向いてないみたいです
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「ねえ、シルマール殿下?わたくしの事を好きでいらっしゃるのでしょう?」
男爵令嬢カリオペがシルマール第一王子へ媚びる様な声で話しかけた。
「勿論だ。君の美しさは言葉にしようがない。私は君を心から好いているよ。願わくば君がフラガラッハ公爵令嬢より強者であって欲しいものだ」
(うふふふふ…ん?強者?まあいいか…空耳でしょう)
「ねえ殿下?ファラ様の事なのだけど…」
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「ファラ・トゥルーナ・フラガラッハ公爵令嬢。男爵令嬢カリオペは君の代わりに私の傍へ立ちたいそうだ。彼女が私の傍へ立つというのなら、婚約血戦をする必要がある。受けるか。」
ファラは静かに頷き答えた。
「無論」
そして、恋敵であるカリオペを鋭い目で見据える。
カリオペはきょとんとしていた。
「婚約血戦……?そんなの…イベントにあったっけ…?」
と言っている様に聞こえるが空耳であろう。
この国の貴族で婚約血戦を知らない貴族令嬢なんて居ないからだ。
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血戦の場。
「では構えたまえ、カリオペ嬢。このシルマールが審判をやろう。ルールは1つ。相手を殺せ。どんな手を使っても構わない。では死合い開始」
王国魔導部隊の精鋭が総出で結界を張る。
血戦の円形闘技場に青いドームが形成された。
え?という表情のカリオペを見て、ファラ・トゥルーナ・【魔舞殲殺】・フラガラッハ公爵令嬢は苛立った表情を見せる。
「カリオペさん、殺界は既に敷かれております。早く構えて下さい。わたくしと貴女で死合い、どちらがシルマール殿下を支えるに相応しいかを決めましょう」
殺界とは分かりやすく言えば結界である。
殺界に入った2人はどちらかの命が尽きるまで殺し合わねばならない。
「ちょちょちょ!ちょっとまって!どういう事!?殿下は私が好きなのよね!?」
「その通りだ」
「だったらなんでこんな事をするの!?普通に婚約破棄すればいいじゃないの!」
「カリオペさん!何を言うのですか?我々貴族は魔王討滅の尖兵!我々が何の為に強大な魔力を、大きな権力を持っているかを貴女も貴族ならばご存知のはずです。貴女とて毎年年の数だけの魔兵を殺しているでしょう?」
殺してなんていない。
なぜならカリオペはカリオペであってカリオペではないからだ。
だがそれをこの場で言うわけにはいかなかった。
「そ、それがなに!?」
「でしたら分かっているはずです。貴族とは強くあらねばならない事を。なぜ強くなければいけないのか。それは強くなければ魔軍から民を護ることが出来ないからです。そして、強い貴族を束ねるのが王であるならば、王とはこの国最強でなければならないのです。当然、それを支える者にも相応の力が求められます。わたくしはこの手で98名の婚約者候補を殺して参りました。貴女がシルマール殿下の隣に立つ事を望むのならば、わたくしよりも強くなければなりません。さあ構えなさい」
カリオペは驚愕した。
なんだそれは!そんなモノ知らない!
そんなイベント聞いた事がない!
ここはゲームの世界じゃないの!?
慌てるカリオペに、ファラは見切りをつけた。
舌撃だと看破したからだ。
舌撃とは言葉にて相手を動揺させ、隙を突くという技術である。
「では先手は頂きます。フラガラッハ流白打攻勢術・壱の型【魔手滑刀】」
ファラの手刀がブウンと鈍い音を立てる。
これは分かりやすく言えば魔力による回転ノコギリチョップだ。