コミュ力おばけと幼馴染(♀)がイチャコラするだけの話 作:百合好きの獣
裏の方もちょこちょこと更新してますので、興味ある方は良かったら見てやってください。
それは、二度の特別試験後にバカンスを終え、夏休みも残すところあと数日と迫った時に起きた。
午後六時。端末に学校より連絡があり、水道局のトラブルによって寮全体の水が出なくなっているという。
それを受け取った天白が試しに蛇口をひねってみれば、数滴の水がぴちょんとシンクに落ちるだけであり確かに水道が止まってしまっているようだった。
復旧には時間がかかるらしく、長ければ早朝までかかる見通しだ。
学校もこの事態には生徒たちに対してフォローを行っており、最悪、寮以外の場所で水を確保することは可能なようだ。ただし、大規模な混雑が予想されるため、コンビニは一時利用不可となってしまったそうだが。
「こんな時を予想してたわけじゃないんだろうけど、お水は一杯あってよかったね~」
「……ん。ミネラルウォーターは必須品だから」
幸いなことに、天白には水の備蓄があった。
天白マッサージ店で使用している寮の一室、そこに備え付けられている冷蔵庫の中に、施術前や後に客に飲ませる為のミネラルウォーターが十分な量貯蔵されているのだ。
冷蔵庫の中だけでなく、箱買いしているためストックは十分だ。現に天白も数本を自室へと持ち込み、櫛田ネットワークにて『もし水が必要なら渡す事が出来る』と情報共有も行っている。マッサージに利用している部屋は施錠しているため、鍵を持っている天白に櫛田経由で話を通す必要はあるが、早朝まで復旧されなかったとしても問題は無いだろう。
「……でも、流石に生活用水には使いにくいかも」
「あー、お手洗いとかにも使うもんね」
水洗トイレは一度タンクに補充した水を一気に押し流す仕組みなので、一度であれば利用は可能なのだが、水道が止まっている以上、二度目以降は外に出るしかないだろう。
「あ、お風呂どうしよう。銭湯とか行く?」
「……ん、でも今は多分凄く混雑してると思うから、少し時間をズラしてからいこ」
櫛田はわかったーと軽い返事を返しながら、どうせなら友人も誘おうと堀北、坂柳、一之瀬へと連絡を取った。
程なくして、坂柳と一之瀬からは了承の返事が届いたのだが、堀北は音沙汰がない。
「鈴音、どうしたんだろ。本読んでるのかな」
「……ちょっと、電話してみる」
堀北は読書や勉強をしていると、集中してしまって連絡に気づかない事が多い。まだお風呂に向かうまで時間的余裕はあり、行く前まで連絡が無ければ声を掛けるつもりではあるが、いきなり言われても準備に困るかもしれないと思い、天白は端末で堀北へと電話を掛けた。
「……? コールが長い。端末置いてどこかに出かけたのかな」
堀北は天白や櫛田からの電話に出るのが早い。マジで速い。大体3コール以内には着信を取る。企業の電話対応でもばっちり満点を貰えることだろう。その他の者からの着信については着信音を変えているのかお察しである。
「……あ、つながった。もしも――」
数度のコール音の後に、ぷっ、と回線がつながった音がした。
しかし、天白が何かを言う途中で――
『ゆ、百合……助けて……』
という声が聞こえた。
か細く震えた声だった。それを聞いた天白は表情を一変させた。
「……いまどこ」
『わ、私の部屋だけど……』
「すぐいく」
『え? あ、ちょ――』
堀北の返事を待たずに通話を切り、天白は駆け出した。
「えっ!? 百合!?」
「鈴音ちゃんが危ない!」
天白にしては珍しく、大きな声。
櫛田も瞬時にそれを察し、慌てて後を追った。
天白の部屋から堀北の部屋はそれほど離れていない。
エレベータを待つ時間も勿体ないと階段を一段飛ばしで駆け上がり、13階へ。
自分に出来る一番の速さで走り、額に汗を滲ませ息を切らせながら堀北の部屋のドアノブへと手をかけた。
幸いなことに、鍵は開いていた。
「鈴音ちゃん!!」
扉を開けると、そこにはおろおろとした様子の堀北が居た。
「あ、ゆ……百合……」
「鈴音ちゃん! 大丈夫!? 怪我とか――」
天白は普段から、喋るときには間を置いている。
それは彼女が物静かだとか喋るのが苦手というわけではなく、自分が思った事を言語化する前に、一瞬ウェイトを挟んでいるからだ。
その一拍を置く喋り方は天白の『妙に落ち着く声』と相まってえぐいヒーリング効果を生み出しているのだが、それは狙っての事でもある。
が、今の彼女の声からはそう言った『喋り方』に気を配る事も出来ない焦りがあった。
ので、堀北はとっても気まずい気持ちだった。
「えっと……その……」
「………………」
天白の視線は、堀北の右手に注がれていた。
なんかある。
堀北の右手の先端は、女性用の小ぶりな水筒に覆われていた。
「あ、その、えっと……できれば、笑わないで欲しいのだけど……その……」
「……………………」
天白は笑わない。
すとんと表情を落とし、無感情の瞳で水筒IN堀北ハンドを見つめている。
少し遅れて、櫛田もやってきた。
「鈴音! あんた大丈――」
「あ……」
櫛田も同じく、堀北の右手に注がれた。
「「「………………」」」
重い重い沈黙が訪れた。
天白は相変わらず無表情だし、櫛田は何かを堪えるような表情をしているし、堀北は冷や汗をだらだら流している。
その沈黙を最初に破ったのは、やはりというか櫛田だった。
「ぷっ……あははは! 何それ! おっかしー!」
櫛田は吹き出すと、お腹を抱えて笑い出す。笑われた堀北は耳まで赤く染めて恥ずかしがっていた。
「だから嫌だったのよ……桔梗はきっと笑うと思ったから……そういう辱めは求めてないわ」
なんか余計な一言が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
「ふふっふ、……あぁ笑った。それで、抜けなくなっちゃったの? それ」
「笑い過ぎよ、もう……。ええ、洗い物をしていたら、うっかり奥まで手を入れてしまって」
堀北は恥ずかしそうにこうなってしまった理由を話した。
手首から先が釣り針の返しのようになってしまい、抜けなくなっているのだろう。
猫かぶり力にしたら100万は確実な櫛田アイによればその理由はちょっと怪しいところだった。そもそも断水中なのに何故水筒を洗おうとしたのか。
ちょうど良さそうな水筒に興味本位で手を入れて「ろけっとぱーんち」とかやってる堀北の姿を想像して、櫛田は再びぷっと噴き出した。
「あー、それ取るとしたらお水が必要だよね。じゃあちょっと部屋まで取ってくるね」
櫛田はそう言って部屋を後にしようとした。ちなみに自分の部屋に取りに行くような口ぶりだがもちろん天白の部屋に行くつもりである。櫛田はここ数日自室へと帰宅していない。
しかし、櫛田が部屋を出る前に、天白が「……わたしが取ってくる」と静かに言い、すたすたとそのまま部屋を出てしまった。
「百合なら笑わないとは思っていたのだけど、その、幻滅されてしまったのかしら……」
堀北は割とガチで落ち込んでいた。それを見て櫛田は「いや、あれはどっちかというと……」と少し言いかけたが、その後に「なんでもない」とお茶を濁した。
「あ、ねえ桔梗。このことは出来れば他の人には黙っていて欲しいのだけど――」
「うーん、ごめん。ちょっとまずい事態かと思って綾小路君にヘルプ送っちゃった」
「え――」
◇
天白が戻ってきたのは、それから十分以上も経っての事だった。
「……すぐそこで、綾小路くんとすれ違ったけど」
「ああ、うん。私が念の為に呼んだんだけど、全然ピンチでも何でもなかったからごめんねって謝って帰ってもらったんだ」
「不覚だわ……」
絶対の信頼を置く天白や親友の櫛田だけでなく、クラスメイト(本人はかたくなに友人と認めてあげない)の綾小路にまで情けない姿を見られてしまい、堀北は肩を落としていた。
「それにしても、お水取りに行くだけにしては遅かったね?」
「……ん。これを取りに行ってた」
天白が取り出したのはマッサージオイルだった。
「……洗剤を使うのは、肌に良くないから」
「ゆ、百合……っ!」
堀北は感動に目を潤ませていた。ちょろすぎない?
それから、天白の持ってきたマッサージオイルで滑りを良くさせ、しばらくの奮闘の後にようやく堀北の右手の拘束が解かれた。
「助かったわ。……ありがとう、百合」
うっ血して少し赤くなった手首をさすりながら、堀北は天白に礼を言った。
それに対して櫛田はぷうと頬を膨らませて不満を表現している。
「ちょっと~、私だって心配して駆けつけたんですけど?」
「ふふ、もちろん貴女にも感謝してるわよ」
堀北が笑いながらそう言うと、櫛田もにやっと相貌を崩した。
やはり二人は最高の親友だ、と堀北は改めて二人に礼を言おうとして――
「っ……!」
「……百合?」
突然、天白が堀北へと勢いよく抱き着いた。
これには堀北も目を白黒とさせ、櫛田も驚きを露わにしている。
「……心配、したんだから……っ! 鈴音ちゃんに、何かあったら……って!」
堀北へと抱き着く天白の身体は震えていた。
流石の堀北もこれには胸を打たれ、櫛田はそれをニヤニヤしながら眺めている――ん?
「ごめんなさい、百合。……心配かけたわ」
「……だめ。許さない。――ので」
天白はひょいっと堀北を抱き上げ、ベッドへと転がした。流れ変わったな。
そうして堀北のお腹にぺたんと腰を降ろすと、天使のような笑み――しかし、目だけは笑っていない――を浮かべ、堀北に言った。
「これからお仕置きをします」
「……え?」
天白が震えていたのは、怒りからだった。
櫛田がニヤニヤしていたのは、天白がこっそりと後ろ手に隠していたものが目に入ったからだった。
天白がマッサージオイルを取りに行ったときに時間がかかったのは、緊縛用のロープも同時に持ってきていたからだ。
そうして、抱き着いた瞬間に堀北の両腕を縛り上げているのである。ハヤワザ!
「ゆ、百合……? 何故、私を縛っているのかしら」
「お仕置きする、の♪ ……紛らわしい電話をして。ホントに心配をした」
ぶっちゃけ詳しく話を聞かなかった天白にも非はあるのだが、そんなこと知ったこっちゃない。あんな切羽詰まった電話をしてきた堀北が悪いのは確かだ。
「そ、そう……分かったわ。それで、私はどうお仕置きされてしまうのかしら」
堀北はこれから何をされてしまうのかという想像を膨らませ、僅かに興奮し始めた。このクソマゾがよ……。
しかしこれしきでめげる天白ではない。
「……鈴音ちゃんは単純に痛みが気持ちよくなってしまうので、相応のお仕置きが必要」
堀北は痛みを快楽に変えてしまうため、物理攻撃は効かない。そもそも、親友相手に痛い事をするのは天白も嫌である。
天白のマッサージによってアヘアへさせてしまうのも考えたが、気持ちいは普通に気持ちいいとなるので有効ではない。なんだこいつ無敵か?
なので、天白は考えた。
まずは縛り上げた手首を頭の上に持っていき、もう一本のロープでベッドに繋いでから刑の執行を宣言した。
「……これから、鈴音ちゃんが泣くまでくすぐります」
「え……」
「……ごー♪」
「ちょ、ちょっと! あはっ、あはははっ! やめっ……あはははははっ!!」
天白は脇をこちょこちょーっと指をうごめかせてくすぐり始めた。
堀北はくすぐりに身を捩るが、手首を拘束され、また天白がお腹に乗っかっている為抜け出すことが出来ない。
「そういうことなら、私も参加しようかな。それ~っ」
「ひゃぁっ!? あははははははは! だめ! これ、だめっ!! あはははははははは!」
櫛田、参戦。
足裏をくすぐられ、ジタバタと暴れ始めたので櫛田も膝上に陣取って暴れないように抑え込んだ。
「それ~っ」
「それそれ~っ」
「あははははははははは!! あっ!? だめ、まず……これ、ちょっと……! あはははははは!」
数分程脇と足裏を擽られ、堀北は顔を真っ赤にして笑い転げていた。くすぐりに弱かったらしく、親友の新たな一面の発見だった。
しかし少し様子がおかしくなる。
「あはっ、あははははっ、んっ♡ くっ♡ あはははははは!」
「……???」
「あれ、もしかして……」
堀北のあげる笑い声に色が乗り始めた。
天白は疑問に思いながらも擽る手は止めず、櫛田は何事かを察していた。
さて、くすぐったさというのは大別して二つある。
羽毛でなぞったり、虫などが這った時に感じる弱いくすぐったさを感じる事をknismesis、脇や足の裏などを擽られ、思わず笑ってしまう程の強いくすぐったさをgargalesisという。
ちなみに、擽られて声を出して笑うのは人間を含む霊長類だけである。
この笑いたくなるくすぐったさというのは、実は痛みと快感が混ざり合った信号の事である。
聡明な諸君であれば、もう何が言いたいか分かるな?
そう、くすぐったいは裏を返せば気持ちいいであり――くすぐるだけで絶頂する事が出来るのだ。
「あ”っ……いくっ……♡」
「……え?」
「あー……」
くすぐり開始から約十分堀北はくすぐりで達した。
天白は何が起きたか分からず目を白黒とさせており、櫛田はやっぱり……と苦笑いを零していた。――ん? やっぱり?
ぴん! と足を伸ばして達した堀北は、少しの間硬直した後にくた……と身体から力が抜けてベッドに沈んだ。
「はぁ……♡ はぁ……♡」
「……い、イっちゃった、の……?」
「あはは……」
お仕置きでくすぐったら親友が絶頂してしまった。
天白と櫛田は驚くやら申し訳ないやらで気まずい気分を味わっている。
尚、友人をイかせるという事については既に天白は既に慣れていた。主にそこで頬を掻いている幼馴染と、最近は臍掃除をするとなぜか絶頂する天才ロリのせいで。
堀北はぜいぜいと荒い息をつきながら、恍惚とした表情でこう言ったのだった。
「……こういうのも……♡たまには……はぁ……♡悪くないわ……♡」
お仕置きやぞ。
堀北はなんと、痛みだけでなくくすぐりですら感じる事が出来る究極生物になってしまったのだった。
堀北ちゃんがどんどん魔改造されていく……
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