【完結】チートツール×フールライフ! ~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~ 作:黒片大豆
「……サックあなた……なにを!」
地面には、伝説の双剣『幻竜の小太刀』が突き刺さっていた。それはまるで、元の持ち主であるアリンショアの墓標のようだった。
サックは、ボッサのほうに向きなおした。着ている薬師のローブには確かに、脇腹部分に大きな穴が開いていたが、傷は完全に塞がっていた。
すると、サックは足元に落ちているビンを拾って見せた。ガラス瓶は刃物で綺麗に切断され真っ二つになっていた。
「オートポーションによる反撃スキルだよ。知っているだろ?」
事前に調合した
「……そうではない。貴様、アリンショアに何をした……」
丁寧に説明をしようとしたサックを、ボッサが遮った。ボッサが知りたいことは、そんな事ではない。
するとサックは、「ああ」と小さく返答し、彼女へ仕掛けた内容を述べた。
「『道具』の力を解放しただけさ。
「どういう……」
「リミットを越えると、そのアイテムは例外なく崩壊する。……勇者の剣『ハルペリオ』のときと一緒さ」
「そうではないっ!!」
ボッサは大声で怒鳴った。そんな事を聞きたいのではない。
「なぜ! アリンショアが! こうなったのだ! これではまるで!」
「……気づかないのか」
ふとサックは冷徹な、そして、ボッサを蔑む表情を呈した。その感情には彼なりの『怒り』も含まれていた。
「ボッサ、おめーは無意識に、アリンショアの遺体を『道具』と認識していたんだ」
「……」
顔を真っ赤にして怒っていたボッサは、サックの一言で押し黙った。少なくとも、心当たりがあったのだろう。
そんな反応に気付いているのか、さらにサックはボッサを捲し立てた。
「アリンショアを信頼し、愛していた? 彼女が死んでてもその気持ちは本物だったんか? 教えてやる。おめーさんは、とうに見切りをつけてて、アリンショアを『道具』としてしか見れなかったんだ」
「……」
「俺は、道具なら例外なく『
ボッサにとって彼女は『道具』に成り下がってしまっていたのだった。
サックは、アリンショアの墓標から、双剣の片方を左手で抜いた。柄部分に竜の紋が彫られている小太刀は、持ち手部分は小柄なアリンショアの手に合うよう削られていた。
「そしてアリンショアも、既に死を受け入れ、生きる事を諦め、傀儡となっていた」
だから、蘇生や回復ができなかった。本人が生きることを拒否していた。
「……黙りなさい」
「お前もよく理解できているはず、だろ? 意図せず望まず得た『勇者の力』のせいで、責任を負わされ、そして世界に振り回されることに嫌気がさした。だからアリンショアは、自身の死を受け入れた」
「……黙れ」
「彼女の相談に乗っていたお前が、一番分かっているはず。そして、だからこそ、この世界の
「だまれぇ!!」
ボッサが『ぶちギレ』た。この表現が一番正しいのだろう。頭に血が上り、顔は真っ赤。垂れ目の彼の目は、まるで狐に憑かれたかのように釣りあがっていた。
彼は、その怒りにかまけて、槍を振りかぶってサックに襲いかかってきた。
(さすがに気づかれたか)
ボッサはストームシーカーの本領である、嵐の生成を行わなかった。
雷雲を伴わない、槍によるシンプルな物理攻撃だ。
それはつまり、属性を伴わない攻撃である。
サックは事前に『
ボッサはそれに気づいたのだ。だから、直接攻撃でサックに挑んだ。だが、サックの左手にも、今は『勇者武器』がある。
ボッサが全体重をかけて振り下ろした攻撃は、虚しく空を切った。槍は、撫でるように柔らかく横に逸らされたのだ。『幻竜の小太刀』による回避行動だった。
地面を槍で叩きつけたボッサは、すぐには再攻撃に移らなかった。サックはそれを見越してか、ゆっくりと再度ボッサから距離を取った。
「手遅れになる。どうせ皆、魔王に食われる。勇者も……民も! これはイザムでも、もう止められない!」
「だから食われる前に、皆で逝きましょうってか!? ざけんな! 足掻けよ! 藻掻けよ!
「その行動こそ、無駄なのだ!」
ボッサはまた槍を構えた。今度は、また武器の力を使い嵐を起こそうとしていた。
「なんで諦めたんだよ! なんでもやってみなきゃ……わかんえぇだろう!!」
サックは、幻竜の小太刀を地面に突き刺した。左手から発せられていた青白い光が、さらに強く、眩く光った。
「刮目しろ、ボッサ! 道具を極めた、
さらに左手の輝きが増した。すると、サックとボッサとの間に、魔法陣が展開された。地面はもちろん、空間にも魔法陣は展開され、その正確な数は数えられないほどである。一つ一つは人間の顔程度の大きさであった。
「何だこれは! こんな魔法陣、私は知らない! 見たことない!」
ボッサは驚愕した。昔の仲間同士、お互いの手の内はすべて知っていたと思い込んでいた。だが、ボッサはこの術式を知らなかった。
「当たり前だ。奥の手中の奥の手過ぎて、
ボッサとサックを中心とした空間に、数多の魔法陣が生成、固定化された。不気味に青白く光る魔法陣は、いずれもボッサに向いていた。
「見せてやるぜ……名付けて、『