War Commander’s 異世界傭兵戦記 作:ウルヴァリン
廃坑前の集落で一泊し、次の日の朝で宿を出た。レンタルした馬の返却を女将に頼んで、集落の裏手にある入り口から廃坑へと進んだ。だが気になることがあって、廃坑とはいえ、入り口がかなり頑丈な鉄の扉で厳重に閉鎖されていた。
「足元に気を付けてねルシャナ。暗いし足元も悪いからけがをしないで」
「御心配には及びませんご主人様。暗い場所で眼は利きますからしっかり見えてます」
暗い坑道を線路伝いに進んでいく。坑道の中はやはり暗く、冷風はここまでは来ないがそれでも肌寒さはECWCSを着ても感じられてしまう。集落で念のためにルシャナに斧を用意してあげ、狭い場所での運用に適させた。
416の微調整でM300スカウトライトを取り付けて、周辺を照らしながら進んでいると何かが蠢くのを見つけた。
外見は人間だが、皮膚はボロボロで骨の一部が露出していたりと明らかに生きている人間ではない。
「ご主人様・・・」
「あぁ・・・廃坑に鉄製の門が設けられてる理由がこれだな・・・グールだ」
グールとは人がダンジョンや迷宮などの魔力が濃い地域で死んだ場合、体内の魔力が活発化して死後も生きているように身体を動かす現象で生み出された魔物の一種だ。似たような種類でゾンビもいるが、あっちは人工的に魔力を注がれた存在で、共通点としては動きが鈍くなったり、食欲のみで行動するとある。
未だに食を貪ろうとふらふらした歩みで数匹が雄たけびを上げたと同時に襲い掛かってきた。
「来ます!!」
「援護する!!」
襲い掛かってきたグールをルシャナが盾で弾き、それからすぐにグールの頭に斧を叩き込んでかち割る。その隙をついて別のグールが彼女に襲い掛かるが、素早く照準を合わせて頭に5.56mm弾を撃ち込む。脆くなっていたグールの頭は粉みじんに吹き飛び、後ろにいた個体を転倒させる、だがやはり胴体に攻撃をしても致命傷にはならず、少ししてから立ち上がって襲い掛かる。
次々と襲い掛かってくるグールにルシャナは盾で攻撃を防ぎつつ少しずつ後退して隙を生み出し、その意図に気が付いた俺は次々と頭に撃ち込み、少しずつ数を減らしていく。
戦闘開始から数分後にはようやく攻めて来たグールを殲滅し、空になったP-MAGを引き抜き、ポーチから新しいマガジンを取り出して416に挿入した。
「ルシャナ、大丈夫?」
「はい。問題ありません」
「廃坑に入った直後にこれだなんで・・・情報が間違ってるのかな?」
「分かりません・・・ですがこういった場所でグールは本来はもっと奥に現れるはずです。なのにこんな初めの場所に現れるのは不自然です」
「確かに・・・・・・入り口でこんなに死体があるとは思えないし・・・」
「恐らくですが・・・」
「吸血鬼の亜種か?」
そういうとルシャナは頷く。確かに廃坑の入り口にこれだけの死体が集まっているとは考えられず、よほど運の悪い冒険者だったか、誰かが故意に死体を放置したか、吸血鬼が何かの理由でグールを操っているかのどれかだろう。
「ご主人様、どうなさいますか?今から正規の街道を進みますか?」
「いや、今から街道を使ったらとても間に合わない。それにこれだけのグールがいるんだったら何らかの理由で外に出て集落が襲われてしまうかもしれないから、このまま進むしかない」
「分かりました。でしたら注意して進まなければ・・・」
「だけど命の危険だと判断したら依頼は諦めるて退却する。それでいいかな?」
「はい、前衛はこのままお任せください」
そういいながらルシャナは近くにあった松明を左手で持って視界を確保しながら前方と左側を警戒しながら進み、俺も少し後ろから左側と後方を警戒しながら進む。
狭いトロッコの線路を進み、迷路のような掘削場を抜けていく。道中には先ほどのグールの他に大型の蝙蝠のような魔物のバッツ、大型のトカゲのような魔物であるリザード、巨大なゴキブリであるラージコックなど外見が気味の悪い魔物ばかりだ。
だが討伐証明などはしっかり確保し、ちょっとした小遣い稼ぎもしていく。
魔物自体はそれほど苦戦する強さではないが、やはり数で来られると少し鬱陶しく感じてしまうのでさっさと次の区画へ向かいたい。だがこう言った場所はやはり死が蔓延していて、地図を頼りに進んで曲がり角に差し掛かると、やはり遭遇してしまう。
「・・・ご主人様」
「落伍した冒険者だな・・・」
曲がり角の壁に寄りかかりながら死んだであろう冒険者の白骨死体だ。肉や内臓は完全に魔物に食われていて存在せず、その際に革の防具も食い荒らされていて、木製の盾は完全に朽ち果てて折れた剣も錆がこびりついていた。
だが革鎧に増設したであろうポーチの中を探してみると、いくらかの所持品が出てきた。
「財布に証明書・・・名前はグラント。鋼級冒険者か・・・」
「亡くなられた冒険者の遺留品は回収しておきましょう。家族にせめて死亡を組合に伝えてもらわないと・・・」
「そうだな・・・」
死体を慎重に漁り、他にも自身の家族に宛てたであろう手紙を見つけて回収。だが白骨死体に気になる痕跡があった。あばら骨が真正面から強い衝撃を受けたような砕け方をしていて、これが死因となったというのはわかったが、何か巨大なものがぶつかったというよりも握りこぶしくらいの大きさのものが一転に集中されたような砕かれ方だ。
気にはなるが、今は先に進むとしよう・・・・・・・・・・・・。