ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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ハーメルンサーバーダウンやめてくれよぅ…書きかけの下書きが全部パァ!ですよ!

何人かの方には指摘していただきましたが、強化ゲモンは多分原作ラプソーンと同等の強さを誇ります。ということはラプソーン自体がかなり強化されているわけですね。というのも闇の遺跡で大分長いこと放置していたことと、レオパルドを自分で動かす必要が無くなったのでその分エネルギーを蓄えることが出来ていると、そういうわけでございます。多分。








Chapter37 雪山地方 ⑦

 

 

 

 

「ンガアァァッッ!!クソッ、クソォォォッ!目がァァァッ!」

 

強烈な刺激に苦しむゲモンの叫びが雪山にこだまする。

 

一般に鳥類の嗅覚は他の感覚器と比べて劣っていると言われている。故に「ヌーク草」の鼻へのダメージはほとんど無いに等しいのだが、問題は視覚の方だった。猛吹雪の中でも的確に獲物を捕捉する三つの眼球と視神経で外界のほとんどを認識しているゲモンにとって、脳が視覚に割くリソースは非常に大きい。もちろんヌーク草の効果も永続するようなものではないが、もとよりゼシカの『ジゴフラッシュ』で衰弱していた目にヌーク草が与える被害は甚大だった。ゲモンは痛みに悶え、癇癪を爆発させて暴れ回る。

 

「グオアアアァァァッッ!!!」

 

怒り狂うゲモンの爪は近づくもの全てを容易く引き裂くため、周囲の黒い魔物たちすらも近寄れずに右往左往するのみである。それでもラプソーンの一声があれば、ゲモンはなんとか行き場のない怒りを内心に収めることもできようが、彼の上司は現在休眠中。勇者でも敵わず、暗黒神もいない今、一体誰が彼を止められるだろうか?

 

煩冤するゲモンは感情のまま暴れ回り、周囲のものを手当たり次第に破壊していく。そしてその爪が遂にグラッドとバフが身を潜めている遺跡に向けられた時。瞬間、彼方から飛来するは紫の流星。

 

「うるっさいし、しつっこいんですよ!」

 

「グゲッ!?」

 

流れ星と見紛う有り得ないスピードでゲモンにドロップキックを食らわせたその女は、そのまま宙返りしながら呪文を唱える。ゲモンを取り巻いていた黒い魔物たちは瞬きをする間もなく自重で潰れ、壊滅する。ふわりと舞い上がるスカート。そこから艶めかしい脚が、さらにはその先の部分までもが露わになってしまっていることなど、女にとっては至極どうでも良いことのようだ。

 

「悔しいですけど、あなたにはわたし一人じゃ敵いませんからね…でもいつか絶対ブチ殺しますから、首洗って待っててくださいよ」

 

「ぬゥ…その、声は…?」

 

「じゃ、さよなら」

 

女が呪文を唱え、ゲモンは見えない力によって突き飛ばされる。目の見えないゲモンには今何が起こっているのか推察することもできないが、それでも相手の好きなようにはさせるまいと足を踏ん張ろうとし───

 

バシャァ…ン……

 

「!?!?」

 

海に落ちた。徐々に視覚を取り戻し始めたゲモンが見た景色は、一面の大海原だった。

 

 

「ふぅ………。…さ、さむぃ」

 

ゲモンを飲み込んだワープゲートを閉じ、白い息を吐き出す女。素足にワンピースというその服装は雪山を舐めているとしか思えず、案の定女はブルブルと震え始めた。

 

「き、君……?」

 

勇者の敗北、母親の死、そして先ほどの一幕。その一部始終を洞窟の中から見ていたグラッドが声をかける。すぐに駆け寄ることをしなかったのは女がグラッドにとっての味方であるという確証が掴めなかったからである。女はグラッドの存在に気がつくと、可愛らしく小首を傾げた。

 

「…?…どちら様ですか?……ああ、もしかして賢者…じゃあなさそうですね。賢者の関係者の方ですか?」

 

「私は賢者の末裔メディの息子、グラッドだ……。母はそこで、私を守って………っ」

 

グラッドは目尻に浮かぶ涙を隠すように倒れたメディから顔を背ける。

 

「…そうですか、遅かったですか。……お兄さんはちょっと妹を信頼しすぎなんです。……せめて、埋葬くらいはお手伝いしますよ」

 

女は雪原にメディの姿を認めると、その瞼を閉じさせるべく歩み寄り……目を丸くした。

 

「えっ。…ちょ、ちょっと!ねぇ!まだ息してますよ!この方!?」

 

「なっ、なんだって!?!?」

 

「でも…マズそうな状態です!わたし詳しいことは分からないですけど!」

 

「すぐに診るっ!すまないが遺跡まで運ぶのを手伝ってくれないか!?」

 

女はグラッドの指示に従い、メディの身体を魔法で浮かせ、魔物の入ってこられない遺跡まで丁重に運んだ。

 

 

バフが心配そうに見守る中、グラッドは額いっぱいに浮かべた汗を拭うと、長い息を吐いた。

 

「なんとか…峠は越えた…か。」

 

「助かりそうですか?」

 

「ああ。外科的な施術はあまりに久々のことで不安だったが…。君のくれた薬がなければ危なかったかもしれない。本当にありがとう。あまりのことに動揺して患者の死亡確認を怠るなど…薬師失格だな、私は」

 

「『ふしぎなサプリ』です。お礼はわたしじゃなくてこのお薬を作った人に言ってください。……まあ、あなたの持ってたそれも、お母様を生き永らえさせるのには必要なものだったんでしょう?」

 

「そうか…。そう、なのかもしれないな…」「わふ」

 

簡素な布団の上で安定した寝息を立てているメディ。女は右手で髪の毛をいじくりつつ、グラッドの煎じている黄色い植物の葉を指した。グラッドが採取し、メディに渡そうと用意していた「きつけ草」の原種だ。……息子を守るために命を懸けるのを母の愛と呼ぶのだとすれば、そんな母の命を救うのは息子の愛に他ならないのである。少しだけ上がったグラッドの口角を見て、バフは満足そうに短く鳴いた。

 

「ところで、君は…?一体何者なんだ?どうしてここへ?」

 

「…わたしですか?わたしのことはいいですよ。別に」

 

「そうもいかない。君は私とバフと母の命の恩人なんだ。…目的はいい、せめて名前だけでも教えてくれないか?」

 

女は少々面倒くさそうに頭を掻いたが、グラッドの真剣な眼を見て観念したようにため息を吐いた。

 

「…わたしはユリマと言います。本当はあの人以外からなんと呼ばれようがどうだっていいんですが…あなたがもしわたしのことを他の人に言いふらすつもりなら、その時は『魔王』とでも呼んでください。不本意ですが、そっちの通り名の方が名が知れてるみたいなので」

 

「…成程。ユリマさん、感謝する。私に出来ることがあれば何でも言ってもらいたい。」

 

「お構いなく。わたしも…微妙に間に合いませんでしたし。そもそも賢者が絡んでいなければあなたを助けてたかどうかも定かじゃありませんから。わたしのことは幸運な災害か何かだとでも思っててください」

 

「そ、そうか…」

 

ユリマはある時期より男を嫌悪するようになり、女もまた忌避の対象だった。今も敵意のないグラッドから常に数歩離れた位置をキープしていることからもそれがよくわかる。…しかしそんな彼女の人間嫌いも一部の老人と小さな子供に対してはその限りではないようで、ユリマはメディに優し気な視線を遣ると、洞窟から出ていこうとした。

 

「……では、わたし人を探してるので。お邪魔しま───ぁ」

 

「?」

 

「あ、あぁあ…ぁぁぁぁああぁ…………」

 

ユリマはまるで時間が止まったかのようにその場にぴたりと制止すると、突然自分で自分の頭を殴り始めた。それも並の剣幕ではない。遺跡に鈍い音が響く。

 

「バカ!!!わたしのバカ、バカ!ドルマゲスさんの居場所をさっきのアイツに聞けばよかったのに!!バカ!バカ!!」

 

ユリマがガリガリと頭を掻きむしると、呼応するようにその白濁した右目から涙の如く鮮やかな血液が伝っていく。目の前の恩人の豹変ぶりと鬼気迫る迫力にグラッドも思わず息を飲んだ。

 

「ゆ、ユリマさん……?」

 

「……はぁ。なにやってんですかね、わたし。やっぱりあの人がいないとダメだなあ…」

 

「……?」

 

「…では、今度こそお邪魔しました。お母様のお早い快復を祈ってます」

 

「あっ!待ってくれ!まだ───」

 

グラッドがユリマを追って遺跡の外へ出た時には、既に彼女の姿は無かった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

賢者殺害を阻止するべく暗黒神の手先『妖魔ゲモン』と対峙した一行。ミーティアとトロデの危機をトリガーとして竜の血を目覚めさせたエイトの猛攻を始め、彼らはゲモンを相手に大健闘を遂げたものの、あと一歩及ばず敗北する。残されたトロデとミーティアは守る対象であったはずのメディに逆に助けられ、命からがらその場から逃走したのであった。

 

 

雪越しの教会

 

「…っは!」

 

「よ、起きたかエイト」

 

「ククール…僕らは…」

 

「ああ、負けだ。ボロ負けさ。」

 

「くっ…!」

 

『神の加護』により、死後最寄りの教会で復活したエイトたち。エイトは悔しさを滲ませ拳を握り締める。自分たちでは敵わないであろう強大な相手だということは分かっていた。しかし…一体の相手にここまで完膚なきまでに叩きのめされて全滅するのは初めてのことだった。

 

「エイト、悔しい気持ちは分かるわ。痛いほど……。でも早く戻らなきゃ!おばあさんが危ないわ!」

 

「置いてけぼりにしちまったおっさんたちのことも心配でがす。おっさんはともかく、馬姫様をそのままにはしておけませんぜ、兄貴!」

 

「(そうだ、今はもっと大事なことがある…!)…うん!」

 

悔しがったり苛立ったりすることなど後でいくらでもできる。そう気を持ち直したエイトはすぐに荷物をまとめて部屋を飛び出した。シスターと神父に感謝を述べ、早々に教会の扉を開く……と、ほぼ同時にミーティアとトロデが教会の前に到着した。

 

「お、王様!?姫!!!」

 

「おお!エイト!」

 

思ったよりも早い再会に一瞬面食らったエイトだが、すぐに二人の容体を確認し、怪我をしているミーティアにはすぐに摩り下ろした「特やくそう」を丁寧に塗布していく。ミーティアの傷は痛々しい見た目ほどは深くないようで、エイトは胸を撫で下ろした。

 

「よかったよかった、無事だったんでげすね」

 

口では軽んじていながら、内心ではトロデのこともしっかり心配していたヤンガスは思わず破顔する。しかしそんなヤンガスとは対照的にトロデとミーティアの顔色は優れない。

 

「……命だけはな。メディ殿が命を懸けてわしらを逃がしてくれたのじゃ…」

 

それもそのはず、二人はメディを見捨てるような形で逃げ帰ってきたのだ。あの時はそうするほか選択肢が無かったとは言え、民を導く立場にある二人にとっては非常に心の痛くなる出来事だった。トロデが帰ってきたため、エイトたちは心のどこかでメディたちも助かったのだと勝手に期待していたが、その期待は当然の如く裏切られてしまった。

 

「えっ…!」

 

「そっ、それじゃあ…!」

 

「…うむ。……考えたくないことじゃが……。」

 

「「…」」

 

吹雪も吹かぬ静かな曇天の下、パーティに横たわる重い沈黙。破ったのはやはりエイトだった。

 

「…行こう。護衛を申し出たのは僕らの方なんだ。僕らにはもう一度あの場所に向かう責務がある。」

 

「…そうね、そうだわ。だって可能性はゼロじゃあない。万が一ってことも有り得るわ」

 

「アッシは兄貴についていくだけでがすよ。でも…そうでがすね。一度結んだ義理は通さねぇと男が廃るってもんでがす」

 

「ま、そういうことだな。…じいさん、アンタらはここで休んでろよ。姫様もお疲れのご様子だ」

 

「…。」

 

軽くトロデの肩を叩くククール。つまるところは「もしものことがあったとき、ゲモンを相手に助ける余裕はないからここでじっとしていろ」ということなのだが、流石にそれを直接口にしたり、皮肉にして飛ばしたりするほどククールも堕ちてはいない。実際怪我をしたまま全力で走り、疲弊しているミーティアに気を遣っているのも本心である。トロデもそれら全てを分かったうえで、ゆっくり首を縦に振った。

 

「…うむ。そうさせて貰おう。…お前たち、頼んだぞ」

 

何を、とは聞かないし言わない。ただ、自分たちの行いの結末を見届けなければならないということである。エイトは顔を見合わせて仲間たちの意思を確かめ、『ルーラ』でメディの家へと飛んだ。

 

 

「…もう、燃え尽きちゃってるわね…。」

 

焼け落ちたメディの家は既に鎮火しており、瓦礫と燃えカスが残るのみである。いずれ時が経ち、瓦礫も雪に埋もれようものならきっとここは『メディの家』としての属性を完全に喪失し、『ルーラ』の対象からも外れることだろう。

 

「アイツは……いないみたいでがすな。既に去ったようでげすよ」

 

人一倍感覚に機敏なヤンガスがそう言うのであれば間違いはあるまい。見れば黒い魔物たちも姿を消しており、昨日までの暖かな場所とも、激しい戦火に巻き込まれた先刻とも違う、なんとも虚しい様相を見せていた。エイトたちは家周辺を少し見回るが、やはりメディの姿は見当たらない。

 

「連れ去られた…って可能性は?」

 

「いいえ、それは無いわ。暗黒神ラプソーンの目的は賢者の血。『神鳥の杖』によって刺し殺す以外にラプソーンは賢者に対して特段興味を持ってないのよ」

 

「とりあえず洞窟に向かおうぜ。グラッドやバフの無事も確認しないとな。」

 

「んん…?あ、兄貴!洞窟から顔を出してるの、あれバフじゃないでげすか!?」

 

「えっ!…ほんとだ!!」「バフ~!!!」

 

ヤンガスが指さす先にはバフが顔だけを洞窟から覗かせてこちらの様子を伺っていた。フン、と鼻を鳴らすとバフは奥へと消えていく。それを「ついてこい」の合図だと解釈したエイトたちは急いで洞窟の中の遺跡へと駆けた。

 

 

「どうしたバフ…。…ッ!?君たち!生きていたのか!?」

 

「グラッドのだんな!だんなこそ無事でなによりでがすよ!」

 

「オレたちはちょっとやそっとじゃ死なないのさ。…ところで、メディさんは……」

 

グラッドはエイトたちを見ると驚いて勢いよく立ち上がり、椅子が倒れた。グラッドは慌てて椅子を元に戻すと、咳ばらいを一つして座りなおす。

 

「まあ、楽にしていてくれ。椅子が足りないのは申し訳ないが……。結論から言おう。…母は助かった。」

 

「「!!!」」

 

グラッドはにこやかな表情で言い、エイトたちからメディの寝顔が見えるように椅子を少し引いた。エイトたちの期待はまたしても、しかし今度は良い方向に裏切られたわけである。

 

「おお…!」

 

「よ、よかったぁ~!」

 

何気に一番気を張っていたゼシカの緊張の糸が切れ、その場にへなへなと座り込んだ。

 

……バフを見つけた時のテンション?

……。…ま、まああれもまたゼシカの素直な感情の露出に他ならない。

 

「あの状況から助かるとは。…言うまいとは思ってたが、ここに来るまでオレは正直…メディさんはもうダメかと思っちまった。悪い。」

 

「…。」

 

ククールはそう言って軽く頭を下げた。追従することはしないが、それは他の仲間たちも薄々感じていたことである。グラッドは気にしないでくれと言うと、コップに薬湯を注いだ。

 

「『ヌーク草』の薬湯だ。一人当たり一口、二口分くらいしか残っていないが…せっかくだ、飲んでいってくれないか。」

 

「ありがとうございます。」

 

改めて遺跡に注目すると、神聖な場所にしては妙に生活感がある。メディが寝ているのは地べたではなく布団であり、コップも何故か人数分ある。水の入った樽、桶、衣服、いくつかの食料品、椅子に机、暖炉にくべるためのものであろう薪に火打石。…そして大量の「ヌーク草の粉」と麻袋、それを相手に投げつける練習をしていたであろう跡まである。おそらくはエイトたちから襲撃の可能性を聞いたメディがバフと共にコツコツと籠城の為の準備を整えていたのであろう。エイトたちはそんなメディの強かさに感心しながら薬湯を呷り…勢いよくむせた。

 

「「辛ッ!?!?」」

 

「ハハハ…すまない。薬湯としては申し分ないはずなんだが、私が母のように薬湯を美味しく作るにはまだまだ修行不足のようだな。」

 

「げほっ、げほっ……そ、それでグラッドさん。僕たちがあの『妖魔ゲモン』に負けた後、何があったんです?」

 

グラッドは空になったポットを机の上に置くと、軽くバフを撫でつつ語り始めた。

 

「…ああ。君たちが倒れてしまった後、アイツは君たちの仲間の御者と馬を人質に取って母をおびき出そうとした。母は彼らと私の身を案じ、その挑発に応じて出ていったんだ。」

 

「…。」

 

「母は最後の抵抗としてヌーク草の粉が入った袋を投げつけ、君たちの仲間を逃がすことには成功したが、そのせいで怒りを買ったゲモンに貫かれてしまって……」

 

「…!」

 

「ああ、そんな顔をしないでくれ。私は君たちに本当に感謝しているんだ。こうして母も生きていることだしな。ククール君。君の言うように、私ですら…もうダメだと思っていたんだ。しかしその後、突然現れた少女に魔物たちは一掃され、挙句母にまだ息があることを教えてくれた。そこから私は死に物狂いで母を治療し、なんとか母の容体を安定させることができたんだよ。」

 

「え…な…!?」

 

「少女があの魔物を…?」

 

グラッドの言葉に驚きを隠せないエイトたち。自分たちの知らないところにそのような実力者がいたとは。

 

「いや、ラプソーンの手先が仲間割れを起こしたって可能性もあるぜ…」

 

「そうそう、そのことで一つ言い忘れていた。彼女は自分のことを『魔王』と呼んでくれと言っていたな…。彼女は有名な人物なのか?誰かを探していたようだが」

 

「「!?!?」」

 

エイトたちは今度こそ驚きに包まれた。その衝撃たるや今まで腕を組んで壁に寄り掛かっていたククールが思わず体勢を崩しかけるほどである。

 

「ま、魔王が…?」

 

「あンの野郎、今度は何を考えていやがる…!」

 

「待ってヤンガス!魔王だってラプソーンに操られていたのよ!私と同じ!」

 

ヤンガスにとっての『物乞い通りの魔王』は闇の遺跡で痛い目に遭わされた宿敵であり、彼と腐れ縁の悪友ゲルダを傷つけた到底許せない悪童(ガキ)である。しかしそれが本心によるものではないと思っているゼシカは慌ててヤンガスを窘める。エイトが要点をかいつまんでグラッドに説明すると、グラッドは分かったのか分からないのか微妙な顔をしていた。

 

「しっかし…メディさんが無事だったのは良かったが、これからオレたちはどうすればいいんだ?他の賢者の所へ行こうにも場所がわからないんじゃあ───」

 

「………一人、賢者の末裔に心当たりがありますじゃ」

 

「!」

 

「!?…母さん!目を覚ましたのか!良かった……!」

 

「メディさん…!申し訳ありません、僕ら…」

 

「気にしないでくだされ、旅人さん…あなた方がいなければとっくにわしやグラッドはこの世にはいますまい…ほほ」

 

目を開けたメディは口だけを動かしてエイトの謝罪に応じた。まだかなり衰弱しているようで、エイトはそれ以上言葉を重ねることを控えた。

 

「母さん、それで心当たりって言うのは…?」

 

「…つい今朝のこと、カッティード様の手記に当時の七賢者様のことが書いてあるのを見つけてな…。ごほっ」

 

メディは弱弱しく咳き込んだ。グラッドはそんな彼女を介抱しながらも黙って続く言葉を待つ。

 

「七賢者が一人『天界を見てきた男』レグニスト様…彼はカッティード様とも親交があったようで。手記によれば…晩年はサヴェッラ地方に骨を埋めるつもりだとカッティード様に話しておられたらしいのですじゃ。」

 

サヴェッラ地方と聞いてククールの眉がピクリと動く。

 

「サヴェッラといやあ…教会の総本山でがすか。」

 

「『三大聖地』の一つね。言われてみれば、そんな神聖な場所なら賢者の末裔がいたっておかしくはないかも。」

 

「サヴェッラ大聖堂か……院長」

 

「ククール?どうかした?」

 

「…いいや、なんでも。それより、だ。サヴェッラ地方に行くのは良いが……先にあのゲモンに対する策を講じるべきじゃないのか?このまま次の賢者の所へ行っても、またあの鳥にヤラレて終わりってことにならないとは言えない。…そうだろ?」

 

「う…。」

 

圧倒的な実力不足。それを現在進行形でひしひしと感じているエイトたちにククールの言葉は深く突き刺さる。無論それはククール自身にとっても例外ではない。

 

「じゃ、じゃあどうしろと……。」

 

「…。」

 

先程までとはまた違う気まずい沈黙。この度その沈黙を破ったのは意外にもグラッドだった。

 

「……そうだ、レティスだ!」

 

「?」

 

「相手が空を飛ぶものならこっちも空を飛ぶもの……神鳥レティスのチカラを借りればいいんだ!なあ母さん!」

 

「レティス…どこかで見た名前のような…」

 

「兄貴、闇の遺跡でげすよ。昔七賢者と一緒にラプソーンと戦ったって言う鳥でがす。」

 

ああ、とエイトは手を叩いた。壁画にも描かれていた大きな鳥の姿が頭に浮かぶ。ラプソーンと戦ったということはかなり昔の存在のようだが、現在もこの世界にいるのだろうか?

 

「ほほ…グラッド、それは名案じゃ。……もしかするとわしらは、旅人さんたちにこれを伝えるために今まで遺跡の守り手を担ってきたのかもしれないねえ…」

 

「実はこの遺跡の祠には、レティスについて記された石碑があるんだ。確か…それには神鳥レティスは邪悪なものと戦うと書かれていたはず。レティスならきっとあの恐ろしい魔物との戦いにもチカラを貸してくれるに違いない。」

 

「神鳥レティス、ね……まずは、その石碑を見てみる?」

 

「うん、行ってみようか。グラッドさん、いいですか?」

 

「もちろんだ。石碑は奥にある。私はここで母の様子を見ているから、何か分からないことがあれば呼んでくれ。」

 

 

「『われは 七賢者がひとり。暗黒神ラプソーンは 我らと神鳥レティスの手により、封印された。しかし、長き時の果て、再びこの世に邪悪が現れることもあるだろう。そこで 未来に希望を残すべく わが盟友たるレティスの伝承をこの地に刻み記そう』か。…なるほど。」

 

「これって……」

 

「バアさんの先祖、カッティードってのが遺したものみたいでがすね。」

 

「おい、こっちを見てみろ。あの杖のことじゃないか?」

 

遺跡に点在する大小様々な石碑。その内のひとつ、ククールが見ていた石碑には、要約すると「レティスの力を借り血の呪縛によって杖に暗黒神の魂を捕らえた」と記されていた。記述に在る「杖」とは秘宝の杖、もとい『神鳥の杖』のことだろう。

 

他の石碑には、神鳥レティスの住まう場所についても記されていた。その名はずばり「神鳥の島」。断崖に囲まれ人を寄せ付けぬ未開の大地。訪れることを望むのであれば、正しい道を記した海図が必要だ…とある。

 

「神鳥の島…いかにもって感じだが。…おいエイト、地図はあるか?」

 

「うん、丁度開こうと思ってたとこだよ。…はい。」「おう、サンキュ」

 

「…んー。地図で見れば意外と近くにあるように見えるけど…これ、断崖絶壁なのよね?船で辿り着けるのかな?」

 

「そのための『海図』なんじゃないかな?きっと特別な魔道具の類なんだと思う。」

 

「海図ねえ…。」

 

「それがないとその神鳥の島には行けない…ってことでがすね?」

 

「ねぇ、ヤンガスは聞いたことないの?盗賊でしょ?」

 

「元、だ!うーん……」

 

ゼシカとしてはどっちも大差ないのだが、ヤンガス的には重要な違いらしくいつも徹底している敬語が崩れてしまっている。パルミドで多少名が知れていると言えど、ヤンガスは山賊。海のことに関してはあまり詳しいとは言えない。

 

「うーん……そうでがすね……」

 

「ヤンガスは山賊だろ?なら、海賊ってのがいてもおかしくないんじゃないのか?」

 

「海賊…ポルトリンクを仕切ってる家の人間からするとあまり聞きたくない名前ね…」

 

うげ、とゼシカは小さく舌を出す。

 

「!!!」

 

ククール的にはちょっとした雑談のつもりだったのだが、幸運なことにその言葉がヤンガスに電流を走らせた。

 

「お!それだ!!海賊でがすよ、ククール!『大海賊』キャプテン・クロウでがす!」

 

「キャプテンクロー?」「…ゼシカ、知ってるか?」「ううん…」

 

「…まさか、まさかまさかでげす!ここに来てキャプテン・クロウの伝説をもう一度追いかけられるたぁ、アッシの人生も何があるかわからないもんでげすなァ…。」

 

勝手に自分の世界に入りかけるヤンガスを、エイトが慌てて引き留める。

 

「待って待って。ヤンガス。そのキャプテンクローって人が海図を持ってるの?」

 

「ええ兄貴、詳しいことはまた後で説明しやすが、キャプテン・クロウの伝説に照らし合わせれば調べてみる価値は十分にあると思うでがすよ!」

 

「そ…うなんだ。じゃあ次はレティスに会うために海図を探しに行こうか。二人もそれでいい?」

 

ゼシカとククールも頷いた。普段はトロデとの軽口以外は割と落ち着いているヤンガスであるが、彼のテンションがここまで上がるのは中々珍しい。伝説の信憑性はともかく、他にヒントのない今はヤンガスについていこうということでエイトたちの意見は一致するのだった。

 

 

 

 

 

 





原作との相違点

・メディが生きていた。(ヤッター!)
気温の低い雪山で出血量が少なかったこと、目の見えない+怒りで我を忘れているゲモンの一撃が急所を微妙に逸れたこと、ユリマが襲来したこと、グラッドが強力な「きつけ草」を持っていたことなど偶然に偶然が重なり、メディは無事に生き延びることが出来た。今後はグラッドとバフと共に穏やかな余生を過ごすことだろう。

レベル
変化なし



「さいごのカギ」はちゃんと次回貰います。大丈夫。あと留守番中のトロデとミーティアには話の外で全部説明しておきます。最近文章が長くなっちゃってるので、次回は気楽に行きたいですね。





鬼畜ロボ「強くなりたいならアスカンタ王国で装備を買い揃えればいいのに…」






ユリマちゃん、重力加速ドロップキックからの『イデア』による強制デジョンで大体の相手を戦線から離脱させられます。有象無象は『ベタランブル』で一撃、最低でも現HPの1/4を削り、強敵の攻撃はオートで予測し、さらに数十秒程度なら自由に未来を覗き見ることが出来ます。世界一可愛いバケモノです。ただ想い人の前だとスカートを気にして戦えないかもしれません。ぴっちりライダースーツのキラちゃんを見習え。



鬼畜キラ「ゲモンと会敵したならドルマゲス様の居場所を聞き出せばよかったのに…」

ユリマ「…ッ!……ッ!!!…ッッッ!」

サーベルト「(めちゃくちゃキレてるけど何も言い返せないのか…とんでもない顔になってるな…)」

ライラス「今のあやつに近寄るなよ、サーベルト。命が惜しければな」

好きな惣菜発表ドランゴ「肉」
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