コミュ力おばけと幼馴染(♀)がイチャコラするだけの話   作:百合好きの獣

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いつも感想・高評価ありがとうございます。
前回後書きに書いた弥彦君が大人気で笑いました。

ちょっと長くなりそうだったので前後編に分けました。



カルテ:一之瀬帆波① 前

 

 

 

 無人島特別試験は概ね平穏に終わった。

 何やら坂柳と櫛田がDクラス、Bクラスと共謀していたらしく、大暴れした結果Cクラスからポイントを巻き上げて3クラスほぼ横並びで夏休み明けのクラスポイントをそこそこ獲得した。Cクラスは0ポイント。龍園くんは悔しいでしょうねぇ……。

 

「いやぁ、自然の中での生活っていうのもたまには良いもんだな」

「そうだよね~、あんな綺麗な星空とか初めてみたよ」

「うーん、たしかに楽しかったけど、あたしはたまにでいいかな……虫とか怖かったし」

 

 Aクラスの面々は各々が無人島生活を楽しんでいたようだ。陰謀渦巻く特別試験も、キャンプ感覚である。

 試験を終えた彼ら彼女らは、現在は無人島から引き上げ、豪華客船の中で思い思いにバカンスを楽しんでいる。

 そして無人島試験でやりたい放題しやがった坂柳、櫛田、ついでに天白は現在何をしているのかというと。

 

「はい百合。あ~ん!」

「……んむ」

 

 客船の中にあるカフェの中でベタベタにイチャコラしていた。

 あれ? なんかデジャヴュ……。

 

 だが、今回は二人っきりではない。

 

「……ねえ、あんたアレを見てなんとも思わないわけ?」

「何がでしょう?」

「いや、アレ……距離近すぎじゃない?」

「素敵ですよね、幼馴染って。まるで姉妹のような仲睦まじさだと思います。私にも姉や妹が居れば、あのように仲良く出来たでしょうか」

「いくら何でもあれは普通じゃ――いや、なんでもない」

「???」

 

 その場面を目にしている、というより同席している坂柳と、Aクラスの神室がヒソヒソと話をしていた。神室は坂柳の認識が歪んでいる事に勘づいたが、余計な事を言って虎の尾(櫛田)を踏む事になると言葉を濁した。

 

 尚、同席者はもう二名居る。

 

「堀北、幼馴染ってああいうものなのか」

「私に聞かれても困るわ」

 

 Dクラスの綾小路と、同じく堀北だ。

 綾小路は「あれが親友を超える友情ってやつか……」と坂柳同様に認識を歪め、堀北はもう慣れたものなので誤解を解かずに放任している。誤解を解ける反証材料を持っていないとか言ってはいけない。堀北が泣いてしまう。

 

「一応聞いておくけど、何で百合はこうなってるの? まだ電池切れまで遠いでしょう」

 

 堀北はこの二人の事を中学生時代から知っていたためイチャコラしている姿には慣れているが、一応代表として聞いておく。尚、電池切れというワードに疑問符を浮かべているのがこの場に三名程居た。軽率に専門用語を使うな。

 櫛田は天白への餌付けを継続しつつ、「えっとねー」と可愛らしく首を傾げながら答える。

 

「無人島での特別試験では、私達が裏で動き回ったけど。Aクラスの表で一番動いてたのは百合なんだ。まあ、葛城くんも色々してくれてたけど、皆が快適に暮らせるように働いてたのが百合。だから甘やかしてるの」

 

 嘘である。

 天白は別に電池切れをしているわけではなかった。

 そも、普段からバタバタ動いており、また按摩という体力を使う奉仕を日常的に繰り返している天白は、筋力・持久力共にそこそこのものを誇っている。

 不慣れな環境とはいえ、たった七日間で疲れ切るようなヤワな体力をしていなかった。

 むしろ、おはようからお休みまで好き放題お世話出来たので『良き……奉仕であった……』と天白の中に潜む武士の精神も喜んでいる。

 

 気力は充足され、体力も余裕はある。

 

 なので甘やかしているのは完全に櫛田の私的な理由である。

 こいつはただイチャイチャしたいというだけの理由で天白を甘やかしている。

 櫛田も無人島ではクラス間の調整やクラス内の和睦などで駆けずり回っており、せっかくのバカンスなのに存分に天白とイチャれなかった。

 なので我慢できず、親友二人と、あとは信用ができそうなメンバーしか居ないこの場でついイチャついてしまったのだ。

 

 ということを天白も察しており、また満更でもないのでされるがままにしている。

 

 ……ということを堀北も察し、やれやれと頭を振った。

 

「まあ、百合さんは炊事洗濯からマッサージまで八面六臂の大活躍でしたから。改めて、お疲れ様でした」

「……ちょっと待ちなさい。百合、あなた無人島でまでそれやってたの?」

「……ん。肩とか、足とかのケアだけだけど」

「うらやま――ごほん。桔梗、後でちょっと代わりなさい」

「えぇ~、どうしよっかなぁ~」

 

 堀北と櫛田が天白取りゲームを始め、それを坂柳と綾小路が興味深そうに眺め、神室は「あれ? こいつも大概じゃ……?」と疑念を懐き、カフェでの時間は過ぎていく。

 そこへ、一つの影が近づいてきた。

 

「あ、桔梗ちゃん! お疲れ様~!」

 

 そう言って明るく声をかけて来たのは、Bクラス所属の一之瀬帆波という女子生徒だった。

 ピンクブロンドの長髪に、朗らかな人好きのするルックス。

 そして何よりも目を引くのは、ジャージというラフな格好だからか封印が甘くバルンバルンと揺れる胸部装甲。

 そのカップ数は、なんとF……いや、実際にはGクラスを誇る程の途轍も無い威力を秘めている。

 彼女が戦車だとすれば、坂柳はさしずめ輪ゴム。パ、パワーが違いすぎる!

 

「帆波ちゃん! お疲れさま~!」

 

 声をかけられ、同じく労いの言葉をかけた櫛田も胸部戦闘力は高くロケラン程の威力を誇る。

 

 さて、さんざん一之瀬のおっぱいがやべえと伝えてきたが、彼女の特徴はそこではない。いや、見た目の特徴はどうしたってそこに目が惹かれてしまうのだが、それよりも強烈な個性が彼女には存在している。

 

 それは、彼女が根っからの善人だということだ。

 

 どういうこと? と疑問を抱いた諸君の為に説明すると、彼女の行動には100%不純物なく『誰かの為に』という善意が含まれているということだ。

 櫛田の様に優越感に浸らず、櫛田の様に内心であることない事罵倒をしない。

 猫を被ることなく、ただただ善人なのだ。櫛田が内心に邪神を宿している天使とすれば、一之瀬は内心に菩薩を宿している天使なのだ。

 

 何? よく分からない?

 では、先程のやり取りでの彼女達の内心を副音声としてお届けしよう。

 

『あ、桔梗ちゃん! お疲れさま~!』

(桔梗ちゃんだ! 今日も可愛いなぁ~)

 

『帆波ちゃん! お疲れさま~!』

(ゲ! おっぱいお化けだ……)

 

 ご覧の通りである。

 参考の為に、彼女達二人に対しては少しの間副音声を継続しておく。

 

「無人島ではありがとう! お陰でクラス内で決裂することなく、ポイントも沢山残せた!」(ほんとに助かったよ~! 今度はこっちが力になってあげたいな!)

「ううん、全然! むしろ私達のお願いを聞いてくれてありがとう!」(有栖ちゃんが立てた作戦なんだから当たり前だろぉ? もっと感謝してほら)

「一之瀬さん、こんにちわ」

「あ、有栖ちゃん! こんにちわ~!」(うーん、有栖ちゃんもすっごく可愛いなぁ! それに頭もすっごく良いし……仲良くなりたいなぁ)

 

 堀北、綾小路、神室とも挨拶を交わし、ちょうど六人掛けの席で一席空いていた為、「良かったら一緒に話さない?」との櫛田の誘いに乗る形で、一之瀬もこの集いに参加する事となった。

 ……ん? 一之瀬を含めれば七人になるはずなのに、六人掛けの席が一席空いている……? 妙だな……。

 妙も何も、櫛田が天白を人形抱きにしているので二人で一席使っているだけであった。謎もくそもない。

 

「…………」

「えっと……そのぅ……」(うぅ……!)

 

 さて、先程一之瀬が挨拶を交わした中に天白が入っていなかったのは、何も無視をしていたわけではない。

 結果的に無視になってしまっていたのだが、一之瀬は彼女にも声を掛けようとしていた。

 していたのだが、天白がじっ、と見つめてくるので目を逸らし、無視なんかダメダメ! ともう一度見るとじぃぃっと見つめてくるアクアマリンの瞳とバッティングしてしまい、たじたじとしてしまうのである。

 実は、このようなやり取りは既に何度も行われていた。一之瀬が天白に声を掛けようとするたび、天白のつぶらな瞳になんだか目を合わせられないのである。

 何故天白が執拗に見つめているのか、一之瀬が耐え切れず目を逸らしてしまうのかについては理由があるのだが、それは後ほど触れる事としよう。

 

「帆波ちゃん……やっぱり、百合の事、苦手?」(おうこらワレこら、私の百合の何が不満なんですかこら)

「ち、違うの! 苦手って訳じゃなくて……桔梗ちゃんの幼馴染だし、仲良くなりたいんだけど……!」(だって……でも、うぅ……!)

 

 櫛田が悲しそうに目を伏せると、一之瀬も慌ててそうじゃないと否定する。

 尚二人がどのように思っているかは副音声の通りである。

 

「百合さんが苦手でないのなら、先程から何故目を合わせようとしないんですか?」

「多分、天白も一之瀬に声を掛けてもらえるのを待ってるんじゃないか?」

 

 坂柳と綾小路からも、非難というわけではなく、純粋に疑問に思ったという声音で問いが投げかけられた。

 神室は何も言わない。ただ、あの噂に聞くレベルの聖人の一之瀬が、心優しき妖怪『ほぐし入道』である天白を嫌うとは思えない為、どんな理由があるのかと興味を傾けてはいる。

 

 そして堀北とは言えば。

 

「まさか、百合が可愛らしすぎて目を合わせられないって訳じゃないわよね?」

 

 と珍しく軽口を叩いた。

 この堀北、元はコミュ障を拗らせたボッチであったが、櫛田と天白の背を見て育った(?)ことと、その親友二人と離れたこと、成長する機会に恵まれた事で場の空気を読めるようになっていた。

 今の軽口についても、ちょっと場の雰囲気が一之瀬を糾弾する方向へと傾きそうだった為、粋な堀北ジョークで場を和まそうとしたのである。

 この後に櫛田辺りが「まさかそんなわけないでしょ~」と更に空気を弛緩させて大団円だ。ナイスプレイ。素晴らしい。後に天白に「良くできました」と褒めてもらえるぞと堀北は内心でドヤっていた。

 

 実際に、普通であればあの堀北の発言は場の空気を見事に切り替える切っ掛けとなっていただろう。

 誤算だったのは、その冗談が思いっきり地雷を踏みぬいていた事であった。

 

「………………」

 

 一之瀬が黙った。

 顔を真っ赤にして、恥ずかしさを隠す様に両手で顔を覆って。

 

「え? ……嘘でしょう、ほんとに……?」

 

 これには一同絶句である。櫛田も「まさか」とまで口にしかけていた為、口をあんぐりと開けて驚いていた。

 

「えっと……その、わ、笑わないで欲しいんだけど――」

 

 恥ずかしさで消え入りそうな声で一之瀬が語るには、幼少期から可愛い物――特に、西洋人形が好きだったのだという。

 幼少期に母が買ってくれた西洋人形を今でも実家の自室に大事に飾っており、この学校に進学した後も、無駄遣いとは分かっていても人形集めを辞められないそうだった。

 そんな一之瀬だが、天白を一目見た時に雷が落ちたかのような衝撃に襲われた。

 ちっちゃくて、ふわふわしてて、まるで一之瀬の好みドストライクな人形がそのまま大きくなったかのような姿に、一之瀬は心奪われた。

 恋ではない。恋ではないのだが、限りなくそれに近い好意の感情を抱いてしまった為、つい恥ずかしくなってしまったのだそうだ。

 

「にゃはは……恥ずかしいなぁ。おかしいよね、もう高校生なのにお人形さんが好きだなんて――」

「ううん、変じゃないよ」

 

 自嘲気味に笑った一之瀬の言葉を否定したのは、櫛田だった。

 

「女の子だもん。可愛い物が好きなのは、ぜんぜんおかしなことじゃないって私は思うな!」

「桔梗ちゃん……」

 

 この時の櫛田の内心は以下の通りである。

 

(いい趣味……してるじゃん、親友……)

 

 先程までの内心の喧嘩腰が嘘のようだ。櫛田ハンド@球体関節がいつもより多めに回っております。

 よほど過激派な同担拒否でもない限り、好みの共有というのは親近感を得やすい。

 櫛田の好みとは言うまでもなく天白そのものであり、人形か本人かという違いはあれど、それをど真ん中ドストライクと言ってくれた一之瀬に、櫛田はあっさり親友判定を下した。ようこそベストフレンド。歓迎するぜ。

 

「…………」

 

 そしてそれを聞いた天白の行動は早かった。

 さっと櫛田の足の間から離れると、一之瀬の席に近づき、「ん」と声を出して両手を広げた。

 ハグしろよの合図である。

 

「えっ……えっ?」

「あはは……百合も、『そんなにわたしの見た目が良いのであれば抱かれてもいい』って言ってるよ」

「なんで今の一文字だけでそこまで読めたんだ……?」

 

 文字数にして26倍である。恐ろしい程の意思疎通であり、綾小路もこれには「さすがは幼馴染ってやつだ……」と内心舌を巻いていた。ちなみにその認識は間違っている。

 

「……いいの?」

 

 恐る恐る問いかけた一之瀬に、天白は無言で首肯し肯定の意思を示した。

 

 そして震える手で天白の背に手を回し――

 

「っ……はぁぁぁ~~っ!♡」

 

 即堕ちした。特別大サービスで、天白からもぎゅっとし返されて一之瀬は恍惚とした表情をしている。

 ちなみに、天白の身長は小柄な坂柳よりも更に低い驚異の140cmであり、これは小学五年生女子の平均身長とほぼ同値である。

 

 理想のお人形さんがそのまま大きくなり、しかも動いて自分を抱きしめてくれるとの事もあり、一之瀬は「多分私、今この瞬間世界で一番幸せな自信がある……」とトリップしかけている。

 この光景を目撃している他のメンバーはというと、

 坂柳は「あらあらまあまあ」と微笑まし気に――いや、あまりの堕ちっぷりに今後もいい関係を続けられそうだとほくそ笑んでおり、

 綾小路は「いいな、アレ」と美少女と可愛いが抱き合っている姿を眩しそうに目を細めながら眺め、

 神室は「またやべえのが増えた」と頭を抱え、

 堀北は「羨ましい」と素直に嫉妬していた。

 なんだこいつら。

 

「はぁ……ありがと、天白ちゃん……ううん、私も百合ちゃんって呼んでいい?」

「……構わない。わたしも、帆波ちゃんと呼ぶ」

「ふわぁ~っ!♡」

 

 夢が叶った少女のように、一之瀬は熟れた林檎が如く頬を赤く染めながら歓喜の声を漏らした。

 そうしてしばらく天白ハグを堪能した後、意を決したように天白と――櫛田へとある願いを口にした。

 

「桔梗ちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど――少しの間、百合ちゃんを借りてもいいかな?」

「え? 私は別に、百合がいいならいいけど……何をするの?」

「うん。百合ちゃんに……相談があるんだ」

 

 そう言った一之瀬の目は、何か自分を大きく変えようという決心をしたかのような、決意を宿していた――。

 

 

 

 

 

 

 

 後日の話。

 

「あ、そうだ百合。そういえばなんで帆波ちゃんの事をずっと見つめてたの? しかも何も言わず無言でじーって」

「……あれは別に、帆波ちゃんを見つめてたわけじゃない」

「うん? どういうこと?」

「……すっごいおっぱいだなって思って」

「………………うん?」

「……ちょっと他ではお目にかかれないくらいおっぱいだったから、帆波ちゃんの顔を見る振りして観察してた」

「………………」

「……観察した結果、やっぱりわたしは桔梗ちゃんのおっぱいが良いって思った」

「も、もうっ! またそんなこと言って! でもうれし~! ありがと百合~! 大好き~!」

 




またあの妖怪が原作キャラをダメにしてる……

次回はちょっと更新遅れます
裏の方で書きたいことが出来たので

アンケート追加しました。
やりたいプレ――やりたいリフレクソロジーは決まりましたが、誰を生贄にするか
よければ参考にさせてください

次の日常回何やる問題

  • 堀北、坂柳、椎名のビブリオガールズトーク
  • 堀北(兄)、南雲の漢祭り
  • きよぽんグループ(外村平田)のオタトーク
  • 漢葛城、その苦悩
  • 幼馴染と部屋でイチャイチャするだけ
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