【完結】チートツール×フールライフ! ~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~   作:黒片大豆

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最終話【その5】

「……」

「……くっ」

 サックは両手を広げ、仁王立ちのまま、憂いを帯びた顔をしていた。これは『信じていると不可能な作戦』だったのだから。

 

 そしてクリエは、今まで見たことのないほどの渋い顔を覗かせていた。彼女は、サックの行動の意図を汲み取ったのだ。

 

 先ほどの激しさとは打って変わって、魔王はふわふわと浮いていた。

 

「そっか。やっぱそういうこと、か」

「……サックさん! 危ないじゃないですか! 私まで喰われたら、どうするんですか!」

 いつものあの(・・)クリエがそこにいた。童顔に丸眼鏡。チェック柄のジャンパースカート。赤インナーカラーの金髪。

 

「……まだ、信じてるからな、新聞屋」

 サックは彼女にそう告げると、再度、魔王に飛びかかった。

 すると魔王が動き出した。眼が赤く光り、中央は高熱を帯びた。骨をも溶かす熱線だ。

 

 だが、魔王はそれを打たなかった。いや、打てなかった。

 

 またしてもサックは仁王立ちで、両手を広げていた。特に防御行動を取ることなく、ただただ突っ立っていただけ。しかし、魔王から攻撃が来ることはなかった。

 

「……くそっ」

 サックは悪態をついた。残念ながら仮説が正しいことが証明されてしまった。

 

「これは……一体……」

 クリエがサックに問いかけた。サックはちょうど、魔王とクリエを直線上に並べた位置に陣取って、クリエに背を向けていた。

 

「……『喰われる』」

「へ?」

 

「俺すら鑑定できない正体不明の攻撃を、クリエは喰われると表現した」

 

 白い発光体をばらまく攻撃のことだ。サックがクリエに近づいた際に、彼女は確かに『喰われる』と発言していた。

 

「そ、それは……なんとなくそうじゃないかな、って」

「こいつが魔王って、いつ気づいた?」

 

 指差した先には、黒い球体。

 サックすら、その球体を鑑定する前まで、ラスボスとして『魔王という魔物の長』が玉座とかに鎮座していると考えていた。少なくとも黒い球が、魔王だとは思わない。

 

「ふ、雰囲気的に……流れ的にそうかなと……」

「魔王が攻撃を止めた。クリエを背にしてからな」

 

 白の粒の爆発は、クリエを巻き込まないように働いていた。属性攻撃もサックのみ執拗にターゲットにされていたし、今しがたの熱線はクリエを巻き込む可能性があったためか、発射すらされなかった。

 

「……女神の……そう、女神様の加護が降りてきたのよ!」

「ボッサの当初の目的を思えば、クリエをあの時、生かす意味はない」

 

 クリエが単独行動で、ボッサとイチホの教会に乗り込んだときだ。

 クリエの生死に関わらず、サックを挑発できれば良かったのだから、生かしておく必要性が感じられない。

 

「あれは、私を人質に……」

「ボッサの最期の言葉。ずっと引っ掛かってた。あれは、オレ宛てでなく、クリエに向かってのことだったんだな」

 

 ボッサが残した悪態『あなたはいつも、邪魔をする』。

 イチホを倒し、大浄化術式(イア=ナティカ)を止めたサックに対してではなく、サックに話そうとした時に現れた、クリエに向かって言い放っていた言葉だと、今なら理解できる。

 

「……」

「……」

 静けさが、この場を支配した。そんな隙だらけな二人に対しても、魔王は手を出さなかった。サックがクリエに近づきすぎているからだろうか。

 

「クリエ」

 沈黙は、サックの口から破られた。彼は彼女に、最後の希望をこめて言葉を紡いだ。

 

「クリエ。俺はまだ信じてるからな。僅かな望みかも知れないけど」

「……」

 しかし、クリエは下を向いた。そして、なにも言い返さなかった。

 

「クリエ。お願いだ……『メガネを外してくれ』ないか?」

 

 あらゆる鑑定、精神攻撃を防ぐマジックアイテム『オールキャンセラー』。

 彼女のトレードマークでもある。常に肌身離さずそれを身に付けていたことで、サックは彼女の『正体』が掴めていない。

 

 眼鏡を外してくれれば、クリエの鑑定ができる。

 

「……」

「……」

 また、二人は押し黙ってしまった。が、この沈黙はクリエの方から破られた。

 

「……あーあ、もう少しだったのになぁ」

 

 彼女は顔を上げ、そして、メガネを外した。

 

「……信じてたんだぜ」

「あ、そ」

 サックの顔は、怒りと切望、そして落胆の表情にまみれていた。

 そんなサックに、クリエは、あっけらかんとした言葉で返した。

 

 彼女は自らの整った髪の毛を、片手でボサボサと乱した。インナーの赤毛を目立たせ、金髪と混ぜたことで、一気に外観の印象が変わった。

 

「やっぱちょっと、表に出過ぎたわね。次は気を付けないと」

 

 すると彼女は、にこり、と、いつもの笑顔になった。悪戯が成功したときの、あの顔だ。

 そして彼女は、改めて自己紹介を始めたのだった。

 

「そうです。私が、女神(クリエイター)ですっ」

 

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