轟々と強い風の吹く音が聞こえる
やっと楽になれたんだ、静かにゆっくりさせてほしいものだ。
苛立ちと共に目を開く、見えるのは星空それ以外は何も無い。
煩いのを我慢すれば、景色の良い場所だ。
せっかくだゆっくりと景色を眺めようと身体を起こしてみれば先ほどまで存在していなかった人間が1人。
死んでやることもないのだ、どうせなら話しかけてみよう。
「こんにちは、いや、こんばんは?あの世にそんなものがあるかは知らないけどね」
相手はこちらに気が付いていなかったようで、目を見開いた
「…ッ?!こ、こんばんは?あなたも死んだんですか?」
「ああ、ごめんね。驚かせてしまって、隣いいかな?…ありがとう。そうみたいだ僕はその、ね、事故とかではなくてね自分で命を絶ったんだ。君は?」
ハッと質問したことを後悔するような顔をする少年。まだ出会って数秒の相手にそう思える子だ、優しい子なのだろう。
視線で気にしなくていいよ、と伝えると目礼をしてくれた。
「自殺…。あ、俺は
「
「……?えーと?」
そういうことか…、突拍子の無いはずの考えが途端にはっきりと形を持ち始める。
次の質問をすることに少しの興奮と恐怖を覚える。予感が確信に変わることが怖いのだろう。
「ああ、そうだね…オールマイトはいるかな?」
「もちろん!オールマイトを知らない人はいませんよ」
「そうだね、彼はナンバーワンだから。…そうだ君の個性は?」
この質問をしたときに彼は目をつむり、うつむいた。触れるべきではない。
己の良心が「無理に聞くことではない」と訴えてくるが無視する。
「……俺の個性は円《サークル》自分を起点に円を作って、その中では物を自由に動かすことが出来ます」
大当たりじゃないか!聞く限りONEPIECEのトラファルガー・ローによく似た個性だ。
「こんな個性じゃヒーローにはなれなくて、進路をどうしようと迷っていたところで死にました。ちょうどよかったですよ、諦めがつきました。」
「そうかなあ、僕には素晴らしい個性に思えるけど。とても羨ましいよ。」
信じてはいないのだろう、苦笑いしながら感謝の言葉を言われる。
そこからは他愛のない会話を沢山した、好きなヒーローの話、やってみたかったこと、抱いていた夢。
わずかな時間しか僕らは一緒にいなかったけれど、確かに友情を感じていた。
突然、星空が明るんできた。お互いに言葉は無かったが、最期なんだと理解できた。
「楽しかったよ、最期に君のような友達が出来て良かった。」
彼は少し目を見開くと、晴れ渡るような笑顔を浮かべる。
「こちらこそ、最後の最期に俺は友達に恵まれた!」
思えば名前も知らないことに気が付いた。本当に今更だな…
「自己紹介がまだだったね、僕の名前は…○○。君は?」
「俺の名前は△△。」
「よろしく、そしてさようなら。この世で最初で最後の友達」
「さようなら、俺の親友。またいつか」
空間が光で満ちていく。
もう二度と出会うことは無いだろう親友を思い目を閉じる。
……また、真っ黒で静かな場所にいる。
ここが最果てだろうか、ゆっくりと目を開く。
ピッピッピッ、規則正しい機械音、白い天井
身体は動かせないので、目だけで周りを観察する。
…病院だ。最悪だ死にそこなったのか。
ガラスに写る自身の身体に目をやる。
嗚呼、そうかそういうことか涙で前が見づらいが言わねばなるまい。
「初めまして、こんにちは僕の親友」
僕が起きたことに気が付いた看護師が駆け込んできて何かを言っているけれど緊張が緩んだ身体は言うことを聞かず、再び意識を飛ばした。