War Commander’s 異世界傭兵戦記 作:ウルヴァリン
シルヴィたちの勧めを受けてハーヴィットの北部地区にあるフランツ商会に足を運んだが気があまり乗らなかった。
話によるとフランツ商会はクィン総隊長の実家であるバルメッサ商会の傘下に入っている奴隷商会で、奴隷に関してあまりいい印象はない。
というか前の世界では奴隷は絶対にタブーだし、奴隷を扱っていたのは韓国や中国などのテロ国家やテロ組織くらいだ。
だけどだからといってこの世界の文化に口出しするのはお門違いというもの。
それにこの世界の奴隷は俺がイメージしていた奴隷とは違い、人材派遣の側面もあるようであり、存在や取り扱いは国によって非常に厳しい法律で守られている。それを破れば自身も犯罪奴隷落ちという未来が待ち受けているとラウラが教えてくれた。
書いてくれた地図を片手に建物は他と同じであるフランツ商会に到着。扉を開けるとベルが鳴ってきれいに掃除されたロビーが広がった。
「いらっしゃいませ。ようこそフランツ商会へ」
「すみません、奴隷購入で相談に来たのですが・・・・・・」
「ありがとうございます。では内容をお聞きさせていただけますか?」
受付にいたのは眼鏡をかけた桃色の髪をサイドポニーで束ね、ピンクと白の女性用ビジネススーツのような服装をした女性だ。頭には黒い角があり、腰当たりから細く黒い尻尾が生えている。特徴からして魔族だろう。
窓側にあるソファーに案内されて腰かけ、机を挟んで反対側のソファーに女性が座った。
「改めまして当フランツ商会にお越しいただきましてありがとうございます。私は支配人のアメリアと申します」
「ご丁寧にどうも。自分は冒険者組合“山越の風”所属の・・・」
「ご周知させていただいております。桜崎 照史様」
「自分をご存じで?」
「商人は情報が命でございます。バジリスクの変異体を難なく倒し、追放された衛兵と懸賞金が掛けられた凶悪犯の襲撃を返り討ちにした斑の服装をした黒髪のヒュムと言いましたら、この町ではおひとりのみです」
もうそこまで広がっていることに何だかこっぱずかしくなる。従業員が紅茶を運んできてくれたので一口飲んで落ち着かせる。
「なんともお恥ずかしい限りです」
「ご謙遜を・・・・・・それで奴隷購入ということですが、どなたからの紹介でしょうか?」
「紹介というわけではないのですが、等級昇格の推奨があって、その条件で最低でも1人とパーティーを組む必要があるんです」
「なるほど・・・つまり桜崎様は冒険や依頼の従者もしくは仲間をお求めになられていると?」
「そうなります」
アメリアさんは胸の谷間から手帳を取り出し、羽ペンを使って俺の内容を書き込んでいく。というか胸元を強調しているのかと思ったが、谷間に手を入れた瞬間に小さく魔法陣が光っていたので、おそらくは収納魔法の類を胸元に設置しているんだろう。
「ではお聞きさせていただきます。どのような奴隷をご所望でしょう?」
「そうですね・・・・・・俺自身奴隷の印象はふんわりしているんですが、自分の役職が銃士なので前衛もしくは斥候に長けた人物がいいですね」
「冒険者で銃士とは珍しい・・・種族や性別は?」
「特に拘りはないですが女性が理想的です。男では見えない視点とか俺では気が付かない発想や意見をくれたら依頼なんかで助かると思うんです」
「ふふふ・・・・・・お優しいのですね。夜のお相手も含めますか?」
「・・・・・・それは任せます」
「あらあら・・・・・・そういえば桜崎様は奴隷に関する法律や概要はご存知でしょうか?」
「表面程度なら」
「ここヴェルダ王国では奴隷取り扱い規制法というものがございます。奴隷の雇用主は衣食住を用意し、犯罪奴隷を例外として不当な扱いをしてはならない。これを違反すれば雇用主は奴隷を購入した商会に返還され、雇用主自身も犯罪奴隷として重い罰則を与えられることになります」
「奴隷には種類があるんですか?」
「はい。奴隷には大きく分けて4種類に区分されます。まずは一般奴隷でこちらは犯罪履歴がない一般人で、希望した職種に就職するための手段として設けられています。次に専門奴隷でこちらは基本的に一般奴隷と変わりませんが、こちらは執事やメイド、会計士など専門知識や技術を有した奴隷が該当していています」
やっぱりこの世界のでは普通の奴隷は奴隷というよりも人材発掘でスカウトされた存在のようだ。
「3つ目は戦闘奴隷で桜崎様のご要望がこちらになります。冒険者や傭兵、戦争で捕虜になった敵国の兵士や騎士、剣闘士などが該当して戦闘を前提としていますので少し高額になります。最後が犯罪奴隷で文字通り犯罪を犯して奴隷落ちになった犯罪者を指します。非常に能力の幅が広がっていてダイヤモンドの原石がいるかと思えば本当に使いようがない凡人など様々で、こちらのみ奴隷取り扱い法が適応されません。ですので大半が鉱山での強制労働で酷使されたり、戦争において隊列の最前列で矢除けや陽動で使われます」
「ずいぶんと細かいんですね」
「他にも一応はありますけどこの4種が一般的です。それと雇用の際に雇用主が何らかの理由で死去した場合、基本的に購入した商会へ戻されますが、遺書を用意していただけたら奴隷を解放したり、財産や地位をそのまま奴隷に相続させることも可能となっていますが、その点はどうされますか?」
「そうですね・・・・・・・・・・・・思い浮かばないですね」
「まぁ、こちらは購入した後にでも設定できますので今は気にされなくても大丈夫です。それと最後に失礼ですが、予算のほどはいかほどでしょうか?」
「金貨40枚ですね」
「でしたら十分です。商会で取り扱っている奴隷の大半を購入可能となります」
「ちなみに今後の参考程度に聞きたいんですが、奴隷の平均的な金額ってどのくらいなのですか?」
「種族や能力、情勢によって幅がありますね。標準としては借金奴隷を除いたヒュムで、こちらは健康状態が良ければ金貨15枚となります。専門奴隷と戦闘奴隷は能力によって変化しますが基本的には専門奴隷が25枚で戦闘奴隷は30枚ほど。犯罪奴隷は特性の理由で一般の方は購入できませんが、基本的に鉱山や開拓地責任者向けでこちらは犯罪歴、種族、経歴に問わず定額で1人金貨2枚となりますのでまとめ買いされる雇用者が多いです」
確かに幅が広いが思ったより価格が低いんだな。そういえば奴隷が存在していた前の世界では奴隷の金額は基本的に円換算で30万前後だって聞いたことがある。
一通り聞き終わったようで、アメリアさんは手帳を再び胸元に戻し、立ち上がった。
「では今から奴隷を見て回りましょうか?」
「わかりました。お願いします」
アメリアさんの案内を受けて俺も後に続いた・・・・・・・・・・・・。