ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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だいぶ文章のカンが戻ってきたような気がします。やはり小説は継続的に書くことが重要ですね…!

2024/04/26第一章~第十章までを読みやすく修正しました。よければ懐かしみながらご覧ください。これからも過去の話は定期的に読みやすく修正していきます。








Chapter33 雪山地方 ③

大雪崩に呑まれたものの、雪山に家を構える老婆…薬師メディによって無事に救出された一行。さらにそのメディは一行の目的である『賢者の末裔』であることまでも発覚する。賢者の扱いに悩む一行だったが、メディの機転により、一行は彼女の息子であるグラッドを連れてくるためにオークニスへ向かうことになったのだった。

 

 

 

同じ雪山と言えど、エイトたちの足取りはこの地方に入りたての時とは比べ物にならないほど軽やかである。それは雪山の歩き方に慣れてきたということももちろんあるが…

 

「寒くないってサイコーね!」

 

「ああ。まさかあのスープにここまでの効果があるなんてな。」

 

エイトたちは強い北風が吹いても気にすることなく、力強く白い地面を踏みしめつつ雪に覆われた街道を進んでいく。彼らは今、メディに差し入れてもらったスープのおかげで一時的に寒さに強い身体を手に入れているのだ。本来『ヌーク草』にはここまで長時間持続する発熱作用はないのだが…そこは流石、熟練の薬師メディだからこそなせる業である。

 

ある程度山を下ったところで、白い息を吐きつつエイトは地図を開いた。成り行きでオディロ院長から受け取った世界地図だが、なんやかんやで役に立っている。むしろ地図のない生活などもはや考えられないだろう。

 

「兄貴!道は大丈夫そうですかい?」

 

「オークニスは山を下ってから北…だね。うん、大丈夫。」

 

雪山に棲む魔物も襲っては来るものの、リブルアーチで交戦した黒い魔物と比べればどうしても見劣りするというものだ。雪の上でも軽妙な動きでこちらを襲撃してくる相手と違ってこちらは雪に足を取られて思うように動くことができないが、足元が悪いのであれば動かなければいい、と発想を転換してからは戦闘も楽になった。エイト・ゼシカ・ククールは呪文に、ヤンガスはそんな3人に降りかかる攻撃を全ていなすことに専念して体力の消費を抑えつつ、確実に一体ずつ仕留めていく。そうして降りかかる火の粉を払いながら、一行は難なく雪道を進んでいった。

 

「そういえばヤンガスは雪の実物を見るのは久々だーとか言ってたよな?」

 

「そうでがすね。ろくでもない思い出ばかりでげすが。…そういうククールは雪に思い出でもあるんでがすか?」

 

「ねーな。これまでレディを口説く際に『雪と見間違うほどにキレイだ』だなんて文句はよく使ったもんだが、実際こうして間近で見たのは初めてだ。じいさんやエイト、ゼシカはどうだ?」

 

「僕は…覚えてる限りでは見たことないかも…もしかしたら子供のころは見たことあったのかもね?」

 

「ああ…兄貴は過去の記憶がないんでげしたね…大丈夫でがす!今はアッシがついてるでがすよ~!」

 

ありがとう、と苦笑いしながら自分の身体からヤンガスを引き剥がすエイトの隣で、口をへの字に結んで押し黙っているのはゼシカだ。エイトはそんな彼女の様子に気づき、声をかけた。

 

「ゼシカ?どうかした?」

 

「……。ちょっとね。思い出してたの。子どものころ、トラペッタで雪を…ね」

 

「?」

 

「あのトラペッタで雪がですかい!?そりゃあなんとも珍しいことがあるもんでがすなあ…」

 

「トラペッタで降るなら俺も修道院で待ってりゃ今ごろ雪をお目にかかれたのかもな?」

 

「今見てるから別にいいんじゃないの?」「バカ、風情が違うんだよ風情が」

 

エイトとククールの掛け合いも上の空、ゼシカの心の内に広がるのはある冬の光景だった。冬…と言ってもゼシカの住むリーザス地方やトラペッタ地方に気候の変化はない。ただ植物が育つ時期を夏、植物が枯れる時期を冬、と呼んでいるだけだ。しかしその年の冬はまさしく『冬』だった。絵本の中でしか見たことのない雪の世界。それが幼きゼシカの眼前に大きく広がったあの日の衝撃を、彼女は生涯忘れることが無いだろう。本来降るはずのない雪をトラペッタに降らせる魔術『聖夜に見る夢(ジングル・ベル)』。そんな奇跡のような芸当ができるのは……もちろん『彼』だけである。

 

「(今ならわかるわ…『聖夜の道化(サンタ・クロース)』…あなただったのよね?ドルマゲスさん……)」

 

ドルマゲスがいて、サーベルトがいて、自分がいる。もう戻ってこない黄金の日々に思いを馳せ、そしてゼシカは思い出の箱にそっと心のカギをかける。もちろんこのことを仲間たちに話したって支障はないのだが、なんとなくこの思い出は自分だけのものにしたかったのだ。

 

そして……そんなアンニュイなゼシカの心の機敏をせせら笑うかのようにこの男がとんでもない爆弾発言を投下する。

 

「ん…?おお、トラペッタで思い出したが、そういえばリブルアーチで賢者の末裔であるマスター・ライラスに出会ったのう。今の今まで忘れておったわい。」

 

「…?」

 

「しかしマスター・ライラスはサーベルトと共にドルマゲスに殺されたはずじゃったんじゃが、どうして生きておったのか…」

 

もしもこの時全員がヌーク草入りのスープを口に含んでいたなら、ヤンガスだけでなく今度はもれなく全員が口の内容物を全て吹き出していただろう。トロデに向かって。

 

「「はあ~~!?!?」」

 

「おっさ…おっさん!?なぁんでそんな大事なことをさっさと言わねえでげすか!?」

 

「おいジジイ…オレがそういうタイプのサプライズは好かねえって知らねーわけじゃねえよなあ…!」

 

「お伝えしてくださることには感謝申しあげますけど、王様。何事にもタイミングってものが…」

 

「絶対絶対ぜ~~ったい!その人に色々話を聞いた方がよかったじゃないの!他の賢者のこととか、ドルマゲスさ…ドルマゲスのこととか!!」

 

「忘れておったのじゃ…こればっかりは……本当に申し訳ない…っ!」

 

ボケ老人、ドジオヤジ、とヤンガスとククールによる心無い言葉が飛び交うが…実際トロデを責め立てるのは酷というものだろう。トロデは何も自分の怠慢でこの重大情報を忘却していたのではなく、勇者に根掘り葉掘り質問されることを快く思わないライラス本人によって呪文で記憶に一時的なロックをかけられていたにすぎないのだから。

 

魂魄を操作する彼の弟子の術にインスピレーションを受け、『マフール』の呪文をベースにアレンジして完成したライラスオリジナルの呪文は、奇しくもエイトの脳に刻まれた竜神の呪いとほぼ同じ構造をしていた。弟子から刺激を受けたとはいえ、たった一人で竜神族の禁術と近しい呪文を作り出すとは…流石は『大魔法使い』の末裔、末恐ろしいものである。

 

閑話休題。

 

「ちいっ、メディさんに出会っちまった以上今更リブルアーチ方面には戻れねえし…どうすんだよ、おい」

 

「まったく、たま~にちろっと活躍してる時があっても、おっさんはおっさんでがすねえ。」

 

「スマヌ・・・スマヌ・・・」

 

「…」

 

「…。まあ仕方ないか。人間誰しも忘れることの一つや二つある…ってか。」

 

「……お、おっさんに悪気が無かったのはわかったでがすから、切り替えていきましょうや!…あ、ほら!オークニスが見えてきましたぜ!」

 

ヤンガスもククールも、何もトロデを虐めたいわけではない。憎まれ口を叩きたくはなるが、トロデが言い返す気概もないほど落ち込んでいるのを見るとなんとなく慰めてしまうのが彼らである。売り言葉に買い言葉は非常に長けた二人だが、やはり根は善人なのだ。

 

氷で作られた巨大なアーチは町の目印。ここは雪山の寄合所、円環の町オークニスである。

 

 

─オークニス─

 

他にも何か忘れてしまっていることがないか思い出す、と言って町の外に残ったトロデと別れ、エイトたちはオークニスでグラッドを探し始めた。流石に街の中は暖かく、ヌーク草を摂取しているエイトたちは少し汗ばむほどだ。ユスリカが街灯に引き寄せられるかのように早速フラフラと武器屋へ向かうエイトの手をゼシカが掴むが、ククールがそれを窘めた。

 

「オレたちはそう遠くない未来、暗黒神やその配下と戦うことになるんだ。装備を整えるくらいは良いんじゃないか?幸い、資金は潤沢にあるわけだからな。…ただし!おいエイト!聞いてるか?ただし!30分だ。それまでオレたちはグラッドを探してるからお前は装備を見繕ってろよ!」

 

「ありがとうククール!」

 

そう言い終わらないうちにエイトはニコニコで武器屋へと姿を消した。ククールは世話の焼ける、と言いながらもそこまでうんざりした様子ではない。なぜなら彼の視線の先には彼の大好きな酒場があったからである。ククールがヤンガスに目配せをするとヤンガスも一瞬でククールの意図を理解。ニヤリと笑った。

 

「じゃ!オレたちはあっちで情報収集してくるから!」

 

「そっちは任せたでげすよ~ゼシカ~!」

 

「な、ちょ、はあ!?ねえ!!」

 

「~~~っっ!!」

 

ぽつねんと一人残されたゼシカは勝手な男どものことを思い額に大量の青筋を浮かべながら、ゆっくり、ゆっくりと踵を返して反対側へと進んでいった。途中、階段の前で酔って寝ていた男がゼシカにナンパをふっかけたのだが、虫の居所が非常に悪かったゼシカによって蹴っ飛ばされ、階段を転げ落ちながら地下へと消えていった。その様子を見ていた衛兵はゼシカのあまりの剣幕に思わず見ないふりをしてしまったという。

 

 

「…」

 

「ふーっ!…まあ、闇の遺跡を出てからは私もみんなに迷惑かけちゃってたんだし、ここで頑張って借りを返しておくのもいい…かな」

 

オークニス町長からグラッドの部屋が地下にあることを聞いたゼシカはオークニスの迷路のような地下通路を歩いていた。円環状になっており非常に歩きやすい地上部と異なり、地下はどこも同じような景色で迷いやすい。しかしゼシカも今やいくつものダンジョンを踏破したベテラン冒険者。今更町の地下通路程度に迷う彼女ではないのだ。

 

「…。」

 

「(兄さん…兄さんは生きているの?それとも、やっぱり…)」

 

「(でも私が深い闇から救い出された時、そこに確かに兄さんはいた…)」

 

「(ドルマゲスさん…私、昔あなたに貰ったブレスレット…私、まだ持ってるんだよ。あなたが兄さんを殺したって聞いた時も捨てるに捨てられなくて…)」

 

「(あなたがディムとして過ごした時間、私にとっては兄さんとの日々に並ぶくらいの宝物だと、そう思ってたのよ)」

 

「(ドルマゲスさん、あなたは今どこにいるの?そこに兄さんはいるの?)」

 

「(私にはエイトや…仲間たちがいて。もう一人ぼっちじゃない。兄さん、私はもう兄さんがいなくても生きていける、それは安心してほしい。…でも兄さん、もし、もしも生きているなら…会いたいよ…そして本当のことを教えて……)」

 

「…。」

 

「…?」

 

「…ン?」

 

「……あれぇ…?」

 

ゼシカは道に迷った。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「よぉ、エイト。買い物は終わったか?」

 

「うん!おかげで最高の買い物ができたよ!」

 

エイトの下げた巨大な袋の中から顔を出しているのは「ドラゴンメイル」に「ビロードマント」、「こおりの盾」に、「ドラゴンキラー」、「キングアックス」……ククールは思わず目を擦った。

 

「あー、エイトくん?オレがさっき酒場で聞いた話が間違っていなけりゃなんだが……ここの町、昼は防具屋しか開いてないんじゃなかったか…?」

 

「うん!だから武器屋さんには無理を言って営業してもらったんだよ!助かるなぁ~」

 

「…。……。」

 

ククールは何か言おうとして…やめた。エイトがものすごくいい笑顔をしており、肌も見たことないくらいツヤツヤしているからだ。エイトは常識人の皮を被っておいて、時々こうしてナチュラルに畜生な面を見せることがある。悪気が無いのがまた始末に負えない。…そしてそんなエイトを流石でがす、兄貴!と崇拝するヤンガスはもっと手に負えない。普段は信心の浅いクサレ僧侶のククールだが、今回ばかりは睡眠中に叩き起こされた武器屋の店主の冥福を祈って心の中で祈りをささげた。

 

「そういえばゼシカは?」

 

「まだ姿が見えないでげすな」

 

「ここ…ここにいるわよ…」

 

「ゼシカ!……大丈夫?」

 

地下に続く階段から姿を現したゼシカだが、どうもやつれているようだ。たった30分で何があったというのか?

 

「ゼシカお前…もしかして迷ってたのか…?」

 

「ハ!そ、そんなわけないじゃない…!アンタと一緒にしないでよね…!」

 

「オレ、そんな迷子のイメージあるか?」「いつも路頭に迷ってるでしょ!」「ギリギリうまいこと言えてないでがすね」

 

一見時間を無駄に過ごしていそうなエイトたちだが、恩人であるメディの命がかかっている以上、何も遊んでいたわけではない。エイトは全員分の装備と消耗品を的確に、必要なものを必要なだけ買い揃えたし、あてもなく地下を徘徊していたゼシカはめちゃくちゃイライラしながらも探し人であるグラッドが「薬草園の洞窟」と呼ばれる場所にいるらしいことは突き止めた。ヤンガスとククールも酒場の人間から雪国での旅に役立つ知識や、「神鳥レティス」なる興味深い話を入手した。付き合いの為『仕方なく』酒を飲まざるを得なかったのだが、必要経費である。

 

オークニスでの目的を完了した一行は外で錬金釜の実験をしていたトロデに声をかけ、「薬草園の洞窟」へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 




長くなったので二つに分けまーす。続きは明日か明後日か…近日中に!
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