War Commander’s 異世界傭兵戦記 作:ウルヴァリン
ジャンヌ殿下へ手紙の配達を完了させ、殿下の計らいでそのあとは無礼講が開催される運びとなった。流石は傭兵達というか全員がかなりの酒豪で、特に陛下はウィスキーにあたるドワーフの火酒を何本も空にして、全く酔った気配はなかった。
対してルシャナは途中で酔いつぶれてしまい、俺も意識はあるが酔ってしまった。
だがよく考えたら宿を確保していなかったので陛下に先に失礼すると伝え、大急ぎで酔っぱらって眠ったルシャナをおんぶして探し回り、1時間ほど見つけてようやく見つけた安宿で一晩を過ごした。
「やっぱりすごい賑わってますね」
「ははは、楽しそうだねルシャナ」
王都の商業エリアにて買い物に向かう俺とルシャナ。商業エリアには日常品や食材、調味料はもちろん衣服や布、素材、酒、道具、武器、防具など本当に様々なものが取り扱われており、ハーヴィットの市場も賑わっていたがここはそれ以上の賑わいを見せていた。
辺りを見渡していると向こう側から香ばしいにおいが鼻を刺激し、ルシャナもそれに気が付いたので屋台の前で何を撃っているか聞いてみた。
「いらっしゃい!!」
「ここは何を売ってますか?」
「うちはジャイアントディアーの肉を使った串肉だよ!!自家製のたれで焼いてるから絶品だよ!!」
焼かれているジャイアントディアーを使った串肉を見る。高タンパクで低脂肪という味はあっさりした鹿肉そのものであり、一口サイズに少し厚切りにされてたれをつけて焼かれている。確かに匂いだけで美味しいと伝わってくる。
ルシャナは肉が好きで、目を輝かせながらずっと串の肉を見ていた。俺も食べたくなったので財布を取り出した。
「1本いくらですか?」
「3本で銀貨1枚だよ」
「じゃあ6本ください。袋は3本ずつに入れてください」
「まいど!!」
店主は慣れた手つきで新しい串肉をたれにつけてから焼いていき、焼きあがると袋に3本ずついれて店主に銀貨を渡して肉を受け取る。そして片方をルシャナに渡した。
ルシャナはおあずけで待っている子犬のような表情をして待っていて、俺が気にしないで食べてというと袋から肉串を取り出して食べ始める。ルシャナは肉を本当においしそうに食べていて、俺も取り出してかぶりつく。
甘辛のたれと淡泊なジャイアントディアーの肉がよく馴染んでいて、肉自体も柔らかく少し力を加えると簡単にかみ切れた。
食べ歩きをしながら店を覗く。日ごろ世話になっているシルヴィやミィ達にお土産を買いたかったので、シルヴィとラウラにはそれぞれ緑と赤のブレスレット。ミィには仕事でつかえるように羽ペン、ミケちゃんにはウサギのぬいぐるみ、シャムさんには赤色のエプロン。
他にもバーバロ達にも酒やお菓子や香水を次々と購入し、袋いっぱいになっている。
「ご主人様、次は武器屋に行ってもよろしいですか?」
「武器屋?」
「はい。今回の遠征で片手剣と盾が限界そうなので、新しいものを新調したいのです」
「そうだな・・・イズとの戦いで斧は破壊されたし・・・」
「盾も本来なら木製でイズの攻撃を防ぐのはかなり難しいのに、持ちこたえたのは奇跡なんです」
「分かった。予算はまだまだ余裕があるからいいものがあれば買っていこう」
そういうと次は武器屋へ足を運ぶ。武器屋は少し離れた場所にあって、扉を開けた。中に入ると巨人が使うような大剣が立てかけられており、店内には様々な武器が展示されている。入店してきた俺達に奥から店員が出てきて、俺達を出迎えてくれた。
「いらっしゃい」
「店内を見ていいですか?」
「いいですよ。うちは色んな種類を取り揃えてますから、手に取ってじっくり吟味してください」
店員がそう言うとルシャナは剣をしっかり見ていく。この世界の鍛冶における材料は基本的に銅、青銅、鉄がメインであり、前の世界のようなチタンやステンレスやアルミニウム合金など存在するわけがない。
作り方も日本刀とは根本的に違って木で作られた雄型を粘土で覆って乾燥させた雌型と呼ばれる鋳型に溶かした鉄を流し込む型取り方式を使っている。
俺も興味本位で鍛冶場体験で西洋の作り方でナイフを鋳造したことがあるから素人程度なら作り方を知っている。
それを冷やしたら周りの粘土を外して剣の形になった鉄を取り出し、バリをハンマーとやすりで落とした後に加熱しながら形をハンマーで整えていく。
焼入れをして研ぎ石で研いだらガードとグリップを取り付けて鞘を作れば完成だ。
鉄を熔解させる段階で不純物が少なければ少ないほど剣の質も上等なものになり、粗悪であれば剣も粗悪となる。材料とは人間でいうところの血液にあたるから、鍛冶師は可能な限り良質な鉄などの鉱物を求める。
ルシャナは刃をしっかり見て、歪みや欠けがないかどうか見ている。
「どうだい?なにかいいものはあった?」
「そうですね・・・確かに丁寧な造りで材料も良質なものが使われているようです。価格は少し高めですけどそのくらい質がいいということですね」
「今後の勉強の為に聞きたいんだけど、見分け方ってあるの?」
「私もそこまで気を配れるというわけではないんですが、私が気を付けているのは罅と音ですね。鍛冶師の腕と鉄の質が上等だと罅は入らないんですが、細かい罅があれば使ってる途中でそこから折れます。だから罅がある剣は破棄されるかナイフに加工し直して料理用にしたりとかになりますね。音も指で弾いたら鈍い音だったり鈴のようにきれいな音だったりで、私はそれを基準としてます」」
「流石はルシャナだな。俺と見る目が全然違うよ」
「私はご主人様の盾でもあり剣ですから。できるだけ上質なものを選んでおきたいんです。あっ・・・も・・・もちろんご主人様の財布の負担にならない程度に・・・」
「そこは気にしないでいいよ。今回は予算はまだまだ余裕があるし、それに出来るなら減らしたい」
「減らす・・・なぜですか?」
「金貨140枚もあれば持ち運びが大変だし、何よりも重い」
俺の言葉にルシャナは納得してしまったようだ。金貨は1枚が大体30gほどなので単純に140枚で約4kgにもなるし、嵩張るから目立って仕方がない。今は俺のバックパックに格納してはいるが、貧乏性がある俺にとっては不安で仕方がない。だから組合の口座に使わなかった分は預けるが、できるだけ減らしておきたいというのが俺の切実な願いだ。
「ルシャナ、提案なんだが剣は2本買わないか?」
「2本ですか?確かに二刀流も得意ではありますけど・・・」
「今後の対策だ。対人戦闘とか普通の魔物でなら普段使用。グールとか亜種相手なら銀を使った武器に切り替えるんだ。それと護身用とか緊急時の最後の砦役でナイフも新調すれば大丈夫だ。前の剣は予備として使えばいいと思うんだ」
」
「なるほど・・・ですがそれだと予算が掛かりますよ?」
「構わないよ。このお金はこういったときに思いっきり使ってしまったほうがいいし、余ったら口座に預ける。それにルシャナも仕事だったらいいものを使いたいだろ?」
そういってルシャナはなぜか尊敬の眼差しをこちらに向ける。そうしてルシャナは次々と剣を見比べていく。
これがかなり時間が掛かって、ようやく鋼鉄のロングソードと銀のロングソード、ダークというスコットランドの短剣とを購入。しかもここは注文があれば文字を掘ることもできるようで、せっかくなのでお願いすることにした。
予算が掛かると思ったが、店員がルシャナのことを気に入ってくれたようで、剣の寿命まで使い続けるという条件で刻印代も含めて金貨24枚を20枚にサービスしてくれた。
俺とルシャナにとって本当にいい買い物だったと思う。刻印が終わるのは明後日ということなので明日は違う区画を探索してみることにしよう。ルシャナが使うものだが、俺も出来上がりが楽しみだ・・・・・・・・・・・・。