【完結】チートツール×フールライフ! ~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~   作:黒片大豆

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第3話【後編】

 詰め所は全焼。サックの荷物も一緒に燃えてしまいましたとさ。

 

 ~おしまい~

 

「厄日だ」

 そしてサックは、火災現場での功績を認められて、晴れて無罪放免──とは問屋が卸さない。翌日も、場所を変えて事情聴取となった。

 

「厄日だ」

 テーブルに突っ伏しながら、サックは何度も唸っていた。

 女神から貰った女難の相。女運の無さを、これ程恨んだことがあっただろうか。

 

「サック、渡したいものがある」

 ここは、火災のあった詰め所から程近い、安い宿の一角。サックはここで一晩をすごし、今からこの場を借りて、改めて事情聴取を受けることになった。

 

「厄日だ……ん? あれ?」

 ナツカがテーブルに置いた、サックに渡したいもの。それは、サック愛用の革のホルダーと、問題の本だった。あの火災に見舞われながらも、ホルダーも本もほぼ無傷であった。

 

「――あ」

 サックは思い出した。このホルダーには、『次元錠前決戦』でヒメコの古代魔法(フレイヤ)を防いだ『レジストフレイム』の残りを入れておいたのだった。

 

「その薬を調査中だった鑑識は、無傷で済んだ。とても驚いていたよ、全く炎を寄せ付けなかったらしい」

「……それはよかった」

 勇者で神具道具師の謹製だもの。古代魔法の炎すら退ける特製品。この程度の火事を防ぐことなど造作もない。

 サックはホルダーを受け取り腰に付けた。

 

「結局、いくら探してもリストは見つからなかった。これ以上、君も事情は知らないだろうな」

 本は、丁寧に布で包まれていた。表紙を見せないよう重ねて買った小説も併せて一緒に。

 

「あの……そちらの本は、返却──」

「没収」

「あと──マントは──」

「……それは、すまない」

 

 ですよねー。

 希少な『擬態獣のマント』。偏光させ周囲の景色に溶け込めるレアアイテムだったのだが……。

 ガックシ。またサックは項垂れた。

 

「……火災の原因を聞きたい。あと、君がほぼ無傷だった理由も」

 本に手を重ね押さえながら、ナツカはサックに尋ねた。

 なるほど、今日も事情聴取で拘束されているのは、リストではなく火事(そっち)が理由か。

 気を取り直して、まずサックは、昨晩の火災の原因を話した。突然転がってきた爆発物。樽の中身その他もろもろ。

 

「入り口から? 馬鹿な……外部から持ち込むなど不可能だ」

「じゃあ内部の犯行じゃないか?」

 外でなければ、中。短絡的に繋がるロジック。だが、ナツカは煮え切らない顔だ。

 

「……まあ、一つの可能性として受け取っておこう。次は、君が無事だった理由を教えてくれないか」

「それは……その、秘密ってことで」

 炎を防げるものなど、あの時は無かった。唯一身を守れそうなものとして、手渡された年季の入った毛布。

 実はこの毛布。多くの人が使っていくうちに、年代物、骨とう品レベルにまで仕上がっていた。サックはそれを『潜在解放』して、【炎耐性】を解放させた。そのため何とか脱出に至ったのだ。完璧に炎ガードはできなかったが、焼ける家から出るには間に合った。

 

「それよりもさ、ナツカ」

「軽々しく名前を呼ぶな」

 ギロリとサックは睨まれた。が、それに退くこと無く、サックは尋ねた。

 

「──リストを見つけて何をしたいんだ?」

「……父の無念を晴らしたいだけだ」

 ふうん。サックは一応納得の表情を示したが、

 

「なぜお父さんが持っていたのか、理由を考えたことは無いのか?」

 この一連の事件の真相に近づく質問を、投げつけた。

 

 ばん! 

 

 ナツカは机を平手打ちし、

「リストは無いのだろ!」

 あからさまな怒りを表した。

 

 するとサックは腕を組み、

「うーん……」

 と、悩み、そして、

 

「はぁ~~~~」

 と深いため息をつき、

 

「覚悟はあるな」

 急に真面目な顔つきでナツカの顔色を正面から伺った。

 

「な、なんだ急に」

 ナツカはサックの挙動を理解できなかった。

 

 するとサックは、ナツカが押さえていた『本』の包みを、半ば強引に取り返した。

 

「あ、ちょっ……」

「未だ使ってないし、高値で売りさばきたかったんだがなあ」

 包みを剥き、サックは、あの問題の発禁本を机に置きペラっとページを捲った。

 

「これが、君の探してたリスト……ぶべらっ!!!」

「こここここの破廉恥ヤロウ! また牢屋にブチ込まれたいかっ!」

 ナツカの容赦ない顔面ストレートが、サックの顔にクリーンヒット。

 

 まあ、そりゃ確かに。

 うぶな女の前に、裸の女たちが男数人に囲まれちゃっててヤラかしちゃってる危険な絵面なページを、あの会話の流れで突然目の前に差し出されたのだ。

 これはサックに非がある。

 

「……ちゃう! いいから!」

 サックは鼻を抑えながら弁明し、そして、静かに本に手をかざした。

 

「『解呪(ディスエンチャント)』」

 アイテムその他に付加されている呪いを解く術だ。基礎的な術ではあるが、例えばアイテムの呪いを解く場合、下手な術者が行うとアイテム自体を破損してしまうこともある。使いこなすには熟練が必要だ。

 もちろん、アイテムマスターにとっては、物を壊すこと無く呪いを解くのは朝飯前。

 

 すると、エロ本の表層がペリペリと剥がれ始めた。

 

「なっ!!」

 驚いているナツカに、サックが説明を始めた。

 

「上っ面だけ、別の本のコピーが張られていた。カモフラージュだよ。……このエロ本が、君の欲した『リスト』だ」

 

 ぴぴぴぴぴぴ……。薄いシート状にエロっちい部分が剥離していき、粉々になっていく。

 その下からは、人物名と数字、その他の情報が列挙されているものが現れた。

 

(ああ、もったいない!)

 などと残念がるサック。しかしナツカはすでに表面の女の裸など眼中になく、後ろから剥がれ見えてくる人物のリストに釘付けだった。

 

「……かなり硬度なプロテクトがかけてあった。俺も使う前に、やっと違和感に気づけたレベルさ。さすが、付与術師として名を馳せていただけある」

 

「……使うとは?」

「言わせんな恥ずかしい」

 

 そして、全てのページの表層が完全に剥がれ、リストが鮮明に現れた。

 すると、突然、ナツカが崩れ落ち、床に膝をついた。大きく気落ちしているようだ。

 

「……」

(やはりな)

 サックはこの悲劇を十分予見できていた。ナツカも、信じてはいたが、心の奥では最悪の想定をしていたつもりだった。

 

 ナツカの父親であろう『ウィンブル=ノワール』という名前が、リストに記載されていた。彼もワイロのやり取りに関与していたのだ。しかしながら、だからこそ、メンバーのリストを入手できたのだ。

 

 唇を噛むナツカ。なんとか平静を取り戻そうとしている。

 

「……あまり噛みすぎると血が出るよ」

 この場でこの台詞が最適かどうかは解らない。けどなにか声をかけざるを得なかった。

 

 しばしの沈黙のあと。

 

「なあ」

 サックはナツカに聞いた。今の今までで一番疑問に思っていたことだ。

 

「リスト情報の出所は、誰だ?」

「なぜそれを聞く?」

 簡単なことだ。サックは答えた。

 

「本全体に、コピーのほかに『失念』が付与されていた」

「失念?」

 ナツカは首をかしげた。あまり耳にしない付与能力だ。

 

「物忘れの事さ。付与した物の存在を忘れる──それこそ関係者全員が」

 つまりは、リストのメンバーも、ナツカの父を殺した犯人も、例外無く。この本の存在を忘れているはずである。

 

「失念は時限式にゆっくり解ける術式だ。『形』『おおよその内容』『場所』『詳細な内容』の順に、時間をかけて思い出す。そして、思い出す速さは個人差がある」

 つまりサックが言いたいことは。

 

「リストの存在を最初にナツカに教えた人物。そいつは、リストが本の形を呈していることを思い出したんだ。そして、君のお父様に一番関与していた……つまり、殺した犯人の可能性が高い」

「リストを──探している人間、まさか憲兵長……」

 ナツカには心当たりがあったようだ。

「その人間、今しがた、気持ちが相当高ぶっているはずだ。本来はゆっくり戻ってくる記憶が、俺が『解呪』したため、一度に記憶が返ってきたからな。頭大混乱か、超ハイになっているかのどっちかだね」

 

 あわよくば、ハイテンションになって、『私が犯人です!』レベルのポカ発言ぐらいしてくれると、すべてが簡単に丸く収まるのだが……。

 

 その時。宿の廊下が騒がしくなった。ガチャガチャと鎧が擦れる音が大きくなる。安宿だったから廊下からの音が部屋によく響く。

 そして、バンッ!! と、ノックもなく、サックたちの部屋の扉が開けられた。

 

「失礼する!」

 本当に失礼なやつ。

 

「キザブ憲兵長!」

 ナツカはその男を知っているようだ。

 サックくらいの身長だが体はかなり絞ってあり、ほどよい筋肉。鎧の胸板部分は青と金色の装飾でどこかの紋章が掘られていた。薄茶色の髪は耳にかかるくらいで整っていた。

 非常に『キザったい』。サックの第一印象だった。

 

「ナツカ、生きてい……無事で何より!」

 急いでいたからか、キザブと呼ばれた男は多量の汗が噴き出てていた。──単に、急いで来たからなのか。それとも……? 

 

(……いや、こいつ犯人じゃね?)

 

 なんてことをサックは思った。いやいやしかし。初対面の第一印象で決めつけるのは流石に悪い。

 

「キザブ憲兵長、本日はどうされました?」

 ナツカは敬礼ポーズを取っていた。なるほどナツカの上司か。しかし、身に着けていた鎧に刻まれているマークが異なる。おそらく、担当区画が異なるのだろう。

 なんで別担当区画(こちら)に現れたのだろうね。不思議だね。

 

「驚いたぞ。参考人が油の入った樽に火をつけ、火事を起こしたと聞いてな! ……流石に、リストも燃えてしまっただろう、残念だ」

 

(犯人じゃん)

「いや。キザブ……憲兵長?」

 

 少し鈍いナツカも、この衛兵長様の発言には違和感を覚えてくれた。牢屋に可燃性液体満載の樽が転がってきた件においては、サックと、新聞屋と、今話したナツカしか知らない事実である。

 そんなナツカの表情の変化に気が付かない衛兵長様は、さらにボロを出しに出した。

 

「ナツカ。お父上のことは残念だったな、だがリストは燃えて正解だった。君はお父上の無実を信じていたんだろう。リストに名前が乗っている以上、罪は免れないからな」

 

(犯人確定やん)

「……キザブ……あなたが……」

 ナツカの父親の名前がリストに記載されている情報は、ナツカすら知り得ていないことだったのに。つまるところ、こいつはリストを『思い出した』。放火犯、かつ、リスト関係者ということだ。

 

「ん? どうしたんだい、ナツカ憲兵」

「……」

 ナツカはなんとも複雑な顔をしていた。おそらくこのキザブってやつにはお世話になっていたんだろうし、憲兵の上下関係もある。でも、先ほどの口の滑らせ方を鑑みれば、どう見立ててもコイツが犯人。

 ……それにしても。

(術の所為もあるのだろうが……。よくそんな精神(メンタル)で、今の今までバレずにやって来られたな)

 謎方向に感心するサックであった。

 

「キザブ憲兵長……父の名の件……どこで……?」

「詰所の火事の一件もね」

 ナツカとサックが一緒に尋ねた。むしろツッコミといったほうが正しいだろう。

 

「あ……っ!! 貴様ら! 私を嵌めたな!」

 何もしておりません。

 

「おのれ、下っ端と犯罪者の分際で!」

 するとキザブは、腰の剣を抜いた。

「ここで二人を亡き者にし、ノワール殺しの罪も、貴様らに擦り付けてやる!」

 さらに『ボロ』を出したこの男。これほど口が軽いのは、むしろ術の副作用であってほしい。

 

「憲兵長が、私の父を……きゃあっ!」

 呆然とするナツカに、キザブが切りかかった。が、ギリギリのところでナツカは剣を避け、彼女も剣の柄に手を掛けた。

 すると今度は、キザブがサックのほうに向き、いきり立って襲ってきた。サックは椅子に座ったままだったが、特に武器など持たず、丸腰だった。

 

 バゴッ。

 ギザブの剣は、サックが座っていた椅子を両断した。サックは素早く剣をよけていた。

 

「おのれ! 丸腰の薬師の癖に、チョロチョロと!」

 武器を持っていないほうを優先的に潰す思考だったのだろう。再度ギザブはサックに剣を向けた。が、

 

 キンッ!! 

 

「あれ?」

 キザブが持っていた剣は、華麗に弾かれ、天井に突き刺さった。

 

 がごっ!! 

 

 鈍い音が響いた。キザブの左の肩の骨が砕ける音だ。

 サックは、先ほどキザブが壊した『椅子』の足を持っていた。椅子の足から背もたれ部分まで繋がる、一本の固い樫の棒。これを武器『木刀』と見立てて、『装備』したのだ。

 薬師や暗器使い、ましてや鑑定士や錬金術師などは、『長剣』の装備は不可能(扱いきれない)だが、それらをマスターした『道具師』は異なる。道具師スキル『全装備可能』により、サックはあらゆる装備品を扱うことができる(なお、性別専用装備は除く)。

 

「か……なんでっ」

 しかしキザブも、憲兵長なだけあって、剣術は長けていた。今も油断はしていない。が、そんな彼の技術や戦闘力では、サックには全く歯がたたかなかった。

 転倒した彼に、サックは延髄にソバットをぶち込み、さらに、体をひねって着地と同時にかかと落とし。キザブの顔を顔面から地面に叩きつけた。

 

 轟音ののち、シン……と静まり返った宿屋の一角。あまりに華麗な武術を目の当たりにしたナツカも、目を見開き驚きの表情を見せていた。キザブの強さはよく知っているからなおさらだ。

 するとサックは、キザブの髪を持ち、顔を上げさせた。鼻は口から血を流し、歯は何本も折れていたが、まだ意識はあった。意味不明な強さの薬師に、彼は怯えていた。

 

「なん……だ、貴様のそのデタラメな強さは……ひっ!!!」

「あのなぁ……この辺りのザコ魔物(モンスター)なんて、せいぜい『グリスリー』くらいだろ?」

 サックがキザブに顔を近づけ話し掛けるも、恐怖でキザブが慄いた。

 

「つい先日まで、こっちは『デュラハン』『アークデーモン』『ティアマット』辺りと命懸けで戦ってたんだよ。単純に、(レベル)が違いすぎる、それだけさ」

 

 サックはキザブの顔を、そのまま地面に叩きつけた。脳を揺さぶるように打ち付けたので、キザブはそのまま気を失った。

 

「ケンカする相手を間違えたね、憲兵長さん。女神の祝福があらんことを」

 

 

 




次回は第3話エピローグです。
本編は全6話完結を目指しておりますので、このあたりで折り返しとなります。
最後までお付き合いいただけますと幸いです。
また、ご感想などいただけると励みになります。よろしくお願いいたします。

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