墓場   作:埴輪庭

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現代恋愛試作

 ◆

 

 帰宅。

 

 かろうじて日が変わってない。

 

 風呂は起きたら済ませるとして、後は飯か。

 

 飯はいいや、太りそうだし。

 

 それよりも大事な事がある。

 

 俺はそんな事を考えながら、アプリを開いた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ──"ゆう" も大変そうだ。体調を崩さないといいんだけど

 

 俺はそこまで考えて、「俺が言えたセリフじゃないよな」なんて思ってしまった。

 

 今月の残業時間は平気で100時間を超えそうで、不味いのはそれが余り気にならなくなっているという点だ。

 

 それまでしんどいしんどいと喚いていた俺の体だが、いつのまにか黙り込んでしまった。

 

 ──そういう時は体に爆弾を抱えている時で……

 

 俺は盛大にため息をつく。

 

 それなら仕事を変えるとか残業を減らすとかすればいいじゃないかなんて向きもあるけど、そうもいかない。

 

 残業しなければいけない理由、残業して稼がないといけない理由があるからだ。

 

 それは……

 

 ◇

 

 "ひろ" とのやりとりを終えた後、私は一人にやけて、それからため息をついた。

 

 退屈だったからじゃない。

 

 彼との何気ない会話は凄く楽しいし、癒される。

 

 ずっと話していられればいいなとも思う。

 

 でもそれは出来ない。

 

 残業中というのもあるし、何よりも……

 

 ◆◇

 

 ひろとゆうはその時、ほぼ同時にため息をついて慨嘆した。

 

「「ポイントが高いっ……!!」」

 

 ポイントとは要するに出会い系アプリのポイントである。

 

 しかも巷で有名なマッチングアプリではなく、ストアレビューで1.0をつけられるようなサクラ満載のクソアプリだ。

 

 そういったアプリは月額ではなくて一通幾らという価額になっている。

 

 基本的には1ポイント10円なのだが、二人が使っているアプリは受信は無料、しかし送信には30ポイントかかるのだ。

 

 つまり、1通300円!

 

 これは高い、高すぎる。

 

 だが元よりこの手の情報に疎い二人は、たまたま出会いを求めてクソアプリに登録し、そしてたまたま知り合い、たまたま親しくなってしまった。

 

 もう二人は引くに引けないのだ。

 

 費やしたポイント代だけならまだ諦めもつく。

 

 しかし、しかし……積み重ねてきた思いというか、情のようなものが鎖となって二人の心を縛っている。

 

 二人は引けない。

 

 そして引く気もない。

 

 どちらかが勇気を出して思いを伝え、「連絡先交換しましょう」と言いだすまでは。

 

 しかし問題がある。

 

 それは、ひろにせよゆうにせよ、両者そろってクソ奥手だという点だ。

 

 こう言った人間は言われてもいない事を邪推し、勝手に思い、悩み、一人で結論を出しがちで、それが往々にしてトラブルに繋がったりするのだが、二人もその手のクチであった。

 

 相手から拒絶されたくないという思いが強すぎて、自分から一歩踏み出せないのだ。

 

 だから日々仕事を頑張り、高額なポイント代を稼ぐべく仕事を頑張っている。

 

 勇気を出して告白するという手段は頭の中にはあるが、それを実行するのは今ではないと思っている。

 

 これはそんな男女の物語である。

 

 

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