コミュ力おばけと幼馴染(♀)がイチャコラするだけの話   作:百合好きの獣

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冬休みに突入したので、小話集。

Q.(頭脳戦のある)よう実どこ……? ここ……?
A.ここではありません。

Q.天白のペアになる為になんで普通に努力してるの?
A.(学力で)殴った方が早いので



SSアソート あらかるて

・おさイチャ episode0 生徒会、漢の仁義

 

 

 

 これは、天白百合達新1年生が入学してくる前。堀北学が2年生の3学期末の頃の話である。

 

「今日こそ、勝負してくださいよ堀北先輩」

 

 放課後、日常業務を終了し、各々が帰宅準備を始めている。

 数か月前に生徒会長に就任した堀北も、同クラスの橘茜という女生徒といくつか会話を交わしながら机の上に広がった書類や筆記具を纏めている途中で、1年生の南雲雅が話しかけてきた。

 堀北はため息を吐きながら、南雲へと顔を向ける。

 

「またか、南雲」

「ええ、またですよ。俺はずっと、堀北先輩と勝負がしたいんです。歴代最高の生徒会長と名高い堀北先輩とね」

 

 この南雲という生徒は高い実力を持ちながらも事あるごとに堀北へと勝負を持ちかけてくる。

 私闘をする気はサラサラなく、またAクラスリーダーと生徒会長の二足の草鞋を履く堀北は多忙な為毎度断っているのだが、南雲は諦めずにこうしてしつこく迫ってくる。

 堀北は考える。ここで南雲の勝負を拒否する事は簡単だ。どうせ諦めないだろうが、しつこいしストーカーっぽくてちょっと気持ちが悪いので、ぶっちゃけ断ってしまいたい気持が強い。南雲の事は信用しているが、こうも執着されると辟易もしてくる。

 

 ふと、妹の事が脳裏をよぎった。そしてその友人である二人の少女の事も。

 彼女達であれば、この学校への進学を希望する可能性が高い。そしてその場合、問題なく入学をしてくるだろう。

 南雲が1年生でどのような事をしているか、堀北の耳には入ってきている。そしてそれは、自分達2年生にまで手が伸びている事も。もし妹たちが入学してきた場合、南雲の餌食になるかもしれない。

 かもしれないのであれば、自分が動く理由としては十分だ。

 

「……いいだろう」

「へ……?」

 

 まさか受け入れられるとは思っていなかったのか、南雲は素っ頓狂な声を上げた。

 堀北はブレザーを脱ぎ、ネクタイを緩め、南雲へと歩を進める。

 何故か竜驤虎視とした雰囲気に南雲は気圧され後ずさり、橘も何が起きているのかと目を白黒とさせている。

 

 とん、と南雲の背が壁に着いた。いつのまにか追い詰められてしまったらしい。

 南雲は困惑した。いつも断られるので、南雲の中ではデイリーミッションと化していた「勝負を要求する」がどうしてこんなことに。勝負をしてくれるというのは嬉しいが、まるでこれから殴り合いでも始めるかのような空気に、ごくりと喉を鳴らした。

 

 堀北は南雲の前に立つと、ドン! と強く壁に手をつき、静かに告げた。

 

「表へ出ろ、南雲。……お前に分からせてやろう」

「は、はい……」

 

 顎で出口を示し、堀北は南雲を連れて生徒会室を出て行ってしまった。

 

「は、はわわ……! 大変なものを見てしまいました……!」

 

 生徒会書記、橘茜。彼女は今見た光景に何かを感じ、胸をときめかせていた。新たな扉の開く音がする――!

 

 

 

 

 

 

「どうですか!! まさに奇想天外、このドラテク!! 俺のコース取りは誰にも読めな――」

「……ふっ、甘いな」

「何ッ!? ショートカット!?」

「勝者とは常にコースがどういうものかではなく、どうあるべきかを考えなければならない。俺ならここにショートカットを設置する。そう読んだだけだ」

「くっ……このカーブを先に取られてしまったら――うおおおおお!! まがれえええええ!!!」

「お前の敗因は、先頭を取ったことによる油断、慢心。その驕りを突かせてもらったぞ、南雲」

 

「こいつはどうですか!! 複数のパックが多方向から同時に襲いかかる! 名付けて南雲スペシャル!!」

「いい攻撃だ」

「よし! 会長のマレットでは対応出来ない!! もらった――」

「だが、踏み込みが甘い」

「なにぃぃっ!? マレットの二刀流だと!?」

「そら、反撃の時間だ」

「あっ、ちょっ。ズルいですよ先輩!! うわあああ大量失点だ……」

 

「この銃を使って画面のゾンビどもを蹴散らせばいいんですね?」

「ああ。ステージの最後にリザルトが出るから、その得点数で勝負だ」

「へへ、見せてやりますよ俺の銃捌き。よっ、ほっ……!」

「やるな、南雲」

「へへへ、これくらい余裕っすよ。――先輩危ない!!」

「む……すまないな南雲、助かった」

「……! べ、別に堀北先輩を助けたわけじゃなくて、俺の得点を伸ばす為にやっただけっすから」

「ふっ……そうか。だが――甘いぞ南雲」

「なっ……! あんな奥にいるゾンビにヘッドショット……!? くそっ、負けるかああ!」

 

 

 

 堀北が南雲を連れ出した場所は、ケヤキモール内に併設されているゲームセンターだった。じゃああの今にも決闘しそうな雰囲気は何だったんだ。もっと雰囲気のTPOを弁えろ。

 

「……これで俺の10勝だな」

「はぁ……はぁ……まさか、一回も勝てないなんて……」

 

 最初は困惑していた南雲も、憧れの人との勝負ともなれば熱も入る。ひりつくような緊張感のある真剣勝負ではないのが残念――かと思えば、堀北の醸す雰囲気がどのような勝負であっても全力であった為、いつの間にかのめり込んでしまっていた。

 南雲は、敗北を重ねても勝利を諦めない龍園とは対照的に、敗北を知ることなく頂点に立ち続けた傑物である。その為、強者への挑戦心が旺盛で、その筆頭である堀北との勝負に執着をしていた。

 だが、ふたを開けてみれば全敗。レースゲーム、エアホッケー、シューティング……ゲームセンターにあるおよそすべての対戦系ゲームにおいて、南雲は完膚なきまでに叩き潰された。

 

「……俺の勝ちだ、南雲」

「ええ……そうですね……俺の……負け……です……」

 

 南雲にとって、初めての完敗。すべてにおいて上を行かれていた事は初めてであり、苦渋の味と――どこかすがすがしいような気持ちを感じていた。

 

「はは……なんつーか……やっぱすげえなぁ……堀北先輩は……こんなに遠くに行っちまうなんて……」

 

 好きの一歩手前のクラスメイトに留学されちゃう時の男子高校生みたいなことを言いながら、南雲はごろりと寝転がった。

 場所はゲームセンターから移動して、ショッピングモールから寮への途中にある街路の途中。

 流石に金髪チャラ男と堅物眼鏡でお馴染みの生徒会会長副会長コンビがゲームセンターではしゃぎながら遊んでいたらそれはそれは目立ってしまい、注目を集めてしまったので。

 

 堀北は哀愁漂う南雲に対し、メガネの位置を直しながら言葉をかける。

 

「南雲。俺とお前の実力にそこまで差はなかった」

「よしてください、下手な慰めなんて……」

 

 堀北が告げた言葉を、南雲は心底嫌そうに否定した。だが、堀北はそれでも続ける。

 

「いや、本当の事だ。南雲、俺とお前の差は、たった一つ。……真に美しい物を知っているかどうかだ」

「……は?」

 

 なんかこう視野の狭さとか世界の広さがどうのとか、含蓄の効いた事を言われるのかと思えば告げられたのが大分予想外だったので、南雲は間抜けな声を漏らしてしまった。

 

「いい機会だ、南雲。その足りない一つを学ぶために、お前にはこれをやろう」

 

 堀北がカバンから取り出したのは、外観から判断するに何かのゲームソフトのようだった。なんで持ってんの??

 

「なんすかこれ……ゆめあらわれ……リマスター?」

 

 南雲が受け取ったパッケージには6人ほどの少女と、ゲームタイトルであろう『夢現RE:Master』という名前が描かれていた。

 

「“ゆめうつつ”と読む。……そのゲームには、お前に足りないものがある」

「なんか、気が進まないっすけど。ゲームとかあんまりやった事無いですし」

 

 女の子がいっぱいうつっているゲームパッケージだ。なんというか、堀北という男がこれをやっている姿が想像できず、南雲はただただ困惑していた。

 

「……そうだな。では、勝者命令だ。そのゲームをプレイし、感想をレポートに纏めて俺に提出しろ。期限は1週間後だ」

「まあ、そう言われたら敗者の俺にはなんも言えないですが」

「安心しろ、そのゲームのプレイを終えた時、お前はまた一つ先に進める事だろう」

「貴方ほどの男がそういうのなら……」

 

 そうして南雲は堀北からゲームを受け取り、その日は自室へと戻った。

 翌日、プレイするのに必要なゲーム機を購入し、さっそくプレイしてみることにした。

 

「にしても、ゆめうつつリマスターねぇ……。ギャルゲーってやつか? 堀北先輩もこういうのやるんだな……イメージが崩れていくようだ」

 

 南雲はぶつくさ言いながらも、勝者命令だし……と素直に指示に従っていた。あの堀北が「これをやれば一つ先のステージに進める」とまで言ってのけたものがどんなものか気になったというのも大いにある。

 

「ん? 主人公女なのかよ……じゃあギャルゲーじゃないのか? ノベルゲー、だったか? くそ、鬼龍院からもうちょい話聞いておくんだった」

「……へぇ、ゲーム作るのって結構大変なんだな……。そういや、うちのクラスにゲーム開発者志望のやつが居たな……」

「なんか変だと思ったらこの世界男がいねえのかよ。とんでもねえ世界観だな。どうやって子孫残してくんだ……? は? 万能細胞……? あったのか、STAP細胞が……」

「……終わったか。まあ、なんつーかよく分からねーな。女同士の恋愛って、こういう世界だからだろうが、俺には理解できねー。……ただまあ、もうちょっとやってみるか。うん。別に興味が出てきたとかじゃなく、他のやつだとどうなるのか気になるってだけだ」

「銃持ちだして来やがった!? くそ、ここは庇って……嘘だろ!? 死ぬのか主人公!? なんてこった……これじゃあ残されたあいつは……!」

「う……お……胸がえぐられちまうくらい悲惨な末路になっちまった……だが……次こそは……」

「…………そうか、夢現とは、Re;Mastarの意味とは……こういう事だったのか……」

「……………………………くそっ……まさか、この俺がゲームなんかで……ぐすっ……あぁ……そうか、これが堀北先輩が言いたかった『俺に足りないもの』、か……」

 

「南雲、目に隈があるがどうした」

「いえ、なんでもないっす。ちょっと、寝不足なだけで」

「そうか。…………どうだ? 何か分かったか?」

「ええ。…………真に美しい物。俺に足りなかったものは、この『尊い』と思う気持ちだったんですね……」

「ふっ……また一つ、成長したな南雲」

 

 この馬鹿どもがよ。

 

 

 

◇たまにはこんな、休日を。

 

 

 

 特別試験という名の期末テストも終わり、待望の冬休みへと突入した。

 

「天白、今の店でリストにあったのは最後」

「……ん。りょーかい」

 

 天白は少なくなった備品の買い出しということで、本日の受付担当である営業終了後に神室と共にショッピングモールへと買い出しに来ていた。

 クリスマスも近い為か電飾やツリー、雪の装飾等で煌びやかに飾り付けられており、店内を歩くだけでも気分が向上していくというものだ。

 いくつかの店舗を回ってミネラルウォーターやタオルなどのかさばる物は宅配サービスを利用し、神室はマッサージオイルやボックスティッシュ、アロマオイル等の軽い物を入れたマイバッグを片手にぶら下げている。

 

「なんか他に買うものあんの? 付き合うけど」

「……ありがと。んー……」

 

 Aクラスのツンデレ代表こと神室の出した、ぶっきらぼうな「もうちょっと一緒に居たい」というオーダーに、天白は嬉しそうに笑みを返してから周囲を見渡した。

 

「……あ」

 

 そして一つの店舗に目が留まる。

 

「何? へぇ……あんた、ああいうの興味あるの?」

「ん……と。まあ、たぶん……?」

「そ。せっかくだから見ていきましょ」

 

 神室は意外そうな表情をしながらも、天白の手を引いてその店舗へと歩を進めた。

 

 

 

 そうして、買い物を終え、自室へと天白は帰宅した。

 

「あ、お帰り~。遅かったね」

 

 天白の部屋ではあるが、当然の様に櫛田がくつろいでいた。櫛田の寮室は基本的に友人を招くためにしか利用していない。客間じゃないんだぞ。

 

「……ちょっと、買い出しの他に個人的な買い物してた」

「へえ~。何買ったの?」

「……これ」

 

 天白が手にしていた紙袋は結構な大きさであり、櫛田はパソコンか何かを買ってきたのかと予想した。

 そして天白が紙袋から取り出したのは――

 

「これ……ゲーム?」

「……ん。冬休みの、暇つぶしにいいかなって」

 

 世界的に有名な企業が発売する、家庭用ゲーム機だった。

 パーティゲームやバラエティゲーム等、大人数でプレイできるゲームが多く発売されている事が特徴だ。

 

「ゲームかぁ、そういえば昔やったよね一緒に」

「……うん。その時やってたやつの新しいのが出てたから。あとはみんなで遊べそうなやつをいくつか」

 

 当たり前だがゲーム機だけでは遊べない為、いくつかゲームソフトを買っている。

 ポケットなモンスターと冒険をするRPGゲームと、ぷよぷよとしたグミのような物体を積み上げていくパズルゲーム、実際のスポーツのように身体を動かして遊べるスポーツゲーム。

 ゲーム機と合わせて結構な出費だが、天白はマッサージ店で売り上げのいくらかを手取りとしてもらっており、ちょっとした小金持ちであった。生活費も櫛田とほぼ折半しているようなものなので、懐は潤っていた為ポンと出せたのである。

 

「……とりあえず、セットしてみる」

「私も手伝うよ!」

 

 箱を開け、ガサゴソと本体とケーブルをモニターと接続していく。あまりケーブルの種類も多くなく、どれをどこに繋ぐかというのが分かりやすくシールが貼られており迷う事も無かった。

 

「どれやる?」

「……とりあえず、これ」

 

 三つのソフトから、RPGゲームを取り出しセット。お気に入りのビーズクッションに櫛田が座り、その足の間に天白が収まる。これが最近のベストポジション。前後から人をダメにする櫛田スペシャル。

 オープニングムービーが始まり、画面から出てきた茶色いモコモコな獣がぴょこぴょこと跳ねまわっている。

 

「わぁ、可愛い! 犬……? きつね……?」

「……いぶいぶ言ってる。この子がパートナーなのかも」

 

「あ、自分の名前でやるんだね」

「……とくに思いつかなかったので」

 

 久しぶりで不慣れなゲームではあるが、進行目標が明確で分かりやすい為サクサクと進められる。

 

「さっき捕まえた子だ!」

「……やっぱりパートナーだった。ニックネーム……? 『ききょう』ちゃんっと」

「なんかちょっと恥ずかしいな……」

「……大事なパートナーだから」

「もうっ。百合、好き~!」

 

 ゲームそっちのけでイチャイチャしながら、二人はゲームを進めていく。

 可愛いモンスターが居れば存分に愛で、手ごわい敵には知恵を出し合って突破していく。たまにパートナーの『ききょう』ちゃんが可愛すぎて天白がデレデレになれば、リアルの桔梗ちゃんが嫉妬して天白にちょっかいをかけ、二人の少女は笑顔を絶やさず遊んでいく。

 たまにはこんな休日もいいのかもしれない。画面の中の『ききょう』ちゃんが、生暖かいような視線を送っているように見えた。

 

 




・南雲雅
工事、完了です……。
彼が見つけた物は『尊い』と思える感情。百合男子になったかと言えばそうではなく、普通にストレート。百合の守護者ではなく愛の伝道師と化した。どこぞの校長先生もこれにはにっこり。

・鬼龍院先輩
なんか南雲がぎゃーぎゃー騒ぎながらゲームセンターで堀北生徒会長と遊んでるという面白過ぎる状況に興味を持って話しかけた。そしたらギャルゲーやらされることになってて更に面白かった。

・橘茜
新しい扉を開いた。堀×南派であり、リバは許さない過激派。

・天白が買ったゲーム機
よう実が刊行されたのは2015年。任天堂から例のゲーム機が発売されたのが2017年。時代設定的に発売されてない可能性が高い。ここでは発売されていたということで一つよろしく頼みたい。

次の日常回何やる問題

  • 堀北、坂柳、椎名のビブリオガールズトーク
  • 堀北(兄)、南雲の漢祭り
  • きよぽんグループ(外村平田)のオタトーク
  • 漢葛城、その苦悩
  • 幼馴染と部屋でイチャイチャするだけ
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