War Commander’s 異世界傭兵戦記 作:ウルヴァリン
ハーヴィット近郊にて今後の活動拠点である物件を購入した。そのことをシャムさんに伝えて長期滞在の契約を正式に解除し、いなくなるということでミケちゃんに泣かれそうになったが購入した家は街の外を出てすぐの場所であるから毎日会いに来れると伝えたら納得してくれた。本当にいい子だ。
宿泊最終日にシャムさんが俺たちの食事を豪勢にしてくれて、シャムさんは本当に俺たち冒険者にとってお母さんのような存在でありがたい。
次の日に全ての荷物を新居に運び出し、その後で生活に必要な寝具や料理に必要な調理器具、食器、当面の食材、農作業用の道具などを購入していき、これまでに金貨70枚を使った。
これで前の依頼の特別収入の大半を消費したので、残りの貯金額は金貨40枚ほどとなる。
住居の準備が完了したら次は新しい仲間だ。
だがアメリアさんの商会にいくと運悪くアメリアさんは取り扱う奴隷の仕入れで外出していて、暫くの間は休業中だと留守番を任された従業員と清掃作業中の奴隷から聞かされた。そこでルシャナが犯罪奴隷を見に行ってみないかという提案をしてきて、予想外の提案だが今後の勉強も兼ねていってみることにした。
「・・・治安が悪そうだな」
「気を付けてください。この区画は最貧困層で犯罪者が屯しているなんで日常茶飯事です」
「どんな街でも裏の顔というのがあるんだな・・・」
俺達が今いるのはアメリアさんの商会がある北地区と東地区の間にある要警戒区画に指定されている“影区画”と呼ばれる場所だ。
ここにはハーヴィットの中でも最低限の税金すら払えない国民が生活している唯一証明書が無くても暮らせる場所だが、この区画では強盗や窃盗、違法の劇薬売買などこの街で犯罪者の巣窟となっている。
そしてここには認可をしていない犯罪奴隷専門の売買が行われていることがあり、犯罪奴隷には基本的人権はない。だが中にはダイヤモンドの原石のような素質を持った犯罪奴隷もいるので、アメリアさんも偶にではあるが屈強な護衛を引き連れて訪れることがあるといっていた。
現に路地裏には強姦されつくされたのであろうこと切れた女性の死体が無造作に転がっていたり、空虚な目をした子供が座ってぶつぶつと何かを小声で言っていたりと本当に治安が悪い。
一応は治安維持目的で警邏隊もいることはいるのだが、犯罪者同士結託して揉め事は明るいうちはしないようにしているようだ。だから武装はしっかりしておく。
ルシャナはロングソード、俺はIMIマイクロUZIで武装して周辺への警戒を絶やさない。
「話は聞いてたが、まさかここまで酷いとはな・・・」
「あまり凝視されないほうがいいです。下手に凝視すれば暴漢に襲われる可能性もありますし、地下の犯罪組織に目を付けられてしまったら面倒なことになります」
「確かにな・・・・・・そういえばルシャナはなんで詳しいんだ?」
「アメリアさんの護衛役として何度か来たことがあるからです。その時にアメリアさんの身柄目的で集団が襲ってきました。苦戦することなく撃退しましたけど」
「ルシャナの実力ならごろつき程度の輩が敵うわけがないよね」
「褒めていただいて恐縮です・・・・つきました。あそこです」
そういいながら案内をしてくれているルシャナは曲がり角を指さした。そこを曲がると目を覆いたくなるような光景が広がる。
汚れた服装で首と両手を拘束具で繋がれ、見世物のように野ざらしにされている犯罪奴隷と、その犯罪奴隷を本当にものとしか見ていない下賎な闇商人。この通りは“家畜通り”と呼ばれていて、定期的に犯罪奴隷の売買がされている。
通りを進むと闇商人がこちらに話しかけてきた。
「へへへっ、兄ちゃん。奴隷をお求めかい?」
「あぁ。冒険の盾役で1人ほど探している」
「だったらうちのを見ていきな。粒ぞろいだぜ」
そう下品な笑いをしながら闇奴隷は自身が扱っている奴隷を見る。男が1人で女が2人。男はどう見ても冒険者には見えない肥え太った以前は貴族のような顔つきをしていて、2人の女も瘦せ細っていて目が虚ろ。それでいて健康状態もかなり悪そうで全身から異臭が漂ってきている。
ルシャナに視線を送ると彼女は首を横に振り、とても買えたものではないと判断された。商人に検討しておくと一言言うとその場を離れた。
「ルシャナ、こういった場所での奴隷探しには何かコツがあるのか?」
「そうですね・・・基本的には皮膚と顔ですね」
「皮膚と顔?」
「先ほどの奴隷の場合は男の方は論外で、女の方は両名とも足にかなりの量の発疹がありました。あれは間違いなく性病の類で健康状態も最悪としか言いようがありません」
「確かに何らかの状態異常が皮膚から浮き彫りになることがあるからな。よく見てるな」
「それと犯罪奴隷には顔に罪状に合わせて黒い線の刺繡が彫られます。女の方は両方とも1本ですが男の方は3本。1本なら詐欺などですが3本は殺人を意味します。そんな奴をご主人様の下にはおけません」
「なかなかいうな・・・・・・」
「本音を言いましたら犯罪奴隷を購入するのはお勧めできませんが、ご主人様がお決めになられたことですので、私が全身全霊でお守りします」
「頼りにしてるよ」
それから俺達は奴隷を見て回るが大半が似たような状態だ。時に皮膚には異常が見られないが精神疾患に罹っていたり、ほとんど死にかけの状態ばかりでとても実戦には出せない状態だ。
ルシャナも今回は外れだと感じ始め、最後まで見終えたらさっさと引き上げようとした矢先に何かを感じた。
感じた先を見るとそこにいたのは肌は黄緑色の肌をしたオークという鬼人種の女性だ。その女性はこちらを睨むように見ていて、それを見た商人は汚い笑みを浮かべながらこちらに話しかける。
「いらっしゃい、この女が気に入ったのかい?」
「・・・彼女はオークか?」
「数年前の大飢餓の生き残りだ。こいつは貴族様の屋敷に押し入ろうとして無様に捕まったらしい」
それを聞いてもう一度オークの女性を見る。赤髪は汚れで乱れていて、肌も汚れている。しかし全体的に筋肉の付き方はかなりのものであり、なんか全身に見え隠れしている切り傷が修羅場を何度か潜り抜けてきているという印象がある。
「よかったら兄ちゃん買わないか?こいつなら冒険で図体がでかいから餌としても使えるし、こいつはまだ処女だから玩具としても扱っていいぜ?」
「・・・・・・いくらだ?」
「こいつなら金貨4枚でいいぜ・・・・・・おい!!さっさと立て!!この木偶女!!」
そういいながら商人は腰に取り付けている鞭を取り出してオークの女性に危害を加えようとした。だが振り下ろされる寸前で間に割って入り、腕に鞭を巻き付けさせて受け止める。
そして俺に危害を加えようとしたことでルシャナが背中からロングソードを抜刀し、切先を商人の首に突き付けた。
「ひぃ!?」
「・・・・・・2枚」
「へっ!?」
「このオークの代金は金貨2枚だな?」
「い・・・や・・・き・・・金貨4・・・枚・・・」
「き・ん・か・に・ま・い・だな?」
「へ・・・へい!?た・・・確かに金貨2枚です!?」
「・・・それを持ってさっさと消え失せろ。見てて本当に不愉快だ」
この商人の顔を見ていると本当に殺したくなる。だが殺害すると単なる犯罪者となってしまうので金貨を2枚ポーチから取り出して商人に投げ渡す。それを受け取ると商人は情けない声を出しながら一目散に逃げだそうとしたが、思い出したことがあるので引き留めた。
「おい」
「ひぃ!?な・・・なんでしょう!?」
「奴隷の権利保有書と彼女の履歴書、書類を全部置いていけ」
「へ・・・へい!!こ・・・これになりやす!!」
男を引き留め、彼女の権利保有書と犯罪履歴などが掛かれた書類を俺に手渡し、その後にすぐさま逃げ出す。本当に情けない男だ。
それを見送った俺は手枷と首枷の鍵をUZIで破壊し、彼女に手を差し伸べた。
「さぁ、行こう」
オークの女性は暫くこちらを見上げるが、敵意が一切ないと判断したのであろう俺の手を取って立ち上がる。俺の2人目の仲間の誕生の瞬間だ・・・・・・・・・・・・。