War Commander’s 異世界傭兵戦記 作:ウルヴァリン
初めての依頼になったのは"スライムの捕獲"
ファンタジーでは定番中の定番モンスターであるスライムもこの世界では普通に生息しているようで、結構な種類がいるようだ。
街の清掃活動を主体とする清掃組合の依頼書によれば特に期限や制限はなく、10匹も簡単に決めただけで捕まえた分だけ報酬を払うとあった。山越の風も試験や白磁の経験積みにこの依頼を推奨しているようで、スライムの捕獲に必要な箱を渡してくれ、今は同行を申し出たシルヴィとラウラの案内を受けて街から15分ほど先にある森の中にいた。
「よし、また捕まえた」
「はい、これで7匹目ですね」
隣で様子を見るシルヴィ。その視線を受けながら捕まえたスライムを箱に入れていく俺、ハルバートを手に周囲を警戒するラウラ。
今回はあくまでも俺の試験でもあるので彼女達は依頼中は手を貸さず、貸すとしてもアドバイス程度に留まるということになった。
「けど案外簡単に見つかるな……もう少し苦戦すると思ってたけど昼前には終わらせられそうだ」
「スライムは環境に適しやすいですから、よほど寒い場所や暑い場所でも無い限りは大抵の場所にいるんですよ」
「けど……まさかスライムがこんな愛玩動物みたいな生物だなんてな……」
「しかもプニプニしていますから抱っこしながら眠るとぐっすり寝れるんですよ♪それにかわいいし♪ねぇスラちゃん♪」
そう考えながら抱えているスライムを見ながら撫でる。スライムは別名"森の掃除屋"と言われている魔物で、倒され腐乱した魔物の死骸や溜まりに溜まった血も吸収してくれるから人気があり、組合もそうだが一般家庭でも掃除用として飼育している家庭もあるらしい。
しかも基本的に人懐っこいのでペットとして飼ったりすることもあるようで、シルヴィの腕の中にいるスライムは頬擦りされて気持ちが良いのか身体をプルプルと震わせる。
「だが亜種によっては危険極まりないのもいるな」
「どんなのだ?」
「例えばアシッドスライムだな。臆病な性格なんだが辺りに毒を撒き散らして植物を枯らす個体で、見つけ次第駆除するように通達も来るほどだ」
「他に代表的な亜種はいるのか?」
「基本的には色が変わるだけだな。環境で変わるが食べた物でも変わったりするから色で判断は出来ない。例外があるとすればさっき話したアシッドスライムやヘクトアイズといったのだ」
一口にスライムといってもいろんな種がいるようだ。特にアシッドスライムはなんとなく想像できるがヘクトアイズとかう種類は全く見当が付かない。
「ですがアシッドスライムも立ち入りが容易じゃ無い沼地に生息していますし、ヘクトアイズも遺跡の奥にしか現れないから銀等級から下はあまり関わりのない魔物なんです」
「だが何かな拍子で出くわす場合もあるだろうから、もし見つけたりしたら無理に戦おうとするな。時には逃げるのも冒険者や傭兵にとって大事なことだから」
「善処するよ先輩……んっ?」
「どうかしました?」
「なぁ……確かスライムを捕まえたのは確か7匹だったよな?」
「そうですよ?」
「さっきまでこんなに溢れそうだったっけ?」
そういいながらスライムを入れていた箱を指差す。ミィの話によれば箱には捕まえたスライムがストレスを感じないようと渡されたスライムが好きな香液を塗していて、大きさも10匹程度なら入るものだ。
だが明らかにスライムが箱からは溢れ出そうで、今も僅かな隙間から入ろうとしてポテっと地面に落ちた個体もいる。
その動きに可愛さを感じるが箱の反対側を見るととんでも無い光景が広がっていた……。
「なんだこりゃ……」
広がるのは縦一列に並んだスライム達。それも5匹や10匹じゃなく本当に行列になっていた。
「えっと……これは……」
「……照史様」
「なに?」
「つかぬことを聞きますけど……香液ってどのくらい使いましたか?」
「……小瓶1本使った……」
「原液で?」
「…原液で」
「照史……あの香液は1滴……しかも水で薄めれば十分なんだが……」
まじかよ……つまりこのスライム達は原液の香りが風に乗って、それに惹きつけられたってことになる。確かにスライムの数に上限はなくて捕まえた分だけ追加報酬が入るが、これはどうだろうか。
「………ひとまず連れて帰るか…」
「そ……そう…ですね……」
「これはミィに怒られるな……」
「なんか……すまん……」
とりあえずみんなを連れて帰ることにした。
ハーヴィットに帰るなりあまりのスライムの数に衛兵は顔を引き攣らながら苦笑いし、街中もスライム達が一列で移動しているのでちょっとした騒ぎになる。
そして捕まえたスライムの数は143匹に及び、報酬額が破格の金貨1枚と銀貨15枚になったが、香液を正しく使わなかったことと事務所をスライムだらけにしたことでミィにお説教と必殺"肉球パンチ"を喰らう羽目になった……………。