コミュ力おばけと幼馴染(♀)がイチャコラするだけの話   作:百合好きの獣

25 / 36
遅くなって申し訳ありません!!

体育祭の他の競技をどうするか悩みまくった結果、とりあえず書きたかったやつだけダイジェストにしました。お許しを……。


アダルトストーリーズ②

 

 

 

 体育祭は無事に終わった。

 

 理事長が乙女感動してフリーズする事件があった為あれを無事と言うには些か無理があるかもしれないが、生徒からしてみれば別に問題はない。

 現Dクラス――龍園クラスが事前にkawaiiの波動によって心がぽっきりされてしまった為大人しくなった事で、一年生は特に波乱も無く体育祭を楽しむ事が出来ただろう。

 

 そんなわけで全体としては紅組勝利、学年ごとの総得点数でいうと上からD、C、B、Aの順となる。

 これによりDクラスが50ポイントを稼ぎ、逆にBクラスが150、CクラスとAクラスが100のクラスポイントを減らすこととなったが、夏休み中の二つの試験で大きくCPを稼いでいた為クラスの変動は発生しなかった。

 

 まあ、全て一年生連合の想定通りではあるのだが。

 

 こうして体育祭は終わったものの、流石に全カットは忍びない。なので、少しだけ体育祭での天白達の様子をお見せしよう。

 

・二人三脚

 

「頑張ろうね、百合!」

「……ん。勝つぞー」

 

 二人三脚は走る速さの他に、何よりもパートナーと息を合わせる事が肝要となる。

 それでいくと、Aクラスで一番仲が良いとされる櫛田と天白がペアを組むのは当然のことではある。

 今回二人に託されたオーダーは、出来れば1位、少なくとも3位までの上位入賞。そのため天白と櫛田はやる気に満ち溢れている。

 

 そのオーダーを下した坂柳は自陣の最前列で余裕の笑みを浮かべていた。

 

「……おい坂柳。あいつらは大丈夫なんだろうな」

 

 その隣に同じ紅組の別クラス代表として腰掛けている龍園は懐疑的な視線を坂柳に送った。

 これまでの競技では1年生についてはおおよそ想定通りに事が運んでいたが、旧Dクラス――堀北の所属するクラスの3馬鹿がえらく張り切ってしまい、当初想定しているよりもAクラスの得点が沈み過ぎてしまったのだ。

 その調整として坂柳は天白と櫛田の二人にそう指示したのだが、果たしてそう上手くいくのかという疑問が龍園にはあった。龍園の記憶では、天白と櫛田のレースにはそこそこ足の早い女子が固まっていたはずなので。

 

 それを受けた坂柳は涼しい顔で返す。

 

「ええ、当然です」

「テメェがそこまで言う根拠はなんなんだよ。あいつらはそこまで運動が得意な様には見えねぇぞ」

「ふふ、見ていればわかりますよ」

 

 どこまでも余裕の表情を崩さない坂柳に、なにか策があるのだろうと納得した龍園は視線を競技コースへと戻す。

 同時に、パンッと乾いた銃声が響いた。スタートの合図だ、

 

 好スタートを切り、先頭へ踊り出たのはDクラス所属のペアだった。天白と櫛田はそこから更に二組程後ろに居る。

 

「おい、いきなり出遅れてるぞ」

「そうですね、ですが、問題ありません」

「あ? どういうことだ?」

 

 龍園が疑問を返すが、坂柳は「まあ見ていてください」と取り合わない。仕方なく視線をレースへと戻すと、そこでは変化が訪れていた。

 

「はぅっ……!」

「くぅ……!」

 

 なんと、天白達の前方を走るペア達が尽く胸を抑え、速度を落としていた。

 それを天白達は悠々と「いち、にっ。いち、にっ」と掛け声を上げながら抜き去っていった。

 

「どういう……ことだ?」

「ふふ、簡単な話ですよ。元々百合さん達が上位入賞出来るように、このレースには仕組みがありましたから」

「なっ……」

 

 まさか『盛った』のか!? と龍園は驚愕に目を見開いた。

 坂柳はくすくすと笑みを零しながら、その仕組みの全貌を語る。

 

「このレースに参加する生徒たちには、ある共通点がありました」

「共通点だと……?」

「ええ。彼女達は一年女子の中でも――リリィ・ナイトに所属しているのです」

「八百長じゃねえか」

 

 すわ不正か!とダーティな手法を好む龍園はほんの少し楽しそうな表情を浮かべたが、明かされた答えが「いつもの」やつだったので龍園はスン、と表情を無に返した。天白が絡む事象においてシリアスな雰囲気は影すらも見えないのだ。

 龍園の八百長発言に、坂柳は心外ですとばかりに鼻を鳴らした。

 

「八百長ではありません。私はあの方たちが出場するレースに百合さん達をぶつけただけであって、他には何も指示はしていませんから」

「じゃあなんであいつらは分かりやすく失速してんだ」

「百合さん達の可愛さにやられたのでしょう」

 

 でたよ……と龍園は頭を抱えたくなった。

 龍園は自らを悪だと自認しているため、その正反対に位置している『可愛い』という概念についてはとんと疎い。体育祭の準備期間で浄化されかけた事で恐怖を抱いているが、それはもう彼の中ではオカルトにあたる。

 

「んなコトで……」

「おや? 偏見はよくありませんよ。百合さんと桔梗さんの合わさったkawaiiに胸を打たれない人間は居ないのですから」

「偏見じゃねえか」

 

 これからもこいつらと関わる事になるのか……と、龍園は椎名あたりにクラス代表を引き継いで隠居しようかなと本気で考え始めた。

 尚、その提案はこれまで散々煮え湯を飲まされてきた椎名が『その方が面白そう』という理由で却下される事になる。頑張れ龍園、負けるな龍園。進む先はキミの大嫌いな光しかない。

 

 その後、競技参加者だけでなく観戦者たちからも死者を出しながら天白・櫛田ペアは無事に一位でゴールした。

 

 

 

・借り物競争

 

「……桔梗ちゃんがんばれー」

 

 競技は粛々と進み、推薦種目である借り物競争の順となった。

 お題に沿った物を(または人物を)借りてくるという性質上、純粋な走力よりもスムーズな協力が求められる為、Aクラスからはコミュ力の化身こと櫛田や、男子から橋本、葛城といった交友関係の広い人物が選出されていた。

 

 第一走は櫛田の番ということで、天白は自陣の最前線に陣取って精一杯声援を上げている。その両隣に居たAクラス女子が鼻を抑えながら悶えているが、死体になっていないだけでも成長が窺える。その成長は社会で役に立つ事があるのだろうかという疑問はさておき。

 

 櫛田は難なくお題ボックスまでたどり着き、一枚紙を取り出して中を検めると、即座に天白の元へと駆け寄ってきた。

 

「百合、来て!」

「……おーらい」

 

 そのまま櫛田に手を引かれ、ゴール。

 わざわざ戻って天白を連れてきた為、3着となる。

 ゴールにスタンバイしていた職員へとお題の紙を渡し、どれどれと中を確認されるとそこに書かれていたのは。

 

「……『好きな人』か。対象は彼女でいいんだね?」

「はい! 世界で一番好きです!!」

 

 不正防止の為、職員が確認すると返ってきたのは熱烈な告白だった。

 天白と櫛田の関係をよく知らない職員は二人が同性という事もあり『よっぽど仲が良いんだな』とほんわかとした気分になった。

 尚、言うまでも無いがガチである。

 

 突然だが、この『借り物競争』に使用されるお題は、例年職員が考案している。

 担当は持ち回りで、今年は一年生の担任四名が任命されていた。

 

 そう。

 茶柱(おもしれー事好き)、星之宮(ゆるふわ)が作成したのである。

 真嶋と坂上の男性陣だけが真面目に考えていて、実に二分の一の確率で「失礼ですが合コン会場と勘違いされてらっしゃる?」というハズレを掴まされる事になるのだ。

 

 その結果。

 

「百合、着いてきてくれるかしら?」

「……? おっけー」

 

 堀北のお題:もし誰かに従うのなら?

 回答:天白

 

「百合ちゃん、ごめん!」

「……? おー」

 

 一之瀬のお題:一番可愛いと思うモノ

 回答:天白

 

「神、お連れする不敬をお許しください」

「……よかろう」

 

 白波のお題:尊敬する人

 回答:天白

 

「天白、すまないがついてk――すまん、なんでもない」

「…………??」

 

 綾小路のお題:自分よりも背の低い異性

 回答:多数から睨まれ撤退した為失敗

 

 上から順に、茶柱、星之宮、真嶋、坂上作である。

 星之宮のお題は一見大人しめに見えるが、櫛田の引いた「好きな人」はやつが作成しているのでアウトなのである。

 やたら天白が連行されていったのは単なる偶然ではあるが、流石に何度も何度も走り続けていてその後の競技は少しへにょへにょになってしまい、紅組――主に一年Aクラスに死の大地を広げていた。

 

 とまあ、体育祭はこのような形で幕を閉じたわけである。死人が何人か出たが、その後すぐに復活していたので『無事』終了したということだ。

 

 さて。

 体育祭が終わり、秋も半ばで肌寒さを実感し始める10月も後半に差し掛かった。

 次回の特別試験、または2学期の中間試験までの束の間の休息時間に、天白と坂柳は揃って職員室へと呼び出されていた。

 

「私と百合さんだけが呼び出されるとは、何の用件でしょうか」

「……マッサージ店の事、とか?」

「ありえますが……それであれば、桔梗さんも呼び出されているはずですし……」

 

 ここ最近めっきり杖を使わず、代わりに天白か櫛田と手を繋いで歩く事に慣れた坂柳は空いた手を顎に当ててふむ、と考えるが、呼び出された理由は思い当たらない。

 最終的に「行けば分かるか」と思考を放棄して職員室へと向かえば、真嶋は少し困ったような表情で二人をある場所へと案内し始めた。

 

 その場所は、坂柳にとっては馴染みのある、天白にとっては初めて訪れる場所――理事長室だった。

 

 いよいよなぜ呼び出されたのかが分からず(坂柳だけならまだしも、天白も共にとなると途端に理由が不明である)首を傾げる坂柳をよそに、真嶋は数度ノックをして中から入室を促されると、二人を部屋の中へと通した。

 

 そこに待っていたのは、部屋の主である理事長――坂柳の父と

 

「よう、百合。久しぶりだな」

「……お父……さん?」

 

 二人が予想だにもしない人物だった。

 

 

 

 

 

 

 天白竜太郎。

 少しでも医学に関わる者であれば、その名を知らない者は居ないほどの超有名な天才外科医。

 これまで数々の高難易度手術を成功させており、彼の影響で医療は――とりわけ、心臓手術関連の技法は数年分も発展したと言われる現代のブラックジャックとの呼び声が高い。

 彼は天白百合の実父であり……坂柳有栖の恩人である。

 

 天白と出会えた事で卒業後にようやく会えると思えば、不意打ちの様に再会してしまい少しの間フリーズをした坂柳であったが、正気に戻ったと同時、長年胸に抱えていた感謝の気持ちを涙ながらに伝えると、竜太郎は「おう、元気でやってんなら良かったぜ」と優しく微笑み、坂柳の頭を撫でようとして「僕の有栖に気安く触れるな」と理事長に払いのけられていた。台無しだよ。

 

「ごほん。有栖、それに天白さん。わざわざ来てもらって悪かったね。大体察しているだろうけれど、君たちを呼んだのは彼に会わせるためだ」

 

 気を取り直したように理事長がわざとらしく咳払いし、二人を呼んだ理由を告げる。

 

「……なんで来た?」

 

 天白が首を傾げながら如何なる理由があってこの学校まで来たのかと問う。

 高度育成高等学校は全寮制であり、在学期間中は外部との連絡が原則として一切取れなくなる程閉鎖的な高校である。

 それは内から外だけでなく、外から内も同様である。

 外部から高度育成高等学校へと入るには、それはそれは大変な手続きを踏まなければならない。しかも、そもそもが入るためには相応の資格が必要となるのだからその難易度は計り知れない。

 竜太郎がここに来れたのは

 ①自身が世界的に有名な人物であること

 ②理事長に対して個人的に交友関係を結び、恩があること

 という謂わば権力のゴリ押しである。

 

「なんでって、そりゃお前――」

 

 そうまでして竜太郎がこの学校へ訪れた理由。それは。

 

「百合ちゃんに会う為に決まってんだろ!!」

 

 愛娘に会うためだった。

 

 この男、実の娘に三年間も会えない事を最初は我慢していたが、半年と少しで音を上げたのである。

 

「……それだけ?」

「それだけって酷いなぁ! おれぁ百合ちゃんに会うためだけに後輩をビシバシ鍛えて、ようやく時間作れたっていうのによ」

 

 しかもこいつは娘に会いに行く時間を作りたいからという理由で後輩にスパルタ教育を施し、任せられると確信したら仕事をぶん投げて来たのである。

 まあ、いくら埒外の天才とはいえ、彼の後を継ぐ者が居ないのは非常にまずいので後進育成という意味では良い機会だったのだが。

 

「……そう」

「おい坂柳ぃ! ウチの娘が冷たいんだけど!! 昔は家に帰ればすぐに『パパ~♡』なんて言って抱きついて来たってのに……!」

「……いつの話をしている……!」

 

 天白百合が3歳の時の話である。父親とはいつまでも過去を引き摺る物なのだ。

 

 坂柳は恩人のあんまりな姿を見て再びフリーズしており、理事長は同じ親として共感する部分があるのか腕を組みながら「うむ」と頷いていた。こいつも大概であった。

 

「……有栖ちゃん、ごめんね。お父さんがこんなので」

「あ、ええと……その……」

「おいおい百合ちゃん。パパに向かってこんなのって酷いじゃねえの。また地獄を見る事になるぜ?」

「……それだけはやめて」

 

 地獄とは、天白が高度育成高等学校への進学を決めた時に発生したいい歳したおっさんが披露した『駄々こね大車輪』の事である。

 

 それから一時間程度会話をした後に天白と坂柳は退室をすることになった。一学生をあまり理事長室に拘束するわけにはいかないので。

 席を立ち、帰ろうとした天白達に竜太郎は最後にこう言った。

 

「百合ちゃん、それと有栖ちゃん。仲間は大切にしろよ? 人は一人で出来ることは限られてる。信頼出来る仲間が揃って、初めてデケェ事ができるってもんだ」

 

 竜太郎が執刀した手術は全てが成功をおさめているが、それは彼一人によってもたらされた結果ではない。

 執刀医、麻酔科医、助手、病理医、そして内科医と、チームで成し遂げてきた功績だ。

 それだけに、仲間の大切さを事あるごとに天白へと伝えていた。

 

「ここは閉鎖的な学校だ。親も居ねえし教師からの手助けも期待できねえ。だからこそ、困ったら仲間を頼れ。頼れる仲間を作れ。……ま、百合ちゃんには桔梗ちゃんも居るし、見たところ有栖ちゃんも居るから心配はしてねえが」

「……ん。桔梗ちゃんも、有栖ちゃんもわたしの大切な人。他にも、友達はいっぱいいる。だから、大丈夫」

「そっか……頑張れよ」

「……うん。またね、パパ」

「やっぱり離れるの嫌だあああ! パパも一緒にいるうううう!」

 

 迂闊にパパと呼んでしまった為、再び地獄が顕現した。台無しだよ。

 

 

 

 

 

 

「落ち着きました? 天白先生」

「ああ、わりいな。ちょっと取り乱しちまった」

 

 天白と坂柳が退室した後、大人たち二人は密談を再開していた。

 ちょっとどころではない醜態を晒していたが、理事長はもし自分が愛娘に『パパ』と呼ばれていた場合冷静さを欠くことになるのは想像に容易い為流すことにした。

 

「じゃ、こっからは大人の話だ。……前に頼まれてた件については、こっちもコネ使ってなんとか抑えれそうだ」

「助かります。今彼らに手を出されると、折角良い方向へと進みかけている現状に良くない影響が出るでしょうから」

 

 竜太郎がこの学校へと訪問したのは8割位が愛娘に会いたいからというものであったが、それ以外にも理由はあった。

 その一つが、ある機関に対して牽制を入れて動けなくするというもの。

 世界中を飛び回り、様々な分野の重鎮と繋がりのある竜太郎へと、理事長が独自に相談をしたのである。

 

「んで、約束のブツはあるんだろうな」

「ええ、もちろん。……ご覧になりますか?」

 

 取引成立、と大人二人は怪しい笑みを浮かべ――

 

「お前ふざけんな! なんで百合ちゃんが全然映ってねえんだ!」

「僕の有栖が一番可愛いから一番撮影するに決まってるでしょうが!」

「百合ちゃんが一番だ!!」

「有栖です!!」

「やんのかテメェ!!!」

「やってやろうじゃないですか!!!」

 

 大の大人が二人、体育祭の時の映像を流しながら取っ組み合いの喧嘩になり、騒ぎを聞きつけた職員が止めるまで二人で娘自慢をしながら殴り合うという地獄が繰り広げられていた。

 

 

 




月城代理参戦フラグをへし折る所業。

最近マッサージしてないので次かその次あたりでなんかやりたいところ。

※2/21追記
プチスランプ(ネタ切れ)と激務で中々次の話が書けてません。
隙を見て書いてまして、2月中には次の話を投稿できれば……

次の日常回何やる問題

  • 堀北、坂柳、椎名のビブリオガールズトーク
  • 堀北(兄)、南雲の漢祭り
  • きよぽんグループ(外村平田)のオタトーク
  • 漢葛城、その苦悩
  • 幼馴染と部屋でイチャイチャするだけ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。