ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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皆様、いつも誤字報告ありがとうございます。私の場合は誤字というよりは言葉の誤用が多いようで…物書きの端くれとしてお恥ずかしい話です。これからもおかしな表現が文中に含まれるかもしれませんが、どうか温かい目で見守ってくださると幸いです。








新・第十三章 磯際で黒船を破る‐ポルトリンク‐

ハロー、お供をたくさん引き連れて冒険中の道化師ドルマゲスです。私を囲うようにぞろぞろと付いてくるセキュサ達は私が出したものなので良いとして、ホントあの2人はなんで一緒に来てるんでしょうね。早めに帰ってくれないものでしょうか。

 

 

 

「ドルマゲス、今はどこに向かってるんだ?」

 

「…えー、ポルトリンクですね。」

 

「ポルトリンク。…一体何故?」

 

「それは……おっと?」

 

セキュリティサービス「リンリン」の鐘が鳴る。敵性個体の反応だ。俺は二時の方向に魔物の姿を認めると、先鋒を務める「ナイトフォックス」「アイアンダッシュ」「スキッパー」のセキュサに指示を出し出撃させた。後方からスキッパーが『ボミオス』で相手の動きを鈍らせ、アイアンダッシュが足払いに専念して動きを封じ、すばやさの高いナイトフォックスが数匹で囲んでひたすら相手をタコ殴りにする黄金パターン。もとより不意打ちを受けている相手はほとんどの場合何もできずに倒れる。

 

「ご苦労様」

 

帰還したセキュサ達に「やくそう」を練り込んだコンバット・レーション(キラちゃん考案・設計)を与える。機械で制御しているとは言え、セキュサもベースは生体なので燃料補給を怠ってはならない。

 

見敵必殺。なんせ今は俺の身体能力が著しく低いのだ。加えて魔物は強力…なのでこうして魔物を見つけ次第、複数なら迂回、単体ならこうして先制して撃破する。でないとこちらが殺されてしまう。ラプソーンから生き延びておいて、ここでスライムや羊男に負けて死んだとあっては笑い話にもなんないし。このあたりに生息する魔物の細胞はパトロールのアルバイトをしている間に大体採取し終わったので、わざわざこっちからノコノコ近づいていく必要もない。

 

「へえ。光の世界とやらの兵器は優秀だな。こんなものがあれば他の国を陥落させることも容易だろうに」

 

「随分と恐ろしいことを言いますね、サーベルトさん?」

 

「恐ろしいもんか。実際サザンビークは先の大戦でトロデーンに対し、躾けた魔物の軍隊を送り込むという計画もあったらしい」

 

「…え?そ、そうなんですか!?」

 

こっちのサザンビークはトロデーンと戦争状態にあるのか?…ああ、確かにトロデ王とクラビウス王の先代同士が非常に仲が悪かったという話があったような…。こっちの世界の婚姻の話はどうなったんだろう。

 

「結局うまく制御できずにその計画は流れたようだが…まあ最近になって魔物が活性化してきたから、二国が休戦協定を結んだのは賢明な判断だったとは思う」

 

「ねえサッちゃん、難しい話してないで!わたしにも構って?」

 

「ああ、悪い悪い。ユリを後回しにしていたわけじゃないんだ」

 

「…」

 

こっちの人間が内向的で疑り深いのは国家間の戦争も一因としてありそうだ。陸続きでないトロデーンとサザンビークが衝突するのはきっと海戦か上陸作戦においてだろうが、そのどちらにしろ魔物が台頭してきたことで戦争の続行が困難になって休戦…という線が一番現実的だろうか?

 

「(ま、こっちの世界のいざこざはこっちの世界で解決してもらおう)」

 

考えても仕方ない。大国二つの戦争なんて厄ネタに首を突っ込む気にはなれないし、そもそも俺が首を突っ込んだところで何にもなりはしない。多少不思議な術が使えようと所詮俺はただの道化師なのだから。

 

「…」

 

「…あっ、えっ、ポルトリンクからはちゃんと出てますよね!?船!?」

 

「チッ、うるさいですね、出てるに決まってるじゃないですか。チッ」

 

黒ユリマはそう吐き捨て舌打ちまでしてきた。…2回も!この人素行が悪すぎない?

 

……はぁ、なおさら戦争なんて気にしてられないな。既にこんな(ふたり)を押し付けられてるんだから。俺はいちゃつく二人の椅子にされ、非常に迷惑そうな表情をしている「くしざしツインズ」のセキュサに心から同情した。

 

 

闇トラペッタから闇ポルトリンクまでの旅は恙なく進んだ。なにせ俺を中心に30体近いセキュサが付いているのだ、苦戦などしてはたまらない。仮想自律戦闘人形(プロトオートマター)の一体でも居ればもっと安心だったのだが…あいにく初号機は完全体自律戦闘人形(リアルオートマター)として「ライドンの塔」に配置したまま、弐号機は…多分「剣士像の洞窟」に…ああ、回収したんだった。でもとりあえず今手元には無い。参号機はキラちゃんに譲渡しちゃったし、肆号機は呪われしゼシカに消し炭にされて消滅。というわけで。万が一の時の為に作った兵器たちは、その万が一の事態である今現在一つも利用できないという大変情けないことになってしまっている。ああ、悲しいなあ…。

 

何の話だったか?ええと、そう。それでも旅は今のところ問題なく進んでるって話。そういえば途中で、広範囲にわたって木片が散らばった不自然な焼け野原を見かけた。きっとあそこが闇のリーザス村が()()()場所なのだろう。黒サーは全く気にも留めていないようだったが、俺は一応心の中で十字を切って祈っておいた。そこから少し進むと崩壊した塔も見えてきたので、そこでも祈った。おいたわしや闇のリーザス様…。

 

夜になると黒ユリマがテントを出してくれとせがんできたのだが、そんなものはないと突っぱねた。遊びに来てるんじゃないんだから…。この上二人が食料までせびってくるようなら本気でトラペッタへ追い返す気でいたが、そこはちゃんと準備してきたらしく、黒サーと黒ユリマは仲良く弁当を食べさせあっていた。弁当はしっかり10日分あるらしい(もちろん俺の分はない)。きちんとしているのかしていないのか、ならテントも持って来れば良かったのに…。口に出すとまた面倒になるので言わないけどさ。

 

そんなこんなで数日間。俺たちは闇の世界のポルトリンクに辿り着いた。

 

「おお、ここがポルトリンクですね」

 

「そうとも。俺もここに来るのは久しぶりだ」

 

「ねえ!サッちゃん!船!わたし船って見るの初めてなの!」

 

闇ポルトリンクは光の世界のポルトリンクよりも規模が大きく、さらに堅牢そうな石造りの壁に囲われていた。その様相はさながら城塞都市である。

 

「(ふーむ。トラペッタみたいだなあ。)」

 

近辺に生息する魔物たちの狂暴さと強力さを鑑みれば、この一見過剰な防壁はある意味当然とも言える。俺はいらぬトラブルを避けるため、周囲に魔物がいないことを確認してセキュサ達を全て収納した。そして早速入場…しようとした俺の腕は黒サーに掴まれる。

 

「ドルマゲス、お前は派手すぎるからローブか何かで身を隠した方がいいぞ。トラペッタはともかく、色々な身分の人間が出入りする海の玄関口であるポルトリンクじゃ誰が見ているかわからない。アスカンタの『王立防衛軍』にでも目をつけられたら厄介だ」

 

そう言う黒サーの表情はいつだって真面目である。俺は深くため息を吐いた。

 

「トロデーンは…アスカンタとも仲が悪いんですか?」

 

「こうして連絡船が出ているだけサザンビークよりはマシだがな。ただ、なまじっか交流があるだけに腹の探り合いは非常に活発なのさ。特にこことマイエラ地方の『船着き場』なんかは両国の諜報員でいっぱいだ。」

 

「ドルマゲスさんはどうせ知らないんでしょうけど、少し前にアスカンタの女王様が病気か事故かで死んじゃったらしくて。新しく女王の座に就いた人が色々やってるんだとか?わたしはあんまり詳しくないんですけど。」

 

「あ、あ~。へ~。」

 

頭が痛くなるなぁ。こっちの世界ギスギスしすぎでは?そもそもなんで防衛軍が相手国の大陸に駐屯しているのか。……しかし忠告自体はありがたい。初めて黒サーを連れてきて良かったと思えたかもしれないな。俺は『妖精の見る夢(コティングリー)』で自らの色彩を消し、この闇の世界に溶け込んだ。変身の維持に疲れるから闇トラペッタではやっていなかっただけで、俺はなにも光の世界の住人であることにこだわっているわけではいない。メリットがデメリットを上回るのならこうしていくら黒くなったって構わないのだ。黒ユリマは驚き、黒サーは頷くと、俺たちは改めて闇のポルトリンクに入場した。

 

 

─闇のポルトリンク─

 

「…で、そろそろ話してもらおうか?ここに何をしに来たのか」

 

「ああ、そういえば。…別に隠していたわけではなかったんですけどね。」

 

色々タイミングが無かっただけで。…いうかあんたら基本的に二人の世界にいるから、こっちから話しかけるの躊躇うんだよね。

 

「ここには船を探しに来たのです。自分たちで使える船を。購入できればそれが一番いいんですけど、ルイネロさんに有り金のほとんどを渡してしまったので厳しいかもしれません。なので誰か船を貸し出してくれる人がいないかなと思ってます。」

 

「お父さんに?…ああ、占い!ドルマゲスさんもお父さんに占ってもらったわけですか。お父さんの占いは凄かったでしょ?」

 

黒ユリマが笑みを浮かべる。彼女が俺に向かって笑みを浮かべるのは初めてのことだ。やはり彼女も父親自体に悪感情は無いのだろう。家出したのも思春期特有の衝動的なものに違いあるまい。

 

「それはもちろん。ルイネロさんには私の『本体』の居場所を占ってもらったのですが、それがどうやらトラペッタ地方の高台にいる、らしいことが分かりまして」

 

「…話が見えてこないな。ならなぜ船を探す必要がある?」

 

全く以て道理。今の俺は「山に遊びに行きたいからとりあえず浮き輪を買いに行こう!」と言い出しているようなものだ。阿呆か変人である。俺が道化の衣装という変質者めいた恰好をしていることは置いといて。…しかし、うーん。こっから先の話は不確定だしちょっと()()()()()()し何より『賭け』の部分も大きいし。さて、どこまで話したもんか。

 

「『神鳥レティス』の伝説……というのはこちらの世界にも存在しますか?」

 

「れてぃす…?知ってるか、ユリ?」「知らない…なんですかそれ?」

 

まあそうだよな。光の世界でもオークニスの一部の人間しか知らないし。レティスもナワバリである「隔絶された台地」の外には滅多に出ないだろうし。

 

「世界を旅すると言われている伝説の巨鳥でして、そしてその伝説は実在するものなのです。そんなレティスの協力を得られれば理論上は世界中のどこへでも飛んでいけるわけです。勿論、私の本体がいるトラペッタの高台へも。」

 

「「…。」」

 

あ、信じてないな。いいもん、そっちが信じないなら俺一人で行くだけだもん。

 

「まあ、そのレティスに会いに行くために船が必要というわけなんですね。」

 

「…へぇ。そ、そうなのか。」「頭大丈夫ですか?」

 

後ずさるな!引くな!いや、それかそのまま後ずさりながらトラペッタまで引き返してくれると助かる。

 

「…ま、まあ、俺はお前を助けてやると決めたから…お前が船を見つけるところまでは手伝ってやってもいいぞ」

 

「サッちゃん優しい♡ならわたしもサッちゃんについてく~!良かったですねドルマゲスさん?助けてくれる人がいて。わたしたちに感謝してくださいね!」

 

「(胃が痛い)」

 

抑強扶弱・勧善懲悪の過激派である黒サーから見た俺は、よほど弱っちくて情けなく愚かな存在なのだろう。だから放っておくにおけないのだ。黒ユリマはそんな黒サーについていくだけ。これじゃあ二人がパーティーから離脱することもなく、ただ二人の中で俺のイメージが下がっただけである。はあ。

 

「じゃ、早速船を探してみようか。俺たちはあっちをあたってみるから、お前は向こうから聞き込みを始めてくれ」

 

「…承知です」

 

まだ午前中だというのに俺はもう布団に潜り込みたい気分だった。

 

 

結論から言うと、船を購入することはできなかったし、船を貸してくれるという人にも巡り会えなかった。…しかし収穫がゼロだったというわけでもない。

 

「~♪」

 

「楽しそうだな、ユリ?」

 

「わたし、船に乗るのも初めて!しかもその初めてをサッちゃんと過ごせるなんて!…はっ、これ、もしかしてハネムーン?

 

「?」

 

「(ハネムーンは結婚してからでしょ)」

 

何故かおとぼけ黒サーには聞こえていないようだが、黒ユリマの小声は小声じゃないので丸聞こえである。…ともあれ俺たちは今、ポルトリンクと船着き場間を運行する連絡船に乗船している。海は青いが、それ以外はやはり白黒なのであまり面白みの無い景色だ。風は心地良いけど。

 

俺たちが船の貸し出しを悉く断られてしまったのは、船着き場とポルトリンクを行き来する船のほとんどが「ある領家の所有物だから」という理由からだった。そういうわけでその領主とやらに直談判しに行くべく俺たちは連絡船に乗り、マイエラ地方へ向かっているわけだ。

 

俺たちの他にも家族連れ、老夫婦、子どものグループなど、先ほど諜報員だなんだと物騒な話をしていた割には意外と多種多様な人間たちがこの船には乗っていた。到着までもう少しあるし、情報集めでもしておくか。俺は船首付近でタイタニック紛いの行為をして船員から注意されている二人を見やると、そそくさと船室へと降りた。ツレだと思われたくないし。

 

「もし、そこのお姉さま」

 

「アラ、お姉さまだなんて!ホホホ…どうかなさって?」

 

「わたくし、大道芸人をやっているディムという者なのですが」

 

俺は軽く石ころを出したり消したりしてみせながら船室で休んでいたマダムに声をかけた。相手の懐に入り込む際にこの「大道芸人」やら「道化師」なんてのは非常に便利だ。戦士だの僧侶だの言い張るよりはよっぽど証明もしやすいし納得させやすい。本当はいつものように花でも出してプレゼントするところだが、生憎呪術は使えないので『賢人の見る夢(イデア)』とそこらへんで拾った石ころでガマン。

 

「ディム?さっきも耳にしたような…ああ、ごめんなさいね。それで芸者の方がわたしに何か御用かしら?」

 

「いえ、お恥ずかしながらわたくし、船に乗って他の大陸へ渡るのが初めての経験でございまして…。もしよろしければこれから行く南の大陸について無知なるわたくしにご教授願いたく…。」

 

「まあ、そんなこと!良いわ。丁度わたしも退屈していたところですのよ」

 

マダムの反応が少し気になったが、ここで深堀りして怪しまれるのも面倒なので俺はそのまま話を進めることにした。

 

 

「ほうほう、なるほど。…そんなことが!」

 

マダムとの会話は非常に有意義だった。国際情勢からマイエラ地方に生息する魔物の特徴、さらには美味しい料理の話まで、色々なことを面白おかしく教えてもらった。やはりお年を召された方は知識とウィットに富んでいる。…とは女性相手に当然言えないが。

 

「それで───キャッ!?」

 

「!?」

 

突然、船が大きく揺れた。座って話していた俺たちにはほとんど影響がなかったが、近くを歩いていた乗客がすっ転ぶほどの衝撃となると…岩礁か何かにぶつかったか、あるいは……

 

「魔物が出たぞー!!!」

 

まあ、そうだわな。俺はマダムに簡単なお礼を述べるとデッキへ続く階段を駆け上がり…と、階段を登り切るまでもなく魔物の影が見えてきた。デカい…めちゃくちゃデカいイカだ。もちろんその体躯は闇の世界の例に漏れず、スミを頭から被ったかのように真っ黒。イカは無数の触手を船に絡みつかせ、既に船は制御を失っていた。

 

「ドルマゲス!」

 

「サーベルトさん…あの魔物は一体」

 

「海の悪魔『テンダークルス』だ。しかしあそこまで巨大な個体は……」

 

「サッちゃん…」「ああ、心配するな」

 

テンダークルス。聞いたことのない名前だが、恐らく闇の世界にしか生息していない海の魔物なのだろう。見た目は完全に「オセアーノン」の色違いだ。………オセアーノン、オセアーノンね。

 

「…懐かしいな」

 

「…ど、ドルマゲス?」

 

「(こんにちは、イカさん。ゴキゲンうるわしゅう)」

 

「(ああん!?なんやきさんけったいな格好しくさってからに!絞め殺されたいんか?おお??)」

 

「(私はすぐそこの大陸に渡りたいだけなのです、船を離してはいただけませんか?)」

 

「(チビゴミが、チョーシこいとるんとちゃうぞ!!この船はワシのもんじゃ!船沈めたら乗ってる人間どもを一人ずつ溺れさせて遊んだるんや!邪魔すんならァ…きさんからまず海ィひきずりこんだろォかい!!)」

 

自然語訛りが酷いが、なんとか聞き取れるな。…まあ、交渉の余地は無さそうなのであまり意味は無かったが。さて、どうしたものか。このまま船を沈められるわけにはいかないが…。でも大勢の前でセキュサを出すと後の事情説明がなぁ…

 

「…」

 

うーん、四の五の言っている時間はないか。俺は遠距離攻撃に長けたセキュサを取り出そうとして……ふと気がついた。乗客はそれぞれパニックに陥ったりその場でうずくまったり(多分意味ないのに)遺書を書いたりしているのだが、船員の方は異常なほどに落ち着いているのだ。まるで魔物に船が雁字搦めにされ、今にも竜骨を砕かれそうなこの状況がすぐに収束することが分かっているかのように。

 

「おい、ディム坊。招かれざる客だぜ。早くやれ」

 

「…はぁ」

 

船員の一人に連れられて甲板に上がってきたその少年は、少し面倒くさそうな表情のまま船に絡みつく大イカを見上げた。それが気に入らなかったのだろう、テンダークルスは触手の一本を勢いよく少年に叩きつけようとした。

 

「危ないッ!!」

 

咄嗟に黒サーが飛び出すよりも早くその触手が振り下ろされ───

 

 

 

───るよりも更に早く。迸る黄金の雷撃がテンダークルスを貫いた。テンダークルスは唸り声をあげ、海底へと逃げていく。船員たちは息をつき、程なくして乗客たちから歓声が上がった。

 

「た、助かった…?」「うおおお!死んだかと思ったぁ!」「やったー!」「遺書が無駄になったけど!生きててよかった!」「すげーぞちっさいの!」

 

「おお怖い。俺たちに向かって撃ったりするんじゃねぇぞ、ディム坊」

 

「…。」

 

「そう睨むなよ、それがお前の仕事じゃねえか」

 

だが、そんなことは俺にはどうでも良くて。

 

「(『ギガデイン』、しかも詠唱破棄…!?いやいやいやいや!!!そんなことよりあの人……)」

 

 

 

 

「ディム坊」と。そう呼ばれた少年は大きく伸びを一つするとまた気怠げな顔で船室へと戻っていく。そんな彼のその顔立ち、髪型、背格好。奇しくもその全てが……かつて勇者たちと旅を共にした、俺の世を忍ぶ仮の姿である「ディム」と酷似していた。

 

 

 

 

 

 




※「テンダークルス」は本作オリジナルの魔物です。

・黒サー
闇の世界のサーベルト。物心つくころに故郷リーザスが魔物の襲撃により壊滅し、唯一の生き残りとして闇のトラペッタで暮らしている。黒ライラスは育ての親のようなもの。正義漢だが自分の中の信念に強く囚われており、融通が全然利かない。ドルマゲスが目を覚ますまで、やはり町に危険を及ぼす前に殺害しようとしては黒ライラスに窘められていた。ドルマゲスが無害と判断してからはかなり態度は軟化したが、魔物型の兵器を使役して戦闘を行う現在のドルマゲスのスタイルには未だ猜疑的である。人の話は聞かないが、まだ会話は成立するほう。

・セキュサたち
トラペッタからリーザス・マイエラ・アスカンタ・パルミド・トロデーン・ベルガラック・サザンビーク・リブルアーチまでに生息する魔物たちを模した兵器群で、現在のドルマゲスの唯一の心の拠り所。野宿するときもドルマゲスはセキュサたちに一方的に語りかけている。脳が機械に置換されているので言葉は通じない上、各言語による会話もできないが、快/不快・喜怒哀楽など簡単な感情表現程度なら可能。セキュリティサービスに意思は無いが、もしあれば傍若無人に振舞う二人に振り回されるドルマゲスを心から憐れんでいることだろう。

・黒ユリマ
闇の世界のユリマ。黒サーに強く強く依存している。ドルマゲスのことは自分たちの周囲を飛び回るハエくらいにしか思っていないが、一応彼の命を救った恩人。またどれだけ興味のない相手だとしても敬語で話そうとする律儀な一面もある。戦闘力は皆無で、戦闘中は黒サーの後ろにくっついている(戦闘自体はほとんどセキュサが担当している)。言葉こそ通じるが黒サー以上に話を聞かないため会話はあまり成立せず、突然キレて包丁を振り回すなどするため(しかも何が彼女の逆鱗に触れたのか分かりづらい)、ドルマゲスからは「セキュサよりコミュ力が低い女」と判断されている。何故か常に家庭用の包丁を持ち歩いているが、別に料理が好きなわけではないらしい。



ドルマゲス「サーベルトさん、そのお弁当はユリマさんが作ったものですか?」

黒サー「ふふん、これは俺とユリのものだからな!欲しくたってあげないぞ!」

ドルマゲス「や、それはいいんですけども、ユリマさんの料理は一体どんな味つけがなされているのかなと。(闇の世界の料理も参考に出来そうなら覚えて向こうに持ち帰ろうかな?)」

黒サー「うーん、美味しいのはもちろんだが、なにか特別な味付けがされているわけではないな。ユリも料理はまだまだ練習中だと言っていた。…一生懸命作ってくれたのか、ほら、髪の毛が入っている。ハハハ、可愛いものだろう?熱心で健気な彼女を持って俺は幸せだなあ。」

ドルマゲス「!!!」

ドルマゲス「…そ、そうですね。はは、は…」

ドルマゲス「(髪の毛…明らかに『偶然』混入する量じゃあない…!この妙に粘性のあるサラダのドレッシングは何でできている?なんで肉も入っていない煮物から血液の香りがするんだ…?しかもこれはただの血液じゃない、もっと───)」ゾワワッ

黒ユリマ「ドルマゲスさぁん、また『わたしの』サッちゃんにちょっかい、出してるんですかぁ?」

ドルマゲス「ヒュッ」

ドルマゲス「(助けて、ユリマ──────!)」
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