コミュ力おばけと幼馴染(♀)がイチャコラするだけの話 作:百合好きの獣
今話のタイトルからは作者の溢れ出る知性を感じていただけたかと思いますが、残念ながらカラオケ回の時の様な脳死回です。ごめんなさいね。
尚、特別試験のルールについては皆さんご存じだと思いますので割愛しております。
薄暗い洞窟の中。
照明として置かれたランタンの淡い灯りが周囲をぼんやりと照らしている。
その灯りの中、椅子に縛られた人間と、それを取り囲む数名が、影となって壁に映し出されていた。
「や、やめろ! 俺に近づくな!!」
椅子に縛られた人間――声からして、男子生徒であろう人物が吠える。
その声には明確に恐怖が現れており、がしゃがしゃと椅子を揺らして少しでも距離を取ろうと必死にもがいていた。
そんな彼の肩を、後ろから掴む手があった。
「ひっ! な、何をする気だ……!」
今から自分は何をされるのか。
逃げ出すことも出来ないため、襲い来る恐怖に耐える事が出来ずに、思わず小さな悲鳴を上げた。
「ふふ……怖がらないでください。これからするのはただの『質問』なのですから」
男の背後から、鈴を鳴らす様にコロコロと可愛らしい声が聞こえた。
その声にはほんの少し、虫を無邪気に八つ裂きにするような、子供の様に純粋な嗜虐心が顔を覗かせている。
「ですので……素直に答えてくださいね……?」
「や、やめろ……来るな、来るなァーーーーーッ!!」
男の絶叫が洞窟内に響き渡る。
椅子に縛られた男の前には、なぜか上半身裸でポージングを続けながらにじり寄る葛城と鬼頭。
そして男の背後には、いい笑顔で肩もみをする天白と、それを見ながらニヤニヤ笑いをしている坂柳。
俺は一体何を見せられているんだろう。
それを遠目に見ている1年A組『橋本正義』は、目の前に広がる光景にドン引きをしていた。
◇
夏休みのバカンスは、坂柳の懸念通りというか、案の定特別試験だった。
豪華客船で表情を輝かせながら辺りをウロウロ探検しだし、それをニコニコしながら櫛田と坂柳、そして堀北が追いかけ、その姿を見かけた一部の生徒は「あら^~」と表情を綻ばせた。
船内にある施設を一通り見て回り、レストランで美味しい料理に舌鼓を打ち、楽しい楽しい二週間のバカンスは、なんと初日で終了を告げた。
この豪華客船はどうやら島に向かっていたらしい。そこに着いた途端、ジャージに着替えて島に上陸するように指示がされた。天白は絶望した。
そこで伝えられたのが、要約すると七日間のクラス別でのサバイバル試験だった。
ちょっと楽しそうだなと思い、天白のテンションは少し回復した。
ルールについては大雑把には把握したものの、詳細なルールについては天白は匙を投げた。それでいいのかAクラス……?
しかし心配ご無用。このクラスには優秀な生徒が多く所属している。何なら頭の出来は天白が一番下である。肉体にパラメータを極振りしている鬼頭とどっこいどっこいなのである。
葛城、坂柳、櫛田の三名による作戦会議で、この試験に対するAクラスの方針が決まった。
無理のない範囲で節約しつつ、無人島生活をエンジョイするようだ。
この特別試験はクラスポイントを大幅に増やす機会であり、それでいいのかという声も当然上がったが、良いのである。
現時点でAクラスはB以下のクラスに大幅にポイント差をつけており、無理に差を開く必要が無い事。何よりもここでストレスを貯めて崩壊してしまう事が何よりも恐ろしいというのが櫛田の談だった。
それには葛城も坂柳も賛同を示していた。尤も、坂柳と櫛田は悪巧みをしているような笑みを浮かべていたが。
そうして無人島生活がスタートした。
Aクラスは、事前にあたりをつけていた洞窟を拠点とするようだ。
そうして、まずは拠点設営の班と周辺探索及び食料調達班の二つにクラスを分け、さっそく行動を開始する。
天白は拠点設営班に振り分けられた。
「とりあえず、ざっくり必要なものをリストアップしていきましょうか」
「トイレとー、シャワーとー、調理器具も欲しいかな。あ、洞窟の中だから照明も少し足した方が安心かも」
「……仕切りは、テントを買い足せばいい。あと、室内で熱気が籠るから、扇風機も」
購入するかは別として、いったん必要そうなものをリストアップしていく。これらは坂柳が記憶しておき、探索班となった葛城が帰ってきた後に再審議をするのだ。
事前に配られたカタログのページをペラペラとめくりながら、ああでもないこうでもないと話し合っていると、とある項目に目が留まった。
『マッサージ施術台』『マッサージオイル』
誰だこんなもんカタログに載せたのは。
どう考えても天白の影響であることが否定できなかった。というかそもそもAクラス以外でこれを購入するやつがいるのか甚だ疑問である。
「「「「………………」」」」
拠点設営班のメンバーはその項目を目にして熟考した。考えるな。ちょっといいナ……とか思うんじゃない。
尚考えているメンバーは全員が女子である。もれなく天白セラピーの餌食となっていた。
「……流石に、ここではやらない」
天白が否定すると、凝視していたメンバーも「ですよねー」とあきらめたようだ。こうして無駄遣いは阻止された。なにせ、探索班にも天白セラピーのシンパが混じっているため、多数決となれば普通に可決されてしまう可能性があったので。
「……肩もみとか、簡単なものなら、いつでもやるから」
続く天白の言葉に、クラスメイトが色めき立った。この瞬間、七日間の無人島生活で感じるストレスが無に帰した。なんだこのチートモンスター。
その後はいくつか候補を見繕い、葛城達探索班が帰還した後に再協議。一先ずは最低限『不快感を感じない程度』の生活水準を獲得し、後々必要に応じて都度購入していくという結果に落ち着いた。
こうして無人島生活初日はおおむね平穏に過ぎて行った。なお、天白の寝床は一瞬で両脇が櫛田と坂柳によって固められた事を追記しておく。
◇
無人島生活二日目。
この日は探索班が島内に群生していたというトウモロコシを大量に確保してきた。
坂柳は薄々この島が人工的に整えられた特別試験用の島だと勘づいていたが、今回の件で確信に至った。ついでに変な事にお金をかけるなぁと父親に呆れもした。理事長はくしゃみをした。
現在の食料は、探索班が確保してきたトウモロコシ、山菜、木の実、そして安価だったので一先ず購入してきた保存食糧のみだ。
たんぱく質が足りないので、天白の言及で魚釣りセットを購入し、後日から魚を収穫してくることにした。天白は魚釣りに興味深々だった。
尚、探索班がそこそこ大きい枯れ枝を大量に確保してきた為、「キャンプファイヤーやろうぜ!」とワイワイやっているところにCクラスが訪れ、よく分からない挑発をしていった。
「やれやれ、本当のバカンスをしたことが無いようだ。Cクラスの拠点に来てください。本当のバカンスを楽しませてあげますよ」との事なので、葛城と櫛田両名で偵察に赴いたところ、なんとポイントを全部吐き出して豪勢にバカンスを満喫していたそうだ。
それを聞いた坂柳は「なるほど」と頷いて笑みを浮かべ、天白は「やっば……」とドン引きしていた。
葛城と櫛田を含めたAクラスの総意としては「まあCクラスがそれでいいならいいんじゃない?」という羨ましがったりもしない普通の反応だった。
Aクラスとしては、無人島生活の幸福度的には現状でそこそこ満足しているのである。
◇
無人島生活三日目。
櫛田がCクラスの生徒を一人拾ってきた。
まるで捨て猫のような扱いだが、実際に頬に殴られたような跡があり、Aクラスの拠点近くで座り込んでいたのだと言う。
あからさまな罠だった。
この特別試験では、最終日に他クラスのリーダーを指名し、それが的中すると当てたクラスから50Pを奪う事が出来るルールがあるのだ。
櫛田がCクラスの生徒を連れて来た時、Aクラスは全員が全員「罠だわ……」と満場一致で思っていた。
しかし櫛田が「こういう時こそ助け合いたい」と懇願し、Aクラスはしぶしぶ拾ってきたCクラスの男子生徒を保護することに決めた。
もちろん櫛田も罠であると気づいている。むしろ座り込んでいる所を一目見た瞬間に「うわスパイだ」と演技を見抜いていた。猫かぶり――演技において櫛田を出し抜こうなぞ100年早い。
その上で利用する気が満々だ。
Cクラスの男子生徒を自拠点に連れて来たとき、アイコンタクトでそのことを天白と坂柳に伝えていた。二人はにやぁと悪い笑みを浮かべた。
さあ尋も――いや、ちょっとお話をするお時間である。
ひとまず傷の手当てを……ということで、Aクラスの女性陣でテキパキと頬の打撲を治療している後ろで、坂柳が葛城と鬼頭に手招き。こそこそと耳打ちをし、作戦を伝えた。男二人の顔が驚きと「マジでそんなことすんの……?」という表情に歪んだが、その手の事にとんと疎い二人が否定する材料もなく、ええいままよと覚悟を決めてジャージと体操着の脱ぎ半裸となった。
「えっ葛城くんたち何してるの」
「なんで脱いだ……?」
「坂柳さんがなんか話してたけど……あっ(察し)」
Aクラスからは疑問の視線が突き刺さるが、既に覚悟を決めた二人は動じない。これはクラスに必要な事なのだと自分に言い聞かせ、顔を見合わせ頷き合った。
そうしておもむろに、椅子に座って手当を受けていたCクラス生徒の眼前に立つとポージングを始めたのである。
「えっ……? は……?」
それは見事なサイドチェストだった。
そこから流れるようにフロントダブルバイセップス、モストマスキュラーとポーズを変えていき、じりじりとCクラス生徒へとにじりよる。
表情には輝くような笑みを浮かべながら。
Cクラスの生徒としてはいきなりの光景に恐怖しか抱かない。
がたいの良いやつらが半裸で笑みを浮かべて筋肉を誇示しながらにじりよってくるのだ。高熱の時に見る悪夢のような光景だった。
たまらず椅子から立ち上がろうとして、手が後ろ手に椅子に縛られている事に気づいた。
「はっ……!? なんで!? 何で縛られてるんだ俺!?」
「……わたしが、縛りました」
どや顔ピースをしているのは天白だ。
やられた側も――なんなら周りで手当てをしていたAクラス生徒たちですら気づかない早業だった。
「……天白はなんでそんな縛るのが早いの? 意味わかんないんだけど?」
「……親友が、最近ちょっと『縛ってほしい』って言うから、練習してた」
「……意味わかんないんだけど」
手癖が悪いと自覚しているAクラスの女子生徒がドン引きしながら聞いたら、返ってきた理由に更にドン引きした。
「ふふ……では、少しお話をしましょうか」
そうして場面は冒頭に戻る。
◇
「……Cクラスが全部のポイントを吐き出したのは、リーダー当てによって他クラスとの差を縮める為のブラフ?」
「はい、その通りです……」
「……他クラスのリーダー判別の方法は?」
「あっ、それぞれにスパイを潜り込ませてリーダーの情報を得るようにするのが最も簡単であっ一般的なあっ、あっあっ、あっあっ」
さて、坂柳たちが何をしているかというと。
一言でいえば尋問である。
まずは身動きをとれなくして、葛城、鬼頭両名によって視覚から恐怖を刷り込む。
そして天白が囁いて聴覚を、肩を揉むことで触覚を癒し、思考を誘導する。
結果はご覧のとおりである。
恐怖で正常な思考を奪い、その後に与える快楽で思考力を下げる。落として上げる、または飴と鞭。
正直ふざけた方法ではあるのだが、これは天白無くしては達成できない手段だった。
ただ囁き、身体を按摩するだけで櫛田、坂柳、葛城、堀北だけでなく教師陣の理性を崩壊させる程の腕前を持つ天白が居たからこその手段だ。妖怪か?
「……Cクラスのリーダーは?」
「……あっ……それは、あっ……い、いえな……あっ……」
とはいえ、限界はある。流石に自クラスのリーダーを売る事までは出来なかったようだ。
作戦を大体ゲロってしまったので元も子もないとは思うが、この状況に持ち込まれている段階で既にスパイであることがバレているようなものなので漏らしてしまったのかもしれない。
「これ以上はやめておきましょうか」
「そうだね。無理やりはよくないもんねっ」
この櫛田、数分前は「こういう時こそ助け合おうよ!」と言っていたが、ノリノリで尋問に加わっていた。もちろん表情はちょっと困ったような顔をしながらだ。櫛田程の力があれば、表情と考えと発言が全て異なる事など造作もない。
坂柳と櫛田の終了宣言に従い、天白は拘束していた縄を解き、葛城と鬼頭はどこかやり遂げた表情で拳をこつんとぶつけ合っていた。共有体験は時に友情を深める事もある。
「……手荒な真似して、ごめんね? 痛く無かった?」
「あっあっ――はっ!? え、ああ。だ、大丈夫だ……」
若干縄の跡がついてしまった腕をさすってあげると、Cクラスの生徒はトリップから帰還した。
そうして状況を再確認したのか、諦めるように大きなため息をついた。
「あーあ、全部バレちまったか。これで俺も終わりってわけだ……」
「……終わり、って?」
「そのまんまだよ。作戦がバレて、何の成果も得られませんでしたじゃ龍園が納得するわけがねえ。良くて仕置き、悪くて制裁――少なくとも、今後俺にクラスの居場所は無いだろうさ」
彼が言うには、Cクラスは龍園の暴力によって支配されているらしい。そして命令に従っている内は良いが、逆らったり、失敗したりすると容赦なく切り捨てられるとも。
それを聞いたAクラスの生徒は、それぞれの反応を示した。
義憤に燃える者、同情をする者、他クラスの事と傍観する者。
そして坂柳は
「その事で、お話が――いいえ、取引があります」
笑みを浮かべ。
「……今のCクラスの体制に、不満を抱いてはいませんか?」
と、そう悪魔のように囁きかけた。
尚、その日は快晴だった為、Aクラスのメンバーは小さなキャンプファイヤーと都会では滅多にお目にかかれないような満天の星空を堪能した。
Cクラスの男子生徒も含めて。
なんだかんだで、この特別試験を楽しんでいる一行であった。
当初は『バカンスたのしかった』で纏めようと思ってたんですが、感想で面白そうなネタを頂いてしまったのでちょっと描写。
葛城、坂柳、以外の原作Aクラスキャラについて
・神室真澄
入学当初の万引きをよりにもよって天白に見られてしまい、未遂に終わる。その後メンタルケアによって「つまらない」高校生活の中で「楽しい」と思える事を探すようになる。なんかこいつらなら面白い事やりそうという理由で櫛田・坂柳のグループに所属している。最近の悩みは櫛田と天白の言う『幼馴染』が信用ならないこと。
・橋本正義
なんか強者がたくさんいるので、Aクラスは安泰だなと思っている。櫛田と二人で他クラスや上級生に繋がりを作りまくっている。櫛田がクラスカーストトップなので、彼女に話しかけにくい生徒からの相談事とかが結構舞い込んでくる。最近の悩みは謎の親衛隊にご意見番として目をつけられはじめた事。
・鬼頭隼
Aクラス随一の体格・身体能力を誇るフィジカルモンスター。天白の目で『素晴らしい……極限まで練り上げられた肉体の完成形……』とお墨付きをもらってご満悦。カラオケで意外な特技を見せ、クラスでの知名度を上げた。最近は頭脳面だけではなく肉体面も鍛えようとしている葛城の良き相談相手となっている。
・戸塚弥彦
どっかの癒し系妖怪がAクラスに配属された影響でBクラスあたりに配属された。今後も出番はない。
ネタ切れの為、今後更新ペースちょっと遅くなります。
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