コミュ力おばけと幼馴染(♀)がイチャコラするだけの話 作:百合好きの獣
誤字報告も本当にありがとうございます。見逃しというよりは作者の知性が足りていないのが原因のような気がします。本当にありがとうございました。死にます。
また、この話はこれまで以上に頭が悪いのでご注意ください。
頭空っぽにして読んで下さい。作者の頭は空っぽです。
とあるカラオケルームの一室。数十人が入れる大規模なパーティールームにて、地獄が広がっていた。
「「「「「…………………」」」」」
胸を抑えピクリとも動かなくなった生徒。鼻血を出しながら恍惚の表情で気を失っている生徒。逃げようとしたのか、扉に向かって手を伸ばした姿勢で地に沈んでいる生徒。
死屍累々。あるいは地獄絵図。生者の気配が欠片も感じ取れない。
その中でただ一人、部屋の中心に立ち、マイクを片手に持った少女――天白百合は呆然とした表情で呟いた。
「……どうして、こうなった」
こっちが知りたい。
◇
「せーの、かんぱーい!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
この日、1年Aクラスはカラオケルームにて打ち上げを行っていた。
中間テストが終了し、無事に全員が赤点を回避することが出来たのだ。
いや、回避するどころか、ほぼ全員が全教科で満点を取るという驚くべき結果となっている。
いくらAクラスが優秀な生徒が集まっているとは言え、この結果には当然からくりが存在する。
「やはり、過去問と全ての問題が一致していましたね」
「ああ。問題文までご丁寧に一言一句同じなのは、流石に笑いそうになった」
櫛田の音頭によって開幕となった打ち上げの席。リーダーとして部屋の中央付近の椅子に腰掛けた坂柳と葛城が静かに言葉を交わしていた。
「『赤点を回避する方法は確実にある』という真嶋先生の言葉がそのままの意味で裏技が用意されているとは思いませんでした」
坂柳は問題傾向が毎年同じなのかと考え、櫛田コミュニティを通じて二年生から過去問を購入していた。パターンを把握する為にその前に行われた小テスト分も手に入れ確認してみれば、結果はまさかの全問一致。坂柳もこれには困惑した。
その後、三年生からも同じく過去問を購入してみれば、これもまた完全一致。むしろこれは一年生をハメるための罠なんじゃ無いかと勘ぐった程だ。
「過去問については、一応、一年生時に行われる全ての定期テスト分を購入しましたが……今後もテストが同じとは限りませんし、その可能性は低いでしょう。あくまでも参考程度に考えるのが良いかと」
「ああ。それが良いだろうな。……一応俺の方でも、万が一を考えて真嶋先生に確認してみたが、どうやら点数をポイントで買えるようだ。今回の中間テストでは、1点で10万PPだそうだ。テストによって変わるだろうが、プライベートポイントは貯めておいて損は無いだろう」
「同感です。天白さんの尽力によってそこそこの額が溜まってきています。クラスポイントも増え、毎月Aクラスに振り込まれる額も上がったのですから、寄付金でも募りますか?」
「いい考えだと思う。一学生に毎月10万は卒業後の金銭感覚も狂うだろうからな。これについてはまた別途考えるとしよう」
「ええ」
坂柳は室内を見回す。
談笑するもの、歌うもの、ひたすらお菓子を摘む者。過ごし方はそれぞれだが、皆が楽しそうに笑っているのを見ていると、坂柳の胸に暖かい何かが灯った。
「……一つ、懸念があります」
ぽつりと零した坂柳の一言は、葛城だけでなく声掛け回りを終えて戻ってきた櫛田の耳にも届いた。
「どうしたの?」
「定期テストには明確な抜け道がありました。これによってクラスポイントが全クラス増加しましたが、差はテスト前と変わっていません。テスト以外にも、何かクラスポイントが増減する機会があると考えるのが自然でしょう」
「あー、うん。多分そうだと思う。先輩に聞いてみたけど、AとBとか、CとDとか。近いクラス同士で入れ替わった事はやっぱりあるみたい」
「テスト以外となると……体育祭、とかか?」
「それでしたら、私は恐らく役には立てないでしょうね」
自嘲気味に坂柳は笑った。どうしたって身体能力のハンデが足を引っ張ってくる。これでは、クラスの迷惑になってしまうのではないか。そう考えてしまい、暗い気分となった坂柳の手を櫛田の手が優しく包んだ。
「そんなこと無いよ。後ろで指示を出してくれるだけで、有栖ちゃんが居るだけで皆頑張ろうって気持ちになれる。それに、皆でやれることを精一杯やって、支え合うのが仲間だって私は思うな」
「ああ。俺も微力ながら力になろう。坂柳、このクラスにはお前が必要だ」
「桔梗さん……葛城くん……」
この坂柳、制限がなくなりやれることが増えた事で、逆に自分では劣ってしまう部分――主に、身体能力関係だ――に対して、自信が無くなっていた。
本来であれば、そのコンプレックスを他者の支配という手段で解決する攻撃的な性格になってしまっていたのかもしれないが、天白一家による劇的ビフォーアフターにより攻撃性が損なわれた為、このような結果となっている。だいたいあいつらのせいである。
「ありがとうございます。……せっかくのお祝いの席なのになんだか湿っぽくなってしまいましたね」
櫛田に頭を撫でられながら、坂柳はふわりと微笑んで見せた。
試験の事についてはこれから考えればいいだろう。教師の言葉がヒントとなることはこれまでの事から明らかなので、注意して観察していれば出遅れるという事も無いはずだ。
頭脳労働は自分の仕事である、と坂柳は静かに決意を固めた。
「……あら? そういえば、百合さんはどちらですか?」
櫛田、葛城と幹部三名で話しているのに彼女が入ってこない事に疑問を感じた坂柳がきょろきょろとあたりを見回す。
櫛田が少し困ったように頬を掻きながらある一点を指差し、それにつられて視線を向ける。
「百合は、あそこだよ」
なんか居る。
両手にマラカスを持ちしゃかしゃかと振りながら、ポッキー等の菓子類を左右から餌付けされている天白百合が。
「……あれは、何をされているのですか?」
「……わからん」
Aクラストップの頭脳を誇る二人でも、あの光景は理解が出来ないようだ。
だがご安心あれ。ここに天白の事になれば天下一の理解力を誇る櫛田が居る。
「多分、百合はいつもみたいにちょこちょこお菓子配ったり飲み物注いだりして回ってたんだけど、普段からずっとそういう役回りだしマッサージ店で一人だけフルタイムだしで働き詰めだから捕まって甘やかされてるんだと思う」
つまり……どういうことだ??
よくわからないが、櫛田曰く可愛がられているだけらしい。中学生の時もこういう催しがあればいつの間にか攫われてVIP待遇となっているので、天白も櫛田も慣れたものらしい。いいのかそれで。
「そういうことだから、あまり気にしなくてもいいよ」
「そうは言ってもな……いや、櫛田が良いというなら良いんだが」
櫛田の目的としては天白と一緒に一番の人気者になってチヤホヤされることなので、天白が構われるのは別に良いらしい。
それはそれとして「私の百合が」という嫉妬はあるため、ストレス値は微増している。この会が終わったら天白はさらにもみくちゃにされるだろう。その結果櫛田がめちゃくちゃにされるのだ。南無。
「ほら、丁度他の人も歌い終わったみたいだし、二人も歌おうよ!」
「あ、ああ……」
「えっと、私はあまり歌ったことが無いのですが……」
「大丈夫! 知ってる曲があれば一緒に歌うよ! 大体テレビで流れてる様な曲なら網羅してるから」
この櫛田という女、中学生では頻繁にカラオケに行っていた事と、話の種とするため一通りの流行曲は網羅している。ことカラオケにおいては万能。カラオケクイーンだった。
その後、三人のそれぞれが歌った曲はフロアを大いに沸かせたのだった。
葛城は響き渡るバリトンボイスで観客を魅了し。
櫛田はアイドルソングで聴衆の心を掴んだ。
坂柳は櫛田とデュエットすることで、可愛いの光で聞くものを浄化させた。
そして一方、天白はというと。
「はい、天白ちゃんあーん!」
「……んむ」
絶賛餌付けをされていた。
クラスメイトたちが歌う曲に合わせてマラカスを振って盛り上げようとしているが、ひっきりなしに左右からお菓子が差し出されるため落ち着かない。
「はぁ……はぁ……可愛すぎる……!」
「まじ天使なんだけど……! お持ち帰りしたい……!」
ちょこちょこ危険なやつも混じっていた。一応、可愛がられているようではある。
小さな口でぽりぽりと棒菓子を齧る度、女子から黄色い声が上がる。
クラスの男共はその様子をみて腕を組みながら「うむ」と頷いていた。貴様らもか。
天白としては不服ではある。あれこれ他の人の世話を焼きたい。奉仕することこそ生きること也と胸に誓ったはずなのに。
が、それをしようとすると周りが非常に申し訳無さそうな顔と悲しそうな顔をしてくるので、大人しくしている。とはいえ不満が若干表情に出ているが、少しむくれながらも素直にお菓子をもむもむする姿はそれはそれで可愛いので女子も大盛りあがりだ。
しばらくされるがままにしていると、どうやら葛城達が歌う事になったようだ。
櫛田が歌うとあればと、天白もぱぁっと顔を輝かせた。お菓子をあげようとしていた右の女子が胸を抑えて死んだ。
坂柳と櫛田のデュエットの時は、小さな手を一生懸命振りながら、しゃかしゃかリズムを取り始める。頭を撫でていた左の女子が鼻を抑えて死んだ。平和な打ち上げがあっという間に殺人現場に変貌した。
既に二名死人が出たが、Aクラスでは日常茶飯事の事らしいので、死体をどけ、新たなクラスメイトが両隣に座った。それでいいのか?
尚、死体はその後数分もすれば何事も無かったかのように動き出し始める。軽率に生き返るな。
Aクラス幹部三名による歌唱は大盛りあがりだった。全員が惜しみ無い拍手を送り、葛城と坂柳は照れくさそうにぺこりとお辞儀をして席に座った。
櫛田は笑顔で手を振っている。カラオケクイーンはファンサも忘れない。
「あ、ねえ。天白ちゃんは歌わないの?」
そういえば、と一人の女子生徒が思い出したかのように天白に問いかけた。それを聞いた天白は難しい顔をして首を横に振った。
「……わたしは、歌うのはいいかな。聞いてる方が、好きだし」
「えー! でも天白ちゃんの声すっごく可愛いし、聞いてみたいな!」
粘られてしまった。
しかも、それが周りにも聞こえてしまったようで
「え、天白ちゃん歌うの?」
「聞きたすぎる……」
「スゥーッ……よし」
「おい服を脱ぎ始めたこいつをつまみだせ」
と何やら騒ぎが大きくなってしまった。期待のあまり全裸待機をしようとしたやつは縄で縛られてその辺に転がされた。
天白は困った表情で櫛田を見るも、彼女は笑顔で「よし」と親指を立ててサムズアップした。
まあ、彼女から許可が出たならいいだろうと天白はしぶしぶデンモクを操作し始める。
ちょっと様子がおかしいなと気づいた坂柳は、心配そうな表情で櫛田に質問を投げた。
「……あの、百合さんですが、あまり歌いたがっていないのでは」
「あー、うん。大丈夫だよ。歌うのは嫌いじゃないって言ってたし」
カラカラと笑う櫛田の様子を見るに大丈夫そうであるが、だとしたら彼女が渋っていたのは何故なのか。
「櫛田、あまりこういう事を聞くのは失礼だと思うんだが、天白の歌はどうなんだ?」
歌に自信が無くて嫌がったのだろうかと葛城は推測したようである。が、櫛田は違うよと首を横に振って否定した。
「百合は歌うの上手だよ。ただ、それが逆に問題っていうか――」
「問題、ですか?」
「覚悟はしておいた方がいいかも」
その言葉に嫌な予感がし始めた葛城であるが、既に天白は選曲を終え、曲のタイトルがスクリーンへと映し出された。
その曲名は葛城は聞いた事が無かったが、見たところ恋愛ソングだろうか。珍しいなと呑気に考えた。
――その曲が何かを知っている者で、これから起きる惨状を察した一部の目ざとい者は腰を浮かせて退避しようとした。
だが、遅かった。
「……せーのっ♪」
自然界に存在するものには、必ず『ゆらぎ』が存在している。
一見、全く動くこと無く一定に見えるものでも、厳密に言えば一定ではない。ごく微小にではあるが、動きがあるのだ。
そのゆらぎが大きいと不安になったり、逆に小さいと単調で飽きてしまったりと、情動に作用する効果がある。
そしてそのゆらぎの突発性や規則性、予測性と逸脱性などがすべてちょうどいい組み合わせとなり、居心地の良い空間や情報を与えるゆらぎの事を『1/fゆらぎ』という。
ようは、見たり聞いたりするだけで落ち着くような物、声、音などの事だ。
さて、ここまで聞いて何か思い当たる事はないだろうか。例えば、なんか話してるだけで心を落ち着かせてくるやつの事とか。
そう、天白百合の声も、この『1/fゆらぎ』が発生している。さらにそれを性質の悪いことに自覚し、効果的に使っているのが天白である。
そんな天白が歌うと、どうなるのか。
まず心が落ち着く。落ち着くとどうなるのか? 曲と声がスっと頭に入ってくる。
天白の歌が、ノーガードで脳を揺らすのだ。
天白が歌った曲は、一昔前のアニメで使用された、ばちくそに可愛いキャラソンである。
そして天白の声は、一般にかわいい声と言われるものである。
かわいい子がかわいい曲をかわいい声でかわいく歌うのだ。世界が一つ生まれそうな程のかわいいビッグバンに、それを聞いた者の脳は破壊された。
まず両脇にいた生徒が死んだ。本日二度目の死である。その表情は恍惚としていて幸せそうだった。
そして死は広がった。
ある者は胸を押さえて死に。かわいいの過剰摂取に外へと逃げ出そうとした者もとどめを刺されて地に沈んだ。
櫛田は鼻を押さえて悶絶し、葛城もかわいいに細胞を侵食され真っ白になっている。
坂柳はかろうじて意識を保っているが、顔をりんごみたいに赤く染め、瞳を潤ませながら天白を見つめていた。様子がおかしい。
「……みんな、死んでしまった」
そして誰も、居なくなった。
これ以降、天白が歌をリクエストされることは無くなった。
そろそろ毎日投稿が途切れそう。
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