【完結】狂い咲きオンスロート~殺し屋から少女になった男の殺戮願望~【第二部】   作:詠符音黎

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第一部:Bloom out of life.
1.Change


「ふぅ……俺も焼きが回ったか……」

 

 今、一人の男が死のうとしていた。

 燃え盛るビルの上層階で、彼は血まみれになりながら木製のデスクに寄りかかっている。

 

「こんなヘマをするなんてな……ま、人をさんざん殺してきたツケを払うときが来たってことだろうな」

 

 男は百戦錬磨の殺し屋だった。

 裏社会で彼の名を知らない者はいないというほどの腕前であり、誰もが彼を恐れていた。

 この日、彼は大仕事を請け負った。一生遊んで暮らせるほどの大金が手に入るような大仕事だ。そして彼は成し遂げた。ターゲットの息の根を確実に止めた。

 だが、彼はそこで手痛い裏切りと反撃にあい、致命傷を追ったのだ。

 そうして彼は今、死に瀕していた。

 

「……ま、こんな死に方も悪くはない。俺らしい最後だ」

 

 男はそういいながら、近くに迫る火の手にタバコをかざし、火をつける。

 が、男の血まみれの体は彼の言うことを聞かず、右手の指に挟んだタバコを炎の中に落としてしまう。

 

「……チクショウ、最後に一服、したかったなぁ」

 

 そう言いながら男は天井を眺める。

 今にも焼け落ちてきそうな天井。

 ――これが、最期に見る光景か。

 彼はあまりにも味気のないその光景に、思わず笑った。

 首から下げた、フクロウのネックレスを揺らしながら。

 彼は静かに瞳を閉じようとする。

 そんなときだった。

 

「…………?」

 

 突如、炎に包まれた部屋の扉がぶち破られたかと思うと、防火服をまとった数人の人影が部屋に入ってきたのだ。

 人影は男を見つけると、すぐさま近寄ってきて、そして――

 

 

「――……?」

 

 柔らかい感覚と眩い光の中、彼は目覚めた。

 光はLED照明の光が白い壁と天井に反射している光だとすぐに分かった。そして柔らかさがベッドの上にいることも。

 確かに自分は死んだはず。ならばここは地獄だろうか? なら、無機質な地獄もあったものだ。

 そんな事を思いながら、彼は身を起こす。

 

「ん……?」

 

 そこで彼は気づく。

 体に違和感があったのだ。

 まるで今までの自分の体とはまったく別の体を動かしている。そんな違和感が。

 その違和感に従い、彼は自分の体を見る。

 すると、そこにあったのは彼の元の筋肉質な体ではなく、か細い、少女の体があったのだ。

 

「……これ、は……!?」

 

 そこで声を出して、彼は再び驚く。

 自分の発した声が、幼く高い子供のソレだったからである。

 彼は慌てて自分の姿を確認できるものがないか周囲を確かめる。

 すると、彼が起き上がったベッドのそばにカーテンで隠れているが窓があることに気がついた。

 彼はカーテンを勢いよく開き、鏡に自分の姿を映す。

 すると、そこにいたのは一人の少女だった。

 長い銀髪を揺らす、紅い瞳の、年端十にも満たないように見える少女が、病衣を着た姿でそこにいた。

 

「おいおいおい、こりゃ一体……」

 

 彼――いや彼女は、自分の顔や体を触って確認しながら言った。

 手で確認するほどに、口で言葉を発するほどに、自分が幼い少女になっていることを自覚する。

 何が起こっているのか把握するため、周囲を確認する。

 すると、ベッドの横にある台の上におおよそ40cm四方の箱と、フクロウのネックレス、そしてその下に手紙が置かれているのに気づいた。

 

「これは……」

 

 彼女はネックレスを手に取りながら、手紙を開く。そこにはこう書かれていた。

 

『君は人生をやり直すチャンスを与えられた。君の才能を、どうか存分に活かしてほしい。そのために、我々は君にこれを贈る』

 

 その文章とともに、手紙には差出人の名前も書いてあった。名は、アラン・アダムス。彼女はそのネックレス、そして送り主の名の意味を知っていた。

 アラン機関。

 才能のある人間には裏表構わず支援する匿名機関。以前彼女が彼だったときに、幼少期に支援された経験のある機関だ。しかし、なぜ再びアラン機関が接触を……?

 彼女はその疑問を解消する手がかりを得るために、近くに贈り物と称されて置かれている箱を開ける。

 

「……そういうことか」

 

 そこで、彼女は察した。

 箱の中に入っていたのは、武器だった。

 拳銃、M1911。そして刃渡り15cm程度のコンバットナイフ。

 彼女が愛用していた武器が、そこには入っていた。それで分かったのだ。

 自分はまだ、人を殺せと言われている事を。

 ――ひどい話だ。

 それを理解した瞬間、彼女は思わず自嘲気味に笑った。

 ――ガチャリ。

 そのとき、彼女のいた部屋の扉が開かれた。

 彼女はとっさに扉の方向を見る。

 そこにいたのは、妙齢の女性だった。

 

「起きたか。さっそくだが、お前の身柄は我々ダイレクトアタックのモノとなった。これからは我々の指示に従って生きてもらう。分かったな」

 

 女は高圧的な態度で言ってきた。

 そんな女に、彼は今まで自分が寝そべっていたベッドに座り、ジェスチャーをしながら言った。

 

「……それよりさ、タバコない?」

 

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