ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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昨日の続きです。どうぞ!








新・第十九章 黒穴に入らずんば虎児を得ず‐メダル‐ 後

そして翌朝。俺たちは黒サーたちと合流した。ニッコニコの黒ユリマとはうって変わって、黒サーは少しばかりやつれているようにも見える。だから昨日、張り切りすぎるなって注意したのに…。とはいえやる気自体は満ち満ちているようなので、この様子なら適切な食事とウォーミングアップで十分良好なコンディションに持っていくことは可能だろう。

 

「ふーっ、いよいよか。楽しみだが…少し…」

 

「頑張ってくださいね、私も応援してますよ」

 

「僕も応援してます」

 

「サッちゃんなら優勝間違いなしだよ!ねっ、ねっ!」

 

「ああ……」

 

「…」

 

どうやら黒サーは初めての試合を前にしてかなり緊張しているようだ。強張っている顔からもそれがよく分かる。適度な緊張感は必要だが、それが高じて全力を出せないのでは本も子もない。俺は昨日の出店で買った水飴を湯で溶き、「きつけ草」の搾り汁を混ぜて作った即席の飴湯を黒サーに渡してやった。どうせなら行けるとこまで行って欲しい。好成績が出ればその景品もくれるらしいしね。

 

黒サーは一口で飲み干すと、一言礼を言って控室へ消えていった。黒ユリマも当然のように彼についていく。…控室には当然出場者しか入れないのだが、そんなことを言っても黒ユリマは無視するか、なんならとんでもない言いがかりをつけて逆ギレしてくる可能性が高いので放置するのが吉だ。きっと誰かがつまみ出してくれるだろう。

 

「おじさん、ユリマさんの扱い…なんか慣れてきてません?」

 

「まあ、こう何日も一緒にいると相手のことも多少は分かってくるものですよ、色々と。…似たような人も知り合いにいますしね」

 

「?」

 

黒ユリマもウチのユリマに比べればまだまだ可愛いものだ。一番ヤバかった頃のユリマなら、こちらの話がまず耳に入らないだろうし、邪魔する人間は全て吹っ飛ばすか首だけ出して地面に埋めるくらいの暴挙に出るはず。なんなら改心した今でも魔物が相手ならそれくらいは平気でするし。…うーん、なんでこんな子になっちゃったんだろう。原作では勇者の最初のイベントにちょろっと関わってくるだけの女の子だったのになあ。

 

「…さて、私たちはバザーを見て回るとしますか。昨日は既にほとんどの店が撤退してしまってましたからね」

 

…まあ、そんな子だったとしても、ユリマは俺にとって大事な人であることに変わりはない。俺が連れ去られる直前の記憶はもはや定かではないが、ユリマが自分の身を投げ出してまで俺をゲモンから助けようとしてくれたことだけは覚えている。その前だってそうだ。ラプソーンの制御下にありながらもユリマは俺を勇者たちから守ろうと一人で戦場に居残った。

 

彼女がまだ幼い頃に俺がルイネロさんの水晶玉を見つけてきてから、彼女はずっと俺を慕ってくれているが、俺がしてやれたのはそれくらいである。恩義という点で見れば俺の方が借りは大きいのだ。

 

当然、サーベルトもキラちゃんも師匠も、だ。俺は彼らがいるから今ここに生きているし、これからも生きていたいと思える。

 

「(帰ったら心配かけたこと、ちゃんと謝らないと)」

 

「あ、でもそろそろ試合が始まるみたいですよ?どうします?見ますか?」

 

「んー…まあいいでしょ。サーベルトさんならそうそう負けはしませんよ」

 

コロシアムの喧騒をよそに俺たちは昨日回れなかったバザーへと繰り出した。

 

 

「~♪」

 

「おじさん嬉しそうですね」

 

「当ッ然です!これが嬉しくなくて何が嬉しいというのか!」

 

バザーの散策は非常に有意義なものになった。なにせ見たことのない素材や武器が安価で売られているのである。「まだらくもいと」や「きようさのたね」などの道具から「よるのとばり」「ほしのカケラ」などの素材まで、光の世界…というかドラクエⅧの世界に本来存在していないはずのアイテムが多数。特に「きせきのきのみ」と「あまつゆのいと」を手に入れられたのは非常にラッキーだった。「せいなるおりき」は持っていないが、なんとかこの糸で「みずのはごろも」を作ってみせたい。

 

「布や糸をそんなに買って…服屋でも始めるんですか?」

 

「いやいや、これらを錬金して強い武具を作るんですよ」

 

「レンキン?」

 

…いやはや、まさか闇の世界にこんなに面白いアイテムがたくさんあるとは。ラプソーンを許すつもりは毛頭ないが、闇の世界に連れてこられたことに限っては感謝してやってもいいかもしれない。俺を闇の世界に連れてきたことをせいぜい後悔するがいいさ。ホクホク。

 

「さぁて…欲しいものは欲しいだけ買えましたし、サーベルトさんはどうなってますかね…よいしょっと」

 

俺たちはコロッセオの手頃な空席を見つけて腰かけると、購入したアイテムの整理をしつつ試合を観戦することにした。買い物に熱中していて気がつかなかったが、大会は既に後半に差し掛かっているようだ。観客の入りはそこそこか?観客席はその半分程度しか埋まっていなかった。

 

「サーベルトさんは勝ってますかね」

 

「さて、どうでしょうか…お?」

 

突然トランペットの音色が高らかに鳴り響いたかと思うと、観客席の上部セクションを陣取っていた仰々しいオーケストラが『大聖堂のある街』を演奏し始める。あの紋章は…闇メダル王国の王立楽団か。『大聖堂のある街』は原作ではサヴェッラ大聖堂で流れるBGMだが、「アーケード版DQバトルロードで自分のチームを決めているフェーズのBGM」と言った方が馴染み深いかもしれない。…あれってただのゲームBGMじゃなくてこの世界でも実在する曲なのか…。

 

「なんか人が増えてきましたね」

 

「ふむ…どうやらここからが盛り上がる試合らしいですね。先に席を取っておいてよかった。」

 

空いていた席は一つ、また一つと埋まっていき、オーケストラの演奏が終わる頃には観客席はほぼ満席になっていた。お前ら一体今までどこにいたんだと言いたくなるレベルで熱狂的な観客の群れが歓声を上げている。そんな意気軒昂の的、コロッセオの中央ではどこか見覚えのあるマイクマン─闇の世界なので当然真っ黒な別人だが─が熱のこもった口調で決勝トーナメントの開始を告げており、四人の剣士たちが四方のゲートから登場してきた。

 

『レディィィーース!アーーンド!ジェントルメェェェーーン!第37回メダル王国大武闘大会・剣士部門もいよいよクライマックスです!ここで今から試合を見にいらした紳士淑女の皆様の為に出場者のおさらいをしましょう!まずはAブロック代表───』

 

「お、サーベルトさんがいますね。ディム君見えます?あの奥の」

 

「本当ですね。勝ってたんだ。」

 

俺もディムもやや淡白な感想である。いや、黒サーのことが嫌いだとか、避けてるだとか、そういうわけではないのだが、まあ、正直言うと大会そのものにはそこまで興味が無いのだ。なんとなくショッピングに出かけたらなにやら広場でイベントが催されているらしいので、ちょっと覗いてみるか…という感覚に近い。

 

『続いてはこの男ーッ!!初出場ながらその活躍は獅子奮迅!!破竹の勢いでトーナメントを勝ち抜いてきたのは北の大陸よりきたるダークホース!Cブロック代表、サーベルト・アルバートォォォ!!!!』

 

黒サーの名が呼ばれると、それまでより一際大きな歓声が上がる…いや、これよく聞くとほぼ黒ユリマの声だな。あの子一人で観客全体の半分くらいの声量が出ている。普通にとんでもない。

 

「緊張は…うーん、あまりしてない…?どう思いますおじさん」

 

「してないんじゃないでしょうか。少なくとも私からはそう見えますね。」

 

コンディションは悪くなさそうだ。観客席と武舞台には安全面の関係から少し距離があるが、その距離でも分かるほど闘気が練り上げられているのが分かる。まあ?ウチのサーベルトには?まだまだ及ばないですが?(ドヤ)

 

『─さて、続いては優勝賞品のお披露目です!!今回の優勝賞品はコイツだーッ!!』

 

武舞台の中央にガラガラとワゴンに乗った箱が運ばれてくる。お、賞品の発表は今するのか。ギリギリで賞品が分かるシステムってのも選手のコンディションに影響しそうで面白いな。さてさて、優勝賞品はなんだ?珍しい素材なら黒サーの応援にも熱が入るかもしれないぞ。

 

『「 や み の 海 図 」で す!』

 

ほうほう、聞いたことのないアイテムだな。

 

 

 

 

 

ん?

 

海図?

 

 

 

 

 

「な、ちょ、え待って『海図』??」

 

「わ、なんですかおじさんいきなり…びっくりした」

 

いけね、素が。いやいやそんなことより…海図ってあの?「やみの海図」って言ったよな?もしかしてあの「ひかりの海図」に対応するアイテムじゃ…?

 

『この海図、なんとあの伝説の大海賊「ダーク・スパロウ」が最期に遺したとされているお宝です!!この海図を使えばまだ誰も見たことのない世界へ船を連れて行ってくれるとかくれないとか!?優勝者にはそんなロマンあふれるお宝が贈呈されます!!』

 

 

 

めちゃくちゃそうじゃん!!!

 

 

 

いかんいかん落ち着け…ということは、だ。俺は本来この後トラペッタにある海賊の洞窟に挑んで「海図」を探すつもりだったが、その海図が今ここにあると。あの海図が無ければ、魔力も霊力も無い今の俺ではおそらく闇のレティシアに行くことはできず、レティスにも会えない。レティスの協力が無ければ俺の封印も解けず、光の世界にも帰れない…?…激ヤバじゃんすか!!!落ち着いてられるかっ!!

 

「ど、どうしたんですかおじさん、いきなり震え出して…具合でも悪いんですか…?」

 

「ディム君…」

 

俺はさっきの思索をそのままディムに伝えた。

 

「いや、まずいじゃないですか」「そうなんですよぉ…!!」

 

「とにかく、何が何でもサーベルトさんに優勝してもらわないといけないわけですね。じゃあどうしますか?僕が対戦相手を魔法で全員眠らせて不戦勝にしましょうか。」

 

「…。」

 

さらっととんでもない案が出た。彼のこういう手段は選ばないのが普通では?みたいなところは美点でもあり悪点でもある。

 

「…いえ、それだと大会自体が中止になる可能性があります。私的にはそっちの方が面倒です。」「なるほど」

 

「では、こっそりサーベルトさんに補助魔法をかけるのはどうでしょう?相手を眠らせるよりも確実性は減りますが、少なくとも神頼みよりは有効かと」

 

「むむむ…しかし公的な大会の場でそんな…」

 

「おじさんが向こうに帰りたくないならいいんですよ?僕はどっちでも構わないんで」「くっ…」

 

日頃俺が「合理的虚偽」と称してついている嘘や数々の小さな“ゴマカシ”と、今やろうとしていることとは悪行のレベルが全く違う。何かに対して本気で取り組んでいる人の思いを踏みつけにするような行動を悪と呼ばずして何と呼ぼうか?しかし、それもまた俺のちっぽけなプライドなのであって…ああもう!

 

世界を守るため、世界を救うため……!俺は自分にそう言い聞かせてディムの案に乗ることを決めた。ああ、こんなドーピングみたいなことして大会を汚したら、光の世界に帰った時サーベルトに顔向けできないよ……

 

「おじさん、サーベルトさんの試合が始まります。急ぎましょう」

 

「くうぅぅ…『蝶々の見る夢(ラグランジュ)』」

 

俺とディムは姿を消し、音も無く武舞台へ降りた。くそぅ…やるっきゃないのか…!

 

 

 

 

そして結論、黒サーに死ぬほど怒られた。まあそりゃね。

 

 

 

「お前たちがやろうとしていたのは神聖な大会の名に泥を塗る行為だぞ!!!」

 

「はい…」「でもそ…痛っ」

 

俺たちは控室で正座し、ベンチに座った黒サーから説教を受けていた。俺はディムが何か口応えをしそうになるたびに背中をつねって黙らせている。

 

「お前たちの気持ちは分かる。俺のことを想ってどうしても我慢できなくなったんだろう?どうにか俺の役に立とうとして行動してくれたわけだ、そうだろう?」

 

「はい…」「…」

 

「だが、あれはダメだ!俺が気付かないと思ったら大間違いだぞ!幸い相手もルールを破っていたから俺も心置きなく叩きのめせたが、もし相手が不正をしていなかったら俺は棄権していた!」

 

「はい…」「はあ」

 

準決勝、結論から言うと黒サーは勝利した。ディムが後ろから「スカラ」や「ピオラ」を定期的に唱え、黒サーの能力を底上げしながら戦ったのである。元々(意外にも)決勝トーナメントに進出できる実力を持っている黒サーに、さらに補助魔法を重ね掛けすれば並みの剣士では到底太刀打ちできない。しかし対戦相手の剣士が武器に毒(「どくがのこな」だと思われる)を塗っており、試合中盤からは黒サーの動きが露骨に悪くなった。それを訝しんだ審判が相手の武器を調べたところ不正が発覚、その時点で黒サーの勝利となった。しかし黒サーも自分の身体能力が飛躍的に向上していたことに疑念を感じており、黒サーが勝利して胸を撫で下ろしていた俺たちを見つけて詰問してきたわけだ(油断して『ラグランジュ』の『共振』が解除されてしまっていたらしい)。幸い黒サーが活躍できるならなんでもいいというドーピング肯定派の黒ユリマが黒サーを宥めてくれたおかげで彼が棄権することはなかったが、これで決勝戦は小細工無しの勝負、俺たちは黒サーの実力に頼る他なくなってしまった。

 

「…おっと、もう時間だ。…そんな顔をするな、俺は必ず勝つ!お前たちも安心して観客席に座っていろ!」

 

「サッちゃん頑張ってぇぇぇ!!!」

 

黒ユリマのドデカい声援を背に受けて黒サーはゲートへと歩いて行った。

 

「…我々も戻りましょうか、ディム君」「はい…ところでユリマさんは観客席にいなくていいんですか?ここ選手控室ですけど」

 

「わたし?わたしはいいんです。とくれー?なんですよ」

 

まあ、大方黒サーから離れたくなくて喚いていたらもう面倒になった運営の人にしぶしぶ控室への滞在を許可されたとか、そんなところだろうな。というわけで彼女は放置し、俺とディムはすごすごと観客席へと戻っていった。

 

 

「対戦相手は…王宮戦士ライアンって人らしいです」

 

「ライアンって…あのライアン!?」

 

俺たちが元居た席は既に他の観客に占領されてしまっていたが、丁度前列の若者グループが席を立ったのでありがたくその席を拝借することにした。ここなら試合はさっきよりもよく見える。

 

「どのライアンかはわからないですけど…有名な人ですか?」

 

「いや、まあ…どうでしょう」

 

DQでライアンと言えば「Ⅳ」に登場する「導かれし者たち」の内の一人、バトランドの王宮戦士ライアンである。実は「Ⅷ」にもチョイ役で登場するのだが、まあファンサービスみたいなものでおそらく本人ではない。バトランドも無いし。今黒サーと剣を重ねている彼もおそらくその「ライアンらしき人」の闇の世界版なのだろう。しかし実力は明らかに達人のそれ、まさに歴戦の戦士といった感じだ。黒サーもなんとか反撃に転じようと試みてはいるが防戦一方と言った感覚は否めない。

 

「あのライアンって人…強いですね」

 

「ええ……少なくとも私が五体満足の状態だったとしても、セキュサや魔術なしではまるで歯が立たなかったでしょう」

 

ウチのサーベルトならあの黒ライアンにも余裕で勝てただろう。しかし今武舞台に立っているのは黒サーだ。俺はサーベルトではなく彼に祈らなければならないのだ。黒ライアンの大上段からの重い一撃が黒サーを揺さぶる。

 

「(頑張れ黒サー…!なんとしても勝ってくれ、俺はここで立ち止まるわけにはいかないんだ)」

 

沸き立つコロシアムの中で俺たちだけが冷や汗をかきながら試合の行く末を見守っている。試合が始まって十数分…俺にとっては数時間にも感じた十数分が経過し、ついに勝負が決まった。

 

長引く戦いを不毛と判断した黒サーが特攻を仕掛け、黒ライアンはそれを冷静に躱して返す刃で一撃───その一撃を読んでいた黒サーはそれにカウンターを合わせ───それすらも算段に入れていた黒ライアンは黒サーの横薙ぎを跳躍して回避、そのまま黒サーにドロップキックを食らわせて押し倒し、首筋に切っ先を突き付ける。黒サーは悔しそうに眼を閉じて両手を上げた。

 

 

 

黒サーの敗北である。歓声と共に控室から黒ユリマの絶叫が響いた。

 

 

 

「おじさん…」

 

「…仕方ないです。サーベルトさんは我々の甘言を跳ねのけ、正々堂々試合を戦いました。今の我々にが彼にできるのは拍手を送ることだけ……」

 

「…」

 

黒サーはよくやったと思う…正直彼があれほどやれるとは思っていなかった。最後の攻防は俺が外野の傍観者だったからこそ見抜けたが、実際あの場で黒サーと対峙した時、最後の特攻を防ぎきれたかと考えると自信が無い。良い試合だった、それは間違いない。

 

…だが彼は負けてしまった。痛惜の念は早々に切り替え、今は黒ライアンからどうやって海図を譲ってもらうかを考えなければならない。

 

「まずは交渉ですが…向こうとの接点が無さ過ぎてこっちに切れるカードが無いのが痛い所ですね…」

 

「今度こそ眠らせてしまうのはどうです?寝ている間に偽の海図とすり替えましょうよ」

 

「…。……とりあえずサーベルトさんが出てくるのを外で待ちましょう。」

 

相変わらずディムが出すのはモラルに欠けた提案だが、最悪の場合はそうするのも止む無しかもしれない。観客席の熱狂も冷めやらぬまま表彰式を始めるコロッセオを背に、俺とディムは重い腰を上げて席を立った。

 

 

王城の入り口で俺とディムがあーでもないこーでもないと黒サーたちを待ちながら今後の作戦を練っていると、黒サーと黒ユリマの姿が見えた。…なぜか黒ライアンの姿もある。なんで?

 

「おお、ここにいたのかドルマゲス、ディム。探したぞ」

 

「お疲れ様です、サーベルトさん…その、試合の方は残念でしたね」

 

「…ああ、大見得を切ってお前たちに絶対に勝つと言った手前、不甲斐ない結果に終わってしまったことは申し訳なく思っている」

 

「(うん…まあ、それはいいんだけどもね)」

 

「…後ろの御仁はどうしたんです?」

 

「彼か?ああ!ライアンさんとは試合後に意気投合してな」

 

黒サーが促すと、一歩前に出た黒ライアンが俺たちに恭しく礼をした。

 

「お初にお目にかかる。拙者はアスカンタ王国の王宮戦士ライアン。先の試合でサーベルト殿との立ち合いに感動し、今までこうして話をしていたのでござるよ。」

 

「これはこれは。私は旅芸人のドルマゲスと申します。今はサーベルトさんたちと共に旅をしている最中でございます。以後お見知りおきを。」

 

アスカンタ王国とな。まあ、王宮戦士というからには三大国のどこかに仕えているとは思っていたが…。しかし近くで見ればみるほどライアンだが、一方で髭の形や話し方など所々違う、ような気もする。ホイミンもいないし。

 

「むむむ!ドルマゲス殿。もしや貴殿も相当『できる』のではないですかな?是非今度お立ち合いを…」

 

「はっはっは、ご冗談を。隻腕で、しかも旅芸人の私めに剣術など…剣士の皆々様のいい笑い物でございます。…ところでつかぬことを伺いますがライアン様。ゆうしょうしょ───」

 

「ああ、そうだったな…ドルマゲス、約束の品だ。受け取ってくれ。」

 

めちゃくちゃ黒ライアンと話している途中なのに黒サーに邪魔された。まったくほんとにもうコイツは…なんて思いながら振り向いた俺は、黒サーの手の上にある紙を見て腰を抜かすほど驚いた。

 

「そ、それ…」

 

「ああ。『やみの海図』だ。」

 

「ゆ、優勝賞品では…?」

 

「ああ。ライアンさんから貰ったんだ。」

 

「女王陛下からの用命は『資金の調達、あるいは他国の情報を持ち帰ること』。そんな紙切れは拙者には必要のないものでござる。それよりもサーベルト殿との立ち合いの方が拙者にとっては重要。この海図を譲渡する代わりにまた拙者と戦ってほしいとお願いしたのでござるよ」

 

「俺は断ったんだが、ライアンさんがどうしてもと言って聞かなくてな…」

 

「お、おお……」

 

「よかったですね、おじさん」

 

「ああ、あとこれは俺の分。準優勝の賞品だ。綺麗な石なんだがユリへのプレゼントには大きくて重すぎるからな、お前にやろう」

 

「わたしはサッちゃんがいれば何もいらないよ♡」

 

そう言うと黒サーは漬物石ほどの大きさの鉱石を袋から取り出して俺に渡してきた。突然だったので支えきれず取り落としそうになって、咄嗟にディムに支えてもらう。

 

「あ、これ知ってますよ。『ヒヒイロカネ』ですよね。何かに使えるんじゃないですか?よかったですね、おじさん」

 

「お、おおお…………」

 

思いがけず手元に舞い込んできた古びた海図と緋色の鉱石。俺は突然押し寄せてきた情報に頭が追いつかずその場でフリーズすることしかできないのだった。

 

 

 

 

 

 




・ライアンらしき人
ドラクエⅧの世界に存在する某王宮戦士らしき人。原作(Ⅷ)では「モンスター・バトルロード」Sランク2回戦にて、自前のチーム「ホイミングレイス」を率いて登場する。ちなみにSランク1回戦ではトルネコらしき人が「アイラブネネさんズ」を率いて登場する。

・黒ライアン
闇の世界の「ライアンらしき人」。闇のアスカンタ王国に仕えているらしい。黒サーの泥臭くも高潔な姿勢に惹かれ、彼を好敵手と認める。その気に入りようは凄まじく、優勝賞品を簡単に渡してしまうほど。彼が黒サーに何かするたび黒ユリマの視線が彼を刺すが、黒ライアン本人はまったく気づいていない。女王陛下からの用命もホイホイ話してしまうあたり、かしこさはそこまで高くないのかもしれない。

・「やみの海図」
「ひかりの海図」に対応するアイテム(本作オリジナル)。使用することで闇のレティシアのある「隔絶された台地」への道が示される。元々は海賊の洞窟で闇の世界の大海賊「ダーク・スパロウ」が守っていたお宝であったが、野良のトレジャーハンターにより奪取され、巡り巡って闇のメダル王国に辿り着いた。

・「ヒヒイロカネ」
DQⅪに登場する素材。「緋緋色金」と書く。「オリハルコン」と同等かあるいはそれ以上の希少価値を持つとされている幻の金属で、最高クラスの武器を作る際に必要になる。

・闇のメダル王国
闇の世界のメダル王国。闇の世界には「ちいさなメダル」を集める文化が存在しないため、コロッセオで観光客を誘致している。光の世界よりも血気盛んな黒メダル王は戦士同士の技のぶつかり合いを楽しみにしている一方で、争いごとが好きではない黒メダル王女は自室で退屈な毎日を過ごしている。

・闇のアスカンタ王国
闇の世界のアスカンタ王国。先王妃・黒シセルが不慮の事故で亡くなり、先王・黒パヴァンはその悲しみに耐えきれず後追いで自死してしまったため国政は混乱状態。パヴァンの遺書に従い次の王には王宮小間使いの黒キラが選ばれた。しかしまだ年端もいかない小娘を国の頭に据えることには懐疑的な国民も多く、王の死を陰謀と結びつける動きも見られている。短期間で何度も裏切りに遭った黒キラは自分以外の誰も信じられなくなり、「派遣」という形で自らを脅かし得る国防軍を遠ざけ、また内政への介入を恐れて積極的に他国にスパイを送り込む疑り深い女王になってしまった。国民から徹底的に搾取して力を削ぎ、また身分格差を強めて商人と農民の間に対立構造を作ることでなんとか反乱の発生を抑えている。

・黒キラ
闇の世界のキラ。光の世界と同じ14歳。元々は心優しい少女だったのだが、仕えていた王の遺書により生活は一変。突然望まぬ権力を手にし、信じていた大臣や同僚、果てには大好きだった祖母にも裏切られて自分以外を信用しなくなってしまう。自分に近づこうとする者は全員敵と考えており、王城最上階の自室から基本的に出てこず、自分の身を守るための圧政を強いる勅令は手紙を通じて発令している。この世界には優しい祖母も信頼を寄せる王も、そして広い世界に連れ出してくれる道化師もいなかった。



ユリマ「うぅ~うううう…」

キラ「ユリマさん!?どうしましたか!?どこか痛むんですか!?」

サーベルト「ライラスさん…」

ライラス「ああ。遂にこの時が来てしまったか…」

キラ「い、一体何が…?ゆ、ユリマさんは大丈夫なんですか!!!」

ライラス「落ち着いて聞け。ユリマは……」

キラ「………。」ゴクリ

ライラス「『禁断症状』だ。ユリマが正気を取り戻してからこれまでコンスタントに摂取していたドルマゲス成分が、奴がいなくなったことでとうとう切れた。」

キラ「………へ」

サーベルト「キラ、ユリマをなんとかしてやってくれ」

キラ「え!?その、私が…ですか!?」

ユリマ「uu...」

キラ「ほ、ほら!ユリマさん人の言葉も無くしかけてますよぉ!私には荷が重いです!!」

ライラス「しかしドルマゲスがいないのでは、わしらにはどうにもできん。キラ、頼んだぞ。『私がドルマゲス様になります!』と言っていたのを忘れたか?」

キラ「そ、そんなぁ……」

ユリマ「WRYYYYYY!!!」



あんな話も書きたい、こんな話も書きたい!

▼しかし 自分の文章力が 足りなかった!…ぐぎぎ
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