コミュ力おばけと幼馴染(♀)がイチャコラするだけの話   作:百合好きの獣

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アンケート結果はっぴょおおおおおおおおお!!!!


ビブリオガールズ①

 

 

 

 学生の本分とは何か。

 

 勉強? 部活? 委員会? はたまた友達付き合い?

 

 そのどれもが正解であるといえる。

 学ぶこと、それが学生の本分である。

 そして学びとは、日常から得られるものだ。

 

 なので。

 

「……今日はどこに行きましょうか」

 

 中間テスト一週間前に普通に遊びに行く計画を立てている坂柳も、学生の本分を果たしていると言えるだろう!!!*1

 

 なにせ、暇なのだ。

 つい先日に生徒会長が3年生の堀北から2年生の南雲へと受け継がれたのだが、何の変哲もない代替えであって、率直に言えば“つまらなかった”。

 まあ、なにやら男同士通じるものがあるのか、南雲は感極まって涙を流していたし、堀北もそんな南雲の肩に手を乗せて「後は任せた」と言わんばかりに力強く頷いていたが。

 櫛田経由で坂柳に入って来た情報では、リリィナイトという非公認団体もトップが交代したとかしてないとか。あの集団も意外と息が長い。この調子では少なくとも坂柳達が卒業するまで――いや、下手をすれば代々受け継がれていってしまうかもしれない。悪性腫瘍か何か?

 

 そんなわけで、坂柳は大変暇を持て余していた。

 全く勉強していないというわけではなく、普段は櫛田や天白のテスト勉強に付き合っている。が、今回は二人とも別の用事があるようで坂柳は珍しく一人だ。

 では神室はどうかというと、彼女もなにやら用事がある様子。彼女は美術部に入っており、コンクールが近いとぼやいていたので、その関係だと思われる。

 

 坂柳の交友関係は決して広くはない。その三人がそれぞれ予定が入ってしまうと、ソロ活動を余儀なくされてしまう。

 とはいえ、元々高校進学以前は一人で居る事が多かった坂柳。時間を潰す方法はいくらでも思いつく。

 

「……図書館にでも行きましょうか」

 

 まずは時間潰しの鉄板、図書館に向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 試験前という事もあってか、図書館内ではそこかしこで勉強をしている生徒の姿が見えた。

 Aクラス生徒も何名かおり、坂柳を見かけると小さく手を振って笑顔を見せた。勉強の邪魔をしてはいけないので、軽く会釈をして新刊コーナーに。基本的にAクラスは個人勉強で完結出来ている為、わざわざ教える事も無い。もちろん天白を除く。

 

 運動が出来るようになった事で最近読書から離れていた為、好んで読んでいた作者の新刊がある。以前読んだことのあるシリーズ物の続巻も出ている。

 坂柳は乱読派である。ミステリーを好んではいるが、それだけを読むわけではなく、サスペンスや歴史小説、エッセイやファンタジーなんかも偶に手を出している。

 とりあえずお気に入りの作者の新刊を一冊手に取って、空いている席を探しにあたりをうろついた。

 

 勉強会を行っている生徒の邪魔になってはいけないので、人の集まりの少ない場所を目指していると、意外な人物の姿が目に入った。

 

「あ……」

「あら……」

 

 艶やかな黒髪の美しい、1年Cクラスの堀北鈴音だ。

 

「珍しいですね、堀北さんが一人で読書されているのは」

「ええ。よく分からないけど、休みを言い渡されてしまったのよ」

「休みですか……?」

 

 堀北鈴音はCクラスの要である。

 勉学優秀で運動能力も高い。指揮統率能力はやや難があるが、それでもクラスの中心――リーダーとして重宝されている。

 その働きっぷりは尋常ではなく、Aクラスで言えば坂柳と葛城と櫛田が3人で分業しているところをほぼ一人で賄っているというような状況だった。

 クラス内の伝達や調整は平田も行っているとはいえ、堀北一人にかかる負担は大きい。

 

 故に、平田が「勉強会は僕の方で見ておくから、一日くらい休んでよ」と提案され、何かと交流の多い佐倉や最近友好関係を築いた軽井沢、その他女子生徒達からあれよあれよと言う間に追い出されてしまった。

 堀北が受け持っていたグループを平田が見るというのは少し不安があったが――平田は男子の嫉妬の対象であるため――そちらもここ最近は徐々に改善の兆しを見せている。

 まあこれもいい機会か、と堀北は素直にその提案を受け入れる事にした。なんだかクラスの和が知らぬ所で良い方向に転がっているというのは釈然としないが。

 

「休みと言われても、ただ寝て過ごすのもどうかと思ってとりあえず読書をしているわ」

「そうだったんですね……。なんというか、良い事だと思いますよ」

 

 ちょうど堀北の隣の席が空いていたので、坂柳は一先ずそこに腰を落ち着ける事にした。

 

「…………」

「…………」

 

 とりあえず座ったはいいものの、そのまま読書に入れるような雰囲気ではなく、何とも言えない沈黙が広がった。

 ページを捲る音、ノートに何かを書き込む音、小さな声で何かを――勉強を教えているのだろう――話す声。

 静かな空間に、僅かな音だけが木霊する。

 

「…………」

「…………」

 

 この時、奇妙な事に二人の思考が一致した。

 

((き、気まずい……))

 

 そう!

 二人は天白・櫛田という共通の友人が居るのだが、かといって直接の交流があるわけではない。

 何度も顔を合わせ話をしたこともあるが、二人きりで話す事などこれが初めて!

 趣味嗜好も分からなければ、共通の話題を知っているわけもない!!

 

 ”友達の友達”

 

 これは実に複雑な関係だ。

 話題がすらすらと出てきたり、沈黙すら心地よいといった関係性は無い。

 かといって全くの初対面というわけでもないので一から関係性を構築も出来ない。

 普段は櫛田と天白が間に入ってガンガントーク回しをしていた為、話のフックも既に潰されている!

 

 『良く知らないけれど概要だけは他の人から聞いている』という中途半端な知識が先行してしまい、なんとも言えない距離感!!

 

 そしてなによりも、中学時代は孤高(笑)のコミュ障と、話術はあれどここまで友人の居なかったぼっちこと坂柳。

 

 そう!! この会合は コミュ障とぼっちの会合だったのである!!!!!

 

(何か話題を……勉強の調子は……坂柳さんには聞くだけ野暮だし……)

(中学の時の話を……いえ、最初からその話をするのは……)

 

 続く沈黙!! 焦る二人!! 巡る思考!!!

 

 悩みに悩んだ結果、とりあえず何か口にしなければと二人が同時に口を開きかけたとき、声がかけられた。

 

「あの~、もし……Cクラスの堀北さんとAクラスの坂柳さんではありませんか?」

「「え……?」」

 

 「今日はいい天気ですね」と今どきトークスターターデッキにも入らないような手札をオープンしようとした愚か者二人は、その闖入者へと顔を向けた。

 坂柳が紫がかったそれであるとすれば、彼女は青みがかかった銀髪。しかし長さは腰元まであり、藤色の瞳は穏やかに目元が垂れている。

 突然現れた少女に呆気に取られていると、その少女はくすりと笑みを零してから名乗った。

 

「失礼しました。私はDクラスの椎名ひよりと申します。お二人のお噂はかねがね」

「え、ええ……どうも……。堀北鈴音よ」

「坂柳有栖です。私達の事はご存じのようですが……」

「はい。いつかお話をしたく思っていました」

「「……?」」

 

 意図がつかめず、顔を見合わせる二人に椎名と名乗った少女はくすくすと笑う。

 

「ああ、すみません。これといって特別な事はないのですが……お二人は、読書を好まれると見ていたのですが――違いましたか?」

 

 そう言って、椎名は堀北と坂柳の持つ書籍を二つ、指で指し示した。

 

「ええ、まあ……確かに読書は好きね」

「私もそうです。……ですが、何故今声を掛けたのですか? これまでも図書館で本を借りている時などもタイミングがあったと思いますが」

 

 堀北は肯定し、坂柳も同意しながらも疑問を返した。

 坂柳の疑問は何か警戒しているわけではなく、純粋な興味だ。とはいえ、受け取ったボールをきちんと相手に返しているため、コミュ力ダービーでは坂柳が僅かにリードしている。

 それを受けた椎名。少し照れくさそうに頬を掻いた。

 

「ええ……実は前々から声を掛けようと思っていたのですが……お二人が図書室に居る時は大抵どなたかと勉強をされていたので……」

 

 予想以上にまともな理由だった。それは確かに話しかけ辛いわけだ。わざわざ別クラスに訪れてまで尋ねる事でもないため、チャンスを伺っていたのだろう。堀北と坂柳はなるほどと納得をみせた。

 幸いな事にというか、ちょうど坂柳の正面の席が空いていたので、椎名はそこに静かに着席すると、途端に目を輝かせた。

 

「それで……お二人は、どのような本を読まれるのですかっ!?」

 

 ずい、と身を乗り出す椎名。心なしか鼻息も少し荒い。まるでごちそうを前にした犬。あるいは天白を前にした櫛田。

 何を隠そう、この椎名ひよりは生粋のビブリオマニアである。

 朝は早くから図書室へ直行し、昼休みは食事もそこそこに図書室へ赴き、放課後は閉館まで図書室に居座る。まるで第2の自室である。図書室を利用する生徒からはあまりにもよく見かけるので図書室に住む妖精、あるいは座敷わらしではないかという噂があったりなかったりする。

 

 そんな椎名の悩みは1つ。読書仲間の不足である。

 読書に限らず、映画やゲームなど、良い作品に触れた後はその感想を誰かと共有したくならないだろうか?

 椎名の所属する旧Cクラスには、残念ながら読書をするクラスメイトが居なかった。居てもマンガや雑誌であり、椎名がシェアしたいものとは違う。

 

 そこで目をつけたのが、勉強会の後にちょくちょく本を借りていく堀北と坂柳である。

 いつか一人で本を借りに来ないかと虎視眈々と機会を待っていたのだが、結果はまさかの両取り。鼻息も多少荒くなろうものである。

 

 それを察した二人は苦笑い――ではなく、天啓を受けたかのように固まっていた。

 

(読書――それだわ!)

(盲点でした――!)

 

 そう、天白グループ――天白、櫛田、堀北、坂柳のいつメンの中で、堀北と坂柳にしか当てはまらない共通点がある。

 それが読書。

 何故それに思い当たらなかったのか……天気がどうのと話している場合ではないと、二人してその話題に食いついた。

 

「私は……主に推理小説をよく読むわ。ジャンルでいうとミステリーかしら。有名なところは大体読んだはずよ」

「私も同じくミステリーを好みますね。いろんなジャンルにも手を出していますが、一番好きなジャンルと聞かれればそれでしょう」

「まあ……まあ!!」

 

 まさかのクリティカルジャスト。あまりの歓喜に思わず声が大きくなってしまい、周囲から覗うような視線が集中した。

 さすがに椎名も僅かに落ち着きを取り戻し、僅かに頬を染めながら咳払いをする。

 

「こほん……も、もしお時間があればどこかでお茶でもいかがですか……?」

 

 三人は意志を一つにしていた。

 すなわち、この同士を逃してなるものか、と。

 

「「ぜひ」」

 

 

 

 

 

 

「最近、ミステリーばかりを読んできたせいかトリックに既視感をよく覚えるのよ」

「「わかります」」

「それでやっと新鮮なものを見つけたと思ったら、どちらかというと超能力地味ているようなものだったり、叙述トリックだったり……いえ、それが悪いというわけではなく面白いのだけど、なんかこう違うというか……」

「完全に同意」

「最近はサイエンスフィクションも増えましたよね。ドラマもそうですが、推理というよりは科学力で詰めていくようなタイプといいますか。実際にあるものだとは思うのですが、科学技術が万能すぎて近未来のものに感じてしまいます」

「「本当にそう」」

 

 同好の士というのは、しかも、長く一人で居た時に出会えた“同じ趣味を持つ者”ともなれば、会話は途切れる事無く大いに盛り上がるものだ。

 更にこの三人は相性も良かったらしく、所謂見解の相違が起こらなかった。

 “〇〇はいいけど××はダメ”とか、“〇〇×◇◇こそ至高。別カプ? リバ? んんwwwありえないwww”といった意見の対立に繋がるような火種が産まれる事も無かった。

 その為、気づけばカフェに入ってから数時間がゆうに経過しており、外は既に濃紺色。店員も「いつまでコーヒー一杯で会話続けるんだろう……」とちらちら視線を投げかけている。

 

 ひとしきり話終えた時点で、椎名は満足したという風に「はふぅ……」と恍惚のため息をついた。

 

「あぁ……素晴らしいひと時でした。こんな事なら、クラスに押しかけてでも話しかけるべきだったかもしれません」

「ええ、同じ趣味をとことん話し合えるなんて、得難い経験だったわ」

「そうですね……ここまで一つの話題で盛り上がれたのは初めてかもしれません」

 

 堀北も坂柳も、嬉しさを隠せないといった風に破顔している。

 

「百合も桔梗も、普段から小説を読んでくれていたら良かったのだけれど」

「桔梗さんは話題になったものしか読みませんし、百合さんもミステリーは読みませんからね」

 

 大満足ではあるのだが、こうまで楽しい事であると親友たちとも共有したい気持もある。

 堀北と坂柳がそう零すと、椎名は少し考えた後に「では……」と意見を出した。

 

「何か本をお勧めしてみるのはどうでしょう。お二人の好みに合うものであれば、興味を持って下さるかもしれませんよ」

「「好みに……」」

「例えば……桔梗さん――えっと、櫛田桔梗さんですか? その方は何か好きな物はありますか?」

「ううん……友達を作る事、おしゃれ、百合――あとはそうね……ああ、数学が得意とは言っていたわ。実際にテストでも一番点数が取れているし」

 

 付き合いの長い堀北が櫛田の好みをいくつかピックアップすると、椎名は心あたりがあるのか携帯端末で検索をかけ始めた。ところで今一つ変なものが混じってなかった?

 

「数学であれば――これはどうでしょう? 『浜村渚の計算ノート』」

「聞いたことが無いわ……どういう話なの?」

「学校教育から数学が排斥された社会で、数学の地位向上の為に引き起こされた“数学が得意でないと解けない”凶悪事件を、女子中学生の主人公が解き明かしていくという推理小説です。数学に関する面白い知識が散りばめられていて、主人公が女の子であることから共感しやすく、普段勉強が苦手な方でも数学という学問に興味を持てるような本です。シリーズものですが、1巻ごとに完結しているので読みやすいですよ」

「それはまた……興味をそそられるわね」

 

 どうやら椎名の提示した本は堀北のお眼鏡にかなったらしい。堀北も興味を持ったのか、さっそく端末で図書館のデータバンクにアクセスし、貸し出し状況を調べ始めた。

 

「百合さん……こちらは天白百合さんですかね。その方は何か興味がある事はありますか?」

「そうですね……思いつくのは、マッサージ、エステ、世話焼き、歌、桔梗さん……」

「それは専門書くらいしか該当しなさそうな……ドラマや映画などは見ないのですか?」

「見ますね。ええと……この前見ていたのは、ホラー……でしょうか。幽霊が出てくる映画を見ていたと思います」

 

 少し前に、天白の部屋(櫛田が住み着いている)に集まって映画観賞会をした事があった。その時に天白が見ていたのは、幽霊がバンバン驚かせてくる世界的に有名なジャパニーズホラーの鉄板。

 中々に怖く、坂柳と櫛田はずっと天白にひっついていた。堀北も平気そうにしながらも天白の傍から離れようとはしなかった。あまりにも怖かったので、その日は全員天白ルームで寝泊まりしたのはいい思い出だ。

 ところでやっぱり好みに変なのが混じってなかった???

 

「ああ、それであればこれはいかがでしょう。“ホーンテッド・キャンパス”。幽霊が見えてしまう大学生の男の人が主人公で、一目ぼれした同い年の女の子の為にオカルト研究会に入り、そこで数々の怪奇現象の事件に巻き込まれていく……という物語です。ホラーではありますが、メインはその原因解決と主人公たちの恋愛模様でして。怪奇現象の不気味さとじれったい恋愛のドキドキや魅力的なキャラクター達がとても素敵な作品です。こちらもシリーズものですが、短編集のようなものになっているのでお勧めです」

「なるほど……恋愛がメインなのはいいですね。あまり本を読まない方でもとっつきやすそうです」

 

 坂柳もまた、椎名の提案に興味を抱いた。

 二人共に良い情報提供を出来たようで、椎名も満足そうに微笑む。

 

「ふぅ……いいですね、自分の好きな物を人にお勧めするというのは。えもいわれぬ充足感があります。お二人とこうしてお話しできて、本当に良かったです」

「こちらこそ、すごく楽しく話せたわ」

「ええ、またお話しましょう。 よければ連絡先を交換しませんか?」

「ぜひ!」

 

 こうして、少女たちは姦しく、自らの趣味を存分に語明かす――。「そろそろ閉店だから帰ってくれないかな」という店員の困ったような視線を受けながら――

 

 後日、無事に椎名の紹介した二冊は櫛田、天白にぶち刺さりハマった。そして彼女達の新たなベストフレンズリストに『椎名ひより』という名が刻まれたのだった。

*1
※良い学生は真似してはいけません




・堀北学
蟠りが無くなり、可愛い可愛い自分の妹が居るというのに不穏分子に対して何もしないわけがないので雅くんと遊んであげた

・南雲雅
ずっとかまってかまってしてた堀北パイセンにやっと遊んでもらったと思ったらナニカサレタヨウダ
実は過去に一言だけ登場したことがある

・椎名ひより
最近龍園が急に大人しくなって不思議に思っていた
でも友達がいっきに四人も手に入ってホクホク。後日さらにひとり増える模様
椎名がオススメした本は作者のおすすめでもある。ぜひ読んでみてほしい

次の日常回何やる問題

  • 堀北、坂柳、椎名のビブリオガールズトーク
  • 堀北(兄)、南雲の漢祭り
  • きよぽんグループ(外村平田)のオタトーク
  • 漢葛城、その苦悩
  • 幼馴染と部屋でイチャイチャするだけ
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