コミュ力おばけと幼馴染(♀)がイチャコラするだけの話 作:百合好きの獣
お陰様でなんと10万UAを越えました! 10万回もアクセスしてもらったんですね……よく通報されなかったなと染み染み
有栖ちゃんの心疾患を直したのは、これをやりたかったからといっても過言ではありません。
さて、体育祭の始まる10月まで、9月中は体育の授業が増えるらしい。また、その間LHRの時間も長く取られ、各クラスで作戦を練ったり練習をしたりと体育祭までの準備期間がある。
昨日、龍園クラスを恐怖のどん底に突き落とした(坂柳達が意識を取り戻した頃にはとてもおとなしくなっていた)ので、これにて一年生のクラス対抗戦は完全終了となった。
この事が教職員にバレてしまえばどんな特別試験が課されるかわからないため、外部から見れば一見して協力しているように見えないようにしなければならないが。難しいが、やりがいはあると坂柳は感じていた。
これまでの特別試験でその優秀な頭脳をいかんなく発揮し、やりたい放題やっていた坂柳ではあるが、残念ながら体育祭ではあまり力になれそうにならない。
運動能力については、学年全体で見てあきらかにドベであるので。
それについては、もう諦めた。頭脳労働で頑張ろうというのが坂柳のスタンスである。とはいえ、ある人物に向けたちょっとした恩返しというか、やりたいことはあるので天白に個人相談を持ちかけているのだが。
Aクラス幹部陣の体育祭での役割は以下のとおりである。
・葛城
全体を纏めるリーダー。また、その逞しい肉体を元に、鬼頭等の運動出来るメンバーを率いて推薦種目等で活躍を期待。
・櫛田
管理職。男子女子問わずに円滑に連携が取れるように調整し、葛城や坂柳への橋渡しをする。また、龍園クラスとの折衝も担当する。
・坂柳
作戦参謀。櫛田から提出された各自の身体能力データを分析し、最適な組み合わせを考える。また、他クラスリーダーと共謀して好き勝手やる。
そして、Aクラス四人目の幹部に『マスコット枠』として置かれていた天白はというと。
「……重心がズレてる。踏み込む時、あと一拍分力を込めるようにしてみて」
「……スタートが若干遅い。合図を聞いてからじゃなく、タイミングを図って飛び出すように」
「……腰の位置が少し高い。もう少し足を開いてみると、力が込めやすくなる」
なんと、ここにきて八面六臂の大活躍をしていた。
最近は人をグズグズに溶かす妖怪としての側面が強かった為忘れられがちだが、天白は元々対人への観察眼が鋭い。
そこに、マッサージや整体の知識も組み合わせ、効率的な動きや改善点を導き出し、具体的なアドバイスを飛ばす。
そうすることで、Aクラスの生徒達は飛躍的に記録を伸ばしていくのだ。
さらに、マッサージの手腕も忘れては行けない。繰り返される練習によって筋肉に蓄積された乳酸は、天白の手によって消滅する。
異世界転生をしたWeb小説の主人公レベルで大活躍をしていたのである。
その結果
「ママぁ~!」
「天白百合は私の母になってくれるかも知れない女性なのだ」
「あぁ……これが包容力……なんて、あたたかいの……」
「……よしよし。ママじゃないけど」
「「「きゃっきゃ!!」」」
一部の生徒が幼児退行した。
「……はい。ふざけてないで、休憩終わった人から練習に戻る」
「「「は~い」」」
流石にそれは冗談であり、仲の良いクラスメイトたちによる心温まる茶番であった。ああ良かった。
「百合ママぁ~、認知して?」
「……はい桔梗ちゃん。ママです、よ♪」
「バブゥ……♡」
一人ガチなやつがいた。でもいつもの事なので皆スルーしている。そろそろ本人達が提唱している『幼馴染であって付き合ってない』説にも無理が生じ始めているが、今更である。
「百合さん、桔梗さん。何をされてるのですか?」
これには坂柳も苦言を呈したいようで、練習中だというのにイチャつき始めた二人の元へ近づいていた。
「あ、有栖ちゃん。えっとね、百合が皆のお母さんみたいだって話になってたの」
「お母様? 百合さんが……?」
「……こんな大きな子を生んだ覚えは、ありません」
天白は否定しているが、それならそろそろあやすように櫛田を撫でているその手を止めるがいい。説得力が皆無なのだ。
「……ふむ」
坂柳は少し考えるように顎に手をあて、そのままぴとりと天白に抱きついた。
「百合お母様……」
貴様。
天白は突然甘えてきた坂柳に少し驚きながらも、慈しむ様な表情で抱き返してあげた。坂柳はうっとりとした表情でそれを受け入れている。
「有栖ちゃんずるい! 百合ママ~私も~!」
妹に母を取られた姉のように、櫛田も天白へと抱きついた。
「……こんなに大きい娘が二人もできちゃった」
「お母様……」
「ママ~……」
尚、この光景を眼にしたAクラスの面々と、偶然遠くから目撃してしまった者の数名が胸を抑えて死ぬといった事件が起きたが、突如現れた謎の組織によって人知れず解決されたようだった。
◇
危うくAクラスが全員幼児退行をするという地獄が顕現するところだったが、なんとか持ち直して体育祭当日。
「紅組っ! 勝つぞぉぉぉぉ!!!」
「「「「うおおおおおおおお!!!」」」」
「白組っ! ふぁい!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
全校生徒による行進、そして紅組代表の3年生による選手宣誓により、体育祭は開幕となった。
「よっしゃぁ! 寛治! 春樹! 俺達の実力、見せてやろうぜ!!」
「ああ! 努力の成果を見せるときだ!!」
「そうだな!! ……そういえば、俺達なんで努力してたんだっけ?」
「ああ? んなもんなんでも良いだろ。俺達が勝ぁーつ!!」
「「応!!!」」
白組の待機場所では何やら熱血が始まっている。三馬鹿は熱血馬鹿へと変貌を遂げていた。これには仕向けた櫛田も苦笑い。扱いやすくなって何よりである。
紅組待機場所で、1年Aクラスは集まり円陣を組みながらそんな彼らの様子を見て苦笑していた。
「あいつらやけに張り切ってんなぁ」
「運動に特化した生徒にとって、ようやく回ってきた活躍の機会だ。気合も入るだろう。……だが、俺達もただで負けてやるわけにはいかない」
集まったAクラスの面々を、葛城はゆっくりと見回す。
Aクラスはどちらかというと学力の高いメンバーが多く構成されている。しかし、学年最優(どこかのマッサージの腕一つで配属された妖怪は除き)と称されるクラスは伊達ではない。
「俺達はあいつらに比べ、たしかに身体能力で劣るだろう。だが、それでも俺達は一年のトップだ。Aクラスとしての誇りを胸に――勝つぞ」
「「「「おおおおっ!!」」」」
まず第一種目として、全員参加の100m走。一年男子から順に走り、最後は三年女子となる。
一年生男子の出走が終了し、続いて一年生女子の番となる。
第二レース、そのレーンでスタートを待っていた坂柳は、過去を思い返していた。
『百合さん、お願いがあります』
『いいよ。何?』
『……体育祭までに、私のトレーニングメニューの負荷を上げたいのです』
『……それは、どうして?』
『百合さんにサポートしていただいたお陰で、私は予定よりも早く、歩行の際に杖を必要としなくなりました。……ですが』
『……』
『走りたいのです。一年生の夏という、一度きりの機会に、私はみなさんと同じ体験をしたい。例え、勝てなくとも、最後まで走りきりたい』
『……分かった』
そうして、坂柳は過酷なトレーニングを始めた。
筋トレからジョギング、時には水泳部の顧問に掛け合ってプールを使わせてもらったり、スポーツジムでマシントレーニングをしたり等、やれるだけの事をやった。
尚、それこそトレーニング中は天白と櫛田がつきっきりであり、なんならこの一ヶ月間坂柳は天白の部屋に泊まり込んでいた。
毎日の勉強は苦にならないとしても、その後の体育祭に向けた練習や対策、それから個人トレーニングとなり疲労は蓄積していったが、おはようからおやすみまで天白に世話をしてもらったお陰で過負荷で故障するという事も無かった。
むしろ、クタクタに疲れた身体をマッサージで癒やされ、寝る時は天白と櫛田に抱かれながら同じベッドで寝ていた為、わりと幸福に過ごしていた。役得……ってコト!?
一つのベッドに、しかもシングルベッドなので三人で寝るのは狭いかと思いきや、ある理由のためそんなことはなかった。
その理由? ……それ以上踏み込めば死ぬことになる。やめておけ。
そのトレーニングの成果は、今。この時のために。
紅組の待機場所では天白と櫛田、そしてAクラスの面々が固唾を呑んで見守り、教員席では坂柳理事長が「有栖が出走するだと……!?」と席を蹴飛ばして立ち上がり驚いていた。
「よし、頑張ろうね。坂柳さん」
Aクラスから同じくこのレースに出走する女子生徒が、坂柳へと声をかけた。
「ええ。スタートしたら、私の事は気にしないで構いません」
「分かったわ」
会話を切り、坂柳は眼を閉じて深呼吸をする。
『位置について――』
やれることはやった。
事前に一度試してみたところ、無事に走り切る事が出来た。
あとは、それが本番という違う環境でも発揮できるかどうか。
(ああ、これが本番前の緊張なのですね)
坂柳はテスト等の所謂本番前に緊張するということは無かった。やれば出来るという圧倒的な自信があったからだ。
それがどうだ。こうして事身体能力を問われる体育祭では、こんなにも心臓がうるさく跳ね回っている。
だが。
(――この感覚、悪くありません)
坂柳は笑った。
『――よーい……ドン!』
よーい、から三拍置いてからのスタート。訓練でもしているのか、タイミングは一年男子からこれまでの全てのレースで同じだった。
まずは好スタート。
一瞬だけではあるが、坂柳は先頭の景色を見ることが出来た。
しかし流石に身体能力の差は覆せず、あっという間に抜き去られ、最後尾へと落ちた。
これでいい。元より自分は得点源にはなり得ない。
最後まで走り切ることだけを考える。
呼吸は一定に、腕を振り、足を上げる。
これまでなんども繰り返し身体に覚えさせた通りのフォームで、坂柳はただ前を見据えて走り続ける。
他の選手の背中が遠い。それどころかぐんぐん離されていく。しかし、坂柳は冷静に、自分のペースを崩さずに足を動かした。
50m程を走り終え、白組の待機場所を越えて紅組の姿が見えてきた。
わっと飛び込んでくる、大勢の生徒が声を張り上げる姿。耳に届くのは、最愛の親友達の声だ。
「……有栖ちゃん!! 頑張って……!」
「有栖ちゃぁあああん!! 頑張れぇえええええ!!」
天白と櫛田が大きな声で声援を送ってくれている。
その声援だけで、坂柳はどこまでも走れるような気がした。
「はっ……! はっ……っ! はっ……!」
そしてついに、坂柳はやり遂げた。
順位はダントツのビリ。
タイムも22.91と小学校低学年レベルの有様。
それでも、坂柳は晴れやかな表情だった。
紅組の待機場所へと戻ると、案の定櫛田と天白に抱きつかれ、1年Aクラスの面々にも囲まれてもみくちゃにされた。
「有栖ぢゃんっ! 頑張っだねえ“……!」
「……すごい、かっこよかった! 頑張った、ね……!」
案の定最下位だったにも関わらず、温かく迎えてくれたクラスメイトに坂柳は感動のあまり、ほろりと涙を流し、破顔した。
周りを見てみれば、同じく出走した他クラスの女子だけでなく、紅組――いや、白組からも健闘を称える拍手を坂柳に送っていた。
坂柳が足にハンデを抱えていて、それを克服する為に努力をしていたのは度々目撃されていたので。
「Mr.0……良い光景ですね……」
「あぁ……『尊い』な……」
紅組待機場所の後方、上級生の列では謎の組織のトップ達も感涙しながら拍手を送っている。
ところで。
感動的な場面の最中ではあるが、ここで職員席を見てみよう。
「……………………!!!!!!!」
坂柳理事長が滂沱と涙を流しながら、顔を真っ赤にして手で口を覆って嗚咽を零していた。
それは恋する乙女の表情なんよ。
「坂柳理事長! ……理事長?」
「感動的ではあったけど、流石に競技がストップするのはな……! おい、坂柳理事長はどうなった!?」
「ダメだ! 坂柳理事長が泣きながら固まってる!!」
「何だって!? ……なんだって??」
職員席は最高権力者が行動不能になってしまったため阿鼻叫喚の騒ぎとなっていた。外野がうるさすぎる。
第一種目からてんやわんやだが、体育祭は、まだ始まったばかりである。
そう、坂柳理事長を乙女感動(造語)させたかったのです……!!
次回も一応体育祭の予定ですが、ポンポンカットしてテンポよくやるつもりです。
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