コミュ力おばけと幼馴染(♀)がイチャコラするだけの話 作:百合好きの獣
すみません、本当に申し訳ないです。
職場環境が変わって書く時間が無かったのもあるんですが、普通にネタ切れとスランプでした……。
※今話の時系列としてはクリスマスになります。
堀北鈴音は忘れない。
『私、櫛田桔梗って言うんだ! よろしく!』
堀北鈴音は、忘れない。
『……天白百合。よろしく、堀北さん』
彼女たちと出会った、あの日を、忘れない。
◇
天白と櫛田が飲み物を買いに行き、部屋には堀北と坂柳が残された。
こういう時は普通部屋主を残すのでは……? 堀北と坂柳は訝しんだが、クリスマスの夜という特別な時間を二人で過ごしたかったのだろうと推測し、一応納得はした。
ところでそれは恋人同士の距離感であるのだが、『幼馴染』の概念が破壊されている二人はついぞ気づかない。
少し前までは天白と櫛田が間にいなければ途端にコミュ障を発揮してしまうポンコツ二人だが、図書館に住む(と噂される)妖精、ビブリオモンスターこと椎名によって共通の趣味を見出し、とりとめのない会話を続けられるくらいには二人も打ち解ける事が出来ていた。
当初は会話デッキテーマが『読書統一』同士のミラーマッチしか行えなかったものの、半年以上も同じ学校で過ごしている為、使える札は少なくない。今では読書以外にもいくつか別の話題をデッキに組み込んでいる。
余談だが、櫛田はデッキ枚数が膨大にありかつ好きな時に好きな札を引くことが出来るチート能力を有し、天白は対戦中に相手を直接攻撃してくる。つよい。かてない。
化け物二人の事はさておき、堀北と坂柳がお互いに話題カードを切りながらトークを重ねていった。そこにぎこちなさや相手の様子を観察する様子は見えず、ごく自然に話が盛り上がっている。
そこで、坂柳が「そういえば」と切り出した。
「鈴音さんは百合さんや桔梗さんと同じ出身でしたよね? お二人とはどのように仲良くなられたのですか?」
かつて、堀北を櫛田と天白から紹介された時に、同じ中学校だったという風に聞いていた坂柳は、最近になって堀北の存在の特異性を感じ始めていた。
ご存知の通り、櫛田の交友関係は広い。凄まじく広い。全生徒友達と言っても過言ではないと豪語してしまうほどに。
しかし、友達から一歩進んだ親友については僅かしか存在しない。この学校内に限って言えば、堀北と坂柳、そして一之瀬の三人のみ。
一般的に普通といえば普通なのだが、普通でない友人の多さに比べ、ごく少数と言えるだろう。
そして堀北は、そんな櫛田と天白と中学の時から親友だったのである。
他に過去親友が居たという話は聞いたことが無いため、おそらく、唯一の。
故に、坂柳は気になった。
三人はどうやって知り合ったのだろうかと。
「そうね……あまり特別な事ではないのだけれど──」
堀北はそう前置きをして、語り始めた。
過去編。始まります。
◇
中学生の頃──いえ、その前からかしらね。私はいつも一人で居たわ。
学校に行っても、予習復習をしているか、本を読んでいるかのどちらかだった。
私の尊敬する兄さんのようになりたくて、常に自己研鑽の毎日。友達を作って話して、遊んで、そんな無駄な事をする時間があれば少しでも勉強をする方が効率的……あの頃は本気でそう思っていたの。
今は違うわよ? あの二人と出会って、人と交流する事の大切さを学べたから。あの時の私は、孤高と孤独を履き違えていたわけね。今になっては……孤高すらも、少し寂しいと感じてしまうもの。
話が逸れたわ。
あの二人と最初に話したのは──中学生になって、少し後だったかしら。
「こんにちは! 私○組の櫛田桔梗って言います! みんなと友達になりにきました!」
昼休みに突然教室に押しかけてきたのよ、桔梗は。ちなみに言うと、ここに来てからも同じだったわ。いきなりやってきて、全員と連絡先を交換していたの。
それで、私の所に来た。
「よろしくね! えっと、貴女は──」
「…………」
「あ、あれ? お名前教えてほしいな~って……」
「……貴女にそれを教える必要性を感じないわ。私は一人でいるのが好きなの」
今にして思えば、ずいぶん冷たい対応だったと思うわ。まあ、当時は騒がしいとしか思って無かったから。
桔梗はちょっと困った顔をしてたわ。多分向こうも内心では「なんだこいつ」って思ってたんじゃないかしら。
まあ、それで諦めるような子じゃないのだけれど。
「おっ……とぉ。……なるほど。でもでも、名前だけでも知りたいな。貴女としか呼べないのってとっても不便だよ。ね、お願い!」
あまりにもグイグイくるものだから少し面食らってしまって。これ以上絡まれるのも嫌だったから素直に名前だけは教えたの。
「……はぁ、堀北鈴音。でもよろしくするつもりはないから」
「ふふ、名前教えてくれてありがとう! 堀北さん!」
それが、私と桔梗の初めての交流だったわ。
その後も、よろしくするつもりは無いと言ったにも関わらず、桔梗はちょくちょく話しかけてきたわね。正直、会話らしい会話はしていなかったし、いつも突き放すような態度だったからどうしてそこまで話しかけてくるのか疑問だった。私のクラスの人からも、もう話しかけないほうがいいとまで言ってるのも聞こえたし。
それでも桔梗は私に話しかけるのを止めなかった。
それで、ある日。昼休みに桔梗が来るのが当たり前になりかけてきた時に、彼女──百合が来た。
「……天白百合。よろしく、堀北さん」
「よろしく、可憐なお嬢さん。私の事はどうか鈴音と呼んで頂戴──」
◇
「ちょっと待って下さい」
坂柳から待ったがかかった。当然である。
坂柳は眉間を指で揉みながら、ため息をついた。
「鈴音さん」
「なにかしら」
「盛りましたよね?」
「そ、そんなこと無いわ」
「盛りました、よね?」
「はい……」
堀北は盛りに盛っていた。最近のプリクラよりも自分を盛っていた。盛りすぎて元の造形が分からないくらいに、盛大に。ここまでくるともう捏造である。存在しない記憶が溢れ出している。
「桔梗さんとの出会いは普通でしたが……何故……」
「いえ、その……ちょっと、百合との出会いは失敗してしまって……」
「失敗……? まあ、良いです。とにかく、話を変に美化させたりせず、思ったままに教えてください。いいですね?」
「はい……」
過去編、リスタート。
◇
百合との出会いは、そうね……まあ、特に変わった所は──わかった、分かったわよ、もう。
正直に話せば、驚いたわ。百合は今でも小さくて可愛らしいけれど、あの時は輪をかけて小さかったから。
だから言ってしまったのよ。
「……ここは、中学校だけれど」
「……? それはそう。知ってる」
「貴女……ええと、天白さんだったかしら。学校間違ってない? 小学校は少し離れているけれど……」
「……あー、なるほど。こうみえて、わたしは中学生。学生証みる?」
「え……?」
当時の百合は、小さいというよりも幼いという表現がぴったりだったわ。全体的に雰囲気がおよそ中学生とは思えなくて、つい。流石に百合もちょっとムッとしていたわね。貴女も経験が──いえ、なんでもないわ、ごめんなさい。だからその目をやめて頂戴。
なんというか、百合は不思議な子だったわ。桔梗や他のクラスメイトにしていたように冷たく当たれないというか……。見た目もそうだけれど、彼女に対しては害意というものが全くと言っていいほど抱けないのよ。
だからその後もなし崩し的に百合と行動することになって、そうなると勿論桔梗もその輪に入ってきて。休み時間を3人で過ごす事が増えた。
それから、百合と桔梗はどこから知ったのか、私と兄さんの確執まで聞きつけてきて……あっという間に解決してしまったわ。
詳しくは、流石にちょっと恥ずかしいから省かせてもらうけれど……悩みの1つが解決して、気が緩んだからか、一度風邪をこじらせてしまったの。
その時、熱で苦しい時にずっと側に居てくれて……彼女達は手を握って励まし続けてくれた。それどころか、兄さんを説得して2人で話す機会を作ってくれたの。
それで、兄さんの気持ちを知って……ようやく、私が間違えかけていた事に気づけた。あの2人のお陰で、ね。
それからね、あの2人が何よりも大切になったのは。兄さんとどちらかを選べと言われても、選べないくらいには。
……あら、羨ましそうな顔をしているけれど、貴女もよ? この学校で出会えた掛け替えの無い大切な友人だわ。それこそ、あの2人と同じく親友であるという認識ね。貴女もそうであれば嬉しいのだけれど……。そう、ありがとう。
だから百合も桔梗も、そして貴女も、一之瀬さんも。出来ることならずっと一緒に──
◇
「………………」
「鈴音さん?」
話の最中、突然黙り込んでしまった堀北を怪訝に思った坂柳が声をかける。しかし堀北は顎に手を当て、何か考えている様子。ぶつぶつと何事かを呟いている。
「ああ……そう……そういうことだったのね……私の……望みは……」
その時、玄関が開く音がした。
「ただいまぁ~! はぁーっ寒かったぁ!」
「……ただいま」
どうやら天白と櫛田が帰還したようだ。坂柳が視線を向けると、コンビニまで行ったのかビニール袋を下げている。
そして二人の後ろには、意外──でもないが、新たに客がいた。
「お邪魔します!」
ピンクブロンドの髪にキャノンボールバストを誇る美少女。一之瀬帆波、その人である。
12月初頭に、この5人だけで夜に集まらないか誘った際は非常に申し訳なさそうにしながらも辞退を表明していたのだが、どうやら遅れて参戦するようだ。
「帰りに偶然会って、今からでもどう? って誘ったんだ」
「ごめんね、プレゼント交換するのに、私の用意が間に合わないかも……って。でもついさっき出来たんだ!」
そう言って、一之瀬は後ろ手に持っていた袋から四つのぬいぐるみを取り出した。
「……ぬいぐるみ?」
「うん! 正確にはニードルフェルトって言って、羊毛フェルトをちくちくして形を作るの。本当は後で出来たら渡すつもりだったからラッピング出来てないんだけど……気に入ってくれると嬉しいな」
どーぞ、とはにかみながら手渡す姿はまるで天女。プレゼントのチョイスが可愛らしく、さらに手作りだ。各々に手渡されたものは、天白が白い兎、櫛田が黄色の子犬、堀北が黒い子猫、坂柳が薄紫のハムスターと、それぞれのパーソナルカラーとイメージを落とし込んだもの。
なんで坂柳がハムスターかって? ほら、小さくてかわ──いや、多くは語るまい。
ともあれ、一之瀬が選び作ったこれらは女子が特別な友人に送る模範的なプレゼントと言えるだろう。
けして麻縄や耳かき棒やへそゴマクリーナーではないのだ。
お前たちのことだぞ。聞いてるのか、ポンコツ三人衆。
「……うん、ありがとう。もこもこしてて可愛いね。わたしからも、帆波ちゃんにどーぞ」
「あ、ありがとう……」
女子力の格の違いを見せつけられた櫛田と坂柳は頬を引きつらせながらも──部屋の隅に鎮座する自身のプレゼントから目を逸らしつつ──可愛らしいぬいぐるみは嬉しいようで、羞恥と喜びがないまぜになった笑みを浮かべて礼を言いつつ、天白から順に一之瀬に用意していたプレゼントを手渡した。一之瀬は嬉しそうに受け取り、部屋に帰ってから開封すると言う。
こほん、と気を取り直すようにして櫛田が一つ咳払い。
「ところで、鈴音はどうしたの?」
「え……っと、百合さんと桔梗さんのお二人と出会った時のお話を聞いていたのですが、突然固まってしまって……」
「……壊れちゃった?」
天白が堀北の頬をぺち、と軽く叩くと堀北は流石に再起動をした。パソコンじゃないんだぞ。
「あ……おかえりなさい、二人共。それに、帆波も来たのね……あら、これは……?」
「おはよう、鈴音。ほんとに気づいてなかったみたいね。それは帆波ちゃんからのプレゼントだよ。ニードルフェルトだって」
「え……っ? あ、その……ありがとう。それとごめんなさい、すぐに気づけなくて」
「にゃはは、いいよいいよ。それよりどうしたの? 何か考え事?」
復活した堀北も、一之瀬が持っている箱がそれぞれ渡されたプレゼントであることを察し、自身の分も手渡してから、ぽつりと漏らし始めた。
「そう、ね……ええ。皆、申し訳ないのだけれど、聞いてもらえるかしら」
なにやら真剣な雰囲気であるため、天白と櫛田、そして一之瀬は首を傾げながらもそれぞれクッションに腰を落ち着けた。
一人用の寮室に5人も集まるとさすがに狭いのだが、この場には2人足して1.5人分くらいのサイズしかない人物が2名いるため、そこまで窮屈ではなさそうだった。
「何から話そうかしら……」
堀北はしばし言葉を選び、口を開いた。
「あなた達は、この先──進路はどうするつもりでいるの?」
「どうしたの突然? んー……私は特に決めてないけど……」
櫛田の答えに、ほかの3人が追従するように頷いた。
4人は優秀ではあるが、先のビジョンとなると自分のやりたいことが明確になっておらず、具体的な進路──就職先や進学先──についてはまだ迷っている状態だ。
当然である。高校1年生で、まだまだ学びの最中なのだ。この時点ではっきりとやりたいこと、行きたい所が定まっている生徒は多くないだろう。特に、この場にいるメンバーは部活動に所属しているわけではないので。
天白のマッサージ店にしたって、過去に茶柱からヘッドハンティングを受けそうになったものの、趣味の範囲であるためそれを仕事にしようという気はまだ無い。
「そうよね……でも、大学には行くつもりでしょう?」
「それはまあ、そうだね。どこに行くかは分からないけど、進学はすると思う。高卒で就職っていうのはピンと来ないし」
「私もですね。一番良い大学に行くつもりです。ただ、海外の大学は今のところ選択肢には入れてませんが」
「私も、かな。働いて家計を支えたいけれど、高卒より大学まで行った方が就職は有利だろうから」
「……んー、たぶん……?」
若干一名不安なやつがいるが、概ね進学するという方向で意見は纏まっているようだった。
堀北は一瞬だけ目を伏せ、そして意を決したかのように問う。
「私は──」
少しだけ迷いが見えた。だが、堀北は言葉を止めなかった。
「私は、あなた達と同じ大学に進学したい。いえ、それだけじゃなくて、出来ればその先──社会人になってからも、この先の人生を、貴女たちと共に歩んで行きたいと思ったの」
こぼした思いは、熱く。
「中学生の頃、百合と桔梗に救われた。二人が何よりも大切になって、そしてこの学校で、有栖と帆波にも出会うことが出来た。私には兄さんを含め、大切な物はいくつかあるけれど……ここにいる皆が、その中でもいっとう、何よりも大切なの。だから──」
熱く、そして──
「……なるほど」
天白がひとつ、頷いて。
「……それはつまり、わたしたち4人に対するプロポーズという理解で良い?」
どちゃくそ重かった!!!
「鈴音、あんたの気持ちはすごく伝わってきた。その上で言わせてもらうけど──重おおおおおおいッッ!!!! 」
櫛田、吠える!
「あのねえ! 百合も言ってたけど、プロポーズか!? なによ生涯を共にって!! 卒業してもズッ友宣言ならまだしも、生涯を共にて!! いまどき情熱的なプロポーズでもそこまで言わないわよ!! 見なさい有栖ちゃんと帆波ちゃんを!! 顔真っ赤でしょ!!」
「えと……その……」
「はぅ……」
「にゃはは……」
櫛田、吠える!!
「そもそも! まず、私だって百合とは生涯を添い遂げるつもりでいるけれど、あんた達だって親友なんだからずっと仲良くしたいと思ってるの!! でも私の自惚れじゃなければ皆同じ気持ちでいてくれるって思ってたけど、違う!?」
櫛田、吠え──今天白と添い遂げるって言った?
「ち、ちがわないわ……」
「でしょ!? そんでもって先の事なんか分からないけど、たとえ別々の大学に行ったって、そのあと別々の道に進んでいったって、どーせあんたが寂しがるから定期的に会うだろうし、なんなら私が皆を誘うし! そう思ってたら──生涯を共にて!! 何度も言うけど、プロポーズか!?」
「え……っと、そう、そうね……ええ。プロポーズと受け取ってもらって構わないわ」
「あ、そっちに振り切ってしまうんですね……」
「はわわ……! ど、どうしよう……!!」
吠える櫛田に押されたのか、堀北が変な方向に覚悟を決めてしまった。大丈夫か? ギャンブルで身持ちを崩す人の思考では???
と、一通り吠えた事で少しクールダウンしたのか、櫛田がため息をつきながらも坂柳と一之瀬に問いかけた。
「はぁ……有栖ちゃんと帆波ちゃんはどう? いきなりで戸惑っているかもしれないけど、今のプロポ──いや、一生一緒に居たい発言について」
「私からのプロポーズと受け取ってちょうだい」
「うるさいわよ! なんでちょっと開き直ってんのよ!!」
堀北が混乱しているのか腹を括っているのか分からないが、頬は紅潮し若干の発汗が認められる為、冷静では無いことは確かだった。羞恥もあるのだろうが。
で、話を振られた坂柳と一之瀬はというと……。
「えーっと……うん。私も皆とはずーっと仲良くしたいって思ってたよ。それこそ卒業した後も」
この五人の中で、一之瀬は一番交友を結んだのが遅く、その付き合いは半年ほど。入学初日には櫛田と連絡先を交換しており、当然『友達』判定もその際に行われたのだが、そこから『親友』にカテゴリされるようになったのは夏休みだ。
実は、一之瀬と一番付き合いが深いのは、意外かもしれないが天白ではなく櫛田なのである。
当初こそ自身の上位互換ともいえる存在の一之瀬に対し、内心対抗心を燃やしていたのだが、夏休みの一件で天白が一之瀬の好みドストライクである発言を聞き、手のひらくるくるで親友認定。櫛田は同担歓迎なタイプだった。
また、一之瀬も自身の抱える悩み──中学時代のあれこれ──を天白が絶対的に信頼している櫛田に対して相談をしたことがあり、天白とほぼ一言一句同じ回答を返された。その際、櫛田の裏の顔──通称黒櫛田についても『貴女を信用して話すけど』という前置きで聞き、それでも皆と友好的に接しようとする姿勢に敬意を覚えた。
櫛田にとって自分に表と裏があるという事は隠し通さなければいけない重要事項ではなく、ブランディングへの影響もあるので大っぴらには言えないが親友までならば情報開示もやぶさかではない。他の二人の親友(堀北・坂柳)は開示せずとも見抜いてきたので今更なのだが。
と、いうわけで。お互いの秘密を打ち明けあった櫛田と一之瀬は気兼ねなく話すことが出来る親友として、天白関係なくちょくちょく共に過ごすようになっていた。
その二人でいるコンビを誰が呼んだか【ツインエンジェル】。養殖と天然という違いはあるが、誰にでも優しい二人は天使のレッテルを貼られたようだ。怪盗天使ではない。
「でも将来の事ってまだ全然で……今のところ、いい大学に奨学金を使って入れればとは思ってるんだけど、どんな職業にしようっていうのは……」
「いやそれが普通だよ帆波ちゃん。まだ私たち高校一年生なんだから、この段階で仲が良い友達と生涯を共に過ごす覚悟を決めるのは、よっぽど惚れ込んでないと無理」
堀北は“ちいさくなる”を使った!
「……有栖ちゃんは?」
「概ね帆波さんと同じ意見ですが……少し、思いついた事はあります」
べた惚れを指摘され、縮こまってしまった堀北をにやにやしながら天白が見つめつつ、坂柳に話を振った。
「私はある理由でこの学校に生徒一人を職員としてねじ込もうと考えていたのですが、その為に私自身もここに籍を置くことも有り得ると想定していました。ですが、少々事情が変わったそうで──」
坂柳は要所をぼかして話したが、1学期の際にDクラスの綾小路と結んだ契約──卒業後もホワイトルームからの干渉をされない自由を与える──を履行するための手段として、外部からの介入が難しい高度育成高等学校の職員として就職させることを想定していた。
していたのだが。
天白の父親と話した後、再度父である成守──理事長に綾小路と二人で呼ばれた坂柳が聞かされたのは、ホワイトルームがなんらかのトラブルで再度稼働停止に……それも、無期停止になったという衝撃の事実だった。
成守は言葉を濁しまくっていた為詳細は聞けず仕舞いだったが、どうやら成守が天白の父親に依頼して抑えようとしたことが効果が出過ぎてしまったらしい。
どういうことだと追及しても、『kawaii』だの『男の娘』だの『プロダクション』だのといった要領を得ない情報しか出てこない。おそらく、成守自身もどうしてそうなったのかが分かっていないのだろうと推察をした。
再度成守から「今後ホワイトルームが綾小路清隆に対して干渉をすることは無いとは言い切れないが、少なくとも強引に連れ戻すような手段は取れなくなった」という言葉を引き出し、納得は出来ないが理解はした。綾小路は終始宇宙を見た猫のような表情をしていた。
「そういうことですので、私も将来何になるかを考えている最中なのですが……大学を卒業した後、起業するのもいいかもしれません」
「起業……?」
「はい。女子高生社長というのもあるそうで……どういったものにするかはこれから考えるとして、少なくとも、何をするにしてもこの高校は人材の宝庫ですから」
なので、と坂柳は言葉を区切って。
「皆さんもどうでしょうか。どういう事業をするか……みんなで、夢を創りませんか?」
それは、優秀が故に何でも出来、何でも出来るが故に選択肢の多さに悩んでいた少女達への殺し文句となった。
◇
深夜。
窓の外で舞い落ちる粉雪が音を呑み込み、しんとした静けさに包まれた部屋には、すぅすぅと寝息を立てる少女たちの姿があった。
せっかくだしお泊りしようということで、物の無い櫛田の部屋──天白の部屋でほぼ同棲している為──に布団を運び込み、5人並んで横になっていた。
寝場所については厳正なじゃんけんの結果、左から一之瀬、天白、堀北、櫛田、坂柳の順となっている。
真ん中──天白と櫛田に挟まれる位置を勝ち取った堀北は、上手く寝付けなかったようでゆっくりと上体を起こし、隣で寝息を立てている親友達を見る。
明晰な頭脳でクラスどころか学年全体の動きを読み切り、そうと分からないように操る坂柳。
参謀に専念することで、その坂柳に匹敵する読みを見せ、また優れた人格者であることから人望の厚い一之瀬。
学年を飛び越えいまや全校生徒、職員に至るまで独自のネットワークを広げた情報戦の怪物の櫛田。
声とマッサージで人をほぐし絆していく妖怪、天白。
自分にはもったいないほど、優れた親友達であると思う。また、この四人と並び立つには、堀北は実力が足りていない、とも。
ならばこそ。
(もっと、もっと。変わらなくちゃいけない)
強くなりたい。彼女たちの隣に、胸を張って立てるように。
(やりましょう。外村くんと佐倉さん、綾小路くんと立てたあの計画を)
堀北は静かに、決意した。
・メロ北メロ音
ハリネズミ堀北は風邪で苦しい思いをしているとき、少し安心した程度で寝込んでしまった事に「自分は駄目な子」と心が折れかけていた。そこを天白と櫛田が懸命な看病をしてくれた事でドロドロに重たい感情を抱いてしまう。それは依存に近く、中学の時に堀北を推薦した教師はその部分を懸念点として報告した結果、1人だけDクラスに編入されたという裏話。
・ほあいとるーむ
ナレ死
どうなったかは想像にお任せ。
・男の娘
???「綾小路清隆にも出来ない事であれば僕が上であるという証明になる……? ヨシ!」
最終話だけは書けるんですけど、助走も無い段階でお出しするわけにはいかず……。なので最後の特別試験前に少し閑話を挟み、終わらせます。
次は流石にこんなに遅くならないと思います。次話はある程度書き終えてるので……あと裏も更新控えてます。
次の日常回何やる問題
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堀北、坂柳、椎名のビブリオガールズトーク
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堀北(兄)、南雲の漢祭り
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きよぽんグループ(外村平田)のオタトーク
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漢葛城、その苦悩
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幼馴染と部屋でイチャイチャするだけ