ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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お久しぶりです。せっかくのエイプリルフールなのでちょっとしたif話を書きました。

本編の方も忙殺されながらもちまちま書いております。少しずつですが進んではいるので気長に待ってくださると幸いです。



閲覧自由です。本編には関係しないため、読み飛ばしていただいても大丈夫です。








(閲覧自由)番外編 もしも彼がDQⅧファンだったら?

 

 

 

「『ベギラゴン』ッ!今だククール!」

 

「…ふっ!」

 

「おやおや、どこを狙っているのですか?私はこっちですよ」

 

バンダナの青年が唱えた呪文が道化師を包み、怯んだ一瞬の隙をついて騎士の礼装に身を包んだ青年が弓を射る。道化師に向けて放たれた矢は、しかし難なく避けられてしまう。

 

「もう逃がさないわよドルマゲス!アンタをここで仕留めて……私は兄さんのカタキを討つ!『メラゾーマ』!」

 

端麗な顔を怒りと憎しみに歪めた少女が放つ特大の火球を受け切った道化師は、返す刃で少女に痛烈な一撃を食らわせた。

 

「あうっ!」「ゼシカ!!」

 

深刻なダメージを受けた少女に駆け寄ろうとする仲間たちだが、道化師の飛ばした岩石が直撃し吹き飛ばされる。道化師はゆっくりと宙に浮かび上がると、侮蔑に満ちた表情で相対する人間たち…『勇者』を見下ろした。

 

「クックック……。本当に懲りない人たちですね。主の姿を元に戻そうとする者。私をカタキと憎む者。…なるほどみなさんそれぞれ悲しい事情がおありのようだ。」

 

「……!」

 

「しかし…何より悲しいのは何度やってもここで私に殺されてしまうということ…。そもそも、虫けらの分際でこの私を倒そうなんざ、思い上がりも甚だしいんですよ。」

 

遊ばれている。まるで歯が立たない。勝てないかもしれない。そんな思考が一瞬全員の頭をよぎる。…しかし。

 

「…それでも。それでも、僕たちはやらなくちゃいけないんだ…っ!」

 

「兄貴の言う通りでげす…!ドルマゲス…てめぇをこれ以上野放しにはしてはおけねえ」

 

「ハァ…ハァ…私やククールだけじゃない…!アンタが殺してきた人たちや、その家族!私たちはみんなの想いを背負って今ここに立ってるの!絶対に退くわけにはいかない…!」

 

「…ま、そういうことだ。オレたちがてめぇのくだらないショーの幕をここで降ろしてやるよ」

 

勇者たちは立ち上がる。限界などとっくのとうに超えており、口から出る言葉も虚勢のそれと大差ない。それでも彼らは道化師を討つために立ち上がる。それぞれの想いを、使命を重ね。握る武器に力を込めて。

 

「フン…御託は結構です。さあ、かかっていらっしゃい!何度来ても惨たらしくバラバラにして差し上げますよ!!!」

 

 

 

ここは闇の遺跡の最深部。もはや満身創痍の勇者たちが睨みつける先、余裕の表情で不敵に笑うは"魔性の道化師"ドルマゲス。彼は───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(うぅ痛い…もうヤダ、斬られるのヤダ…叩かれるのも焼かれるのもヤダ…でも…まだここで負けるわけには…!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───彼もまた、やせ我慢をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

ドラクエⅧの世界だ。

 

彼がそう気づくのに時間はかからなかった。確かに目覚めたのは知らない家、知らないベッド。しかし壁、床、窓、インテリア。現代日本から遠くかけ離れた、中世ヨーロッパ的etcを目にした瞬間、彼の脳裏に浮かんだ文字は【転生】。そして次に【ドラゴンクエスト】。棚に並んでいた「やくそう」がかつて『ドラゴンクエストⅧ公式ガイドブック下巻~知識編~』の挿絵に使われていたものと酷似していたのだ。……無論それだけでここがドラクエの世界だと断じるのはあまりにも早合点、ということは彼も分かっている。

 

だが彼は、ドラゴンクエストシリーズの、それもⅧの筋金入りの大ファンだった。もしも彼のよく知る冒険活劇の世界に転生できたのならば、ファンとしてこんなに嬉しいことはないだろう。どうかここがドラクエの世界でありますように。彼は前世への未練などをすっかり忘れ、ただそれだけを祈りながら周囲を散策し始めた。…目に付いたツボを手当たり次第に破壊しながら。

 

 

 

で。

 

 

 

「(ドラクエⅧの世界に来られたのは嬉しい。本当にこの上なく嬉しいんだけども…っ)」

 

ここがドラクエⅧの世界で、自分の今いる場所が北の大陸・自治都市トラペッタであることを知った彼は、夢にまで見た空と海と大地の世界が目の前に広がっている喜びに打ち震えた……しかし、窓に映るは目つきの悪い悪人面。彼にとっては忘れもしない、ドラクエⅧにおける勇者の宿敵、「魔性の道化師ドルマゲス」である。彼はあろうことか勇者の宿敵に憑依転生してしまったのだ。

 

「…」

 

魔性の道化師ドルマゲスはその狂気で何人もの犠牲者を出した邪悪な人物であるが、同時に悲しい過去を持ち、肉体の主導権をラスボスである暗黒神ラプソーンに奪われ、最期は勇者に敗れた挙句ラプソーンにも見捨てられ、灰になって消滅する哀れな「やられ役」でもある。

 

「(死にたくないし、殺したくもない…)」

 

実際「前世の記憶」としてドラゴンクエストⅧのほぼすべての情報を頭に入れている彼にとって、自分の運命から逃げる方法はいくらでもあった。

 

「(……でも)」

 

しかし…ここで自分が逃げてしまっては、これから先の世界を巻き込んで起こる勇者たちの冒険が……自分が憧れてやまなかったあの大冒険が無くなってしまうのではないのだろうか。彼はそれだけを危惧していた。

 

「(始まるはずだった物語を…俺が大好きだったあの物語を…俺が消してしまう。無くしてしまう。それは…)」

 

 

 

「それは…耐え難い」

 

 

 

この瞬間彼は道化師ドルマゲスとして、勇者の前に立ちふさがる『世界の敵』となることを決意した。全ては愛してやまないあのストーリーの為に。

 

「おいっ!ドルマゲス!!何時だと思っとる!……む、ドルマゲス…?どこへ行った」

 

家主である大魔法使いマスター・ライラスが彼の部屋に怒鳴り込んだ時、既に部屋の中に彼の姿はなく、ただ開いた窓から吹き込む風にカーテンが靡いているだけだった。

 

 

それから数年、勇者の宿敵としての格が落ちないよう、彼は死に物狂いで自らを鍛え続けていた。トロデーン西の教会近くでひたすら魔物を狩り、瀕死になると教会で休ませてもらう。体力が回復するとまた魔物を狩りに出かける。一日中それの繰り返し。魔物を何千何万と狩った成果なのか、彼は浮遊や念力など常人では扱えないような不思議の術を扱えるようになり、また幾度も死に目に直面したことで燻っていた魔法の才能が開花した。そしてそのレベル、実に76。ステータスを知るすべのない彼にとっては与り知らぬことだが、彼は彼の中の『ドルマゲス』のイメージを過大評価するあまり、原作のドルマゲスよりも強くなりすぎてしまっていた。

 

「(ミーティア姫の生誕祭は2年後…トロデ王に余興を見せるべく城へ入場できるとするならば考えられるのはそこしかないよな。…これ以上ここにいて魔物の生態系が変わってしまうのも良くない。あとはストーリーのリハーサルがてらロケハンに…いやHPの調整をするべきか?)」

 

 

「(ふむふむなるほど、午後8時に宿舎は消灯、8時15分にマルチェロは宿舎の見回りに出るから、忍び込むならこのタイミングだな)」

 

 

「(闇の遺跡の構造もタネが分かってれば難しくないな。とはいえ念には念で俺専用のショートカットを作っておくか。壁のココとココとココに穴をあけて……よし、これなら勇者に追いつかれるまでに最深部に行ける)」

 

 

「悲しいなあ…違う、もっと妖艶に!悲しいなあ…違う、もっと悍ましく!悲しいなあ………違う…。」

 

 

そして時は流れ。トロデーン王国第一王女ミーティア姫、18回目の生誕祭当日。

 

「はじめまして王様、そしてミーティア姫。今日はお二方にわたくしめの手品をご覧いただきたいと思います。」

 

「うむ。」「楽しみにしていますわ!」

 

転生してからの数年間をほとんど戦闘に費やしてきたため、当然手品などできない彼だが、我流で習得した魔法を『それっぽく』みせてトロデとミーティアの高評価を得た。そして報酬として一晩城での滞在を許可された彼はその夜、宝物庫へと侵入する。

 

『己を嗤った者を見返すための力を欲する道化よ、宝物庫に侵入し我を解放せよ。さすれば望む力は与えられん。』『己を嗤った者を見返すための力を欲する道化よ、宝物庫に侵入し我を解放せよ。さすれば望む力は与えられん。』『己を嗤った者を見返すための力を欲する道化よ、宝物庫に侵入し我を解放せよ。さすれば望む力は与えられん。』

 

脳が裂けるかと思わんばかりの頭痛に加え、生理的嫌悪を感じさせる声が頭に響く。

 

「己を嗤った者を見返すための力なんていらない。俺はただ…一番近くで物語を感じたいだけ」

 

宝物庫中に充満している悪しき波動。その発生源はラプソーンの封じられている『神鳥の杖』である。常人なら気を失っていてもおかしくない力の奔流の中、既に覚悟を決めている彼は躊躇いなく杖を手に取った。

 

『ククク…愚かな……!』

 

「ぐ…ぐぐ…」

 

『きひゃっ! くははっ!! あはははははははははははははっ!! ひゃーはっはっはっは……ハ?』

 

「…ぐぐぐ……ぐ」

 

『な、何だこれは……!?わ、我の力が押さえ込まれ…っ!』

 

「(あれ?なんか押さえ込めそう)」

 

『ぐ、こ、こんな…クソオオオォォォッ!!!』

 

「ラプソーン押さえ込めちゃった…どうしよ」

 

正直ラプソーンの自動操縦に任せれば後は楽にできると思っていたのだが、存外ラプソーンの魔力が軽微だったため、ドルマゲスは自前の魔力でラプソーンを杖に押し返せてしまった。まあ、それならそれなりにやりようはある。

そこに先ほどの轟音を聞きつけ、トロデとミーティアがやってきた。

 

「おぬしは…昼間の?こ…これ!ここで何をやっとる!ここは立ち入り禁止じゃぞ!」

 

「…これはこれは王様、そして姫。ゴキゲン麗しゅう…」

 

「ふ、ふざけるのも大概に…」「あ、すみません、もう二歩前に出て貰っていいですか?姫は一歩。…あ、そうそう、魔法陣からはみ出ないように。」

 

昼間に見た道化師とは似ても似つかぬ雰囲気。しかも邪悪な笑みを浮かべているかと思えば突然真顔になってわけのわからない事を言う。トロデとミーティアはこれまでに感じたことのない種類の恐怖を感じていた。

 

「な…?」「あー…まあOKですかね。はい、ではいきます。はああっ!!」

 

ドルマゲスの杖から迸る暗黒の呪い。その呪いはトロデーン中を飲み込み、竜神の呪いによって暗黒の呪いを免れた一人の近衛兵と、『偶然』呪いを軽減する魔法陣の内側にいたおかげで最悪の事態を逃れた王と姫を除き、全てはイバラに包まれてしまった。

 

「(ごめんねー。イバラの動きとかは調整したんで誰も死んでないとは思いますので。感動のエンディングの為に少しの間イバラになっててもらいます。ご協力よろしくお願いします。)」

 

空中から呪いに包まれ亡国と化したトロデーン王国を見下ろすドルマゲスは、ペコリと頭を下げ、飛び去った。

 

 

「…」

 

「ドルマゲスか?今までどこに行っていたんだ。……っ!?ドルマゲス!その姿はどうした!!…それにその杖!お前、まさか…っ!!」

 

「(…いくら殺さなければならない相手とはいえ流石にちょっとは躊躇うなあ。……一か八か、やってみるか)」

 

数年ぶりにトラペッタに舞い戻ったドルマゲスは驚きと恐怖で動けないライラスを杖で一突きする。人の肉を貫く感触に、ドルマゲスは明確な忌避感を示すも、表情には出さなかった。数年間もの間、心を殺して魔物を狩るだけの生活をしていた彼だが、それでも魔物に比べて人の肉を裂くのは精神的に大きな負担が伴う。

 

「ぐあっ…!」

 

「悲しいなあ、悲しいなあ…。」

 

「(…さて)」

 

ドルマゲスは練習していた台詞をここで決めると、杖を引き抜いて即座に『ベホマ』を唱えた。超回復の魔法が今まさに事切れんとしていたライラスの命を繋ぐ。

 

「ぬ…お前…なにを……」

 

「『ラリホーマ』」「ぐ……。…ぐぅ」

 

「(うん…よしよし、封印自体は解けてるっぽい。やっぱり賢者の命じゃなくて血だけでも良いんだ。これなら誰も殺さずに悪を遂行できそうだ。)」

 

ドルマゲスとして生きると決めた日から元より賢者の末裔を手にかける覚悟は決めていたつもりだが、そうしなくても問題なく物語が進行するなら賢者の生死は関係ない。彼は自身の精神衛生保持の為、賢者を死亡させずに封印だけ解く方向で進めることにした。

 

「(さて、眠らせたライラスさんを置いておく場所が必要だな…彼には悪いが家も燃やさせてもらおう。全てはドラマチックの為。)」

 

 

リーザスの塔に舞い降り、盗賊の侵入と勘違いして現れたサーベルトを金縛りで動けなくして、一突き。そして『ベホマ』を唱えて、『ラリホーマ』で深い眠りに落とす。魔物の死骸に『モシャス』をかけて死体を偽装。駆け付けたゼシカの慟哭を確認して立ち去る。

 

「(うんうん、やっぱり本心からの悲痛の叫びは聞く者の心を打つね。…意外と良い感じに悪役できてるんじゃない?)」

 

 

マイエラ修道院へ舞い降り、マルチェロとお立合い。少々遊んだ後マルチェロを弾き飛ばして失神させ、トロデを庇ったオディロ院長を一突き。今回は勇者一行というオーディエンスがいたため、見られないように夜の闇を利用して一連の作業を済ませたあと、空から院長の死体に見せかけた魔物をトロデの目の前にぼとりと落とすという少しショッキングなシーンになってしまった。

 

「(原作通りにはできなかったけど、宿敵としての格は逆に上がったんじゃなかろうか)」

 

 

ベルガラックへ舞い降り、ギャリング邸に侵入。ギャリングに感付かれて戦闘になってしまったため、フォーグとユッケの目の前でギャリングを殺害してしまうというヘマをやらかしてしまったが、即座に全員眠らせることでなんとか騒ぎになる前にその場を後にした。

 

「(フォーグとユッケはサブストーリー扱いだから本筋に影響は出ないと思うけど…でも油断してた…まさか作中で描写が無かったギャリングがこんなに強いとは…。今後もイレギュラーには気をつけないとな)」

 

 

積極的に海上をうろついて海の魔物を活性化させておくのも忘れない。勇者たちが古代船を手に入れなくなってしまっては困る。そしてそのままサザンビークに到着。宝物庫に忍び込んで『太陽のカガミ』から光の力を奪う。

 

「(賢者たちの身柄はトラペッタの高台に保管しておこう。エジェウスの石碑が無い方の高台は割と見落としやすい。さらにそこのマップ外の位置に隠しておけば多分大丈夫なはず。)」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

そして『ドルマゲス』としての全ての任務を終えた彼は闇の遺跡の深部へと戻って一人で勇者を待ち構え、今に至る。

 

「ハァ…ハァ…なんてしぶとい…!」

 

「ヤツは不死身かっての…!」

 

「(俺のHPは1880…今は第二形態だから2640のはず…で、多分まだ変化してから2000ちょいしかダメージを受けてない…まだ、まだ倒れるわけにはいかない…)」

 

あの後、勇者たちの猛攻によりピッタリ1880ダメージで悪鬼を彷彿とさせる悍ましい第二形態に移行したドルマゲスだが、長期にわたる戦闘で既に約2200のダメージを受けていた。本当は体力を回復できるのに回復してはいけない状況というのは想像していたよりもかなりのストレスで、ドルマゲスは何度も勇者たちを返り討ちにしかけた。だが…。

 

「(頑張れ!俺はドルマゲス…魔性の道化師……ここで…ここが人生の正念場!散り際は……!)」

 

彼のDQⅧのストーリーへの脅威的なまでの執念が回復してくれと叫ぶ彼の肉体を黙らせ、もう勇者を殺してしまおう、あるいは逃げてしまおうという脳の思考を停止させる。それはもはやある種の盲信、狂信であった。

 

「グオオオオオオオッッッ!終わりだァーーーッ!!!」

 

「合わせるぞ!ヤンガス!!」

 

「これで最後でがす!ドルマゲスァァァァッッ!!」

 

「『メラゾーマ』!!!」「『ベギラゴン』!!!」

 

「グガアアアアァァッッッ!!!!!」

 

 

 

ああ、アツいなあ……。やっぱりドラクエって最高……。

 

 

 

ヤンガスの『蒼天魔斬』とククールの『精霊の矢』、そしてゼシカとエイトの上級魔法二連発を食らい、ついにドルマゲスは限界を迎えて墜落する。

 

地面に激突する前、ドルマゲスは全ての闇の魔力を杖に注ぎ込み、押さえ込んでいたラプソーンの意識を目覚めさせる。

 

「(さあ、行けよラプソーン。こんなところで朽ち果てるわけにはいかないよな?)」

 

『理解できぬ…貴様、何が狙いだ…我の洗脳をはねのけたかと思えば、続々と封印を解くなど…』

 

「(一番近くで物語を感じたかっただけだって)」

 

『………解せぬ…』

 

続く返答を待たず、ドルマゲスは最後の力でラプソーンの宿る杖をゼシカの目の前に投げ落とす。ゼシカはきっとあの杖を拾い上げるだろう。そしてラプソーンに呪われ、次の冒険が始まる。自分はここで死に、勇者たちの冒険は続く。

 

 

「(ふぅ…これでほんとに終わりか…)」

 

…不思議と死ぬのは怖くない。それどころか彼の中にはドラクエⅧの為に費やしてきたこの数年が報われたことへの達成感すら生まれていた。

 

 

 

「(………っく、くくく。)」

 

 

 

「(くふふふ、あはっ、あははははっ!)」

 

 

 

「(神様ーーーっ!神様かわかんないけどー!俺をドラクエⅧに転生させてくれてありがとーー!!!楽しかったーー!!!)」

 

 

 

ドルマゲスは子どものような無邪気な笑みを無責任に浮かべ、今度こそ意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん?」

 

どれくらい時間が経ったのだろうか、ドルマゲスはむくりと起き上がった。

 

「ケガは…あるな。いつ死んでもおかしくないくらいのが。」

 

闇の遺跡の最深部、周囲には誰もおらず、痛々しい戦闘の跡だけが残されていた。

 

「もしかして…ラプソーンの力が抜けきってなかった…!?」

 

最悪の事態を想定し見回すも、自分の身体から闇の力は感じられない。

 

…前述した通り、彼は数年間の修行中勇者の宿敵としての格を保つために昼夜問わず経験値を積んでいた。そして過剰なまでに上昇してしまった彼の能力値は、なんと勇者たちの最後にして必殺の一撃を耐えきってしまったのである。これは彼にとっても全く予想外の出来事であった。

 

これからのことを一つも考えていなかった彼はしばし硬直する。

 

「……。」

 

そして長考の末、彼の盲信的ゲーム脳は単純明快な結論を導き出した。

 

「もう『ドルマゲス』の役目は終わったんだし、あとはゆっくり物語を鑑賞できるじゃん」

 

そう零し今後の名シーンの数々を想起してにやけ面を浮かべる彼は───どこまで行ってもドラクエⅧの純粋なファンなのであった。

 

なお、この後彼は月の世界に呼び出されて『星の筋書き』を乱すなとイシュマウリから咎められたり、自力で目覚めて高台を降りてきた賢者の末裔たちに血祭りにあげられたり、サーベルトがゼシカと合流してしまい頭を抱えたりするなど、過酷な運命が待ち構えているのだが、それはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 




ドルマゲス(DQⅧファン)
ドラクエⅧ世界に転生してきた男。ドラクエシリーズの大ファンであり、その熱意はもはや盲信的ですらある。人間を殺したくはないという最低限度のモラルは持ち合わせているが、一方でどこまでもこの世界を『ゲームの中の世界』だと割り切っているため、ドラマチック・ストーリーのために悪事にも手を染め、ストーリー完成の為に自分が死ぬことも厭わない狂人。


もしもドルマゲスに転生した男がドラクエⅧのファンで、できるだけ原作に準じて行動していたら…というifでした。

次回は本編に戻ります!来週か再来週までには……頑張ります!!ではまた!!!
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