War Commander’s 異世界傭兵戦記   作:ウルヴァリン

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39:冒険者の家

ジャンヌ殿下への手紙を届けて1ヶ月が経った。まだまだ険しい冬が続いているが、それでも僅かずつだがハーヴィットにも活気が戻ってきている。ルシャナと一緒に引き受ける依頼は非常に新鮮で楽しく、誰かと一緒に何かをするというのは本当にいいものだ。

 

だが依頼を引き受けるに至って必要なものがどんどん増えていき、俺はまだしもルシャナが借りている部屋では手狭になってきている。そろそろ拠点を設ける必要が出てきた。

 

だがシャムさんの宿の手伝いなんかもあるし、懐いてくれているミケちゃんと離れ離れになってしまうのは忍びないし、ルシャナもミケちゃんのことを気に入っていて、前に聞いたらなんだか妹のような感覚がすると言っていた。

だから猫の寄道亭の近くで家を探してみるのもありだ。

 

だから家を見つけたら次はアメリアさんのところに行って新しい仲間を探す。これが暫くの計画の流れだ。

 

シャムさんに相談してみたら知り合いに物件を扱っているという人を紹介してくれたので不動産屋へ足を運び、その物件へと向かう。

 

 

 

「この辺りは冬の間は見ての通り雪が積もって分かりにくいですが、雪解けになると道がくっきり見えますので交通には問題ないです」

 

「馬車などの幅が広いものは大丈夫ですか?」

 

「それは大丈夫です。ですがよほどの重さがあるものは足が取られる場合がありますね」

 

 

物件を扱っている商人の案内を受けて売りに出されている物件へと向かう。西門付近は物件が多いがその分だけ価格が高めになっていて、西門から少し先に行ったら商店街が存在するので価格が高騰しているようだ。

だが街の外にも物件があって、魔物や盗賊の出現の可能性があって買い物もその都度西門を通過する必要があるのでいろいろと手間とのことだ。

 

そして今はその物件を見に行く途中だ。

 

 

「私達が向かっている物件なんですが、以前はお客さんのような冒険者が所有していたんですけど、依頼中にパーティーが全滅したらしくて、数年前にうちに所有権が移ったんです」

 

「所有権が移るですか?」

 

「はい。持ち主が死亡する、一定期間行方不明になる、税金の未納、犯罪を犯して没収などありますが、冒険者の場合ならそのお仲間に所有権が移行することが多いですね・・・見えてきました。あれがおすすめする物件です」

 

 

森林の中を移動していくと、木々が切り開かれた場所に出た。周辺は石垣で囲われていて、中庭には馬小屋に物置、家庭菜園が出来そうな小さな畑がある。そして肝心の物件は2階建ての木造一戸建てで、濃い茶色のこの国ではありきたりの瓦屋根だ。

 

商人がカギを取り出して正面入り口の扉を開け、俺達もそれに続く。開けたら奥行きは狭いながらもなかなか立派なエントランスが飛び込んでいく。入り口のすぐそばには武器を掛けておくラックが設置されていて、その奥にある扉をくぐると声が出てしまった。

 

 

「これはすごいな・・・」

 

 

内装はかなり手入れがされているようできれいになっていて、入って右側には立派なキッチンがあり、数人が同時に調理をしていても十分な広さを確保している。

反対側には暖炉があり、その手前の椅子に座りながら読書を楽しめそうである。

 

 

「この一角はダイニングキッチン方式になっています。水回りには水の魔石が埋め込まれていますので、魔力を込めれば水がしっかり出ます。以前の冒険者は複数人のパーティーを組んでいましたので比較的大人数の宴にも対応できますよ」

 

「これはいいな・・・・・・窯も小さいけどしっかりした造りをしてる・・・」

 

「パーティーの中に料理に拘りがあった方がいたのでしょうね。床の扉の先には食材を保管できる小さな地下室になっています。奥にある右側の階段を上がれば個室に繋がっていて、その隣の通路には冒険者向けの設備になりますね」

 

「冒険者向けの設備・・・ですか?」

 

「ではまずそちらから見てみましょう」

 

 

冒険者向けの設備という言葉が気になったので、まずはそっちを見てみることにした。通路の先には小さな小部屋のような場所に繋がっていて、そこにれ3つの扉があった。

 

 

「前の方々が使っていた時は右側は冒険や依頼で入手した戦利品を収納していた保管庫だったみたいです。今は机と棚以外は何もありませんでしたが、かなりの数が保管されていました。中央の扉はロフト方式を採用していてそれぞれ錬金術、付呪術、薬剤術の設備だったみたいですよ」

 

「物件でそれは珍しいんですか?」

 

「ご主人様、一回の冒険者パーティーがそれだけの設備を揃えるのはかなり難しいです。ですからこの物件を保有していたパーティーはかなり名前が通った存在だったのかと・・・」

 

「お嬢さんのいう通りです。それで左側は武器庫ですね。そこは3つの部屋で裏口がある部屋にもなっていて、外には小さいですが一通り道具がそろっている鍛冶場があります」

 

 

左側の部屋を覗いてみると、部屋一面に武器を保管しておくためのラックや棚、保管ケースなどが設置されている。その数を見たら結構な数の武器と防具が保管されているようだ。

 

それを見ると先ほどのホールに戻って階段を上がると個室が並んでいて、内装そのものはベッド、クローゼット、机、椅子が置かれている。そして廊下の一番奥には住居者が寛げるリビングのようになっていて、かなり大きな本棚が設置されている。

 

建物の中を確認したらもう一度家の外に出て、少し離れた小屋に案内される。

 

 

「最後は入浴場ですね。ここにも水属性の魔石を設置していて、水をためたら反対側の火属性の魔石で水を温めるという造りです。排水も風呂桶の端にある板を上に持ち上げれば簡単に排水がされます」

 

「これはいいですね。こちらとしても風呂があるのは本当にありがたいです」

 

「ですけど風呂は貴族の特権なのに、なんでこんなのがあるのでしょう?」

 

「それはさすがに分かりませんが、きっと貴族の方も所属していたのではないでしょうか」

 

 

案内されてかなり力が入れられた物件みたいだ。全ての設備の案内が終わって、俺達はホールに戻って椅子に腰かける。

 

 

「どうでしたか?私としてもかなりの優良物件だと思うのですが・・・」

 

「確かに冒険者としては理想的な拠点ですね。風呂があるのが本当に素晴らしいです。ですがこれだけの設備があるのだから価格もかなり高いのではないのですか?」

 

「いえ、実はそうでもなく、価格は全て込みで金貨50枚です」

 

「金貨50枚ですか?これだけ設備がそろっているのにいくらなんでもかなり破格なのではないのですか?」

 

「これだけの設備がそろっているからこの価格なんです」

 

「ど・・・・・・どういうことですか?」

 

「ご主人様、普通の物件は多様性も単調さが求められるんです。これだけ設備が揃っていると維持費が掛かったり生活必需品もかなりの量になりますので後から予算が必要になります」

 

「そのお嬢さんの言う通りです。確かに設備そのものはそろっていまして、お二人だけでしたら即座に住むことができます。ですが定期的に手入れは必要ですし、かなり改築されていますので修繕などが必要な場合は修繕費が3倍に膨れ上がる可能性があります。それが原因で数年たっても買い手がつかないんです。それに遺留品がオークションに掛けられた際に全部でなんと金貨800枚にもなりましたから、この金額でも余裕でお譲りできるんです」

 

 

つまり便利性を求めすぎたことが仇となって個人が自宅として保有するには逆に不便になっているということになる。確かに一般家庭が物件を購入するなら規模にもよるが必要最小限の物件で後から揃えていく方が楽だろう。

だけど今後も増えていくかもしれない仲間のことを考慮に入れたら、この物件は冒険者にとって理想的だ。

 

 

 

「・・・・・・この物件に決めます」

 

「いいんですか?手入れが大変ですよ?」

 

「今後冒険の仲間を増やす予定ですので、広いとこちらとしても助かります」

 

「ありがとうございます。では街に戻って契約を締結させましょう。引っ越しなどは明日以降のほうがよろしいですか?」

 

「そうですね。とはいっても宿暮らしでしたので荷物は少ないですが・・・」

 

 

そう会話をしながらハーヴィットへ戻る。そのあとに商人の店にて不動産関係の書類に全てサインし、不動産に関する法律などの説明を受ける。

まず不動産税が年間で金貨10枚、住居人の人数で変化する住民税が一人当たり銀貨5枚、その他にも土地関係の利権も含めて合計で年間金貨15枚と銀貨40枚を支払う必要がある。今まではシャムさんのところで済んでいたから不動産税の支払いは不要だったが、今後は税金対策もしなければならない。

 

大変だろうが、マイホームを購入できたことに今は素直に喜ぶとしよう・・・・・・・・・。

 

 

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