War Commander’s 異世界傭兵戦記 作:ウルヴァリン
今日は魔物の討伐依頼を引き受けている。ハーヴィットの街道上に最近になってファングボアの群が目撃されるようになっているらしく、旅人や商隊に少なからずの被害が出ているとのことだ。
ミィとシルヴィ達の情報では、山の麓でこの国の騎士団が定期的な野営訓練をしているらしく、その訓練で棲家を追われた群れがこちらに来たとのことだ。
ファングボアの群れには申し訳ないがこちらとしても街を守る必要があるし、何よりも依頼だ。
だから手間をかけないで、なるべく痛みを与えないようにすることにした。
「ふぅ……これで全部だな」
倒したファングボアの亡骸をあらかじめ用意しておいた荷馬車に詰め込み、直射日光が当たらないように布を上からかける。
仕留めたのはファングボアの番に子供が2匹。このファングボアは完全な被害者なので本当に申し訳ないと感じながら、手を合わせて黙祷。
せめて無駄にならないように肉はシャムさんに卸して内臓は薬になるとのことで製薬組合、骨は武具になるとのことなので鍛治組合、毛皮は衣服店に卸すことにしよう。
命を頂くんだ。絶対に無駄にしてはいけない。
解体自体は組合の解体職人に頼めばやってくれるし、卸先を指定すれば後はやってくれるとのことだ。
依頼を完了させたので街に戻ろうとした瞬間、少し離れた場所から何が騒がしい気配を感じ取った。馬を待たせながら今回のメインアームとして選択したセミオートスナイパーライフルのM110A2に7.62mm先進徹甲弾のM1158を装填して慎重に茂みを進む。
少ししてから騒ぎの正体がなんなのかすぐに分かった。街の衛兵隊が訓練中のようだったが魔物と遭遇したようで、交戦中だった。
魔物はアンガーマンティスという花カマキリの姿をした魔物で、両手の鎌と強靭な顎が最大の武器としていると資料にあった。
衛兵は戦い慣れていないようですでに数人が死亡していて、今も1匹が衛兵の1人を捕まえて頭から捕食している。
このままでは衛兵隊の全滅は目に見えていたので、VCOGのレティクルを調整してアンガーマンティスの頭に照準を合わせてトリガーを弾いた。
銃声と共にアンガーマンティスの頭に弾薬が命中。アンガーマンティスは頭に風穴を開けて痙攣しながら暫くして動かなくなった。
銃声を聞いたマンティスはすぐにこちらを察知したが、素早くもう1匹に合わせて素早く射撃して倒して隙を与えない。同じように頭部に1発喰らわせると仲間を失ったマンティスは鎌を高々と掲げながらこちらに突っ込んできた。
「こっちだカマキリ野郎‼︎」
衛兵隊よりこちらが脅威だと本能的に察したんだろうが、衛兵隊から離れたんなら好都合だ。
素早くセカンダリーアームのM870 MCSに切り替えて12ゲージのバードショットを撃ち込んだ。
数百もの鉛が格納されたバードショットは本来は狩猟やクレー射撃で使われるが、今のように20m程の距離ならば十分な殺傷能力がある。
まずは右の鎌の関節に発砲して吹き飛ばし、動きを止めた瞬間に左の鎌を吹き飛ばす。
立て続けに左右の足を吹き飛ばして身動きを止めてからトドメで頭を吹き飛ばした。
これで制圧した。
「大丈夫か?」
「えっ……あっ……あぁ……」
呆気に取られている衛兵に歩み寄り、倒れたままの奴に手を差し伸べて立ち上がらせた。
「被害は?」
「6人やられた……」
「そうか……残念だ…」
「ところであんたは……」
「桜崎 照史だ。ファングボアの群れを討伐した後にあんた達を見つけてな、加勢させて貰った」
「そうか………助けてくれて感謝する。俺はアレクセイ」
アレクセイと名乗る男は俺と握手を交わす。手はかなり豆が出来ているごつい手で、かなり剣の訓練を積んできたことが伺える。
「アンガーマンティスはこの付近ではよく見るのか?」
「いや、個体によっては来る奴もいるけど基本的には国境付近の森からは出てこない。それに獰猛だけどこんな積極的に狩りなんてしないんだ。待ち伏せして獲物を捕まえる種類だ」
「それがなんであんた達を?」
「分からない……騎士団が何かやらかしたのかもしれない」
ファングボアの親子も騎士団の影響で降りてきたかも知れないとのことだし、そんな性格のアンガーマンティスがいきなり出現した理由としては納得がいく。
棲家を追われたのか、それとも獲物を追って来たかは不明だが、もし騎士団が関係してるならこいつらも被害者となる。
「仲間の遺体はどうするんだ?」
「伝令を出して街から回収用の荷馬車を手配するしかない……」
「だったら俺の荷馬車を使うといい」
「いいのか?」
「あぁ。倒したファングボアと相乗りになるから死者からしたら獣臭いかも知れないけどな」
「寧ろ感謝しかない。何から何まで本当にすまない」
「じゃあ馬車を取ってくる」
そのまま戦後処理として死亡者の遺体をハーヴィットに移送することとなり、少ししてから馬車に死亡者をなるべく丁重に遺体を荷馬車に詰め込んですぐハーヴィットへ向かった。
思ったよりも時間は掛かったが人助けなら仕方がない。
そう考えながら帰路についた……………。