クエスト「20人で助け合い、崩壊したセカイを救え」 作:夜桜家の壁
「あれだけの啖呵きったんだ。見せてもらおうじゃねえか」
「そんなこと言って、ビビんないでよ?私達の最高の歌、見せてあげるから!あ、あと、今度は卑怯な手、使わないでよね」
「それは俺が見張っとくよ。まぁ叩き潰すつもりの彰人がする理由なんてないけども」
「雷夜さん!?今日雷夜さん見に来るんですか」
「今日に関してはこの私、怜華もいるよ」
「うげっ」
「うげってな〜に?彰人?」
「……行くぞ冬弥、今日は俺達が先だ」
あっ逃げた。
いつのまにか妹と兄の立ち位置の変わってそうなふたりはいいとして、今日はこはねが戻ってきた、それも覚悟を決めて戻ってくるということで、見ない理由もないだろう。一般客として俺と怜華で見にきたというわけだ。
「今日って彰人達が先だっけ?頑張ってこはね潰してねー、そんでこはねは潰れないように頑張れ〜」
彰人は片手だけ挙げて、そのまま裏に入っていた。それは言われなくともとでも言うかのような力強い姿だった。
それはそうとして、
「なんかしばらく見ないうちに性格変わった?」
「変わってないよ。こんな対決がある界隈なんだからもっと魂のぶつかり合いというかさ、簡単に言えば切磋琢磨が見たいだけだよ」
「ええっと、ここの人達の想いとか情熱はまだわからないけど、負けるつもりはないよ」
「……こはねって思ったよりも強いね。学校ではそんな事言えるような子じゃなかったのに、まるで別人」
「そんな、強くないよ。私は杏ちゃんが守っててくれてるから」
「私何があったもこはねの事守るって決めてるんだ。私の大切な相棒だからね」
「すごい可愛がってるね師匠。けど私達みたいにこはねが噛み付いてくるかもしれないよ」
「大丈夫だって。こはねが私に噛み付くなんてことしないよ。冗談はそこまでだぞー」
「私は杏ちゃんに噛みつかないよ?」
気づいたら怜華が冗談混じりに未来の話している。リスクあるような行動は怖くてしたくないんだけど、怜華はそんな事ないのか。いや、冗談にしやすいものだからリスクはないのか?
「あ、そろそろ始まる。私達前の方で見てるけどふたりはどうする?」
「今日は後ろで見てるよ。久しぶりに来たわけだし、後ろで全体的に見ようかなって」
「私も今日は兄さんと一緒に後ろで見てるよ」
「わかった。それじゃあ後でどっちの方がうまかったか、教えてね。さ、こはね見にいこ」
杏がこはねの腕をつかみ、最前列に観に行く。それを俺達は軽く手を振って見送った。
「……この後が彰人達だけどさ、冬弥の声ってどうなってると思う?」
今日このイベントが終わってしまえば冬弥は離脱してしまう。自分が一番中途半端な存在で、みんなが持っているものを持ってないと考えてる人の歌声からは何が伝わるんだろうか。
「普通だったら悩み、不安、そんなのでブレるような声になると私は思ってる」
「それじゃあ、最後のライブにしてはスッキリしない声になる予想ね」
「違うよ。冬弥はカッコいいままの自分で本当の中途半端な自分を隠すための勢いのある、今までと同じかそれ以上の声が出るはず」
「なるほどね、確かに知ってる事をもとに考えるとあり得そうに思えてくる。俺的には葛藤を続けると思うんだ。優しいから多分隠せないだろうし」
「優しさがあるならむしろ強いままの声だと思うけどね」
そんな討論らしきものをしていれば、BAD DOGSのパフォーマンスの版となる。
「私の予想が当たりかな。気合の入ったいい歌声だったね」
「迷いは何もないって感じだね。これは離脱防ぐとかはできなさそうだ」
「そんな事考えてたんだ。私よりちっちゃいのに考えすぎじゃない?」
「何で怜華の方がでかいのか、俺の方が年上なのに。それより考えすぎって、そんなに考え事してないよ。別に冬弥に関しては正直自分を許せるか、みたいな話だから離脱しても何も解決しないんだよね。だったら彰人がいる時に聞く方が良かったりと思って期待してただけなんだよ」
「それ、十分考えてる方だと思うよ〜?この世界は神様が与えてくれた、楽しむチャンスなんだからやりたい事やらないと。極論考えずに感じて過ごすべきなんだよ」
「なんかバッドエンドに行きそうな考え……!」
雑談をしているとこはねの声が会場に響き渡る。そしてその歌声はこの場にいる多くの者達を震え上がらせる。
「初めて聴いたけど、やばいね……こはね」
「俺もイベント会場で聴くのは初めてだ、こんなにすごいんだ。やっぱり才能の一点ではビビバスで誰よりも輝いてる」
お互い初めて感じる原作のキャラが作り出す雰囲気に圧倒され、気がついたらイベントは終わっていた。
「どう?こはねの実力、思い知ったでしょ」
「そーだそーだ!!こはねはすごいんだぞー」
「何でお前らが偉そうなんだよ……とくに怜華。コイツの歌声聴くの初めてだろうが」
「はぁ……コイツが半端な覚悟で歌ってるわけじゃないのはわかった、その上で聞くぞ。お前はコイツと本気で『RAD WEEKEND』を越えようと思ってるんだな?」
「もちろん!」
「……そうか、お前らの歌は良かった……前は、邪魔して悪かったな」
「………!あ、ありがとう……!」
「あれ?意外とあっさりじゃん。もしかして、案外素直?」
「うるせぇ。用がないならさっさと行けよ」
「まぁいいや、雷夜達控室きてよ。そこでさっき言った事教えてね」
こはねを連れて先に杏たちは控室へと向かった。
「おい冬弥、次のイベントはセトリ変えていくぞ!あいつらが心底悔しがるような最高の出来にしてやるよ」
「………………………」
「冬弥?どうした?」
「彰人、俺は………俺はもう、お前と一緒にはやらない」
「あらあら」
「……もうやらない?何言ってんだ?お前、冗談言えるほど器用じゃねえだろ。バカなこと言ってんじゃねえよ」
「冗談じゃない」
「……何があった?お前の親父が、またなんか言ったのか?」
「これは、俺の意思だ。俺達の音楽には、何の意味もない。ただの子供の遊びだ」
「……………おい、本気で言ってんのか?」
「はいはーい、ここで一旦ストップだよ。これ以上は話が拗れるだけだからね。とりあえず冬弥くん家に一旦帰りな」
「なっ!おい、どうゆう事だ。兄貴」
彰人が冬弥の事を追えないようにブロックする。この周辺の会場は道が狭いため、簡単に通行止めができた。
「くそ、家で話聞かせろ」
状況を飲み込めていない彰人はもやもやした気持ちと、イラつく気持ちが収まらない様子だった。