War Commander’s 異世界傭兵戦記 作:ウルヴァリン
ハーヴィットに到着し、猫の寄道亭で一晩を明かした次の日の朝、朝食を済ませた俺は一度部屋に戻って装備を整えていた。
シャムさんから聞いたんだが組合に入るには試験が必要で、冒険者や傭兵なら実際に簡単な依頼を引き受けて行なう戦闘技量関係、魔術師なら魔法に関しての知識、商人なら物を見極める目利などその分野に必要な基礎技能と面接の2段試験となるらしい。
これらは申請して営業時間内ならいつでも受けられるらしいので、準備を整えてから向かうとしよう。
しかもシャムさんの長女が冒険者組合にて受付嬢をしているらしいから、しっかり推薦状も書いてくれた。
「アバターから選ぶっていう手もあるけど……」
WOCはキャラクターのアバターを8つまで設定が可能で、予め装具を共通してメインアームを内容に合わせて変えていたり、気分に合わせて都度変えたりと様々な切り替え方がある。
だが俺は死ぬ前に装備を見直していてアバター1以外は全てリセットしていた。
だからメインアームを416から小回りが効くMP7A2に変更してから部屋を出た。
「シャムさん。行ってきます」
「あぁ、行って来な。しっかり頑張って来るんだよ」
「ミケちゃん、行って来るね」
相変わらずシャムさんの後ろに隠れているミケちゃんにそういうと、僅かに顔を出しながらこちらに手を振って見送ってくれる。
だから可愛い過ぎる……。
しっかりミケちゃん成分を補充したら冒険者組合へと向かった。
冒険者組合は街の中央広場から北に進んだ河川沿いの別名"組合通り"にあるらしく、通りすがりの人に場所を聞きながら探し出す。
目標は吊り看板で、冒険者ならバックパック、傭兵なら兜を背景に重なり合った2本の剣、鍛治なら火床(ほど)などその職業に纏わるものが描かれているらしい。
周囲を見渡しながら歩いているとバックパックが描かれた吊り看板を見つけ、シャムさんから貰った推薦状の名前を照らし合わせた。
"山越の風"
名前は合っているので中に入ろうとした瞬間、いきなり扉が勢いよく開いてガラの悪そうな男が飛び出してきた。
「がはっ⁉︎」
「うちらをあまり舐めんじゃないわよ‼︎この年中酔っ払い野郎が‼︎」
男に続いてお怒りの女性が腕を組んで仁王立ちで現れた。150cmほどの小柄で赤髪のショートヘア、革鎧を身に纏ったエルフの女性だ。
どうやらさっきの男がなにかやったようで、女性が摘み出したんだろう。
男は頭を押さえながらワナワナと女性を睨みつける。
「いってぇなぁ………あんまり調子に乗るんじゃねぇぞ小娘…ぐぇっ」
男はそういうと携行していた片手斧を取り出したが、ここまで来たら喧嘩では済まされない。だから素早く男の背後に回り込み、すかさず片羽締めにして締め落とした。
手から離れた片手斧を蹴って川に落とし、男の両手首にハンドカフを通して身柄を拘束した。
「全く……朝っぱらから元気なことだ……大丈夫でしたか?」
「あぁ、手間が省けて助かったよ。あなたやるわね?何処かの組合員?」
「いえ、昨日到着したばかりの旅人です。俺は桜崎 照史。照史で大丈夫です」
「家名持ちなんだ、わたしはフレイア。ここの専属冒険者をしているわ」
互いに自己紹介すると握手を交わす。彼女の手は小さいが傷だらけで皮膚が厚い。特に人差し指と中指の間にタコが出来ていて、これは指に挟んで構える地中海式の弓の扱い方だ。
「ここに来たってことは……もしかしてウチで登録するのかしら?」
「はい。猫の寄道亭のシャムさんからの紹介で来ました。身分証を発行して貰わないと明後日には退去になりますからね。試験は受けれますか?」
「もちろんよ。さぁ中に入って」
フレイアはそういうと俺を案内して中に入る。中はシルヴィア達が入った組合と比べて小さいが、冒険者と思わしき屈強な戦士がそれぞれの時間を過ごしている。
フレイアはまっすぐカウンターへ足を運ぶと猫耳の受付嬢に話をし始める。恐らくあの受付嬢がシャムさんの娘さんなんだろう。
一通り話し終えたのか、フレイアが手招きをして呼んできた。
「照史、この子がシャムおばちゃんの娘さんだよ」
「桜崎 照史です」
「はじめまして。私は"山越の風"で受付を担当していますミィといいます。母から推薦状を頂いたとお伺いしていますが……」
「はい。これがそうです」
「拝見致します…………………はぁ……確かに私のお母さんからですね……」
「どうかしたんですか?」
「見ていただいた方が早いです……」
そういえば推薦状の中身は知らなかったな……。
だが彼女から渡された推薦状の内容を見て彼女が呆れた理由が分かった。
"この人はいい人だからしっかり面倒みて口説き落としな♪“
……シャムさん……これの何処が推薦状なんだ?
「……………」
「母がすみません……」
「いえ……随分と…子供想いなお母様で……」
「はははっ♪相変わらずね♪あなたのお母さんは♪」
「本当にもぅ……お母さんったらいつも“孫を見せろ”やら“いい男がいたら押し倒せ”やら……私まだ16なんだし結婚なんて早いニャ」
「………ニャ?」
「……………………」
シャムさんに愚痴を溢すミィは語尾にニャが付いていたことに気がつき、フレイアは面白がってニヤニヤしながらミィを見る。
暫く沈黙すると咳払いをして姿勢を戻した。
「……確かに母からの推薦状でした。これから受付されますか?」
「………切り替えがはや「受付されますか?」……します」
「気にしないで照史。この子って油断すると語尾がニャってなっちゃう可愛いお子ちゃま猫なだけだから」
「私は子供じゃニャいニャ‼︎」
「ほら♪またなった♪」
フレイアが揶揄ったから思わずまたニャがついたミィ。思わずホッコリしてしまい、回りを見ると冒険者達も微笑ましい顔でミィを見ていた。
それに気が付いたミィは再び咳払いをして、何事も無かったかのように書類を取り出した。
「じゃあこちらの必要事項に記入をお願いします。本来なら受験料銀貨1枚を戴いているのですが、推薦状がありますので無料となります」
「あ……はい……」
本能的にだが彼女に逆らわない方がいいだろう。記入欄の名前と年齢、種族、身分証発行の是非、軍歴の有無、使用武器、報酬受取方法など結構細かく、一通り描き終わったらミィに返す。
記入漏れがないことを確認したミゥは試験内容は推薦状で免除となった面接を除いて一番下の階級である白磁等級の依頼を3つ引き受け、達成したら合格。今後の昇級審査の基準にもなるが組み合わせは自由で期限は1週間らしい。
既に準備は出来ているので依頼掲示板へとそのまま足を運んだ……………。