コミュ力おばけと幼馴染(♀)がイチャコラするだけの話   作:百合好きの獣

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Q.軽井沢いじめ回避したん?
A.しました。

Q.じゃあなんで入学してきた……?
A.えー、それについては担当部署に調査を命じておりまして、現時点での回答は控えさせて頂きます(何も考えてませんでした)

いつも感想・評価・誤字報告ありがとうございます。

今更ですが、本作はますますマンガで分かるFGOや、ぐらぶるっ!みたいなものだと思って下さい。


やつ『ら』に歌を歌わせるな

 

 

 

「それじゃあ、体育祭お疲れ様でしたっ! かんぱ~~い!」

「「「「「かんぱーい!!」」」」」

 

 いつぞやの定期テスト後にAクラスが打ち上げで使用したカラオケパーティールム。

 そこに10名以上の――しかも、AからDまでの全てのクラスから――生徒が集まっていた。

 Aクラスからは天白、櫛田、坂柳、葛城、鬼頭の5人

 Bクラスからは一ノ瀬、白波、神崎の3人

 Cクラスからは堀北、綾小路、外村、平田、佐倉、軽井沢の6人

 Dクラスからは龍園、伊吹、アルベルトの3人が集まっている。

 

 錚々たるメンバーだった。1年生の各クラスから、代表(一部おまけ)が一同に会している。

 発端は天白が軽井沢とデュエットするためにカラオケに行こうとしたからなのだが、いつの間にか規模が膨らみ、いい機会だからと先の体育祭の打ち上げと化していた。

 

 何故こうなったのか。順を追って説明しよう。

 

 まず天白が櫛田と坂柳、そして堀北に例のラブレター?事件の顛末を聞かせたところ、全員が同行したいと言い出した。

 それを軽井沢が快諾したところで流れが変わった。

 堀北がどうせなら佐倉を誘いたいと申し出、それならと櫛田も一ノ瀬を誘う。

 そうすると3クラスが集まる事となり、体育祭から全クラスで同盟を結んだ為Dクラスを誘うべきだと坂柳が進言し、龍園を誘――ったところで来ない事は明白なため、最近龍園に対しての発言力を増した伊吹、アルベルト経由でDクラスを招待。

 

 こうなってくるともう各クラスの代表も連れてくるべきだろうと、Aから葛城、Cから平田の男性2名を数に入れ、葛城・平田の強い要望によって更に男子を増やした。

 

 その結果がこの大集会である。

 

 カラオケということで葛城・龍園は最後まで抵抗していたが、葛城はそもそもAクラス女子3名に勝てるわけがないので早々に諦め、龍園は伊吹が煽りアルベルトが『Please……Boss……』と捨てられた子犬のような懇願に渋々折れた。両名とも、今日は死を免れないと悟り覚悟を決めた表情をしている。

 

「やー、それにしても軽井沢さんが百合の動画を知ってたなんてね~」

「一時期かなり噂になっていたけれど、それ自体はすぐに鎮火していたし私も忘れてたわ」

「え、あ、うん……ここに進学してからも曲は聞いてたけど、あたしの部屋でしか聞いてないし……あ、でも麻耶とか良く喋る友達には話した事あったかな? 向こうは知らなかったけど……」

「へぇ~……鈴音、知ってた?」

「……………何よ、もう」

 

 

 本日の主賓――というより、本来の目的であった軽井沢は早速天白厄介オタク共に絡まれている。さもありなん。

 当初は尊敬する歌い手である天白と同郷であった櫛田、堀北の二人に対しても軽井沢は敬語を使っていたのだが、丁寧な言葉遣いが染み付いている坂柳と違って、ガチの尊敬からくる敬語だった為、早々に二人から敬語禁止令が発令され砕けた口調となっている。

 

 そしてもうひとりの主賓、死を誘う歌声の天白は、覚悟はあるがまだ死にたくない葛城によって一ノ瀬と坂柳に挟まれており、餌付けをされたり髪を弄られたりとまだ歌う様子を見せていない。

 そのことに龍園は深い感謝を覚え、葛城もまた龍園に対しシンパシーのような何かを感じ取っていた。過酷な試練を前に、人はかつての敵であっても団結をすることが出来るのだ。奇妙な連帯感に、お互いに目礼を交わした。

 

 Dクラスの伊吹が筋トレを主としたアニメの主題歌を熱唱し、kawaiiから日本の文化を学んだアルベルトが歌詞の節々に現れるポージングを実際に取り、それに触発されたAクラスの筋肉二人が対抗してポージングしだすなど一部が妙な盛り上がりを見せている。

 

 一方、Cクラスで固まっていた男子三名はというと

 

「ふぇぇ……ここどこでござるかぁ……なんで拙者連れて来られたでござるかぁ……?」

「ここはカラオケだし理由は誘った時に説明したぞ?」

「いや、そうでは無く――」

「んぶっふ……っ」

「ん……?」

「おや、平田氏……?」

 

 お馴染みのやり取りとなり始めてきた、外村がアニメ由来の小ボケをかまし、元ネタを知らない綾小路がスルーする……その一連の流れに、平田が飲み物を吹き出した。

 

「もしかして……ご存知なのですか!?」

「ヤック・デカルチャ――じゃなかった。えっと、うん。最近、ちょっと気分転換に昔放送してたアニメを見るようになってさ。この間見たやつだったから、つい」

 

 平田洋介という少年は、甘いイケメンフェイスに運動神経も良く、また成績優秀と絵に描いたような完璧超人。故に、女子人気は高く、その嫉妬から男子の評判はよろしくない。

 まさかそんな平田がアニメを観ていたとは。綾小路は意外そうに目を見開いている。

 

「実は、クラスでこういう話を出来る人が居なくてさ。外村君や綾小路君だったらもしかしたらとは思ってたんだ。良かったら、今度からお昼一緒に行かない?」

「オレは別に構わないぞ。ただ、ハカセと違って最近観始めたばかりだが」

「拙者も歓迎ですぞ! いやぁ、かの有名な平田氏と交友を結べるとは光栄ですな。あ、拙者の事はぜひハカセと」

「うん、よろしくねハカセ。あと清隆君も。僕の事も洋介って呼んでほしい」

「おぉ……。よろしく、洋介」

 

 初めて名前で呼び合う関係となった友人が増えた事に、綾小路は密かに感動をしていた。

 

 Cクラス男子が友情を築いている間も、歌う人間は入れ替わり立ち代わりしていった。

 鬼頭が得意のバリトンボイスで喝采を浴びれば、平田がアニメを観ない層にも分かる曲を歌い外村のテンションが上がり、綾小路が無難に歌い、堀北が佐倉とデュエットして佐倉の意外と通るきれいな声に一ノ瀬が声援を送り、白波がガチの賛美歌を歌い上げ異様な空気となるが、続く軽井沢がかなり上手くて空気を取り戻すなど、カラオケ会はほどほどに盛り上がりを見せていた。

 そんな中で、一人つまらなそうにポテトを摘んでいる人間が一人いた。

 

 Dクラスの王、龍園である。

 

「あら? 龍園くんは歌わないのですか?」

「……あ?」

 

 丁度、密かに練習をしていたポップソングを歌い終えた坂柳が一人黄昏れていた龍園へと声をかけた。

 龍園としては正直トラウマもののカラオケルームに、その元凶と一緒に居るというシチュエーションにいますぐおうちかえりたい思いで一杯だったが、これが一年生連合の打ち上げという名目である事と、また腹心の部下(尚実際はスパイも真っ青の敵組織古参)であるアルベルトに懇願されてしまった事から、一応の義理を果たす為にこの場にとどまっている。敵前逃亡をしてしまえば今度こそ完膚なきまでにkawaiiに屈してしまうからというのも大いにあるが。

 

 なので龍園は参加はしているものの歌う気等サラサラ無い。

 

「ハッ、もともと義理で参加してやってんだ。そんなツモりは欠片もねえよ」

「……そうですか。もしかして、自信が無いのですか?」

 

 龍園が鼻で笑い飛ばすと、坂柳はクスクスと笑みを――あざ笑うかのように、言葉を返した。

 

「いえ、私も初めて知ったのですが、最近のカラオケは自分の歌の点数が出るだけでなく音程の正誤まで分かるようになっているのですね。練習をした歌だったのですが、86点しか取れませんでした」

「……何が言いてぇ」

「いえいえ、まさか龍園くんが、自分の歌がどれだけの点数を取れるのか知られることが怖いのでは……なんて、まさかそんな事無いですよね?」

「ハッ……! 下手な挑発だな。俺は今日歌わねえって信念持ってやってんだ。さっさとどっか行け」

「…………」

「…………」

「………………ふっ」

「やってやろうじゃねえかこの野郎ッ!!!」

 

 哀れ龍園。彼は坂柳に『叩けば良く鳴るおもちゃ』認定を受けてしまった。

 その後龍園は挑発に乗ってしまい(外村から『乗るな龍園殿!』と煽られ更にヒートアップ)、デンモクを操作し曲を予約。

 このクソ生意気な女に勝つためには、自分が得意な歌で無くてはならない。幸いな事に龍園はカラオケの経験があった為、歌える曲の中から上手く歌える物を絞り、かつこの場に居るメンバーの中で少なくとも半数は知っている曲が望ましい。

 誰も知らない曲を熱唱した結果、歌が上手くとも空気が凍るのは先の賛美歌で学んだので。そんな中での勝利は龍園が望むものではない。

 

 得点であの女を上回り、かつ会場の視線を釘付けにする。

 龍園が選んだのは、日本が誇る4人組ロックバンドの有名な曲。

 特徴的なギターのブラッシングから始まる前奏に、龍園の想定通り何名かがピクリと反応した。

 

(俺が、勝つ――!!)

 

 そして龍園はやり遂げた。

 音程は完璧に合わせ、会場も盛り上げた。

 手応えはあった。龍園は平気な顔をして拍手を送っている坂柳にドヤ顔を向けた。

 

 表示された獲得点数は――85点。

 

 龍園は膝を折って悔しがった。伊吹は腹を抱えて笑った。

 

 

 

 

 

 

 それぞれが自由に楽しみ、龍園も負けん気を発揮して坂柳に対抗するためリレーに加わり、3巡目に差し掛かろうとしていたところ。

 

 ヤツが動いた。

 

「あ、わたしだ――」

「総員ッ!!! 対ショック体勢ッ!!!!」

 

 葛城の号令に、それぞれが動きを見せた。

 女性陣はおおっ、と期待の表情を。

 男性陣の中でも意味がわかっていない綾小路と平田は首を傾げ。

 アルベルトと外村は『死を目前に覚悟しながらも受け入れるような穏やかな微笑み』を見せ。

 鬼頭と葛城は丹田に力を込めてkawaiiアナフィラキシーショックを受けないよう守りの姿勢を固め。

 最もトラウマとなっている龍園は素早くダンゴムシの様に丸くなると、両手で耳を抑え目を閉じて口を開いていた。それは爆発物への対応なんよ。普通に失礼だったので伊吹に蹴り起こされていた。

 

 そんな面々を天白は華麗にスルーして、軽井沢にマイクを一本手渡した。

 

「……恵ちゃん。これ」

「え? あ、うん!」

 

 ちょっと当初予想していた形とは違ったものの、憧れの人物とデュエット出来ると分かり表情を輝かせた軽井沢は慌てて立ち上がりモニター前のミニステージへと駆け寄った。

 ちょっと様子が違うぞ、とにわかに疑問が広がり始めた瞬間、曲が始まる。

 

「「ヒトリゴトだよ」」「恥ずかしいこと聞かないでよね♪」

 

 デュエット曲は事前にチャットで打ち合わせをしていたため、完璧に歌い出しを揃えられる。

 ぴくりと櫛田が反応した。

 

「「キミノコトだよ」」「でもその先は言わないけどね~♪」

 

 流れる軽快なミュージックに、揃って口を開け惚ける一同。

 

 天白の歌が脳を破壊するプロセスは、次の工程からなる。

 

①天白がふわふわな曲をふわふわする声で歌う

②無防備になった脳にkawaiiが直接ブチ込まれる

③kawaiiの過剰摂取により脳が溶ける

 

 恐ろしいのは、天白が自身の声質がいわゆるかわいい声であると自認し、普段の喋り方同様、それをより引き立てる為の歌い方をしていることだ。

 歌うことで脳をトロトロにするという、無自覚の殺意を持って歌うのは、櫛田や掘北、そして中学の頃の級友達がこぞって喜び絶賛したがために歪んだ認識のためであり、天白はその気になれば聞いた者の脳を溶かさずに歌うことが出来る。最初からやれ。

 

 そして天白はもともと、奉仕を――言い換えれば、他者を補助する事に関しては並々ならぬ手腕を持つ。それは、歌に関しても同様であった。

 

「伝えたい気持ちは今日も~」

 

 軽井沢がハイトーンで朗々と歌い

 

「言葉になる直前にっ」

 

 天白が軽井沢の声を引き立てるように歌声を調整し

 

「変換ミスの連続で~」

 

 それに応えるように、更に軽井沢がのびのびと歌ってみせ

 

「「ため息と一緒にのみこんだら~♪」」「ほろ苦い……♪」

 

 二人の声が、調和した。

 

「「ふとしたときに 探しているよ

 君の笑顔を 探しているよ

 無意識の中 その理由は まだ言えないけど」」

 

 マリアージュという言葉がある。

 元はフランス語で『結婚する』という意味であるが、これはしばしば『2つの別の物が、1つの存在のように調和する』という状態を指して使われる。

 軽井沢の良く通る歌声に、天白がそっと寄り添うような歌声が完全に混ざり、1つとなった。

 

「「言えないその言葉 言えないこの気持ち Ah

早く気づいてほしいのに~~♪」」

 

 ユニゾンを終え、1つとなっていた二人は元に戻った。

 軽井沢は自分の歌声が天白の歌声と溶けて混ざり高まっていくという未知の感覚に、たった一曲歌っただけであるのに走った後のように息が乱れ、疲弊していた。

 一方で天白も、軽井沢の歌が予想以上に上手く、ぐんぐんと引き上げられるように高くなっていくので、それについていこうと体力を使い、額に汗をじんわりと浮かべている。

 

「……恵ちゃん、すごい」

「いや、そんな……百合さ――ちゃんこそ、まるであたしの歌がどんどん上手くなっていくみたいな、なんだろうこれ……凄かった……」

 

 表示された点数は、94点。激辛審査で有名な採点システムであるため、今日の回での最高得点が89点だったので記録更新である。

 

 そして聴衆共はというと

 

「「「「「……………」」」」」

 

 全員が放心していた。

 心ここにあらず。魂の抜け殻が15もある。

 平田や女性陣ら感受性の高いメンバーは涙を流してすらいる。

 

 いち早く正気を取り戻したのは、防御の姿勢を取っていた為比較的ダメージが軽傷だった葛城だった。

 

「……お、驚いた。天白が歌うというから覚悟はしていたが……二人で歌うとこうも凄いことになるとは……。いや、いい意味でなんだが……」

 

 頭を振りながら葛城が言うと、それを皮切りに他のメンバーも魂を回収出来たようで盛大な拍手が巻き起こった。

 

「すごい……すごいです二人共!!」

「ほぇ~……まだふわふわする……」

「なんというか……凄いな、軽井沢さんも天白さんも」

「拙者……涙で前が見えぬ……」

「胸の中で何かが動いた……これが、心ってやつか……?」

 

 一人だけ人間になりたいAIみたいな事を言い出しているやつがいるが、それぞれが口々に凄い凄いと褒め称えてくるため、天白は得意げな表情をし、軽井沢は照れて顔を真っ赤にしていた。

 龍園ですら、仏頂面で顔を背けているのだ。言葉にこそ出していないが、二人の歌を認めてはいるのだろう。

 

 二人がめちゃめちゃ相性ぴったりな感じで歌いきった事に嫉妬した櫛田が「私も一緒に歌うー!」と飛び込み、急遽三人でのアンコールが勃発。ノリノリのオーディエンス(1名を除く)がコールを挟み、フロアが沸き立った。

 

 そんな中、葛城は内心でふと考える。

 

(いい表現ではないが……普通に金を取れるんじゃないか? この二人の歌は……。やりようによっては、大きな資金源に成りうるな……)

 

 単なる思いつきだが、あながち間違ってはいないように感じる。一年生連合の最終目標を達成する為には、金――プライベートポイントはいくらあっても困らないだろう。

 葛城は苦笑し、後で坂柳や櫛田、それと他のクラスの代表とこの思いつきについて検討しなければならないなと思いながら、盛り上がっているオーディエンスの群れに飛び込んだ。

 

 尚、三人で歌った歌のソロパートで天白が全力でkawaiiを振りまき、再び死が広がったことで葛城は思い直す事にした。全校生徒の前でやらかせばハイスクール・オブ・ザ・デッドとなってしまうので。

 




・平田洋介
まさかの綾小路グループ加入。クラスリーダーであるものの、学年全体で団結しているという状況にかつてないほど精神が安定している。堀北が精力的に動いている事で時間が余り、ふとした気の迷いでアニメを観始めてしまった。許せ平田……好きなんだ君の事が……

・伊吹澪
スタイル維持やもともと運動が好きで筋トレの時に聞く曲を探している時にあろうことか『お願いマッスル』を聞いてしまった為に汚染された。アルベルトとは一緒にジョギングをする仲

・龍園翔
坂柳にイジる対象として目をつけられた。最後まで坂柳には点数で勝てなかったので秘密特訓を始める。最近の悩みはあのアルベルトが上目遣いで懇願してくること。ちょっとキモいのでしかたなく願いは叶えてあげている。彼の明日はどっちだ。

・綾小路清隆
情緒が芽生え始めた赤ちゃん。

裏もこっそり2話投稿してます

次の日常回何やる問題

  • 堀北、坂柳、椎名のビブリオガールズトーク
  • 堀北(兄)、南雲の漢祭り
  • きよぽんグループ(外村平田)のオタトーク
  • 漢葛城、その苦悩
  • 幼馴染と部屋でイチャイチャするだけ
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