War Commander’s 異世界傭兵戦記 作:ウルヴァリン
トートベリー廃坑をひたすら突き進む。道中で見かける魔物は可能な限り排除していき、できるだけ討伐証明は回収する。
腕時計を見ると気が付けば6時間が経過しており、小休止で地図を確認すると第1区画の半分に到着している。このまま何も問題がなければ明日の朝には廃坑を通過できる。ルシャナにあらかじめ宿屋にて購入しておいた干し肉をふんだんに使ったサンドイッチを食べさせ、俺もレーションを食べて腹を満たす。
休憩を終え、前進を再開させるとようやく中間地点である第2区画へ繋がっている橋に辿り着いた。石橋だが劣化でところどころで崩落しており、周辺にはトロッコなどの機材が散乱している。
橋には屋根がないので吹雪が降り注ぎ、何とか視界を確保できているが、橋の道中にルシャナが何かを見つけた。
「ご主人様、前に何かいます」
ルシャナの言葉を聞いて俺は416を構える。橋の中央にいたのは上半身は鍛え抜かれた筋肉を有する男性の上半身だが、下半身はヤギのような蹄を持った逆関節の足。両指は4本だがあらゆるものを切り裂きそうな鋭い爪。
顔は額にヤギの角、凶暴さを見せるかのような鋭い牙、そして黒い目に紅い瞳をした猛獣の雰囲気を醸し出している魔物が目の前にいた。
最初は魔族かと思ったが、その考えはルシャナが否定してくれた。
「・・・・・・ご主人様、あれはイズです」
「イズ?」
「見ての通り半人半獣の魔物で一見すると確かに魔族に見えますが立派な魔物です。非常に獰猛で発達した脚と高い魔力を有して非常に強力な魔力です」
「強さはどのくらいなんだ?」
「・・・・・・・・・銀等級冒険者が数人いても勝てるかどうか・・・それに・・・」
「それに・・・どうした?」
「あのイズ・・・・・・間違いなく亜種です」
彼女が斧を手に警戒し、厄介なことに吸血鬼の亜種にもなっているイズに銃口を向ける。だがこの吹雪なので迂回すれば見つからずに通過できるかもしれない。そう思ってルシャナに慎重に迂回することを伝えた矢先、その考えはすぐに吹き飛んだ。
「避けろ!!」
イズは近くにあったトロッコをこちらに向けて強力な一撃で蹴り飛ばし、それに気が付いた俺たちは間一髪で回避。トロッコは宙を舞いながら橋の下に落下していく。
イズは足に力をためて、一気に地面を蹴ると瞬く間に俺の懐に飛び込んできた。そのまま右手の詰めで俺の体を切り裂こうとするが、素早く左手でグルカナイフを抜刀して受け止めた。
「ご主人様!?」
ルシャナはすぐ背後から斧で仕掛けるが、俺を吹き飛ばすと左手で受け止め、右手の爪で逆に刺突を仕掛ける。彼女はそれに反応して盾で受け止めるが爪は盾の一部を持っていく。それを後ろに受け流しながらルシャナは斧を振り上げる。だがイズは地面を蹴って飛び上がり、少し離れた場所に着地すると右手に火の玉を出現させて投げつけてきた。
「まずい!?」
ルシャナは危険を察して素早く横に飛んで回避する。通過した火の玉は橋の外の斜面に命中するが、轟音とともに斜面の一部の地形が変化した。
すかさず俺は照準を合わせてフルオートで5.56mm弾を撃ち込む。何発かは命中して血を流すがすぐに傷口がふさがって瞬く間に完治させていた。
「くそ!?なんて脚力だ!?」
「私も噂には聞かされていましたが・・・まさかこれほどとは・・・」
素早い動きに鋭い一撃、それに魔法まで使えて吸血鬼の亜種にまでなっている。本当にここまで厄介な魔物は初めてだ。イズはこっちに余裕の笑みを浮かべながら、馬鹿にしたような表情をしながら爪を使ってかかってこいと挑発してきた。
「馬鹿にしやがって・・・」
「ご主人様・・・どうします?撤退を勧めますが・・・」
「とはいっても完全に目標にされてる。いま逃げてもあっという間に詰められて終わりだ」
「通常のイズであれば魔法詠唱の時に隙ができるのですが、知能が上がっているのかしっかり距離を保ってから仕掛けて来ます」
本当に厄介な敵だ。この間にも吹雪はさらに強さを増し、こちらは動きにくくなっているが、イズからしたら大した風ではないのだろう。現に奴は416で射撃を加えるが一直線しか弾丸が飛んでこないと判断したのだろう。発砲と同時に奴は小刻みに動きながら前進してきて、こっちに飛び込もうとしてくると横からルシャナが勢いよく斧を振り下ろすが瞬間的に後方に飛んで回避してしまう。
距離を稼ごうにも魔法が使える奴は炎属性の攻撃魔法を使用してこっちの連携を封じ込めようとしてくる。
このままではジリ貧だ。
「ご主人様!!第2区画からグールの増援です!!」
「くそったれ!?こんな時に!?」
「どうします!?このままでは数で押し負けます!!」
「第1区画まで退却する!!何も考えずに退け!!」
こんな場所では奴が圧倒的に有利なので、ポーチからM84を取り出してルシャナを先に第1区画へ向かわせて、それを追撃しようとしたイズの足元にピンを抜いて投げ込む。何かが投げ込まれたと気が付いてイズが視線を向けた瞬間に起爆。それで一時的に視覚と聴覚を封じ込めてから俺も退却を開始。暫くしてから奴は視覚と聴覚を回復させるが、そのことが奴の怒りに火をつけるには十分だったようで、山全体に響くかのように雄叫びを上げて、近くのグールを数体ほど叩き潰してから追撃を開始した・・・・・・・・・・・・。