クエスト「20人で助け合い、崩壊したセカイを救え」 作:夜桜家の壁
「冬弥にとって、謙さんはここで頼りになる唯一の大人です。そして、冬弥が音楽と離れる決心をした時には必ず報告をしにきます」
「確かにあいつはそういうやつだろうな」
「なので冬弥が来た時、色々な話をどうにかして彰人に伝えたい。あいつらはお互い本音で語り合う場所が必要です。けど、それは本人たちじゃまだ出来ません。だから協力してください」
「そうか………とりあえずコーヒー淹れてやる。少し待ってろ」
WEEKEND GARAGEでは杏の歌声や、客の話し声など、さまざまな音が聞こえてくる。
そして謙さんがコーヒーを作る時の沸騰した水の音、コップとソーサーの触れる音。そういった音の中で謙さんは話を再開した。
「確かにアイツらは直接話すべきだな、協力することに不満なんかはない。けどその方法はうまく行く保証がどこにもない。本当にできると思ってるのか?」
「俺は確信してるんですけどね。喧嘩の理由とか俺には教えてくれた事から話す事自体は嫌じゃなくて、彰人が知る事が嫌なだけなのでおそらく謙さんにも話にくるんじゃないですか?あと単純に丁寧な人だからお世話になってる謙さんに何も言わないのはあり得ない……というよりも想像がつかないです」
「少なくともお前の中ではいずれ冬弥は来ると確信してるわけだ」
サービスのコーヒーを出しながら、謙さんは自身の考えを纏めるように結論を口に出した。
「ここでタッグが解散するなんて事は見ない訳でもない。一年に数回は見る事だ。だから俺としては引き止める……そんな事をするのはアイツらに肩を入れすぎだ」
謙さんはステージで歌う杏の事を見ていた。杏を見ていたが、その表情は少し曇っていて、音楽性、目標、さまざまな解散理由と、その解散した人達を思い出していたように見えた。
「解散してきたやつらの大抵は、今でもうちに来ては懐かしい話をしてる。ずっと仲良いんだ、解散しても息ぴったり。その理由はわかるか?」
「喧嘩別れ……が適した表現かはわからないですが、そんなニュアンスの解散が少なかった、からでしょうか。あるいは、上を目指さなくなった」
「それはどっちでも変わらないさ。喧嘩して解散した奴は1年も経たないうちにまた、意気投合してるんだ。問題の大きさが違うかもしれない上に、まだ若いからな、他の奴らと同じように意気投合できる保証はない」
協力できることは少なく、その上で経験則からは解散を引き止める事はかなり厳しい。実際、原作のあいつらを知らなきゃ、手を差し伸べる気にもなれない2人だ。
謙さんは動けない、ちょっとした誘導が限界なのだろう。本来の世界で電話を繋げていただけのように。ただそれだけで良い、アイツらが必要なのは手助けではない。可能性を与えられればそれで良いんだ。だから交渉するんだ。
「それでも可能性が見えてる原石を割りたくない。原石は磨いてこそ輝く。だから、引き止める事を手伝ってもらいます」
「…そこまで手伝ったら贔屓になるだろ。さっきも言ったがそこまではでき……」
「引き止めるってのは説得ではありません!」
コーヒーを注いでいた手が止まり、中断される。それは少しだけでも俺の提案に乗る可能性が出たって事だ。
「説得するだとかなりの贔屓になる事は俺にだってわかります。肩入れするだけでこの街では他の意味を探られる場所だとも思います。杏なら謙さんの娘である……そんな周りの影が纏わりつきます。それは避けられないけど本意ではないでしょう?だから俺は冬弥の会話を聞く時に、その本音を彰人に伝えて欲しいんです」
「………」
謙さんはいつも通りにコーヒーを出して来た。多少は考えてくれたのだろうか。それとも……
「方法は思いついたし、その程度なら肩入れとは言わないかもしれない」
「それは協力してくれると受け取って良いのですか?」
「そうは言ってない。その役割何故"俺"にやらせようとしている?」
それは、原作ではそうだから。それ以上の理由なんているのか?
「何故わざわざ俺に頼むのかがわからない。例えばカウンター側で隠すことや、電話を繋げて遠くから直接聞かせるとか、やりようはある。だから何故雷夜は何もしないようにしているのかが引っかかる。納得できる答えがあるなら協力してもいい。納得できなかったらその時は自分でやるんだ」
原作をなぞる為、その目的は────おそらく果たせない。
と言うことで、未完でこの作品は終わりとなります。6周年で時系列途中に物語増えてくとわかり、もうかなり書きづらくなってしまうのでね。ほとんどの理由は心が折れた事だけど、詳しいのは活動報告見てね。今までありがとうございました。