ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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お久しぶりです~。

今回捏造多めです。ここまで読んでくださっている皆様にとっては今更なんだというお話ですが。
いつもありがとうございます、これからも感想・評価・お気に入りお待ちしております!








新・第十五章 禍黒は糾える縄の如し‐ドニ‐ 前

ハロー、自分と出会うという奇妙な体験をした道化師ドルマゲスです。いやまあ正確には自分そのものではないのですけども。こっちの私は小さいし若いし、どうなってるんですかね?闇の世界は不思議なことだらけですねえ。あっはっは、はよ帰りたいです。

 

 

 

「うわ、何、その弁当。髪の毛入りすぎ。散髪しながら作ってました?」

 

「ひどい!わたしが一生懸命作ったお弁当を…サッちゃあん!」

 

「人が作ってくれた弁当を悪く言うと、そのうち誰も君に作ってくれなくなるぞ、ディム」

 

「いや…作ってくれるも何も…。そもそも弁当もあなた方の分しかないじゃないですか。そこのおじさんも一緒に旅してるのに、あの人の分はないんですか?イジメ?」

 

「何?ユリ、ドルマゲスを虐めているのか?」

 

「ち、違うのサッちゃん!わたしはただサッちゃんに尽くしたいだけで……」

 

「ユリ……!」

 

「女の人って泣いたら全部解決すると思ってる節ありますよね。いやそれが悪いとは言ってませんけどね」

 

「な、ななっ…!」

 

「(胃痛)」

 

『闇の世界のドルマゲス』ことディムが加入したことによって俺のパーティはさらに賑やか(極力オブラートに包んだ表現)になった。このディム、ナチュラルに人を煽る。しかも煽って反応を愉しむでもなく、目的も無くただ煽る。煽って相手が激情を顕わにしたら困惑してさらに要らんことを言うというどうしようもない子供であった。流石は闇の世界の住人なだけある。ただそれでも彼はアホ二人より遥かに話が通じるので、連れて行かないという選択肢はない。オークニスに行っておけば良い胃腸薬が手に入ってたのかな、とは思いつつ。

 

「…ちょいちょい、ディム君」

 

「なんですかおじさん。いじめられっ子扱いが気に食わなかったですか?」

 

「そんなんはどうでもいいんですけど、この後の話です。」

 

「あ、はい。聞きましょう」

 

俺たちは今、闇の船着き場のカフェで昼食を取っている。黒ユリマは黒サーの胃に自分以外の女が作った料理が入るのが気に入らないようで、二人は相変わらず血の匂いのする弁当を食べているが、それはそれとして俺とディムは美味しい料理に舌鼓を打った。黒くて何の肉か判別できない(おそらく牛肉)ステーキも、イカ墨に浸したようにしか見えない黒いサラダも、決して食欲をそそるような色合いではないが味はかなり良かった。闇の世界の食材が持つ光の世界には無い独特な「苦味」、しかしそれが逆にクセになり飽きずに最後まで食べられる。帰ったらどうにかして再現してみよう。多分師匠とかは好きな味のはずだ。

 

…いや、そんなことはどうでもよくて。

 

「ポルトリンクで船を手に入れられなかった以上、私たちはこの『船着き場』に望みを託すしかないんです」

 

「そうですね。…あれ、そもそもおじさんはなんで船が欲しいんでしたっけ?」

 

「レティスとか言う鳥を見に行くんだったよな、ドルマゲス」

 

「そうです。レティスは『隔絶された台地』をナワバリをしていて、そこに行くためには『海賊の洞窟』にある海図が必要なんですよ。」

 

今にも暴れ出しそうな黒ユリマを宥めつつ、黒サーが話に入ってきた。本当に海賊の洞窟がこっちの世界に存在するのか、海図はあるのか。何もかもが憶測なのだが、生憎俺はそれ以外の方法を知らないので致し方ない。

 

「『海賊の洞窟』?まあ…名前から察するに海辺の洞窟なんでしょうけど、それって船が無いと入れないんですか?僕やおじさんなら天井を伝ったり水を凍らせたり浮いたりして進入できそうですよね」

 

まあ、そうだ。俺だって光の世界の海賊の洞窟には船無しで辿り着いている。ちなみに『アバカム』の呪文を使えば「さいごのカギ」無しでも洞窟内部に入れたのだが、開錠はできても施錠する呪文を知らないのでその時は中まで行くのはやめておいた。開けっ放しにして勇者たちより先に野生のトレジャーハンターに海図を取られるとマズすぎるからだ。並の人間に海図を守るキャプテン・クロウを打倒できるとは思えないが、念のため。

 

「確かに、『海賊の洞窟』には船が無くとも入れます。が、海図を使用する際に結局船が必要になるので、やはり船は確保しておく必要があるわけです。」

 

「成程な!」

 

「なるほど、理解しました。」

 

先程も述べたが、ディムの煽りは全て悪意無く放たれる。いわば好奇心の延長線のようなもので、一度自分が納得すれば後は揚げ足を取るような追及はしてこない。ひねくれてはいるが、それはそれとして彼は素直なのだ。

 

「では、そろそろ動きますか?」

 

「その前にご飯食べちゃっていいですか?まだ残ってるので」「あ、ごめんなさい」

 

料理が思いの外美味しかったので周りが見えていなかった。なんとなく手持ち無沙汰になってしまった俺は武器の手入れをしながら三人が食事を終えるのを待つ。

 

子供なのに背伸びして大人サイズの料理を注文し、案の定食指が鈍っているディムはまだ可愛いものだが、黒サーと黒ユリマは最初から最後までお互いに弁当を食べさせあっているので、時間がかかりすぎて…。数種類ある武器の手入れが全て終わってしまった。よく知らないが、そういうのって最初の一口だけとかじゃないの?

 

 

「ここも…あっ、あの船すごく大きい!すごいねサッちゃん!」「ああ!」

 

先程までも船は見ていただろうに、黒ユリマは船を今初めて見たかのようにはしゃいでいる。よっぽど船が気に入ったのだろうか?…ふーん、意外と子供っぽくて可愛いところもあるんじゃん。うんうん。

 

「あんなにはしゃいじゃって。田舎者丸出しで恥ずかしいですね」

 

「………。」

 

コイツはほんと…。

 

「ディム君、それ絶対ユリマさんに言わないでくださいね。拗れるので」

 

やっぱり光と闇は相容れぬものなのだろうか。俺が苦々しい顔でどこか達観した様子の小さな少年を見つめていると、一通り港を見て回ったらしい黒サーたちが戻ってきた。

 

「よし…さてドルマゲス、早速船を貸してもらえるように頼んで回るか?」

 

「ええ、ここがダメならまた考えますが、とりあえずはポルトリンクと同じように───」

 

「おじさん」

 

「?なにかありました?」

 

「僕の用事…」

 

「ああ、そのことなら勿論覚えていますよ。申し訳ない、先にそちらから消化しましょうか」

 

「いえ、丁度そこに船のアテがあるんです。」

 

ディムはいつも通りの表情で遠くを見ている。感情を読み取り辛い彼だが、強く握りこまれた拳を見るに、用事というのもあまり気楽なものではなさそうだ。とはいえ、彼の用事と船を手に入れるチャンスが同時に遂行できるのなら僥倖である。

 

「左様ですか!それは助かります。」

 

「そういえば、ディムくんの用事ってなんなんですか?」

 

「…とりあえず、歩きません?『ドニの町』までです。道中でお話ししますから。」

 

「『ルーラ』は使えないのか?」

 

「まあ、使ってもいいんですけど…ここで説明してから行くより歩きながらの方が説明しやすい気がするので」

 

なるほどそういうものか、と黒サーと黒ユリマは頷いている。一方で俺はなんとなくディムの思惑に見当がついた。おそらく彼の過去、ひいてはこの身体(ドルマゲス)の過去にも関係する出来事かもしれない。

 

闇の船着き場の市場は規模こそ中々の物だったが、大した品物は取り扱ってなかったため俺たちはさっさと出発した。

 

 

「それで、ディムの用事が何なのか教えてもらえるか?」

 

「…。」

 

「ディム君一人で済ませられる用事で、言い憚られるようなものなら無理にとは言いませんが、何か手伝えることがあれば教えてください。」

 

闇のマイエラ地方の魔物も曲者揃いだが、セキュサに加えて魔法に精通したディムがいれば全く問題なく対処できるレベルだ。白目が映える黒い「おおめだま」こと「バックベアード」がその自慢の眼球を殴られ宙を舞い、軍用犬の如く鍛え抜かれた黒い肉体を誇る「ワンダーフール」こと「ピットブール」が尾を巻いて逃走する。そんな中、ディムの歩くスピードが少し落ちたので、俺たちもそれに合わせた。

 

「…まあ、皆さんには関係ない話ですけど…。別に説明しない理由もないので言いますね。」

 

「…」

 

「僕は…ドニの町で生まれ……そして『死にました』」

 

「「!?」」

 

「え、な、では君は幽霊…ということか…!?!?」

 

どんな魔物にも物怖じしない黒サーの膝がガクガクと震え始める。…?おい、やめ!剣を抜くな!魔物じゃないって!

 

「落ち着いてサーベルトさん、比喩ですよ比喩。ね?」

 

「当たり前です。回りくどい言い方をした僕も悪いですけど、なんでも言葉通りに受け取ってたらあなた、この先の人生苦労しますよ?」

 

「…サッちゃんを悪く言う人は子供でも許さない」

 

…?おい、やめ!包丁を出すな!…この二人、一方を咎めるともう片方がパワーアップするのやめてくれないかな。自分への言葉に反射的に煽りで返すディムと相性悪すぎる。…これ以上は話が進まなくなるため、俺は仕方なく二人を縄でぐるぐる巻いて…クソッ、片腕しかないと巻きづらい!「くしざしツインズ」のセキュサに乗せて運ぶことにした。ごめんセキュサ。

 

「それでディム君、死んだ…とはどういうことですか?」

 

「僕は…領主の不貞の子なんです」

 

「!」

 

ドニの領主の不貞の子。どこかで聞いたことのある設定だが、今は言うまい。暴れん坊のバカップルもお互い密着していれば落ち着くのか、縄で縛られている状況でも大人しく聞いている。

 

「不貞の子…ですか」

 

「具体的に言えば領主である父が当時ただの町娘だった母に手を出した時の…とは言っても言い寄ったのは母の方かららしいですが…の子供です。母はその後、周囲からの中傷や嫌がらせに耐え切れなくなり自殺しました。」

 

「…!」

 

ディムの歩くスピードが少し早くなる。

 

「僕は物心ついた時から一人でした。なので母を失った悲しみとか、別にそんなのは無かったんです。じゃあ僕を一人にした父を責めればいいのかと思いましたが、まだ幼児だった僕の生活費を陰ながら工面していたのは父でした。何を恨めばいいのか分からないまま、町の人々からは後ろ指を指され、同年代の人からは馬鹿にされ、毎日が苦痛でした。」

 

「ある日、屋敷に呼び出され、初めて顔を合わせた父に『死んでくれ』と言われました。僕は思わず身構えましたが、話を聞くと『死んだことにして別の町で暮らしてくれ』ということで。父としても僕がこの町にいると都合が悪いらしく、もう一人の不貞の子は修道院送りにされたようですが、僕は仕事を与えてくれる代わりに二度と街に戻ってこないでくれ、と言われ追い出されたんです。今ごろドニで僕は『不幸な事故』によって死んだことになっているでしょう。」

 

「……。」

 

「あ、以上です。僕がドニの町で生まれて死んだって言った意味、理解できました?」

 

「…お……」

 

「?」

 

「「(重い…。)」」

 

俺たちは顔を見合わせて頷く。初めて黒サーたちと意見が一致した。考えてみれば、師匠にキラちゃん、ユリマ、サーベルト…と、日頃俺が関わっている人たちは割と恵まれた家庭に生まれていた。ユリマが若干微妙であるが、ルイネロから受けていた愛情は一般的なそれよりは上であることに違いは無い。村ごと滅ぼされた黒サーであっても育ての親たる黒ライラスと激重ガールフレンドがいるわけで、そもそも町人から虐められたことも無いはずである。勇者エイトにしたって似たようなものだ。

 

「…そ、その父親から与えられた仕事というのが連絡船の護衛ですか?」

 

「ディムくんは生まれた時からそんなに強かったんですか?」「(質問被せんな!)」

 

「そうです。ですが、護衛ができるほど強くなかったので父の計らいでアスカンタ王国から宮廷魔導士を招いてもらって、追い出されるまでの数か月修行をつけてもらいました。」

 

「…あっ!それじゃあその人だけがディムくんの心の拠り所だったとか!」

 

「いえ、その人は修行と銘打って日頃のストレスを僕にぶつけてくる最悪な大人でした」

 

「…っ!?…。」

 

救いが無さすぎる。あの黒ユリマが同情の言葉を探して言い淀むほど、と言えばその深刻さが伝わるだろうか。

 

「強力な魔法で甚振られては回復され、それを何度も何度も。まあ、その時僕には魔術の才が全く無かったので教えるのも億劫だった、って気持ちは分からなくも無いですけど。そうして何度も死の淵を彷徨った結果突然魔法が使えるようになったので、その結果だけ見ればあれも荒療治と言えますかね。」

 

「なるほど。ではその宮廷魔導士を恨んでいるのか?」

 

「いえ、彼も死にました。道すがら魔物に襲われて、本当に呆気なく。」

 

「…。」

 

「僕はずっと空っぽなんですよ。誰にも施されないし、誰も恨めない。人生に目的も無い。死にたくないから生きてるだけです。」

 

「……」

 

ディムは自嘲気味に肩を竦めてみせる。ちょっと拗らせてるな、とは思う。だがしかしそりゃ拗れるでしょうよ、とも思う。むしろそんな人生を送っておきながらよく俺たちについてくる気になったもんだ。

 

原作においてドニの領主には二人の息子がいる。一人は領主の正当な嫡男、ククール。そしてもう一人は屋敷のメイドとの間に生まれた不貞の子、マルチェロ。そして領主は病で亡くなっている。闇の世界ではさらにもう一人、町娘との間に生まれた三人目の子がいたらしい。それが彼、ディムだったというのだ。こっちじゃ領主も生きてるらしいし。

 

「(もしかして俺自身もククールたちの異母兄弟だったりするのだろうか?)」

 

この身体…もといドルマゲスの原作以前の過去はよく知らない。幼少期に周りの人間から見下され、バカにされたという情報くらいだ。そしてそれは先ほどのディムの話とも一部一致する。光の世界と闇の世界は異なる歴史を歩んでいるはずだが……もしかしたら、もしかするかもね。…今の俺にはあまり関係のない話だが。

 

もしそうだったとしたら年齢的に俺が長男?やだなーあんな弟たち……。

 

「連絡船が無くなってクビになったと父に言いに行くのが僕の『用事』ですね。同時に父は船着き場を取り締まる頭目です。僕が行って強請ってやれば船の一つや二つ貸してくれるかもしれません。なんたって僕は生きる負の遺産ですから。大声出しながらドニを練り歩くだけで父の頭痛のタネになるでしょう。」

 

「…」

 

卑屈な人間の自虐ほど反応に困るものは無い。俺たちはしばらく何も言えなかった。ディムの歩くスピードは少し落ち、少し先に【INN】と書かれた大きな看板が立っているのが見えた。宿場町ドニだ。俺はディムにかける言葉を模索しつつ、展開したセキュサを『イデア』に仕舞っていった。

 

「…ふふん♪」

 

なんでちょっと楽しそうなんだよ。

 

 

 

 

 




「バックベアード」「ピットブール」は本作オリジナルの魔物です。見た目はそのまま「おおめだま」「ワンダーフール」を黒くした色違いです。



黒ユリマ「…ねえドルマゲスさん」

ドルマゲス「なんですかユリマさん、珍しいですね」

黒ユリマ「もしかしてディムくんってわたしよりヤバい子ですか?」

ドルマゲス「んー、負けず劣らずって感じです」

黒ユリマ「そこは素直に『はい』って言ってくださいよぉ」

黒サー「それよりドルマゲス、そろそろ縄を解いてくれないか?背中が痒い」


オリジナル展開こと闇の世界編はできるだけさっさと終わらせたいので、まくっていきます。次回は明日か明後日に出せたらいいなと思ってます!
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