War Commander’s 異世界傭兵戦記 作:ウルヴァリン
迎え入れられたオークの女性である名前がシーラ・ドゥエーリ・バベーダという。
最初は貴族の親族と思ったが、彼女によればオークの氏族は彼女達の言葉を3つ繋げて名前にするという文化があり、シーラは“力”、ドゥエーリは“決闘”、バベーダは“勝利”というらしい。彼女はその名前の意味に恥じない生粋の戦士だったようで、氏族の戦士長として数多くの敵を葬ったらしく、その圧倒的な強さに“暴風雨”を意味するブーリャと呼ばれていたらしい。
だが15年前に大飢餓が発生し、氏族間で内戦状態となって今も戦いが続いているらしい。それでシーラは使者としてヴェルダ王国に食料提供を願い出るが約束が反故にされ、やむなく貴族に反故された証拠を奪いに行ったが捕まったらしい。
それが数年前の出来事らしい。
冒険者として登録しようとしたがやはり犯罪履歴が足を引っ張って登録ができなかった。だが策はある。
彼女を冒険者としては登録できないが、俺の従者としてなら同行できるし、この国の組合法で副職に限定されるが犯罪履歴がある申告者でも登録することが可能であるという制度を利用することにした。
ならばやることは一つだ。
俺達は準備を終わらせてシーラを引き連れてある場所に向かっていた。
「シーラ、動きに問題はないか?」
「ありません。本当によく馴染んでいます」
「しかしよく売っていましたね?オーク用の民族衣装は需要がないので出回っていないことが多いんです」
「たまたま見かけてね。しかも安く手に入って本当によかったよ」
そういいながらシーラを見る。彼女の今の服装は鱗状の軽鎧にキルトのようなスカート。その上に動物の毛皮で作られた革製の肩当とセットになったマントにオークの戦士達で“守護者”という意味合いがある赤と黒の薄布。
藁で作られた簡素な籠手に短剣を帯剣させてあるベルト。そしてその背中には身長が2m以上あるシーラとほとんど同じ位の長さがある大剣のクレイモア。
オーク達の戦闘衣装はイメージ的には北欧のヴァイキングのようだ。
ルシャナが剣術と盾を使った防御、そして素早さを活用したオールラウンダーに対して生粋の戦士でもあるシーラは敵の攻撃を引き受ける盾役とオーク特有の回復力を最大限に活かした重戦士というポジションを与えた。
俺の頭の中での基本戦術はシーラが前衛で敵の攻撃を圧倒的なパワーで引きつけ、俺が援護射撃をしつつルシャナが乱戦の中で敵の攻撃を潜り抜けながら倒していく。
こんなスタイルが理想的だろうが、今は予算の都合上で用意できないがシーラには両手斧や戦槌なんかも使えるようにしておきたい。
「ご主人様、ここですね」
先頭を行くルシャナの案内で俺達は目的の場所に到着した。
俺達が目指していた場所は傭兵組合“自由の鉄華”。
ここはハーヴィットで唯一の傭兵組合で所属組員は少数だが有能な人物が多いらしい。メインとして冒険者に登録できないシーラにはまず傭兵として登録させ、その後に冒険者を副業として登録させるというやり方だ。
組合の扉を開けたら、中にいる傭兵達が一斉にこちらを見る。
俺達はあまり見られていないが、歴戦の猛者という雰囲気を醸し出しているシーラに視線が集まる。だがそこは血の気が多い傭兵だ。
酒を飲んでいて酔っぱらっていた傭兵の1人が俺に足を懸けようとして前に出し、それが少しだけかすれるような当たり方に傭兵が立ち上がった。
「おいおいおい、いてぇじゃねえかよ!!目ぇついてんのか!?」
「それは失礼。しかしいきなり足を出す方が問題なのでは?」
「うっせえ!!詫びでその後ろの女に相手させろ!!それで許してや・・・」
どうやらルシャナ目当てだったようで、傭兵はルシャナの身体を掴もうとするがシーアが素早く傭兵の首を掴んで、そのまま空瓶だらけの机に叩きつけた。
叩きつけられた男は気を失ったようだが、それを見て頭に血が上った奴の仲間が割れた空き瓶を手にもって襲い掛かってきた。だがシーラは裏拳でその男を吹き飛ばし、続けて仕掛けてきた別の傭兵は俺が正拳突きで顔面に食らわせ、その場で制圧する。
3人を制圧して辺りは騒然となるが、こういったことは日常茶飯事なのか組合職員がすぐ出てきて気絶した傭兵達を奥に連れて行った。先程の騒動など何事もなかったようになったフロアを進み、俺達は受付嬢に話しかけた。
「ようこそ、自由の鉄華へ。新規登録でしょうか?」
「彼女の登録をお願いします。それといきなり騒ぎを起こしてしまいすみません」
「大丈夫ですよ。どう見てもあのバカ3人が原因ですし、碌に依頼も引き受けようとしなかったので除籍処分の理由になりますから寧ろ助かりました」
中々辛辣なこという受付嬢だ。青色の髪をした女性で眼鏡を掛けている知的な印象を持つ女性だ。
「それで登録なのですが、傭兵組合では登録の際に登録料銀貨1枚と受験料銀貨1枚、実技試験が必要となります」
「実技試験ですか?」
「はい。傭兵は戦うことが基本ですので、戦闘能力がなければ務まりません。試験に関しては今から受けれますがどうされますか?」
「シーラ、行けるな?」
「無論です。お任せください」
「では裏手の訓練場に案内しますのでこちらに来てください」
受付嬢の案内を受けて試験に挑むことになったシーラに同伴する。傭兵組合での試験がどんなものなのか是非とも気になる・・・・・・・・・・・・。