コミュ力おばけと幼馴染(♀)がイチャコラするだけの話   作:百合好きの獣

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遅れましてすみません。

いつも高評価、感想、お気に入り、ここすきありがとうございます。

ようやく夏休みを抜けました。今回はちょっと真面目なお話です。


暴君の散々な一日

 

 

 

 9月1日。

 楽しい楽しい夏休みも終わり、二学期の始まりである。

 一般の高校であれば、久しぶりに会うクラスメイトがイメチェンしていたりして驚いたり、気になってたあの子に彼氏が出来ていて静かに涙を流したりなど悲喜こもごもな学期始まりとなるだろう。

 

 しかしここは高度育成高等学校。全寮制であり、入学したら卒業まで学校敷地内から出ることは叶わず、少し買い物にでも出かければ親しい友人以外のクラスメイトとも頻繁に顔を合わす事になるため、「お前変わったなー!」や「付き合ったのか……? 俺以外の男と……」というイベントは発生しにくい。

 とりわけ、一年生にいたっては夏休み中の二週間も全員でバカンスをしていたのだ。特別試験がどっかの誰か達のせいで「たのしいいべんと」と化してしまった為、尚の事久しぶり感が薄い。

 

「おはよぉ~」

「おう、おはよう。つっても昨日会ったばかりだけどな」

「そうだね~。……ところで、例のモノは?」

「へへ、そう焦るなって……ちゃんと焼き増ししてあるからよ……」

「はぁ……っ♡ 天白ちゃんに抱っこされる坂柳さん尊み……!♡」

 

 Aクラスでも、土日を挟んで月曜日に登校したかのような、長期休暇明けとは思えないゆるい空気が流れていた。

 一部でお馬鹿な会話がされているが、Aクラスでは日常茶飯事である。みんななかよし。

 

 さて。

 夏も終わり、秋に入った。秋といえば食欲・芸術・運動とイベントが盛りだくさんであり、学生にとっては更に身近な行事があることだろう。

 

 体育祭である。

 

 小学校では運動会、中学校からは体育祭と、名前を変えてではあるがここまでの9年間毎年開催されていた、全校生徒で身体能力を競い合う行事。

 ここ高度育成高等学校も当然のように開催される。

 

 しかし、普通に開催するだけじゃ終わらないのが高度育成高等学校クオリティ。なんと体育祭も特別試験として行われるそうだ。

 

 細かいルールについては例によって天白は把握を諦めた。「勝ちゃあいいんだろ? 勝ちゃあよぉ……」と身も蓋もない理解だ。頭よわよわである。

 

 今回の特別試験に至っては、Aクラスは勝ってもせいぜいがお小遣いが少し貰える程度であり、勝つことによる旨味がさほど感じられないのだが。

 だからといって手を抜くかと言われればそうではない。最初のHRで体育祭についての伝達事項が伝えられたその日のLHRにて、早速クラスで作戦会議を行った。

 

 司会進行は我らがスキンヘッド、葛城である。

 

「じゃあ皆、まずは次の体育祭のルールを軽くおさらいするぞ」

 

 葛城が説明するのに合わせて、櫛田が持ってきたホワイトボードに要点をまとめだす。

 

「――と、ルールはこんなところだな。それで、俺達と同じ紅組として組むDクラスについてだが」

 

 体育祭では、全学年を紅組・白組に分けて組対抗戦を行う。

 紅組はA・Dクラス。

 白組はB・Cクラスに割り振られる。

 

「夏休み中の特別試験で、DとCが入れ替わった結果、俺達は旧Cクラス――そうだな、仮に龍園クラスとしておこう。彼らと同じになる」

 

 夏休みに行われた二度の特別試験により、9月1日付けでクラスポイントの変動があった。その結果、なんとDクラスがCクラスよりもポイントがわずかに多く、クラスが入れ替わったのだ。

 なんとも何も、そうなるように仕向けた連中がいるのだが。ご存知天才幼女(体型)とコミュ力おばけと愉快な仲間たちである。

 

「はい」

 

 一人の生徒が挙手をし、葛城が発言を許可した。

 

「葛城さん、ぶっちゃけ龍園クラスは俺達と協力しようなんて思わない気がするんだが、そこはどうするんだ?」

 

 旧Cクラス、龍園が率いる彼らは協調性とは程遠い――というか、実質支配している龍園がお世辞にも素行が良いとは言えず、暴力と恐怖によってクラスを纏めている事は周知の事実だった。

 夏の特別試験で、各クラスにスパイを送り込むためにクラスメイトへ暴力を振るっていたというのは記憶に新しい。まあそのスパイは後にAクラスで大変な目にあったのだが。主に妖怪と筋肉のせいで。

 

「龍園クンって、クラスポイント云々よりもどこまでがセーフかを調べてるみたいな感じじゃない?」

「確かに。あいつらだったら味方へのラフプレーとかも平気でしてきそうだ」

「『最終的には倒す相手だから』つって、こっちの戦力を削ってくるとか」

「ありえそ~。それで白組のCとBクラスにも妨害仕掛けるんだ。俺知ってる」

 

 喧々諤々、Aクラスに言いたい放題されている。それだけ評価が低いということなのだが。いや、どちらかというと、そういう盤外戦術を仕掛けてくるという評価をされているのだろう。

 

 葛城は腕を組んで目を閉じた。それについては、今朝真嶋に組分けを知らされた時点で葛城も懸念していたからだ。

 いくらAクラスの目標が単独勝利では無いとは言え、ラフプレーで怪我をさせられてはたまらない。

 なので、当然坂柳と櫛田にも相談したのだが――。

 

 ぱん、ぱん。と二度手を打つ音が響いた。

 これまで会話していたクラスメイト達も、一斉に口を閉じて音の鳴った方へと視線を向ける。

 手を鳴らしたのは、これまで葛城の隣で不敵に微笑んでいた坂柳だった。

 

「はい、皆さん。龍園クラスが協力をするのかどうか、また、想定される暴力行為に対する不安についてですが――ご安心ください。私に考えがあります」

 

 そう言って、坂柳はにこりと可憐に笑みを見せた。何人かが胸を抑えて屍となったが、それに構わず坂柳は続ける。死に慣れるな。

 

「本来であればじっくり内部から取り込もうと考えていましたが……今回のように、学年の垣根を超えて試験を行う可能性があるとなると、話は別です。百合さん、桔梗さん、葛城クン、それと……鬼頭クンもですね。後ほどお時間をいただけますか?」

「……やるんだな?」

「ええ。少し――お話をしに行きましょうか」

 

 

 

 

 

 

 今後の方針を伝えてからクラスを一旦解散した後、坂柳、櫛田、天白、葛城、鬼頭の五人はカラオケルームへと訪れていた。

 Cクラスの王、龍園と話をするために。

 

 大人数用のパーティルーム。その片側に五人は腰を落ち着けた。真ん中を坂柳、それを挟むようにして天白と櫛田。端には葛城と鬼頭がスタンバイしている。

 尚、教室を出る時に『三人に何かあったら分かってんだろうなあぁん?』というご指摘をAクラス女子達から受けてしまった為、葛城と鬼頭はやや緊張気味だ。こういう時、男は弱いのである。

 

 五人が部屋に入ってから少しして、櫛田経由で呼び出された龍園がやってきた。

 流石に一人では無く、護衛としてか体格に優れる山田アルベルトと石崎大地、そして女子の伊吹澪を連れ、四人でのエントリーだ。

 

 龍園達が席についたことを確認すると、坂柳が微笑みながら口火を切った。

 

「わざわざご足労いただき、ありがとうございます。龍園くん」

「……御託はいい、さっさと用件を話せ」

 

 龍園は苛立ちを隠さず吐き捨てた。

 その様子を見て坂柳はますます笑みを深める。

 

「ふふふ……では、早速……答え合わせといきましょうか」

「何……?」

 

 坂柳が切り出した用件に、龍園は眉を顰めた。龍園に随伴してきた石崎と伊吹も、わけも分からずといった風に顔を見合わせ首をかしげる。

 

「どういうことだ、坂柳。俺は体育祭の事で取引があるって言うから来てやったんだ。くだらねえ問答をやるっていうなら帰るぞ」

 

 坂柳は、櫛田に龍園を呼び出す口実として『取引』を口実にしていた。

 その内容がAクラスに従えといったものであれば即座に却下して帰るつもりだったが、実際に聞かされたのは取引とは程遠いもの。

 意味も意図も理解出来ず、どういうことだと問い詰める。

 坂柳は余裕の笑みを崩さない。

 

「ええ、ですから、取引の前に龍園くんの疑問を解消して差し上げようかと」

「疑問だぁ……?」

「……龍園クンは、疑問に思いませんでしたか? 夏休み中の特別試験。何故旧Cクラスだけが尽く最下位になったのか。それも、二度とも」

 

 坂柳の言わんとすることを察した龍園が怒気を膨らませて睨みつけた。

 

「テメぇまさか……! そういうことかよ……お前らの仕業ってわけか……!」

 

 夏休み中の特別試験。

 無人島での事も、その後の豪華客船での事も、二つの試験において、旧Cクラスは何をすることも出来ずに圧倒的な敗北を重ねた。

 Aクラスや、業腹だがBクラスに負けるならまだいい。だが、不良品と見下していたDクラスにすらも欺かれ、大敗を喫する事になったのだけは理解が出来なかった。

 堀北等一部の生徒は龍園も認めるところであるが、それにしてもあそこまでやられるとは思っていなかった。

 龍園は、堀北達旧Dクラスに入れ知恵をした――もしくは、Dクラスを影から操る何者かが居ると推測し、体育祭であぶり出そうと考えていたのだ。

 しかし、その謎の策士探しはあっさりと終わりを告げた。他ならぬ、本人からの証言に依って。

 

「ええ、無人島試験では我々Aクラスに潜入しようとしたスパイをマッサージで骨抜きにして情報を聞き取り、Bと旧Dクラスへと報告しました。そして、3クラス合同で貴方のクラスを狙い撃ちにしたというわけです」

「…………」

 

 マッサージで骨抜きにして情報を聞き取ったというのが意味不明過ぎて思わずツッコんでしまいそうになったが、今はシリアスな場面なので頑張ってスルーした。龍園は空気を読める男だった。

 

「だが、次の船上試験はどう説明するつもりだ。ご丁寧に俺達だけが沈み、BとAは横並び。鈴音のクラスの一人勝ちって状況は――いや、まさか」

 

 龍園は疑問を口にしている途中で一つの推測に行き着いた。

 

「気づかれましたか? そうです。我々Aクラスと、Bクラス、そして旧Dクラスは……同盟を結んでいます。今後、如何なる特別試験があろうとも、情報の共有をし、協力をするというものです」

「ちっ……クソが……」

 

 龍園にとって、その情報はあまりにもまずいものだった。

 目下の敵である旧Dクラスを標的にして攻撃しようものなら、AとBも敵に回るということだから。

 坂柳は「これでまずはチェック、です」と微笑み、龍園はそれを忌々しげに睨みつけた。

 

「テメェ……どんな手を使いやがった」

「あら? 別に何もおかしなことはしていませんよ? ただ、私達の目的をお話して、それに『賛同』して頂いただけです」

「目的だと……?」

「はい、私達Aクラスのこの学校での最終目的は――」

 

 坂柳がその詳細を告げるについれ、龍園の表情は訝しげなものから驚愕へと変わっていく。

 

「馬鹿な……出来るわけがねえ」

「出来ます。だからこそ、Bクラスと旧Dクラスのリーダーは同盟を承諾しました。そしてそれには、全クラスの意思を統一しなければなりません」

「……つまりテメェらは、俺達にも協力しろって言いたいわけか」

「ええ」

 

 坂柳は微塵も揺らぐこと無く、強い意思を込めた目で訴えた。

 龍園は思考を巡らせる。

 坂柳がわざわざこんな嘘をつくとは思えない。マッサージの下りは冗談だと思いたいが、クラス間同盟やその契約内容については真実と判断してもいいだろう。

 既にBと旧Dクラスの同盟がなされている以上、これを蹴って徹底抗戦をしかけるのは分が悪すぎる。

 かといって、提案を素直に飲み込むかと言われれば絶対にノーだ。

 どうすればこの状況を打破出来るか、龍園が思案に暮れるのを石崎は不安そうに見ており、伊吹は興味が無いため『マッサージで骨抜きにするってどうやるんだろう』とまだ考えていた。もっと会話に集中しろ。クラスの危機だぞ。

 

 そこで、坂柳は次なる手札を切った。

 

「一つ、情報を開示しましょう」

「……あ?」

「リリィ・ナイトという名前に聞き覚えはありませんか?」

「……ああ、あのイカレ集団か。何してるかしらねえが耳にしたことはある。それがなんだ」

 

 坂柳はクスクスと笑い、真実を突きつけた。

 

「彼らの目的は私もよく分かりませんが……その方々は私達に良くしてくださっています。目的は本当に分かりませんが。そしてその会員数はおよそ90名。すごいですね、この学校の5人に1人が会員になっています」

「……何が言いてぇ」

 

 リリィ・ナイトという謎の組織の話は龍園も耳にしていた。

 発足者から何を目的としているのかまで全てが謎に包まれた組織であるが、これまで『龍園が女子生徒に話しかけようとすると偶に妨害される』といった程度しか関わりが無かった為、特に問題視していなかった。

 ぶっちゃけあんまり関わりたくないなというのが本音であったが。

 

 そのため、何故今それを話題にするのかが分からない。龍園はそう思って聞き返したが、坂柳はにやにやとした笑いを崩さない。

 

「いえ、これは噂程度に聞いただけなのですが……会員の頒布は、一年生が割合としては多いそうです。……もしかすると――この集まりの中にも、会員は居るかもしれませんよ?」

「は? んなワケ……」

 

 龍園はハッとした表情で、両隣に控えさせていた男二人を交互に見た。

 石崎は何のことやらと頭上に疑問符を浮かべているが、もう一人――山田アルベルトだけは気まずそうに顔を逸らした。

 

「アルベルト……テメェ、まさか……」

「Sorry Boss.She is very cute……」

 

 アルベルトがス……と懐から取り出したのは、一枚の会員証。会員ナンバー015とある。

 大分初期に加入していたらしい。

 あーあ、シリアスさんが死んじゃった。この人でなし!

 

 坂柳はニンマリと笑みを深め『チェックメイト、です』と告げた。

 気づけば包囲網を固められ、あげく側近が目的不明の敵に塩を送る組織の古参ときた。

 今の龍園に打てる手は残っていなかった。

 

「………………………はぁ」

 

 龍園は長い長い葛藤の末、諦めたようにため息を吐いて天を仰いだ。

 なんかもう色々とどうでも良くなってきた。策とか実力で負けるのではなく、よくわからんやつらがよくわからん方法で引っ掻き回してて真面目に天下を取る事を考えるのがアホらしく思えてしまったのだ。

 ここまで振り回されている彼を見るのは非常に珍しく、良い印象を持っていない伊吹なんかは内心で『獅子身中の虫wwwざまぁwww』と大爆笑していた。

 

 

 

 

 

 

 その後、坂柳と龍園でいくつか協定を結んだ後、せっかくカラオケに来たんだしと女子達が盛りあがってしまい、普通に歌うこととなった。

 龍園が「好きにしろ」と言った為、石崎とアルベルトは何やら波長が合うのか葛城・鬼頭のAクラス肉体派コンビと談笑しており、伊吹はちゃっかりとAクラス女性陣と共にカラオケに興じている。

 

 龍園は精神的に非常に疲れたので、もうおうちかえりたい気分で一杯だったが、連れてきた連中を放っておく訳にはいかないので残留している。これでも彼は自クラスに対しては面倒見が良い。暴君であろうとも、王なのだ。民無くして国は成り立たぬ。

 

 ヤケだとばかりに注文した山盛りのポテトフライをつまみながら、龍園は1人黙考する。

 

(クラス間同盟とか反則だろうが……!)

 

 哀れ龍園。1人で頑張って勢力を率いて各国へと喧嘩を吹っ掛けようとしてたら、いつのまにか自国を除いた全てで連合軍が形成されていた。

 

(Aの……櫛田っつったか。あいつの影響が徐々に浸透してきてたのは知ってたが、もっとクソふざけた集団が入り込んでるとはな……)

 

 櫛田のフレンドサークルは徐々に勢力拡大をしてきていた。最初は無視していたが、末端から徐々に感染していく様は毒や感染症のよう。

 重要な情報を抜き取られないように、幹部を固めて木っ端の構成員は切り捨ててはいたが、目的も何もかも不明のもっとやべーやつらが幹部に居たとか笑えない。その幹部である伊吹は内心大爆笑していたが。

 

(しばらくは様子見するしかねえが……いつか奴らが隙を見せた時、必ず俺が上に立ち、屈服させてやる)

 

 龍園は諦めていなかった。

 彼は勝利に飢えている。例え幾度の敗北を重ねようと、最後に勝って相手を屈服させる事に快感を覚える男だった。

 今は時期が悪く、大人しくしているしかない。しかし、例えば現生徒会長が卒業し、龍園の思惑通りの男が次代の生徒会長になるとしたら……勝負は分からなくなる。

 

 龍園は蛇のように、耐え忍び、その時を待つことにした。

 

「…………あ?」

 

 思考に集中していたからか、周囲の様子が変わっている事に気づけなかった。

 

 静かだ。

 

 カラオケルームの中であり、先程まで女子たちが歌っていたのにも関わらず、物音一つしない。

 

 その理由は明白だった。

 

「なっ……んだ、こりゃ……」

 

 なぜなら、室内で既に動いている者が、彼しか居なかったからだ。

 

 石崎も、アルベルトも、伊吹も。

 坂柳も、櫛田も、葛城も、鬼頭も。

 

 全員が机に突っ伏すか、胸を抑えて倒れている。

 僅かに覗く横顔が苦しみに満ちたものではなく、むしろ長寿の末に未練なく大往生したかのような安らかなもののため、尚の事困惑する。

 

「……龍園くんは、倒れないんだ」

「……テメェは」

 

 1人、龍園以外にも生きている者が居た。

 

 マイクを手に持ち、何やら嬉しそうに微笑んでいる小さな女子生徒。

 

 天白百合だった。

 

「天白、何しやがった」

「……? 歌ってって言われたから、歌っただけ」

「は?」

「そしたら、皆倒れちゃった。わたしが歌うと、いつもこう」

「…………」

 

 歌うだけで死屍累々の状況を作れるとか大量破壊兵器にも程がある。意味が分からず龍園は沈黙した。

 一応、倒れている者はピクピクと僅かにだが動いており、死んだわけではなさそうだ。安心するが良い。後少しすれば全員何事も無かったかのように動き出す。死の国かなにか?

 

「……音痴なのか」

 

 取り敢えず、龍園はこの得体の知れない存在Xに対し、会話を試みた。

 自分で投げかけて置いてだが、音痴であるとは龍園も思っていない。人が卒倒するようなレベルの音痴であれば、思考に集中していても流石に気づくだろうから。

 

「……音痴では、無いと思う。昔、歌った動画を投稿してみたら結構褒められたし」

「……そうか」

 

 尚、櫛田企画で歌ってみた動画を投稿した所、『なんか聞いてると落ち着く』『kawaiiに浄化された』と瞬く間にミリオン再生を達成し、一時期ネットで話題となっていた事を龍園は知らない。

 

 ここで、龍園は一つ間違いを犯した。

 

 もし自分が天白の歌に耐える事が出来れば、ここで無様に倒れて恍惚の表情を晒しているやつらには勝ったと言えるのではないだろうか。

 クラス対抗戦に関わるものではないが、少なくとも今時点での溜飲は下がるだろうと考えてしまった。

 

「天白、もう一曲歌って見てくれよ」

「……? いいの?」

「ああ。どんなもんか、俺が聞いてやる」

 

 歌うだけで人を卒倒させてしまうのは恐ろしい事この上ないが、あいにくと龍園は恐怖を知らない強靭な精神力の持ち主。

 「じゃあ……」とデンモクを操作し始めた天白を横目に、龍園は「歌なんかに絶対負けない!」と腹に力を込めて歌を聞く体勢に入った。

 

 天白が入れた曲名はよく分からないが、Sweetsと書いてあるからにはゆるふわな曲なのだろう。

 ヘビメタでも歌ったのかと思っていた龍園は肩透かしを食らった。

 

 龍園はもっと考えるべきだった。

 何故、天白が歌うと人が倒れるのか。

 何故、倒れた者は胸を抑えていたり、恍惚とした表情をしているのか。

 

 その事に考えが至らなかった龍園は、後悔することになる。

 

「あい・うえ、おっかしし~た~♪」

 

 その日、龍園は産まれて初めて恐怖という感情を知った。

 Kawaiiに自身が侵されていくという、恐怖を。

 

 フェアリータイプは、あく・ドラゴンに対して4倍弱点なのである。

 

 




おかしいな、真面目な話だったのに……。

・石崎大地
 最近親友が何かしてると思ったらやべー組織に入ってる事を知りちょっと疎外感を感じた。尚、この会の後に無事目をつけられた模様。

・山田アルベルト
 いつの間にか組織の一員になっていた男。5月頃に天白・坂柳ペアが仲良く手をつないでる姿を見てしまい『守護らねば……』と武士道精神を発揮していたところをスカウトされた。かくとうタイプにもフェアリーは効果抜群なのである。
 ボスには悪いと思っていたが、龍園クラスが下った為、表立って活動出来るようになりご満悦。

・伊吹澪
 龍園ざまぁwwwしてたら予想外のところからkawaiiに浄化された。かくとうタイプに(以下略
 マッサージやエステに興味を持ち、予約しようかな……と迷っている。

・龍園翔
 一番の被害者。なんとか勝ち筋見つけられないかなって頑張ったけどダメだった。
 天白は最悪の天敵。

次の日常回何やる問題

  • 堀北、坂柳、椎名のビブリオガールズトーク
  • 堀北(兄)、南雲の漢祭り
  • きよぽんグループ(外村平田)のオタトーク
  • 漢葛城、その苦悩
  • 幼馴染と部屋でイチャイチャするだけ
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