ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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感想で質問を送ってくれた方がいましたので本作での設定をお伝えしておきます。

Q.ウィッチレディやノックヒップなどの人間に近い姿を持つモンスターは何語で話すのか?

A.悪魔系は基本的に賢さが高いので、大体は人語と悪魔語のバイリンガルであるとします。なので、人間には人語を使うこともあり、仲間内では悪魔語で会話しているのだと思います。悪魔系モンスターは基本的に人間を下等種族だと見下しているので、逆に人間に悪魔語で話しかけられるとめちゃめちゃビックリすると思います。バッタとかカエルが突然人語で話しかけてくるような感覚です。

普通王女の生誕祭ともなれば、他国の要人も招待するのが当たり前ですが、今回は、トロデが自国民と自分の呼び寄せた者たちのみで姫を喜ばせて、姫から尊敬されたい…という野望を抱いていることにし、トロデーン王国内のみで行われる祭典だということにしています。(ご都合主義発動)








第九章 収束と暗黒 ②

夜も更け、町が静まり返っても俺は眠れなかった。

 

目を閉じると城内での記憶が蘇る。あの瞬間、確かに俺は自分が杖を魅力的な存在で、奪うに値するものだと感じた。…城から離れた今はそんなことはないが。同様にラプソーンの声も今は聞こえないものの、あの声はそうそう忘れられるものではない。その次に思い浮かぶのはこれまでのこと。なぜか偶然開かれたポルトリンクからの道、ユリマちゃんの予知夢…。思い返せば全てが怪しい。俺がトロデーンに行かなければならない理由は王に指名されたからで、王に指名されたのは俺が巷で噂の道化師だったから…いや、前にも言ったかもしれないが、俺がトロデーン国領で道化師興行をしたのはほんの数日間だ。そんな一瞬の評判が王の耳に届くものか?いや、俺を指名した決め手はパヴァン王が俺を推薦したからかもしれない。パヴァンが俺を指名するわけは俺がシセルを救出した恩人だからだ。いや、それすらも世界に仕組まれたものだったとしたら?俺の目の前で偶然王妃が足を滑らせる、なんてことはありえるのか…?

 

…だめだ、考えれば考えるほど深みに嵌る気がする…と、その時後ろから声がした。

 

「眠れないのですか」

 

「サーベルト様…」

 

「…ドルマゲスさん、貴方はきっと何かを悩んでおられるのでしょう。」

 

「いえ、そんなことは…」

 

「分かります。私は貴方を疑って馬車に同行した身、この二日間貴方を見てきました。…ゼシカの言った通り、貴方は変わり者だが、真っ直ぐな人だ。…とても何か大きな悪事をしでかすような人ではない、と俺は結論付けました。まずは貴方を疑ってしまっていたことを謝罪させてほしい。本当に申し訳ありませんでした。」

 

サーベルトは頭を深く下げた。アローザはゼシカもサーベルトも自由奔放で行動力のあるところが父親そっくりだ、と原作でよく嘆いていたが、こういう真面目で誠実なところはきっと母親似なのだろうと思う。

 

「そんな…頭を上げてくださいサーベルト様。貴方は当然のことをしただけです、何も謝罪することなどございません…」

 

そんな俺の言葉を聞いてか聞かずか、サーベルトは頭を上げて続けた。

 

「なので、分かります。ドルマゲスさんは何か悩んでおられますね?それも、かなり大きな…()()()()()()()()()()お悩みを」

 

俺は思わず顔を上げ、サーベルトと目が合った。しくじったな、これではその通りだと白状したようなものじゃないか。

 

「…これは驚きました。アルバート家のご嫡男は何とも聡明なお方だ。なるほどなるほど、確かに私はとても大きなことについて考えております。…しかしこれは私の問題だ。貴方には関係のないことです。ご厚意には感謝しておりますが、どうかお引き下がり願いたく。」

 

俺はあえて厳しい口調で言い放った。サーベルトが俺の悩みを見抜いたことには驚いたし、その上で俺の事を認めてくれたのは嬉しい。だが原作知識の共有というものは非常に危険なものだ。未来を知った人間は、それからどう動くかが分からない。それはいずれバタフライエフェクトを起こして、思わぬところで手痛いしっぺ返しを食らうかもしれない。

 

しかしサーベルトは引き下がらず、俺は彼が誰の血を引いているのかを再確認させられることになった。

 

「いいえ、教えてもらうまで俺は動きません。困った人には寄り添うのがアルバート家の()()です。」

 

「(…ゼシカもそうだけどそういう強情なところもアローザそっくりだよな…)」

 

「もういいだろう、話せドルマゲス」

 

「し、師匠…!?しかし…」

 

いつの間にか起きていた師匠が後ろから俺に声をかけた。いや、もしかしたら師匠も最初から寝ていなかったのかもしれない。

 

「マスター・ライラスさんはドルマゲスさんの悩みについて何かご存じなのですか?」

 

「いや、知らん。だがわしはこいつが何かを抱えておることには、トラペッタの町を出る前から感付いておった。何故かと?…愚問だな、わしが一体誰の師だと思っているのか?」

 

「さあ話せドルマゲス。お前の悩みを。」

 

「俺たちは貴方のために動く覚悟ができています。」

 

「…」

 

俺は迷っていた。彼らにこれから起こることを話すべきか否か。しかし彼らの俺に対する信頼を俺は見誤っていたようだ。彼らはここまで自分を信頼してくれているのだ。ここで真実をはぐらかすときっと大切なものを失ってしまう気がする…えーい、ままよ!!

 

「…二人とも、ありがとうございます。ではお言葉に甘えて相談させていただきます。話す前に断っておきますと、今から私が述べる内容は非常に非現実的なものとなるでしょう。しかし、そこには一点の嘘偽りも無いことを私は天に誓います。道化師ドルマゲスではなく、ただのドルマゲスとして、あなた方の信用に応える所存でございます。もちろんこれから話すことは他言無用でお願いしますよ。では…」

 

俺は二人に俺が転生者であることなどは伏せ、これから起こるであろう未来の事を話した。トロデーン城の宝物庫にある杖には暗黒神の魂が封じられていること。その杖の封印を解くためには七人の賢者の末裔をその杖で突き殺す必要があること、杖を手にした生物は暗黒神に操られてしまうこと。おそらくこのままでは自分がラプソーンの端末となる対象になり、トロデーン城を呪いで包んでしまうであろうことなどを話した。

 

俺は「何を世迷い事を…」と言われるのを覚悟していたのだが、二人とも驚きこそすれ、俺をたしなめたり疑うようなことはせず、神妙な顔で話を最後まで聞いてくれた。

 

「なるほど…何か打つ手はないのでしょうか?」

 

「…私が言うのもなんですが、信用していただけるのですか…?」

 

「確かににわかには信じがたい話ですが、貴方がこんな場面で嘘をつく理由の方が見当たらない。より信憑性の高い方を選んだまでですよ。」

 

「ふん、わしは7年前に酒場の店主に言われてからお前のことをずっと見てきた。わしの知る魔法使いの弟子ドルマゲスは、このような下手な嘘は絶対につかん」

 

…なんといい人たちであろうか。俺は目頭が熱くなるのを感じた。

 

「…二人には感謝してもしきれません。この恩はいつか必ず…」

 

「顔を上げてください、俺たちは何も貴方に感謝されたくて話を聞いたのではないですから。」

 

「…失敬、そうですよね。では続いて対策を考えていきます。まず一つ目は力技です。私が我慢すること。ラプソーンの今回の狙いは間違いなく私です。他の誰かを端末にする可能性も考えられますが、メインは私です。よって私がラプソーンの思念に耐え切ればひとまずの危機は去るはずです。しかし私が欲求に打ち勝てず杖を解放してしまった時が二つ目。私を取り押さえて杖を取り上げてください。この作戦のデメリットは杖を取り上げた人物が次の端末と化す可能性です。しかし賢者の血を引くお二人ならば暗黒神の思念にも対抗することができるでしょう。そして三つ目、杖の魔力によって強化された私が想像よりも強く、杖を取り上げることができなかった場合ですが…」

 

「よい、それ以上言うな。ドルマゲス、お前は師に弟子を殺せと命じるのか?」

 

「あなたのような人間がこんなところで死んでしまうのは世界の損失です。そんなことはアルバートの名に誓い、絶対にさせません。」

 

俺は再び熱くなる目頭を押さえて話を続ける。いや、もしかしたら泣いていたかもしれない。こんなに温かく、そして熱い気持ちは初めてだ。俺はずっとこの時間が続けばいいのに、とさえ思った。

 

「…では三つ目を飛ばして四つ目を。これは苦肉の策です、できれば二つ目までで終わらせたいのですが…四つ目は私を放置し、二人はトロデーンを脱出することです。当然城は呪いに覆われるでしょう。しかし呪われた人々は命を落としたわけではありません。ラプソーンの目的は自身の魂と肉体の封印を解くことによる完全なる復活。…となれば自由な肉体を手に入れた後はお二人を始めとした賢者の末裔たちの下へ向かうはずです。私が向かうまでにお二人で戦力を揃え、改めて私から杖を取り上げ、どこか深い海の底などに沈めてください。おそらくラプソーンは海の魔物を使役して地上へ帰ってくるでしょうが、賢者の血が薄まっていなければ、我々でも十分相手取ることができるはずです。しかしこの最大のデメリットは、ラプソーンを滅ぼす以外に呪いを解く方法が未だ見つかっていない、ということです…」

 

「ふむ、となるとやはり最善手は一つ目だが、お前は甲斐性がないからな、それを顧みて、最善手は二つ目だ。」

 

「では、我々はいつでも戦闘に入れる準備をしておけばよい、ということでいいでしょうか。」

 

「ええ、その認識で問題ないです。私も明日がどうなるか分からない以上、策を巡らせすぎるのは却って動きを縛ることにも繋がります。」

 

一見何の解決にもなっていないように思えるが、これから戦闘が始まると知っているのといないのとでは初動に劇的な違いがある。そして初動はそのまま決定打に繋がることもあるのだ。そしてその後も細かい打ち合わせをした後、床についた。師匠とサーベルトは何か話していたようだったが、俺は肩の重荷が降りたような気がしたからなのか、安堵で緊張の糸が切れて眠ってしまった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

翌日、姫の生誕祭は予定通り行われた。まず、俺たちは広場に集まり、トロデ王のありがたい演説(9割強が娘自慢だった)を聞き、その後にミーティア姫の演説。それから国民は姫の成人を祝う祭りに繰り出し、俺たち招待客は城内の謁見の間で姫に余興を披露する、という手筈だ。

 

トロデ王の演説はともかく、ミーティア姫の演説は良かった。王に溺愛されているせいでまだ少し甘えが抜けていない姫だが、一国の王女として国民の上に立つ重要性をしっかり弁えている。西方のアホ王子にもぜひ見習ってもらいたい。…あ、奴はミーティア姫の許嫁だったか…かわいそうなミーティア姫…

 

そして俺たちは城内に招かれた。早速昨日と同じ言葉が脳内に響く。しかも今回は正門から入ったのでより宝物庫に近い。故にその波動は凄まじいものだった。思わず眩暈がするも、何とか耐え忍ぶ。サーベルトが後ろから俺を心配しているが、俺は問題ない、と手でサインを出した。そして玉座のある謁見の間で俺たちは余興を披露することになった。まずはなんとかの吟遊詩人、そしてなんとかの音楽家…正直それどころではなく記憶に残らない。そして俺の番になった。

 

いくら目的が別のところにあると言ったとしても自国の王と王女の前で、それよりも自分の道化師としてのプライドが俺に手を抜くことを許させなかった。俺は強迫観念と念波を振り払い、今までで最高のパフォーマンスを披露した。出し、消し、煽り、惹きつけ、騙し、移動させ、光り、消し、また出す。

人類の知恵の結晶・手品。夢を現実にする力・魔法。そして俺だけが見せられる個性・呪術。この三つを組み合わせた我流演舞を、俺は一切のミスなく完璧に魅せきった。

 

 

 

「…す、素晴らしすぎて言葉も出んわ…そなたがドルマゲスだな?噂に違わぬ名士!天晴れじゃ!褒めて遣わすぞ!!」

 

「私も、こんな素敵で素晴らしい演目は初めて拝見いたしました…まるで夢を見ているようでしたわ…!」

 

「トロデ王、そしてミーティア姫。お楽しみいただけたようで…何よりです。この道化師ドルマゲス、この…この身に余る光栄を受けて恐悦至極に存じます。」

 

俺は恭しく頭を下げ、引き下がった。脳をイバラに巻き付かれるような強烈な頭痛に必死で耐えながら。

 

「(これで…後は帰るだけ…何事もなく…帰る…だけ…)」

 

「ドルマゲスよ!そなたに見せたいものがある!マスター・ライラスとアルバートの世継ぎも共に来るがよい!あとのものは下がってよいぞ!褒美は大臣から受け取るがよい!大儀であった!」

 

俺は正直もう何も聞こえていなかった。耳から入る音は全てホワンホワンとした実体のない音(ホワイトノイズ)に書き換えられ、師匠とサーベルトに連れられるままにトロデに付いていった。

 

「王様、このドルマゲスは先ほどの演舞で大変疲労しております!どうか休ませてはいただけないでしょうか!」

 

サーベルトが何か言ってくれている。おそらく俺を心配して何かを王に進言してくれているのだろう。

 

「心配するな、後でゆっくり休むが良いぞ!それに、これを見れば驚きでどんな疲労も吹っ飛ぶわ!」

 

「しかし…」

 

「さあ、着いたぞ!これ、そこの門番よ…と、今日の担当はエイトじゃったか。客人が通る。()()()のカギを開けてくれい」

 

「了解しました、王様」

 

「!ここが…!い、いけません!!王よ!!!!中に入っては…」

 

師匠も何か言っている・・・のか・・・・・・?わからない・・・ただ・・・そこに、すぐそこにとてもとてもすばらしいものがある・・・

 

─ドルマゲスを引き戻そうとするライラスにも気付かず、トロデは宝物を親に見せる時の子どもの様に軽い足取りで階段を上っていく。その姿を追ったドルマゲスの目に、トロデーンの魔法の杖、またの名を暗黒神を封印した呪いの秘宝、神鳥の杖が映った。

 

 

 

 

 

 

ああ。もうだめだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─ドルマゲスは突如人形(マリオネット)のようにふらりと立ち上がると、ライラスの腕を離れサーベルトが止める暇もなく階段を上り始めトロデ王を突き飛ばしミーティア姫を押しのけ………杖をその手に掴み、鎖を引きちぎった。それと同時に一気に表情が険しくなったサーベルトが剣を抜き、ライラスは杖を構える。

 

 

杖を手にした瞬間、俺は意識を取り戻した。しかし同時に異常な嫌悪感が体中を目まぐるしく駆け巡るのを感じる。とても嫌な気分だ。

その感覚がなんだか異常(おか)しくて、おかしくて、可笑しくて。何だかとても笑いたい気分になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きひゃっ! くははっ!! あはははははははははははははっ!! ひゃーはっはっはっはぁ!!」

 

 

 

 

 

 














































王様が一番戦犯じゃないか…
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