 

 

(へえ〜、すごく綺麗な子だなぁ……)

 

 

 藤坂にとっての、そのウマ娘の第一印象は『美麗』。

 芦毛特有の銀髪をサラサラと靡かせ、桜色の瞳とよくマッチしている。

 背丈はウマ娘として大きく、170ほどはあるだろうか。スラリと伸びた手足は白磁のように白くきめ細かい。

 美しいウマ娘だった。

 変な帽子と耳当てを被っているが、それもまた個性だといえる。

 

 

 藤坂はそう思ったのだが、周囲の反応は明らかに違っていた。

 その芦毛のウマ娘の登場で厨房内の落ち着いていた雰囲気がガラリと変わり、調理スタッフの誰もが体を震わせながら一斉に藤坂の方を見た。

 その目は一様に藤坂に縋るような、懇願するような怯えたものだ。

 

 

(どうしてみんなそんなに怖がっているんだ? そこまでヤバいウマ娘なのかこの子は……あ、近づいてくる)

 

 

 スタスタと優雅な身のこなしで藤坂の元へと近づく、芦毛のウマ娘。

 身長は藤坂の方が10センチほど大きいため、彼からすれば見下ろす形となるがそのウマ娘の纏う風格に気圧されそうになる。

 

 

「アンタが料理長か?」

 

「あ、ああ。俺が料理長だけど………」

 

 藤坂が問われたことに素直に答えると、芦毛のウマ娘は途端に先程までの凄むような表情から晴れやかな笑みへと変わり、素早く藤坂を持ち上げ脇に抱え込んだ。

 あまりにも速い動きで、一瞬自分が脇に抱えられたことに料理長は気づけないほどの。

 

 

「このゴールドシップ様が! 今日からアタシの弟子になったアンタを一人前の焼きそば職人にしてやるぜ〜!」

 

 

(え、何!? どういうことだってばよ!)

 

 

 突然持ち上げられた藤坂は混乱し、ジタバタと手足を動かして抵抗するがウマ娘の膂力の前では成人男性の力程度ではビクともしない。

 

「た、助けて………」

 

 料理長は部下である調理スタッフに助けを求めるべく、肉食獣に食われる可哀想な小動物の目を浮かべる。

 

 が、調理スタッフは一向に助けようとしない。

 助ければ、次なる標的は自分なのだから。

 

 調理スタッフ達はこれから藤坂に起こる悲劇を想って、藤坂に哀れみの目を向けることしかできなかった。

 

「料理長、ご武運を……」

 

「骨は拾っておきますから」

 

「安心して逝ってください」

 

「えっ!? なんで皆そんな不穏なこと言うの!? 俺これから何されちゃうの!?」

 

「そんじゃ、料理長借りてくぞ〜」

 

 ゴルシは藤坂を脇に抱えたまま、厨房の外へと駆け出す。

 

「誰か助けてくれーー!!!」

 

 次々と変わる景色の中、それでも藤坂はめげずに周囲に助けを求め続けた。

 

 もちろん、誰一人として彼を助けようとする勇者などいないが。

 

 こうして、藤坂はゴルシ焼きそばの手伝いをすることになったのだった。

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

 

「よっしゃ、着いた! ここで焼きそばを作ってくれ!」

 

「ぐえっ」

 

 ドサッ。

 駆けていたゴルシが急停止し、脇に抱えられていた藤坂は地面に雑に下ろされる。

 

(まったくもう、酷い扱いだなぁ。ってここは……)

 

 

 揺れる頭を押さえ、藤坂が顔を上げるとそこには一階建の縦長長方形の建造物があった。

 コンクリートで固められた壁に、鉄製の無機質なドア。窓は設けられておらず、側から見れば換気の悪そうな造りをしている。

 なんとか立ち上がった藤坂がその壁に立て掛けられた看板を確認すれば、それはどうやら『チームスピカ』の部室らしかった。

 

 

(チームスピカって言うと、最近になってG1戦線で大活躍を見せてるっていう、あの……? そういえば、ゴールドシップちゃんもチームスピカのメンバーで凄く強いウマ娘だと聞いたことがあるような……)

 

 

 

「鉄板は用意してあるぜ! おらよ、職人のおっちゃんに特注で作ってもらった普通のどこにでもある市販の鉄板だ!」

 

 

「サラリと矛盾してるけど!?」

 

 

 藤坂が少々の疑問を抱いているのうちに、ゴルシがチームスピカの部室に入り、すぐ抱え持ってきた鉄板——チームの部室からどうして鉄板が——は見るからに普通の縦横幅を有する鉄板だった。

 

 

「まあ、細けぇことはトレーナーに任せてっから——安心安全ゴルシカスタマーセンターは現在対応しておりません。

 それより早くゴルシちゃんにアンタの焼きそば食わせてくれよ〜!

 味を見て店に出せるものか、すぐ確認しねぇと稼ぎ時の選抜レースが終わっちまうぜ!」

 

 

 藤坂のツッコミをひらりと躱し、なおも焼きそばを作れと迫ってくる彼女に藤坂は諦めにも似た感情を抱く。

 

 

(ダメだ、無茶苦茶すぎて付いていけない……ってほどでもないか)

 

 

 言っていることは無茶苦茶だが、要するに焼きそばの手伝いをすればいいのだ。

 料理の分野ならば藤坂が慌てるような要素など、どこにも無いのだから。

 

 

「わかった、焼きそば作るよ。材料は?」

 

「よっしゃ、さすがアタシが見込んだだけはあるぜ! 材料から、部室の裏に発注しといた大量の食料がある。それを使ってくれ!」

 

「あいよ!」

 

 

 藤坂は部室裏に向かい、そこにあった段ボール箱に入れられた食料を取り出し、屋外用の机に並べる。

 

 

(太麺、キャベツ、ニンジン、モヤシ、豚バラ、紅生姜、業務用ソース、マヨネーズ、青のり、天かす……屋台で出される基本的な材料って感じか)

 

 

「よし、作るか」

 

 

 調理開始である。

 

 

 まず藤坂は油を鉄板の上に敷き、十分熱したところで水滴を垂らし、ジュッとすぐ蒸発するのを確認。袋から取り出した太麺を均等に鉄板に広げる。

 

 

(鉄板は食材が張り付かないようにしっかり熱して、太麺をこんがり焼いていく……だったかな)

 

 

 変に動かさず、チリチリと太麺の表面を茶色くパリパリとなるまで焼く。焼けてきたら裏返し、両面とも焦げ目をつける。

 

 

(こうすると、麺自体が香ばしくなるし、ソースを入れた時べちゃべちゃとした食感にならずに味がよく染み込むんだよね)

 

 

 太麺が焼けたタイミングで端に寄せ、お次は予め細かく切っておいた豚バラ肉に直前に塩コショウを振っておく。

 直前に肉に塩コショウを振れば、浸透圧の関係で肉の水分が抜ける前に味付けができるため、肉が固まらずに済むのだ。

 

 

(そんでもって、隠し味に『アレ』を入れてっと……)

 

 

 藤坂は偶々持ち合わせていた、とある食材を鉄板の上にパラパラと入れた。豚バラ肉のように、細かく切り刻まれた物のようだが……。

 

 

 そしてそれらを麺と同じく端に寄せた後、お次は薄い短冊切りにされたニンジン、一口サイズにカットされたキャベツを加えてしんなりするまで炒める。

 

 

 そうしたら端に寄せていた麺を下に、肉や野菜を上にする形で整えてソースを加えていく。

 辺りにソースの焼ける、えもいわれぬ芳しい匂いが漂い始めた……。

 

 

「じゅるり……この濃厚で、胃袋を刺激する香り……。

 くっ、このゴルシちゃんの理性にヒビを入れるなんて、やるな料理長……!」

 

 

 ゴルシが苦悶の表情を浮かべ、ぐぬぬと耐えているところを藤坂は無視し、焼きそばのソースと麺、具材の絡めて合わせに集中する。

 

 

「っ! ここだ!」

 

 

 ソースの十分煮詰まったところを見極め、火を止めて透明なプラスチック容器に出来上がった焼きそばを入れる。

 

 

「仕上げに、青のりを振りかけて紅生姜とマヨネーズを添えれば……完成だ! さあ、おあがり!」

 

 

 差し出された焼きそばは、ある意味『暴力的』だった。

 調理中に感じたソースの香ばしい匂いがダイレクトにウマ娘の嗅覚を刺激し、食欲を貪欲なまでの暴れん坊にさせる。

 見た目もそうだ、食い出のありそうな太麺と食べやすい大きさにカットされた色とりどりの具材が照り輝くソースに彩られる様は、まるで土手っ腹にボディーブローをくらったような衝撃があった。

 

 焼きそば通なゴルシでさえも、ごくり。

 思わず喉を鳴らしてしまうほどの完成度。

 ゴルシは、覚悟を決めた。

 

 

「味は見る。店も任せる。

 焼きそば職人の辛いところだな」

 

 

 ゴルシは神妙な面持ちで頷くと、箸を手に取り、

 

 

「覚悟はいいか? アタシはできてる」

 

 一気に口いっぱいに頬張った!

 

 その瞬間、口内に広がる肉と野菜の旨み、麺に絡みついた病みつきになる濃厚なソースの風味。

 そして、その奥に隠された複雑な旨み。

 

 

「こ、この味は……! まさか……!?」

 

 

 驚き目をひん剥いたゴルシに、藤坂は懐から一本の『ゲソ』を取り出した。

 

 

「そう、細かくしたゲソを入れてたんだ」

 

 

「そうか……! ゲソを入れて魚介類の旨み成分を焼きそばに入れて複雑な旨みにしてるんだな……モグモグ……ああ、土星に行ったとき食った、タコ星人の味を思い出すぜ……」

 

 

「いや、これゲソなんだけど……」

 

 

 ツッコミはなんのその、ゴルシは藤坂の肩を掴み、

 

 

「もはや師匠であるアタシから教えることはもう何もない。免許皆伝ぞよ」

 

「ゴルシちゃん……!」

 

 なんだかんだあったが、終わってみれば単純なもので、料理の腕を認められたようで嬉しい気持ちになる藤坂。

 

「んじゃ、そういうことで」

 

「ん? どゆこと?」

 

 

 謎に思う藤坂に間髪入れず、ゴルシはその焼きそばを持って、

 

 

「アタシは観客席で売り子してくるから、後はよろしくな〜。売る焼きそばが無くなったら戻ってくるからよ」

 

 

 と、風を肩で切り観客席の方に猛ダッシュで向かって行ってしまう。

 

 

「えっ!? ちょっと待って! 二人で作るんじゃないの!?」

 

 藤坂はゴールドシップを呼び止めようとするが、時すでにお寿司、その姿はもう見えない。

 

 藤坂は、一人で焼きそばを作ることになってしまった。

 数多の大食いがひしめく、このトレセン学園で。

 

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

 

 

 その頃、選抜レースの開催されている観客席では………。

 

 

「ん〜〜っ! なまら美味しいべー!」

 

「ゴールドシップの焼きそばが前に食べたものよりも美味しくなっているわ……」

 

 スペとスズカは今回の選抜レースを観に来ていた。

 スペはレースが近いこともあり、選抜レースを観てレースの雰囲気を少しでも感じておこうとしていたのだ。スズカはその付き添い。

 

 そこで、ゴルシが焼きそばを売っているのをスペシャルウィークが発見し、腹が空いていた為、購入。

 そのあまりの美味しさに舌鼓を打っていたところだ。

 

 

「きっとゴールドシップさんの焼きそばを作る腕が上がったんですよ!」

 

「ゴールドシップは頻繁に焼きそばを作っているものね………」

 

 

 ゴルシはレースや聖蹄祭等で頻繁に焼きそばを販売している。

 それだけ焼きそばを作っていれば、腕も上達するというもの。

 そう二人は納得する。

 

 

「でも、売り子をしながら、いつ焼きそばを作っているのかしら……?」

 

 

 スズカは一人、首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 二人がゴルシ焼きそばを味わっているように、観客席でゴルシ焼きそばを購入した人々も舌鼓を打っていた。

 

「毎年ゴルシ焼きそば買って食ってるけど、今年のは格別に美味いな!」

 

「ああ、パリッと香ばしい細い麺に深いコクのあるソースがよく絡み、しっとりとしたニンジン、シャキシャキとしたキャベツがそれに調和してこの味を作っている!」

 

「どうした、急に。いや、美味いけども」

 

「ゴルシ!もう一つ焼きそばくれ!」

 

「あいよー!」

 

 

 

 その頃、選抜レースに出走するウマ娘達は………。

 

 

 

「なんか観客席から焼きそばの美味しそうな匂いがするんだけど………」

 

「…………選抜レースが終わったら買いに行こう」

 

「………………じゅるり」

 

 彼女達は涎で口内に満たし、ゴルシ焼きそばを購入することを固く決意した。

 

 

 

 かくして、ゴルシ焼きそばは大繁盛の様相を呈す。

 その繁盛具合がとある芦毛のウマ娘の耳に入ってしまうほどに………。

 

 

 

「選抜レースの観客席で美味しい焼きそばが売られてるんだって!」

 

「わー!良いねそれ!選抜レースを観戦しながら美味しい焼きそばが食べられるなんて!すぐ行こうよ!」

 

 

 とある二人のウマ娘はその焼きそばの評判を聞きつけて観客席に向かう。

 その様子を見ていたオグリとタマは、

 

 

「なに?美味しい焼きそばだと………」

 

「ど、どうしたんや、オグリ」

 

 

 話を聞きつけ、ピクリとウマ耳を動かすオグリに、タマは嫌な汗をかく。まさか。

 

 

「すぐに向かおう、タマ」

 

「昼食食べてからそんな時間経ってないやろ!」

 

「私はもう既に2時間ほど断食をしているんだ。お腹が空いて当然だろう?」

 

「それ断食ちゃうわ!短すぎやろ!」

 

「何はともあれ、美味しい焼きそばが私を待っている。すぐに向かわなくては」

 

「はあぁぁー、しゃあないなー。ウチも一緒に行ったるわ」

 

 

 

 

 

 場面は切り替わって、料理長はずっと焼きそばを作り続けていた。

 

 顔には汗が浮かび、タオルで拭わなければいけないほどだ。

 

 料理長が思っていたよりも焼きそば作りは重労働で、その体には疲れが溜まる。

 

 そこにゴルシが帰ってきた。

 

 

「おーい、大繁盛だぞー! 追加の焼きそばをくれ!」

 

 

 ゴルシは空になった立ち売り箱を料理長に見せてくる。その様子は焼きそばが売れたのが嬉しいのかご機嫌だ。

 

 

「もう売れちゃったの!? まだ売りに行って10分くらいしか経ってないけど………」

 

 

「いいから早く!今が稼ぎ時なんだよ!」

 

 

 藤坂はすぐに先ほど作った焼きそばをフードパックに詰めて、それを空になった立ち売り箱に敷き詰める。

 

「おっしゃ!行ってくるぜー!」

 

 ゴルシは急いで焼きそばを売りに行く。

 奔放すぎる……。

 

「…………」

 

 

 もはや、藤坂は考えるのをやめて、無心で焼きそばを作り続ける他になかった。

 

 

 

 

 

 

 ある時、ゴルシは焼きそばを売っている内に人手が足りないことに気づいた。

 なんとかして人手を増やさなければ、これ以上の売れ行きは見込めない。

 ゴルシは考えた。

 

 そして、閃いた。

 

 ゴルシのスーパーコンピュータ並みの超頭脳が生み出した答えとは…………。

 

 

「どうして私が焼きそばの売り子をしなければいけないんですの!?」

 

「いいじゃねーかマックイーン、減るもんじゃねぇしよ〜」

 

「減るとか減らないとかの問題じゃありませんわ!!」

 

 

 ゴルシは選抜レースの観戦に来ていたメジロマックイーンを半ば強制的に売り子に加えることを閃いたのだ!

 

 

「はあ、わかりました。売り子として焼きそばを売りますわ」

 

「おっ、わかってくれたかマックイーン!」

 

「ええ、不承不承とですが。ゴールドシップの焼きそば販売の人手が足りていないのは遠目から見ても明らかですからね」

 

 

 こうして、メジロマックイーンが仲間になった!

 

 

 

 

 マックイーンが売り子仲間になってから少しすると、ゴルシに声がかかる。

 

「すまない、焼きそばを100個ほど貰えないだろうか」

 

 声の正体はオグリだった。

 オグリはゴルシ焼きそばの常連で毎回焼きそばの大量購入をしてくれているのだ。

 ゴールにとってはお得意さんである。

 

 だが、

 

 

「いや100個もねぇよ…………作り直せばあるけどよ」

 

 

 さすがに彼女の食欲を満たすほどの在庫はない。

 ならば、どうするか。

 答えなど決まっている。

 

 

「そうなのか?それでは出来次第私に焼きそばを売ってくれないか」

 

「おう、少し待ってくれよな!」

 

 

 ゴルシは今ある分の焼きそばを全てオグリに渡してから、焼きそばを作っている藤坂の元まで直行した。

 

 

 ゴルシ焼きそば完売まであと少し………。

 藤坂の命の灯火ももう少しで尽きる……。

 

 

 

 

 

 藤坂の元まで戻ってきたゴールドシップはその光景を目にし、手を高く上げオーバーに驚いていた。

 

 

 藤坂が5つの鉄板で同時に焼きそばを作っていることに。

 

 

「オイオイオイ、どうしたんだこりゃ………」

 

 

 ゴルシが藤坂にこの状況を問う。

 藤坂は汗だくの顔をタオルで拭き取り、なんとか視線をゴルシに向ける。

 

 

「いや、オグリちゃんが焼きそばの匂いに釣られて来てるんじゃないかと思って………」

 

「その通りだけどよ、五つも同時に鉄板扱えんのか?」

 

「うん、まあね。こういうのは慣れてるから………」

 

 

 藤坂はどこか遠い目で空を見上げた。

 その顔は全くの"無"であった。とうに疲労の限界を迎えていた。

 

 

「それでこそアタシの弟子一号だ!」

 

 と、そんな藤坂にゴルシは嬉しそうに親指を立てサムズアップする。

 

 

「ウオオオォォォーー! ゴルシちゃん焼きそばは今日で前人未到の大記録を迎えるぜ!!!」

 

 ゴルシは両手を天高く掲げ、テンション爆上げ。

 上空に向かって雄叫びを上げた。

 

 

 こうして、ゴルシ、マックイーン、藤坂の手によって、ゴルシ焼きそばは記録的販売数を樹立したとさ。

 ちなみに、売り上げは事情を知ったトレーナーの手で学園の運営資金に回されたそうだ。

 

 めでたしめでたし。

 

 

 

 

 

 

「………め、でた……く………な……い………うっ!」

 

 

 ドサッ!

 藤坂はゴルシ焼きそばを五つの鉄板で作り続けた疲労で無事に気絶した。

 

「おお、料理長よ。死んでしまうとは情けない」

 

 ゴルシはそう言い残し、藤坂に毛布を掛けてから、その場をクールに去ったのだった。

 

 

 

 その後、トレーニングでチームスピカの部室に来たスペとスズカが気絶した藤坂を発見し、厨房まで運んだそうだ。

 まだ彼には夕飯の準備が残っているのだから……。

 

 

 負けるな料理長!

 がんばれ料理長!

 君がナンバーワンだ!

 

 

 

 

 

 

 






 レース描写書きてェ……。
 次回パクパクですわ!
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