War Commander’s 異世界傭兵戦記 作:ウルヴァリン
衛兵隊の問題は一先ずだが解決した。クィン総隊長とアレクセイがあれから顛末を説明しに来てくれて、あのクソ野郎は暴力事件や今回のような賄賂要求、更にはチンピラ集団とも繋がっていて、一般人家庭を襲わせて金銭を強奪していて事件をもみ消ししていたらしい。
今の奴は砦の地下牢に閉じ込めていて、裁判を待っているが有罪は確実で判決が下ったら間違いなく一生鉱山奴隷に落とされるとのことだ。
これで大丈夫だろう。今日は休日なので昨日から夜更かしして昼まで寝ていた。起きてからシャムさんとミケちゃんと一緒に昼食を食べ、せっかくなのでシャムさんの手伝いをすることにした。
手伝いをすると伝えたら東地区の組合通りにある酒造組合からエールを買って来て欲しいと頼まれたので荷車を引っ張りながら向かった。
「はい、じゃあエール3樽に赤ワイン12本だよ」
「ありがとうございます。支払いはいつも通りと言っていましたが……」
「あいよ。月末に纏めて請求だから納品書を持っていってくれ」
「分かりました」
「じゃあね。ミケちゃんに宜しくね」
荷車にエールが入った樽を3つ、ワインが納められた木箱を乗せると再び引っ張り始める。
この世界の庶民の酒はエールかワインもしくは蜂蜜酒らしく、シャムさんのところで出されているのは庶民向けの苦味が濃いめの色合いをしたペールエールで、麦殻が偶に浮いてくることがある粗悪品だ。味自体は悪くないんだが殻が入り込んでることがあるので価格は安めとなる。
荷車を引っ張りながら何かお土産でも買っていこうと屋台を見ながら移動していると目の前にアレクセイがいて、向こうもこっちを見つけると近寄って来た。
「アレクセイ、どうかしたか?」
「お前を探してたんだよ」
「俺を?」
「あぁ。シャムさんに酒造組合に行ってるって聞いたんだ。待ってればいいとは言われたが少し急ぎの話だからな」
アレクセイが急ぎだと言ったので何だか悪い話かもしれない。荷車を引っ張りながらアレクセイの話を聞くことにした。
「それで何かあったのか?」
「あぁ。街の地下にある地下牢の衛兵から連絡が来たんだが、シャイセが脱獄した」
「シャイセ?」
「前にお前に賄賂を要求した奴だ」
あのクソ野郎のことか……ていうか名前がドイツ語でくそったれを意味するシャイセってくそにはくその名前がつくのは何故か納得してしまう。
「どうやって脱獄したんだ?」
「奴の仲間が衛兵隊の鎧を盗んで忍び込んでたらしい。保管庫の点検で1人分無くなっていることが発覚して、調査してたら奴が脱獄したと報告が上がって、見張りに紛れ込んで交代にでも来たとしといて鍵を受け取ったんだろう」
「管理が杜撰なんじゃないか?」
「本当にな……」
「それで、何で俺に身内の恥を晒すようなことを?」
「奴は犯罪組織とも繋がりがあった。間違いなくまだ街に潜んでるだろうが、奴はお前を狙ってるはずだ」
「………逆恨みからの復讐か?」
そう言うとアレクセイは頷く。
「犯罪組織からしたら定期的に資金が入る奴の横領を潰されたんだ。組織ぐるみでお前に襲いかかる可能性がある」
「全く迷惑な話だ」
「本当にすまない」
「アレクセイは悪くないよ。それで俺はどうすれば?」
「現状では警戒だけしといてくれ。だが滞在先は変えた方がいいかもしれないぞ」
「とはいってもな………シャムさんのところは気に入ってるし、他に滞在できる場所なんてな…」
「まぁとにかく検討してくれ。少しの期間なら衛兵隊の寮にも滞在できるし、総隊長の許可もとってある」
「分かった。けど奴が来たら生死はどうなる?」
「懸賞金が懸けられたら例外なく生死問わずだが、生きたままなら満額支払いで死んでたら2割減る。捕まえようと考えてるなら大歓迎だが、犯罪組織は見境なく襲ってくるから場所には気をつけてくれ」
「了解だ」
「じゃあ伝えたから俺は戻る。くれぐれも無茶はするなよ」
それだけいうとアレクセイは来た道を引き返していく。だが厄介なことになっていそうでため息を吐いてしまうが、今はお使いを終わらせたい。
移動している間にどうするか考えるとしよう…………。