ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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ドラクエⅫ…早く続報出ないかなぁ!

今回短めです。







Chapter35 雪山地方 ⑤

薬師メディの依頼を遂行するため、オークニスを経て薬草園の洞窟まで彼女の息子グラッドを探しに来た一行。洞窟の最奥で彼を救助し安心したのも束の間、洞窟脱出直後に魔物の奇襲に遭い、さらに今最も暗黒神に近い存在『妖魔ゲモン』までもが来襲する。ゲモンの詰めの甘さにより何とか無事に生き延びた一行だが、敵の目的がメディにあると知り戦慄。最悪の事態を回避するため一行はメディの家へ急行するのだった。

 

 

 

 

『ルーラ』で再度訪れたメディの家はいやに静かだった。風の音すら聞こえず、ただしんしんと雪が降り積もっている。しかしその静寂は、必ずしも平穏を意味するわけではない。

 

「間に合ったか!?」

 

「…。いいえ、王様……。非常にイヤな予感がします。姫と共に隠れていてください…」

 

「…ん。おい、とりあえず厩舎は安全そうだぜ」

 

厩舎の戸を注意深く開き、中の安全を確認したククールが呼びかけた。エイトは彼に一言礼を言い、トロデとミーティアにその場に待機してもらうよう頼んだ。エイトはグラッドの方にもチラリと目をやる。…できれば危険な眼には遭わせたくないのだが、ここまで連れてきておいて後は厩舎で待っていてくれというのも不義理な気がしたため、彼を待機させるのはやめておいた。

 

「君たち…」

 

「グラッドさん、絶対に私たちから離れないでね」

 

「…言いにくいんだが、この澱んだ魔力の流れ…アンタの実家は既に伏魔殿だ。」

 

「!?そ、そんな…」

 

「とにかく、さっさと突入するでげすよ!バアさんの無事が最優先でがす!」

 

「!……ああ!頼む!」

 

グラッドはヤンガスの言葉で折れかけた心を支えなおし、母を救わなければ、という意志を再びその眼に宿した。

 

エイトたちはそれぞれの武器を構え、玄関の戸を開く────と同時に「あんこくちょう」が飛び出してきた。あんこくちょうは招かざる訪問者に一瞬戸惑いを見せるも、すぐにその鋭い爪で切り裂かんと飛び掛かってくる。エイトは冷静に盾で爪の一撃を弾くと、「砂塵のヤリ」の一突きで相手の喉を穿つ。飛行する鳥系の魔物にはリーチの長い槍を使った戦闘方法を採るのが有効なのだ。続いてゼシカのムチが右翼を打ち、ヤンガスの鎌が左翼を刈り取った。堕ちたあんこくちょうの脳天をククールの放った矢が貫き、対象は沈黙する。不意打ちでなく、かつ相手が一体ならこのように討伐も安定するのだが…。

 

「チッ!やっぱコイツ等かよ…っ!」

 

「さっきも戦った魔物と同じ種…この家を襲撃したのは暗黒神ラプソーンの一派で間違いなさそうだ…」

 

家の中にはさらに数体の魔物がいた。「あんこくちょう」「デスターキー」のみならず、リブルアーチで相対した「スライムダーク」「シャドー」の姿もある。エイトたちは他人の家の中ということもあって大層な呪文は唱えられないが、慣れない場所での戦闘に戸惑っているのは相手も同じ。エイトたちは魔物を一体ずつ集中して攻撃することで、なんとか無傷で屋敷の魔物を掃討した。

 

「狭い場所での対多数の戦いはベルガラック地方で何回も死んでた時に慣れてたからな。……その経験がこんなところで生きてくるとは思わなかったが。」

 

「この黒い魔物たち…目的はやっぱり賢者のバアさんでがすかね…?ならバアさんはどこかに隠れてるみたいでがすな」

 

「?君、それは…どういうことだ?」

 

「コイツ等はグラッドのだんな、アンタの母親を狙ってここまで来てるわけでがす。そしてこの部屋…散らかっちゃあいるが争った形跡は見られないでがす。多分バアさんは魔物の襲撃に早々に気付いて、この家ではないどこかに逃げたんじゃないでがすかね?きっとアッシらと同じように、魔物共もまだバアさんを捜索している途中なんでがすよ。」

 

「ふむ、既に母を手にかけていたなら魔物たちがここに居残る必要はない…確かにそうだ。」

 

「なるほど!じゃあまだおばあさんはどこかにいるのね!……でも、じゃあなおさら急がないと…!」

 

「さっきの魔物の親玉…杖持ちの化け物がここに来ないとも限らないからな。そうなったらオレたちでも二人を守り抜けるかどうかは保証しかねるぜ。」

 

「グラッドさん、この近辺でお母様が姿を隠せるような場所に思い当たるところなどはありませんか?」

 

ひとまずは屋敷の安全を確保したエイトたちだが、居間にも地下にも、メディはおろか、愛犬バフの姿も無い。血痕などが見られなかったことから、ヤンガスの言う通りメディはどこかに身を潜めている可能性が高いが…グラッドは少し考えると、思い出したという風に手を叩いた。

 

「…そうだ!『遺跡』だ!…実は、私の実家の裏手に洞窟があるのだが…」

 

「…ああ!ええと、確かおばあさんが守り手を担っているっていう…」

 

「知っていたか。あの遺跡には非常に強力な退魔の結界が張ってあると聞いたことがある。魔物から身を守るにはきっとあの場所が最適、きっと母はそこにいるに違いない!」

 

「そうか、『結界』…!今思い出したぜ。ナイスだ!善は急げ、早くメディさんと合流するぞ!」

 

慌てて飛び出したグラッドに続き、エイトたちも屋敷の裏手へと急いだ。

 

 

「『メダパニ』!アンタたちには構ってられないのよ!」

 

「勝手にやってろ、もう一発食らいな!『メダパニ』!」

 

洞窟内でも魔物が蠢いていたが、いちいち相手にしている暇などない。ゼシカとククールによる『メダパニ』の重ね掛けで同士討ちを誘引し、意志を保った残る魔物の群れを薙ぎ払いながらエイトたちは遺跡まで駆け抜けた。

 

「早くっ!こっちに来なされ!」

 

「こ…この声は…っ!」

 

「兄貴はグラッドのだんなを!うおおおおっ!」

 

エイトたちにとっては先ほどぶりの、グラッドにとっては十数年ぶりとなる声が遺跡に響く。混乱状態が解け、なだれ込んでくる闇の魔物たちを、ヤンガスが『岩石おとし』で掘り出した大岩を投げつけて遺跡の入り口付近まで押し返し…そのままエイトたちはグラッドを連れてメディのいる結界内に転がり込む。戦術か、はたまた自棄を起こしたか、『デスターキー』の投擲した剣がグラッドの心臓めがけて飛来するが……間一髪、剣は結界に弾かれてその場に落ちた。

 

武器も呪文も通らず、体当たりなどしようものなら返り討ちに遭う。闇の魔物たちは悪しきモノを阻む結界を攻めあぐね、一体、また一体と遺跡から退いていった。

 

「この結界の中にいればもう安心ですじゃ。あのような悪しきものはこの中へは入ってこれませんからのう。」

 

「メディさん!」

 

「おや、あんた方は…すまないねえ。どうやらわしはとんでもない時におつかいを頼んでしまったようですじゃ。」

 

「無事で何よりでがすよ!おっ、バフも!」

 

エイトはメディが無事であることにひとまず胸を撫で下ろした。ヤンガスは相変わらず気怠げで覇気のないバフを撫でまわし、その様子を少し羨ましそうにゼシカが眺めている。そんな中、ククールは一歩を踏み出せずにいるグラッドの背中を軽く小突いた。

 

「…っ!?」

 

「なあ、アンタら十数年ぶりの再会なんだろ?挨拶の一つでもしてやったらどうなんだ?」

 

「う、うむ…」

 

母親の記憶がほとんどないククールにとって、本当ならわざわざ他人(ひと)様の母子の関係に口を挟む気などなかったのだが、誰かが言いたいことを言えずに後悔する様を見るのは昔の自分と重なるようで何となくイヤだった。

 

「おや…そこにいるのは……」

 

「……かあさん、おれ、わ、私は…」

 

「グラッド…大きくなったもんだねぇ。背丈も少し伸びたかい。」

 

「!…ハハ……母さん、この歳じゃ身長なんてもう変わらないよ…」

 

二人の間に横たわるは十数年間の空白。それから紡がれるグラッドのぎこちない言葉も、貼り付けた笑みも、少しずつ、しかし確実に氷解していく。母の愛とはそれほどまでに温かいものなのである。エイトたちは思わず顔を綻ばせ、二人の邪魔をしてはならない、と少し後ろへと退いた。

 

 

「では、やはり彼奴等は暗黒神の手の者…通りでここいらでは見ない魔物だと思いましたわい。…わしがいつも通り地下室で薬草を煎じておりましたら、突然上でバフが吠え出しましてのう。何事かと思い外に出てみると小屋が黒い魔物の大群に囲まれていたもんで、慌ててここに逃げ込んだのですじゃ。今朝に旅人さんたちが予め知らせてくれていなければ、わしもバフも無傷で逃げられたかどうか。本当にありがとうねぇ。」

 

「私からも改めて礼を言いたい。母を気にかけてくれて、そして私をここまで連れて来てくれてありがとう。」

 

「礼には及びませんよ。二人を無事に再会させることができて良かったです。」

 

「バフ~!あなた、とってもお利口さんなのね!」

 

今度はいつの間にかヤンガスと立ち位置が入れ替わっていたゼシカがバフを撫でまわす。幼少期より動物と触れ合う経験に乏しく、勝手の分かっていないゼシカはヤンガスよりも雑にヘッドシェイクしてくるので、流石のバフも少し目を回している。

 

「まずは一安心ってとこだが、いつまでもここにいるわけにゃあ行かねぇよな。次はどうする?」

 

「一旦おっさんと馬姫様をここに連れてくるのはどうでがすか?あんなおっさんでも機転と知識量はまあまあでがす。何かいいアイデアが思いつくかもしれないでげすよ。」

 

「そうだね、厩舎よりも結界の方が安全だろうし、魔物も退いている今のうちに────」

 

 

ゴオォォォン…!

 

 

「「!!!」」

 

突如として遺跡に轟く爆音。そして地震を思わせる大地の揺れで、全員の間に緊張が走る。

 

「これは…!」

 

「今の音…それにこの悍ましいまでの邪悪な気配……。どうもただ事ではありませんな。」

 

悪しきものを遮断するはずの結界内にすら侵入してくる微かな瘴気。それまでここにいた黒い魔物とは違う、圧倒的な闇のチカラ。つまり……

 

「来やがったか…!」

 

「暗黒神ラプソーン…」

 

「ま、まさかさっきの化け物が…!?」

 

「さて……。いつまでもここに籠っているわけにもいきますまい。ここは鬼が出るか蛇が出るか、外に出てこの邪悪な気配を確かめてみねばなりませんかな。」

 

「だっ、ダメだ母さん!」「グラッド…?」

 

結界の外へ出ようとしたメディをグラッドが阻む。暴の化身、あるいは破壊の権化。妖魔ゲモンの恐ろしさを身に染みて知っているグラッドは、無謀とも言える母親の行動を咎めざるを得なかった。

 

「グラッドさんの言う通りです、メディさん。相手はあまりにも強く、狡猾。ここは僕らが外の様子を見てきますので、この結界から出ないでください」

 

「で、ですが…」

 

「安心しな。オレたちだって死にたいわけじゃないんだ。なんとかして奴を追い返してやるさ。」

 

「急ぐわよ、エイト!」

 

「うん!…では二人とも、行ってきます。」

 

「グラッドのだんな、バアさんとバフを頼んだでがすよ!」

 

「任された。武運を祈っているぞ…!」「どうか、お気をつけて…。」

 

グラッドとメディを残して結界から出たエイトたちは、慎重に様子を伺いながら不吉な橙色の光を目指して遺跡のある洞窟を抜けた。

 

 

「…ひでぇことするぜ、全くよ…」

 

洞窟内から見えた不吉な橙の光。その正体は勢い良く燃え上がるメディの家だった。彼女と愛犬のバフ、そこに訪れてきた数々の旅人たち、そして彼女の息子グラッドとの…大切な思い出、その光景を湛えてきたメディの家は、現在進行形でごうごうと炎上し、屋根が少しずつ思い出と共に焼け落ちていく。

 

「ムカつく……。私、こういうの……誰かの大事なものが奪われてくのとか、奪うヤツって、ゼッタイに許せないの」

 

「ああ…アッシも……流石にキレちまったぜ」

 

「…。」

 

そして、エイトたちとメディの家との間に割り込むように舞い降りる巨大な黒影。

 

「…なんだなんだァ、気に障ることでもあったか?グハハハ……なんせニンゲンの家なのか、ただのゴミ山なのか見分けがつかなかったもんでなァ…まあ、どっちも目障りで鬱陶しいモンには変わりねェが」

 

「てめぇ…!」

 

「…俺様の名は『妖魔ゲモン』だ。その小せェおつむに刻み付けて、地獄で泣き喚きながらその名を崇めやがれ、ゴミ共」

 

こちらを威嚇するように大きく翼を広げるゲモン。圧倒的な格上を前に静かなる怒りを心に宿し、エイトたちは各々の武器を握る手に力を込めた。

 

 

 

 

 

 




エイト
レベル:31→32

ヤンガス
レベル:31→32

ゼシカ
レベル:34

ククール
レベル:32→33



「(グラッドさんとメディさんを見てたらなんだか心がほっこりするなあ…。)」

「よ~しよしよしよし!良い子でちゅね~!」

「(あれが『家族』ってものなのかな…)」

「可愛いね~♡よ~しよしよしよし!」

「…。」

「よ~しよしよしよしよしよしよしよし!!!」

「ゼシカ、ゼシカ。…そろそろ撫でるのやめてあげて。」

「ん?」

「ほら、もうバフ白目向いちゃってるから…」

「ゼシカの場合は撫でてるというより、もう脳を揺らしにかかってるでげすね」

「(サーベルトのことといい、ゼシカってもしかして割とダメな女なのか?)」





ゼシカはどれだけアホの子にしても大丈夫。その分ヤンガスがクレバーなのでバランスは取れます。「かしこさは高いけどちょっと抜けてる女の子」…皆様お好きでしょう?
(正直な話、ゼシカに清涼剤になってもらわないと話が重くなりすぎてしまう)
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