強くなりたければオラリオに行けば良い   作:はんふんふ

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第7話

 夜、ロキファミリアのホームの執務室で、フィンとガレスとリヴェリアが集まっていた。

 

 「いや~、若いって怖いよね」

 

 そう言うフィンは手元の書類を片付けながら言った。

 

 「儂との訓練もリヴェリアが無理矢理止め、次はフィンに訓練を申し込み、さらにリヴェリアと魔法について語っておったのお」

 

 ガレスは疲れたと言わんばかりに肩を回す。

 だがどこか嬉しそうだ。

 

 「馬鹿を言うなガレス、私が止めに入らなければ、熱を入れ過ぎるところだったぞ」

 「まぁまぁリヴェリア、あそこまで真剣に何度も挑まれては、ガレスだって手を抜くことは難しかったんじゃないかい?」

 「フィンお前もだ。槍まで持ち出して、怪我をさせたらどうするんだ」

 「アイズもあやつの姿に喚起されたのか、ダンジョンに向かうと言わずに儂等との訓練にいつにもまして精力的だったしのお、まぁいつまでもつかは不明じゃが」

 「だが、同年代で別方面から力を得ている彼の姿を見たアイズには、良い刺激になったんじゃないかな」

 

 そういうフィンとガレスにリヴェリアは溜息を吐いた。

 

 「デモポンはあの後、ダンジョンに向かったそうだ……」

 「「は?」」

 「昼間に覚えたことを試しに行ったと、神デメテルから知らされた……」

 

 リヴェリアのその言葉にフィンとガレスは絶句する。

 一日安静にしなければならないくらいには、扱いたつもりだったからだ。

 

 「それは神デメテルは彼を死なせたいのか?」

 

 フィンが低い声でそう呟くと、リヴェリアは違うと答える。

 

 「神デメテルは確かにロキとは違った愛し方をしているが、むざむざ自分の子供を死地に追いやるような神ではない」

 「と、するとダンジョンに向かう前に既に回復しておったと言う事か」

 

 ガレスがそう言うと、フィンは頷いた。

 

 「スキルか魔法か……。たしかに訓練の最中違和感は大きかった。回復薬も使わず異常なまでの回復速度。発展アビリティにもそういったのはあるが、レベル2の段階ではありえない」

 「まぁ、スキルや魔法、発展アビリティでないにしろ、帰ってからであるならばやりようはいくらでもあるわい。深く考える必要もないじゃろ。アイズに良い刺激を与えてくれたのは事実じゃからな」

 「後は少しの笑顔もね。もしかしたら彼はアイズのボーイフレンドの候補だったりするのだろうか?」

 「ガハハハハハハ!それは目出度いの!」

 「笑うなガレス、後フィン、巫山戯るな!」

 「おや、反対かい?」

 「アイズにはまだ早い」

 

 ロキファミリア幹部三人の談笑は夜遅くまで続いた。

 デメテルファミリアでは、いつもの様に暖炉の前で、デモポンはデメテルに抱きしめられていた。

 

 「今日は凄く頑張っていたけれど、大丈夫だった?」

 「うん全然、でも凄くためになった」

 「そう……」

 

 デメテルはデモポンを優しく撫でる。

 我が子に愛が通じるようにと、丁寧に髪に手を流していく。

 

 「ロキがね。なにかあったらすぐに相談にきても良いって、言ってくれたのよ」

 「ロキ様が?フィンさんも、僕達のために色々考えてくれたんだよ」

 「えぇ、これでファミリアの皆も今よりもずっと安全になるわね」

 

 デメテルはそこで一区切りをつき、声に少し力を乗せた。

 

 「だからね。ポンちゃんが頑張らなくても大丈夫なのよ?もう、痛い思いをしなくてもいいの……」

 

 ただ、デモポンは拒絶した。

 

 「ダメだよ。人任せにしちゃダメ……。それに、今日戦って思ったんだ。確かにロキファミリアの皆は凄く強かった。俺なんかの遥か先で高い壁だった。でも、見えたから……。だからきっと超えることが出来るんだ」

 

 デメテルはそれ以上言う事がないかのように、デモポンが眠るまでその小さな体を抱きしめ続けた。

 そして可愛らしい寝息が聞こえてきたところで、自然と声が漏れ出た。

 

 「あなたも、魅せられてしまったのね……」

 

 それから数日間、時間が空いている時にはロキファミリアに顔を出すことが多くなった。

 門番の人もローテーションを組んでいるはずなのに、すでにデモポンと顔なじみかのように接するまで、自然と出入りをしていた。

 そんなある日、アイズから相談を持ち掛けられた。

 

 「どうしたら、もっと強くなれるの?」

 

 水分補給を行っていたデモポンにアイズは酷く落ち込んだように言った。

 

 「アイズは強くなってるだろ?初めのころは俺が完勝だったのに、今では一撃もらうことがあるし」

 「……でも、ステイタスが伸びなかった」

 「あぁ~~……」

 

 ステイタス、それは自身の経験値の可視化であり、その数値は冒険者の強さのパラメーターである。

 

 そしてその数値がある一定のラインを超え神々が認める程の偉業を達成した時にランクアップと言う、進化をすることが出来る。

 

 そしてもちろんのこと、経験とは慣れであり、慣れが続けば経験値も伸び悩む。

 これはほぼすべての冒険者が経験することであり、強さを求める冒険者は思い悩む。

 アイズは強くなることに並々ならぬ思いがあることは、デモポンも分かっていた。

 だからこそ、共にダンジョンに向かった時は、デモポンよりも先にモンスターを狩ることに必死になっていた。

 

 「今のように着実に強くなる方法が歯痒いってこと?」

 

 アイズは小さく頷いた。

 

 「じゃあランクアップするしかないよなぁ~」

 「でも、皆教えてくれない……」

 「そりゃ、そんなもの無いからなんじゃねぇの?」

 

 デモポンの言葉にアイズがショックを受けたようにたじろぐ。

 逆にデモポンは驚いた。

 

 「え……、そんなのあんの?」

 「デモポンはランクアップしてる」

 「俺は知らない間にって感じ、いつも通りにしてたら、デメテル様がランクアップできるって教えてくれたんだ」

 「私もデモポンと同じ方法をしたら、強くなれる?」

 「それは何とも言えないかな」

 デモポンは深く悩むように頭を抱えた。

 「俺と同じ……、俺と、同じ……。じゃあまずはロキ様と約束してみれば?」

 「……なにを?」

 「絶対に帰ってくるからって、ダンジョンに行こうがどこにいようが、絶対に帰ってくるって、俺はまずそれをデメテル様としたかな」

 

 デモポンのその言葉を聞き、アイズは少し取り乱した。

 

 「それは……出来ない……。私の帰る場所は……帰りたい、場所は……」

 「でもそれだと、俺と同じ方法がとれないぞ?」

 

 デモポンがキョトンとして言った。

 それが我慢ならなかったのか、アイズは叫んだ。

 

 「そんな約束なんていらない!私は強くなりたいの、ならなきゃいけないのッ!!だから、教えてよッ!!」

 

 アイズの叫びは風に乗って遠くまで運ばれる。

 デモポンはその衝撃を正面から受けて、眼を白黒させた。

 

 「なぁ、アイズはどうしてそんなに……」

 

 デモポンがアイズの心に寄り添おとしたが、アイズはその手をはじいた。

 

 「もぅいいッ!……私には、英雄なんていなかったんだ」

 

 言葉尻は小さくなにを言っているのかわからない。

 けれど、アイズは泣きそうになっていることはわかった。

 

 「アイ―――」

 「ちぃと待ってくれるか?」

 

 デモポンを止めたのはロキだった。

 

 「今のアイズたんはな、デリケートやねん。少し一人にしたってや」

 「でも、アイズは泣いていました」

 「その涙も今は必要なんや。アイズたんが気付くまで、考えさせたらなあかん」

 

 デモポンが非難の籠った視線をロキに向ける。

 その視線を受けてロキは珍しく、真面目な顔になった。

 

 「デメテルがお前に向けとる愛と、ウチがアイズに向けとる愛、違いはあるが子を思う親の心は同じや」

 

 ロキにそこまで言われてしまっては、これ以上言うのは違うのではないか。

 デモポンはそう思い、今日は切り上げるとロキに伝える。

 そしてデモポンが歩みを進めようとしたとき、言い忘れていたと立ち止まった。

 

 「……アイズがソレに気が付くか、本当に困っていたら、抱きしめて話を聞いてやって下さい」

 

 デモポンがそう言うと、ロキはニッと笑う。

 

 「当たり前やボケ」

 

 そんな日の夕方のことだった。

 アイズが家出したと、慌てたロキファミリアの人に聞いたのは。

 

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