ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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気付けば100話突破ですねぇ…。2年前、入浴中に突然天啓が降りてきた時にはここまで続くとは思いません(トロデーン城で終わらせるつもりだった)でしたがいやはや…

皆様からの祝福も泣きながら読んでます。ありがとうございます!

2024/04/24設定資料集を更新しました。ぜひご一読ください。








Chapter32 雪山地方 ②

雪山の寄合所「オークニス」を目指して山道を征く一行。昏睡から目覚めたゼシカによって暗黒神ラプソーンの目的、その恐るべき野望を知る。ゼシカが元気を取り戻したことでパーティーにも明るさが戻ったのも束の間、襲い来るは大雪崩。大山鳴動する大自然の脅威に一行は成す術もなく飲み込まれてしまうのだった。

 

 

依然として神秘の銀世界を一面に湛える雪山。数分前までエイトたちがいた痕跡などどこにも残っていない。そんな何の変哲もない場所へ雪をかき分け歩いてくるのは一人の老婆と一匹の犬。

 

「爆発音が聞こえてきたのはここらかね…なるほど、よく見れば地形が変わっておる…バフ!雪に旅人さんが埋まっているかもしれない、探しておくれ!」

 

バフと呼ばれた大型犬は老婆の声に耳をピクリと動かすと、鼻をひくつかせつつゆっくりと歩き始めた。一見のろまにも見える動きはその実、雪の抵抗を限界まで軽減する巧妙な足さばきである。雪山に、あるいは動物に精通する人物がこの犬を見れば、如何に彼が雪山慣れした犬なのかがよく分かることだろう。

 

「ワフ…」

 

「見つけたかい!…ん、これは…馬のたてがみだね。一緒に掘り出そうか」

 

バフが周りの雪を掘り、老婆が残った雪を払ってやると、新雪のごとく───この場所では適切な表現とは言えないが───美しい毛並みを持つ馬が現れた。美しい馬、ミーティアはすぐに目を開き、自力で立ち上がると老婆に頭を下げる。

 

「おや、感謝してくれているのかい?あなたもバフに似て賢い馬なのじゃな。して、お馬さんや。このあたりで他に埋まっている旅人さんに心当たりはありませんかな?」

 

もちろん返事には期待していない。ここで少し休んでいなさいとミーティアを座らせ、老婆が他の遭難者を探そうとした瞬間、ミーティアは再度立ち上がりかぼそく嘶いた。いくら寒さに強い身体を手に入れたとて、雪で体力が奪われてしまうことは否めない。現にその身体はぶるぶると震えている。しかしミーティアには今や自分の身体と同等に大事な仲間たちがいるのだ。

 

「…まさか、お馬さんや。そっちに誰かいるのかい?」

 

ミーティアは小さく…しかし確かに頷くと、老婆とバフを雪中の仲間たちの元へ導いた。

 

 

「…ん………」

 

妙に重苦しい感覚があった。しかし同時に暖かい。金縛りにでも遭っているのか、それともここは死後の世界か?ともかく、意識を取り戻したエイトが目を開けると…

 

「ぅわっ!?い゛っ!?」

 

「バウ」

 

自分の顔とほんの数ミリしか離れていない位置に大きな犬の顔があった。軽くパニックになったエイトは続けてベッドの端に頭をぶつけてしまう。頭を抱えるエイトをよそに、意識の覚醒を確認したバフは部屋を出て行った。…器用にも尻尾でドアを閉めて。

 

「(ここは…?僕は助かったのか…?)」

 

ようやくここが死後の世界ではないらしいことを悟ったエイトは辺りを見渡した。よく見る構造の部屋…ここはどこかの家の寝室のようだ。組木の隙間から微かに冷気が漏れていることから、雪山からは離れていないらしいことはわかる。思い出したかのように慌てて懐に手を入れると、小刻みに震えるトーポがいた。相棒の無事に安堵するも、他の仲間たちの姿が見えないことには一抹の不安が残る。

 

「(トーポの身体がまだひんやりしていることをみるに、僕たちはあの雪崩から助け出されて間もないらしい。ともかく他の皆を探さないと!)」

 

軽く身だしなみを整え、颯爽とドアを開け、階段を駆け上がる────と、当の仲間たちは上の部屋で全員仲良く暖炉にあたっていた。さっきまでの覚悟はなんだったのかとエイトは一人ずっこけそうになる。

 

「お!兄貴、起きたでがすね!」

 

「ヤンガス、みんなも無事だったんだね」

 

「兄貴、お身体の方は大丈夫でげすかい?兄貴だけ全然目を覚まさないもんで、アッシもゼシカも馬姫様も随分肝を冷やしたんでがすよ」

 

「おい、オレが冷血なヤツみたいな言い方はやめてくれるか?これでも気にはかけてたんだぜ」「もちろんワシもじゃぞ!」

 

「おはよ、エイト。無事で何よりだわ。…心配したんだからね!」

 

どうやら、全員特に雪崩に巻き込まれたことによる後遺症などはないらしい。しかし露出の多いヤンガスやゼシカですら霜焼けの一つもできていないとは…エイトは自分たちの肉体の強靭さに我が事ながら苦笑した。

 

「王様、ここは?」

 

「おお、ここは雪山の中にある山小屋で、そちらの……」

 

そう言いながらトロデが目をやった先には、人数分のマグカップを盆に乗せて運んでくる老齢の女性がいた。

 

「ええ、ここはわしの家ですじゃ」

 

「貴方が僕たちを…感謝します」

 

「ええ、ええ、頭を上げてくだされ。突然轟音がした時は驚いたものじゃが、わしが家を出た直後に花火が打ちあがりましてな。すぐに駆け付けられたのは幸いですじゃ」

 

「花火…?」

 

「兄貴。雪崩に呑まれる直前、アッシはククールに言われて『ばくだん岩のかけら』を思いっきし上に放り投げたんでがすよ」

 

「さながら信号弾ってとこだな。ちょいと、いやかなり原始的だが、それでもこうしてばあさんに見つけてもらったんだ。結果オーライさ」

 

「そうなんだ…ありがとう、二人とも!」

 

「なぁに、兄貴とゼシカが呪文で時間を稼いでくれたおかげですぜ!」

 

ヤンガスは照れを隠すように鼻下を擦った。彼はエイトに褒められるたび新鮮な反応を返してくれる。ここまで嬉しそうにしてくれるのならばエイトも褒めがいのあるというものだ。

 

「旅人さんや」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「感謝をするなら一番にあのお馬さんにしておやり。あの子が最初に旅人さんを見つけてくれたのじゃ」

 

「……姫が」

 

ミーティアは馬らしからぬ格好で部屋の隅で丸まって眠っていた。エイトは彼女の傍に寄り、感謝と尊敬の念を込めて彼女の冷たい身体を優しく撫でた。

 

「さて、最後の旅人さんも目覚めたことですし、みなさん席について…はい、この薬湯を飲みなされ。冷えた体もすぐに温まりますじゃ」

 

「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて…」

 

エイトたちは老婆から受け取った薬湯を啜った。少し辛いが、飲めないほどではない。成程これは確かに温まりそうだ、とエイトは薬湯をさらにもう一口啜る。紅茶でも嗜むかのようなキザな動作で薬湯を飲んでいるククールの横で舌を出してひーひー言っているのはゼシカだ。どうやら勢いよく飲んで舌を火傷したらしい。

 

「これは『ヌーク草』の薬湯ですじゃ。これを飲めば雪国の寒さも気にならなくなりますぞ」

 

「(…知ってる味だな。…ああ、ディムの料理に入ってた香草か。……。)」

 

「ほんとだわ!何だか身体がポカポカしてきた!」

 

「雪崩から助けてもらい、宿を貸してもらい、さらには薬湯まで……何から何までお世話になりますのう」

 

あっそ~れ!ハッスルハッスル~!と陽気に踊り出すゼシカをよそに、トロデが頭を下げて礼を述べる。普段とは違う彼の姿にヤンガスは少し驚いているが…。トロデは本来誰に対しても礼儀を重んじる人物なのだ。周囲からは魔物だと恐れられ、ヤンガスやククールにも弄られ短気な性格が定着しがちだが、人を見た目で判断せずしっかり腰を落ち着けて話せば、トロデほど物分かりの良い人物はそういまい。

 

「あの…貴方はどうしてこのような場所で生活を?」

 

「ん、おや…バンダナの旅人さんにはまだ自己紹介をしていませんでしたな。わしはメディ。この山小屋で暮らすしがない薬師ですじゃ。この家の裏手には古い『遺跡』がありましてな。先祖代々、わしの家系はそれをお守りしてきたのじゃ。ゆえに今はこの場所で犬のバフと共に暮らしているわけじゃな。」

 

「『遺跡』…ですか?」

 

「ええ。しかし、その役目もわしの代で終わることになるでしょうな。跡を継ぐものもおりませんでのう…」

 

「そうなんですか…でも役目とは言え、一人暮らしは苦労も多いでしょう…?」

 

「いやいや、気楽なもんですわい。子どもの時から慣れ親しんだ土地だし、苦労など感じたことはないですじゃ。それに……こうして雪山に迷った人が訪れてくれるのでさみしくもありませんしな」

 

メディの話から察するに頻繁に雪崩が起きているというわけではなさそうだが、雪山にある一軒家というものは遭難者にとっては希望の光に見えることだろう。思わず戸を叩きたくなるのも分かる。実際、一行の冒険はメディがここで暮らしていなければ終わっていたのだから。

 

「ところで、メディさん。実はそのことで聞きたいことがあるんだよ」

 

「おや、何ですかな?」

 

話がうまい具合にひと段落したところでククールが口火を切る。その口ぶりからマジメな話になると感じたヤンガスは急いで薬湯をズズズと飲み干した。

 

「オレたちはこの雪国に『賢者の末裔』ってのを探しに来たんだ。なんのことだか分からないかもしれないが…」

 

「はて…『賢者』とはその昔暗黒神ラプソーンと戦い、見事封印してみせたというあの『七賢者』様のことですかな?」

 

「そっか……まあ知らなくとも…って」

 

「…え?」

 

「「えぇ~~~っっ!?!?」」

 

ヤンガスが薬湯を勢いよく吹き出し、その全てが向かいに座っていたトロデに降りかかる。エイトはすぐにふくろから手ぬぐいを取り出して二人に渡したが、驚愕に包まれているのはエイトも同じだった。

 

「ぬおおお~!目が、目がぁ~~!!」

 

「ば…バアさん、知ってるでがすか!?け、賢者のこと…」

 

「目が痛い!助けてくれぇ~!」

 

「な、なぜ…」

 

「何も見えん!ワシはもう終わりじゃあ~!」

 

「なぜってそれは…わしが賢者の末裔そのひとですからな。」

 

「「えぇ~~~~っっっ!?!?!?」」

 

とんでもないビッグニュースにもう一度エイトたちの絶叫が響く。その声に何事かとミーティアは目を覚まし、反対にメディの犬、バフは大きな欠伸を一つして居眠りを始めた。トロデはヌーク草のスープが目に入ったためにしばらく目を開けることができないのであった。

 

 

「チェルスの坊やが…あの子は主人の使いとやらでよくわしの薬草を買い求めに来ておったのですが、そうですか…」

 

「…」

 

「…湿っぽい話もなんですな。改めまして、わしは薬師メディ。七賢者が一人『大学者』カッティード様の血を引く賢者の末裔ですじゃ。」

 

「…おお~」

 

特に理由は無いがエイトたちは思わず拍手を送ってしまう。当のメディもこういった持て囃され方は慣れていないのか、頬を赤らめていそいそと座りなおした。

 

「オホン…それで、旅人さんたちは暗黒神ラプソーンに掛けられた呪いを解くために旅をしておるのですな。……しかし、すでに暗黒神が動き出していたとは…この山小屋はめったに情報が入ってこないのが難点ですわい…」

 

「ワシはともかく、ミーティアをこの馬の姿のまま留めておくわけにはいかぬ。そのためには我が城の秘宝の杖…いや、『神鳥の杖』を奪い返し、暗黒神が完全復活する前に破壊するしかあるまいて!」

 

「そうよ、あんな忌まわしい杖は私がゼッタイ粉々にしてやるんだから!」

 

鼻息の荒いトロデやゼシカに対し、男性陣は幾分か冷静だ。そしてエイトは黙って話を聞いているうちに、自分たちの旅のとんでもない穴に気がついてしまった。

 

「…ね、ククール、ヤンガス」

 

「はい?」「どうした?」

 

「僕たち、サーベルト?さんの言う通り賢者を見つけたよね」

 

「そうでがすね…?」「?」

 

「賢者を見つけられたのは良いことなんだけど…」

 

「…あっ!」「…あー、なるほど、そうかチクショウ」

 

ヤンガスは困ったように自分の髭をさすり、ククールはガシガシと頭を掻いて天を仰ぐ。恐らく三人とも考えていることは同じだろう。つまるところ…

 

「王様…」

 

「ぬ?なんじゃおぬしら、そんな神妙な面をして」

 

「僕たち、賢者の末裔を見つけましたけど…」

 

「うむ。それがどうかしたか?」

 

「…その、これからどうしましょう……?」

 

「……む?」

 

そう。賢者の末裔を発見した後のことをエイトたちはサーベルトから何も聞かされていなかったのだ。ただ賢者の末裔を見つけろ、とのこと。てっきり後のことはサーベルトかその賢者側がなんとかしてくれるのだろうと楽観していた。

 

「賢者の末裔が重要な人物で、護らなきゃならないってことはわかる。だが、そこからどうすればいいのか…それがわからねーんだよな。どこかへ連れて行くべきなのか?ここで護るのか?いつまで護ればいいんだ?」

 

「ワシらがこうしている間にもラプソーンが他の賢者の所へ行っている可能性も捨てきれんしの…」

 

「あ!ねぇねぇ!戻って兄さんに聞きに行くのはどう?いい考えだと思わない?」

 

「サーベルトがまだあの何もない場所にいるといいんだがな…」

 

こんなことならあの時ヤンガスを引き留めずにサーベルトともっと話していればよかったと額に手を当て、ため息を吐くエイト。だが時すでに遅し。トロデとゼシカもだんだんと事の重大さに気がつき始めたのか、すとんと椅子に座り込んで黙ってしまった。

 

「「うーん…」」

 

そうして続いたしばらくの沈黙ののち、口を開いたのは護られる対象であるメディだった。

 

「…別段隠していたというわけではないのですが、実はわしには一人の息子がおりましてのう。名をグラッドと言うのですじゃ。今は離れて暮らしておりまして、この前に顔を見たのは何年前か…しかし暗黒神復活の兆し……このような状況になったとあっては伝えないわけにはいきませんで、わしはそのグラッドに会いたいと思いますのじゃ。」

 

「あれ、でもおばあさん、さっき跡を継ぐ者はいないって……」

 

「…グラッドもわしと同じ薬師、しかしグラッドは遺跡の守り手を継ぐことを拒否したのですわい。ああ、あの子を責めないでくだされ、あの子はより多くの人の命を救いたくて、ここではなくオークニスで薬師として生きることを決めた、とても優しい子なのですじゃ」

 

「……なるほど。しかしバアさん、今の話を聞いた限り、オークニスまでは結構遠いんでがすよね?アッシらの馬車は結構ガタが来てて、バアさんみたいな人が乗るには酷な気がするでがす。なあ、ゼシカ?」

 

「うん…私もかなり長い間馬車で寝てたけど乗り心地は最悪よ。なんてったって丸一日寝ても体力がまるで回復しなかったもの」

 

メディを馬車に乗せて連れて行きたいのは山々だが、現在の馬車は物置小屋の如きカオスな散乱具合になっており、その上長旅で劣化している馬車は非常に乗り心地が悪い。いくら護衛の為とはいえ、命の恩人をグロッキーにするのは本意でないのだ。少々癪だが、馬車の乗り心地が悪いというチャゴスの文句も今思えば至極真っ当なクレームだったと言える。

 

「じゃあメディさんを置いてオークニスまでオレたちだけで行くか?…うーん、だがその間にラプソーンの野郎が来たら目も当てられないな…」

 

誰かを護衛として置いて…という方法も得策ではない。一人残した程度ではラプソーンに敵うわけがなく、しかし二人残せば今度はオークニスへ向かうメンバーが雪山の魔物に囲まれて袋叩きにされる可能性が高くなる。では可能な限り戦闘を避け、一人でオークニスへ向かうべきか?…その場合予期しないトラブルが起こったとしても誰も助けには来ないのだ。

 

「ヤンガス、メディ殿をおぶってオークニスまで行くのじゃ」

 

「アッシは良くてもバアさんが凍えちまうでげすよ!第一、魔物との戦闘に巻き込むわけにはいかないでがす」

 

「うぅむそれもそうか…」

 

「「うーん…」」

 

「(おやおや…)」

 

メディとしては動こうにも動けない一行に何か目的を与えたくての提言だったのだが…こうやってまた膠着状態になってしまっては本末転倒だ。メディは再度沈黙を破った。

 

「わしは大丈夫ですから、みなさんだけで行ってくだされ。もちろんお礼は致しますし、今晩はお食事も出させてもらいますわい」

 

「えっ!ダメよおばあさん!今一人になるのは危険だわ!」

 

当然のように湧く懸念だが、メディはやんわりと制止した。

 

「心配はご無用ですじゃ。先ほど『遺跡』の話をしましたな?そこにはかつてカッティード様がご用意された非常に強力な退魔の結界が張られておりますのじゃ。わしは旅人さんたちが戻ってくるまでそこにおりますわい。なに、ちょうど遺跡の手入れも必要になってくる時期、不自由はしませんですじゃ。それにほら、わしにはバフもいることですしな。」

 

メディが手を叩くと、寄り添うようにぬるりとバフが現れた。巨漢のヤンガスを山小屋まで運ぶことができるような犬だ。有事の際にはメディを守る盾にも矛にもなってくれることだろう。

 

「…」

 

少しばかり鈍感なエイトですらメディがこちらを気遣ってそう言ってくれていることはなんとなくわかる。メディのことは確かに心配だが、相手の厚意をむざむざ却下するのは忍びない。なによりカッティードの結界により安全が確約されていると本人が言うのだから、外様の自分たちがこれ以上とやかく言う資格は無いのだ。

 

「わかりました。グラッドさんを探してすぐにまた戻ってきます。…みんなもそれでいい?」

 

「そう…ね。そのグラッドさんがラプソーンに狙われる可能性だってあるわけだし。」

 

トロデ、ヤンガス、ククールも渋々首を縦に振る。一連の話を聞いていたミーティアは既に準備万端のようだ。

 

「うむ。そうと決まれば善は急げじゃっ!行くぞおぬしら!」

 

そう宣言するやいなやバタバタと旅の支度を始めるトロデと、それに付き合わされるヤンガスたち。自分もその手伝いに行こうとしたところで、エイトはメディに呼び止められた。

 

「それと旅人さん、もしグラッドに会ったらこれを渡して欲しいのですじゃ。」

 

メディにそう言ってほんのり温かい袋を手渡されたエイトが中身を気にするよりも先に、彼女は袋に入っているのはヌーク草だと教えてくれた。寒いオークニスで暮らすグラッドが凍えてしまわないように、とのことらしい。

 

「分かりました。メディさんもくれぐれもお気をつけて!」

 

ちょうど出発の準備を整えたトロデにエイトは付いていく。優しい微笑みを湛えて見送ってくれるメディとバフに、一行は手を振りつつオークニスに向けて足を速めた。

 

 

 

エイトには母親がいない。父親もまたいない。そしてエイト本人は忘れ『させられている』ことだが、幼少期の彼は里中から煙たがれ、祖父以外の全員から迫害を受けていた。そんな悲しい過去を持つエイトにだってわかる。この袋が温かいのは決して発熱作用のあるヌーク草が入っているからだけではない、ということが。

 

「(絶対に届けないとな…!)」

 

メディのふくろがこんなにも温かいのは、この世で最も温かいもの────そう、母の愛が入っているからである。

 

 

 

 

 

 




原作との相違点
・トロデとミーティアも雪崩に巻き込まれた。
原作ではヤンガスとの喧嘩が白熱したことが巡り巡ってトロデとミーティアを雪崩から救うことになるのだが、今回はケンカしなかったため普通に巻き込まれた。なのでククールの機転でヤンガスが信号弾(ばくだん岩のかけら)を投げていなければ最悪ここで一行の旅は終わっていた。

・メディが賢者の末裔であることが発覚した。
原作ではエイトたちの目的が「黒犬レオパルドを追う」ことだったのでメディは特に何も言わなかったが、今回のエイトたちの目的は「賢者の末裔を探す」ことだったのでメディはその正体を表した。そもそもラプソーンは誰が賢者なのか何となくわかっているので賢者たちも隠しておく意味も特にない。



レベル
変化なし



・メディ
七賢者『大学者』カッティードの子孫で凄腕の薬師。ドラクエⅧ屈指の聖人。遭難した旅人に暖かい薬湯を飲ませてあれこれ世話を焼き、その対価に旅人の話を聞くのがライフワーク。息子グラッドとは離れて暮らしているが仲が悪いというわけではなく、常に大事に思っている(グラッドの方は若干の負い目があったようだが)。原作では七賢者の末裔の中で最も活躍している人物。山岳救助犬のバフを愛犬、あるいは相棒として共に暮らしている。

・カッティード
七賢者の一人。彼に知らぬことなどないと言われた高名な学者で、その叡智を駆使してラプソーン封印に尽力した。遠い未来にラプソーンが復活することを危惧し、石碑に『神鳥レティス』に関する記述を残し、情報が失われぬよう人通りの少ない雪山地方の遺跡として洞窟に石碑を安置し、強固な結界を貼り、更に遺跡の守り手を相続させるシステムを作ったかなり用心深い人物。更に暗黒神が復活してしまった場合のことまで考え、「さいごのかぎ」をひそかに製造し、子孫に託した。末裔が聖人なら祖先も有能である。



エイトたち4人の親、8人中1人(アローザ)しか生存してないのなんなの~?ああ、もしかしたらヤンガスの父親は今も元気に盗賊やってるのかもしれないけど…



あ~どうしよ~!エイトもヤンガスもククールも割と冷静なせいでウチのゼシカがどんどんアホの子になっていく~~!

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