ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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お久しぶりです。先日DQⅦのリメイクが発表され、気付いたら筆を執っていました。5年後か、10年後か…いつかきっと来るⅧのリメイクにも期待したいところです。

さて、また長い事更新を途絶えさせてしまい申し訳ありません…。サクッと物語に入り込めるよう、今回と次回のあらすじを長めにしております。とはいえ、大体はChapter39のあらすじと同じなので、続けて読んでおられる方については、あらすじを飛ばしていただいても大丈夫です。

ACT1(第一章~第十章まで)の文章を再度推敲し、不要な文を省いたり、新しい描写を追加したり、と読みやすく再構成しました。今後も文章の推敲は行いますので、都度ご連絡させていただきます。なお、話の内容自体は変化させていませんので一から読み返さねばならない、ということはございません。ご安心ください(とはいえ、読んでいただけると大変嬉しいです!)。
次回更新時にACT2、次々回更新時にACT3、と続けていく所存です。

2025/09/15 設定資料集を更新しました。お時間ございましたら是非ご覧ください。

では!







Chapter40 大海原 ③

『魔性の道化師』ドルマゲスによって王と姫、そして国全体にかけられた呪いを解くため、トロデーン王国の兵士エイトは呪いによって魔物の姿にされた王トロデ、馬の姿にされた姫ミーティアと共にドルマゲスを追う旅に出た。道中で山賊のヤンガス、魔法使いのゼシカ、聖堂騎士のククールを仲間に加えてドルマゲスを追っていたエイトだが、闇の遺跡でようやく取り返した「神鳥の杖」によってゼシカが操られてしまう。救出後のゼシカの証言から黒幕はドルマゲスではなくトロデーン王国の「神鳥の杖」、ひいては杖に封印されし暗黒神ラプソーンであることが判明し、一行は暗黒神の完全復活を食い止めるため旅を続けていた。

 

杖を持ったまま空を飛び去り行方をくらました暗黒神の手先「妖魔ゲモン」を追うため、神鳥レティスに協力を仰ぐべく「海図」を探す勇者一行。伝説の大海賊「キャプテン・クロウ」がアジトにしていたとされる「海賊の洞窟」で偶然ヤンガスの悪友ゲルダと再会した一行は利害の一致から一時的な協力体制を組み、難なく洞窟を攻略していく。そして辿り着いた最深部では妖しい宝箱が一行とゲルダを待ち受けていたのだった。

 

 

 

「気を付けろヤンガス、それは……そいつにはかなり強い怨念がまとわりついてやがるぜ」

 

先程ゲルダは宝箱から嫌な予感がすることについて単に()()だと述べていたが、宝箱から立ち上る強烈な妖気は聖職者であるククールにも強く感じ取れていた。それはかつてククールがオディロ院長から近付くなと言われていた、旧修道院跡地に囚われる哀れな亡霊たち、彼らよりもずっと強い執念…それこそ初めて闇の遺跡であの少女(ユリマ)と相対した時のような。ククールは自身の怖気を仲間たちに悟られぬよう、マントを整えるフリをした。

 

ヤンガスはククールの忠告に頷き、注意深く宝箱にかける手に力を込める。

 

「兄貴、開けるでがすよ」「うん…わかった」

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……なっ!?」

 

ヤンガスが宝箱を開こうとした途端、宝箱は青く薄暗いボヤのような光を発し、エイトたちは飛び退いて各々の武器を構える。光は徐々に人の形を成していき…

 

「…ッなるほどね。宝箱の守護者は…キャプテン・クロウご本人ってわけかい。」

 

ゲルダはどこか納得したような、それでいて呆れたような声でこぼすが、既に臨戦態勢に入っているエイトたちの、さらに後方にいる彼女の額にも一滴の汗は流れていた。

 

「我が名はキャプテン・クロウ。かつて世界をまたにかけし海賊の中の海賊……。我が財宝を狙う者よ。汝は、それを手にする資格のある者か? あるというならば、我と戦いそのチカラを示せ。資格なき者ならば、悪いことは言わぬ。早々に立ち去るがよい」

 

青白い光は一気に集約し、男の姿へと変化した。…無論、目の前の大男はかの大海賊キャプテン・クロウの()()であって本人ではない。本人はとっくの昔に死んでいる。そんなことはここにいる誰もがわかっていたことであるが…それを念頭に置いてなお彼には全てを圧倒するかのような覇気があり、彼がひと睨みすれば空気さえも震えるようだった。

 

「へっ…『伝説の大海賊』なんて大層な肩書は伊達じゃなかったわけだな…!」

 

「ユーレイのくせして、なんて気迫なの…!?」

 

「それが…それでこそキャプテン・クロウという男でがす…っ 」

 

 

 

──そして…兄貴よりも、ゲルダよりも、親父よりも前…オレが人生最初に憧れた……!──

 

 

 

ヤンガスもまた他の仲間たちのように額に汗を浮かべながら…しかし、好戦的な笑みを浮かべる。

 

「聞きやがれキャプテン・クロォウ!!オレの名はヤンガス!ここにいるエイトの兄貴の弟分であり、暗黒神に立ち向かう勇者の一人だッ!世界を救うためにアンタの財宝、オレたちで全部かっぱらって行くぜえッ!」

 

そう叫ぶとヤンガスは深く腰を落とし、オノを構える。ここまで威勢のいいヤンガスの発破を初めて聞いたエイトたちは一瞬呆気にとられたが、むしろ少し弱気だった心に鞭を打たれたかのように一歩踏み出し、改めて構えなおした。キャプテン・クロウはそんなヤンガスを見てくつくつと嗤う。

 

「どうやら汝らは他のトレジャーハンター共とは一味違うようだ…いいだろう、我にチカラを示し、見事我が財宝を勝ち取ってみせよ。…先手は譲ってやる、来い!!!」

 

そう言い放つとキャプテンクロウは剣を抜き、だらりと脱力した。余裕の表れ?こちらを侮っている?それとも何かの前準備?エイトたちの頭には様々な可能性が浮かび、一瞬動きが止まるが…

 

頭を使うことを得意としないこの男はキャプテン・クロウの言葉をそのままの意味で受け取り、颯爽と飛び上がった。

 

「でりゃあああぁぁっっ!!」

 

ヤンガスの初撃は『かぶと割り』。相手の守備力を低下させる効果を持つ、長期戦に必須の特技であり、ヤンガスが最初に覚えた技でもある。ヤンガスは単に最も自分に馴染んだ技としてかぶと割りを繰り出したのだが、キャプテン・クロウにはルカニの耐性が無いため、図らずしてヤンガスの判断は最善手となった。だが、キャプテン・クロウは自身の弱点攻撃にも動じない。

 

「ククク…さて、今度は此方から征かせてもらおうか!」

 

反撃として繰り出された『しんくうは』は、本来は全体を対象にした攻撃技だが、ヤンガスがクロウと接着していたためにそのほとんどのダメージを彼が肩代わりすることになる。ヤンガスの体力では戦闘不能は必至…

 

「ヤンガス!やる気があるのはいいが、あんま突っ走んなよ!」

 

「そうよ、私たちのこと忘れないでよね!」

 

「みんな、行くよ!」

 

だが、彼の仲間たちも伊達に何度も死線を潜り抜けては来ていない。ククールはヤンガスの体力が尽きるギリギリで『ベホマ』を唱え、体力以上のダメージを受けたヤンガスの戦闘不能を回避した。タイミングを一歩間違えるとヤンガスは戦闘不能になり、魔法も無駄撃ちとなる危険性を孕む高度なテクニックである。

 

「『メラゾーマ』!」

 

「ほう、魔法使いか。魔法を操る者がわれに挑んでくるのは何十年ぶりか…」

 

クロウは栄光の過去を懐かしむよう目を細めながらも、涼しい顔で大火球を切り伏せる。

 

「やああっ!」

 

「なっ、ぐおっ!?」

 

だが、それはブラフ。放たれるメラゾーマの真後ろで追走していたエイトが四散する火球の中より飛び出し、『雷光一閃突き』を命中させた。妖魔ゲモンとの戦いで大きく損傷していた「砂塵のヤリ」は今の一撃で完全に破壊されてしまったが、それを代償に少なくないダメージを与え、クロウをよろめかせる。

 

「…」

 

隙を窺い続け、間髪入れずクロウに弓矢を打ち込むのはククールだ。霊体(エレメント系)であるクロウに通常の矢は効果が薄いであろうことを見越し、同じ超常の力である『精霊の矢』ばかりを打ち込む。さらに『精霊の矢』の効果で先程の『ベホマ』で消費したMPをちゃっかり回収している点も抜け目ない。

 

「…フ、悪くない連携だ…我も興が乗ってきたぞっ!」

 

クロウは一瞬でパワーを溜め、一気にハイテンション(50)状態になる。

 

「へっ、なら先に叩いて出鼻を挫い…」

 

戦闘の興奮が冷めやらぬまま、ヤンガスが更に一撃を入れようと駆けだしたが…

 

「待ちなヤンガスっ!()が来るよ!」

 

戦場に響いたのは戦線に参加していないはずのゲルダの声。ヤンガスは一瞬面食らうもすぐにバックステップを取り、ゲルダの意図をいち早く理解したエイトが指示を飛ばす。

 

「みんな一箇所にッ!ククール、『バギクロス』!ゼシカは援護!」

 

「了解!」「まかせて!」

 

瞬間、先ほどよりも強力な『しんくうは』が放たれた。しかしゼシカの『イオナズン』により空気の流れが乱され、さらにククールが『バギクロス』をぶつけて相殺を図ったためダメージはほとんど最小限に抑えられた。

 

「ハハハ…!今の真空波をしのぐか!面白いッ!」

 

「ゲルダ…助かった。兄貴たちも…アッシ、ちょっと気が逸りすぎたでがす」

 

「もう…しっかりしてよね!」「まあそう言ってやるな、これもまたロマンを追う男の姿さ」「わっけわかんない!」

 

ククールとゼシカ、そしてヤンガスは前線に戻る。エイトは一瞬離脱し、部屋の隅で壁にもたれかかっているゲルダに近づいた。

 

「ゲルダさん、さっきの一撃、よく察知できましたね?なにか分かったんですか?」

 

「…予備動作だよ。キャプテン・クロウの攻撃には全て初動がある。何十年も同じ場所で同じような相手と戦ってりゃ自然とそうなるモンさ。」

 

「予備動作…なるほど。全く気付かなかったな…」

 

「ま、これはアタシが安全圏で突っ立ってアンタらの戦いを眺めてたからわかったってだけさ。あまり気にすることはないよ。ほら、アンタもさっさと戻りな」

 

「差し出がましいようですがゲルダさん、この戦闘だけでもいいので…」

 

「…あー、わかってる、皆まで言わなくていい。これからはアタシがヤツの動きを予測して声をかけるよ。だがコマンダーはエイト、変わらずアンタがやれ。アタシは他人に雑用以外の指示出しなんてやったことないからね」

 

エイトはそれだけ聞くと満足そうに戻っていき、ゲルダは壁から背を離して腕を組んだ。言わずもがな、クロウの動きをよく観察するためである。

 

「…そういう契約だからってだけ。アタシはいつだってお宝の為に…」

 

その言葉は誰に向けたものなのか。少なくとも戦闘中のエイトたちに聞こえるものではなかった。

 

 

「次!剣の大振り!その後波動が来るよっ!」

 

「ヤンガス、下がらず斧で受けて!ゼシカは落ち着いて詠唱、ククールはその援護!」

 

「がってん!」

 

ヤリを失ったエイトは「ドラゴンキラー」に持ち替え、戦闘に参加しながらも司令塔として指揮を飛ばしていた。クロウの動きはゲルダが逐一予測して伝えてくれるため、エイトはそれを基に陣形を組み立てることができる。格上の相手に善戦を見せ、戦闘は佳境を迎えていた。だが…

 

「ぐああっ!」

 

「くっ、キャプテン・クロウの攻撃が…!?」

 

「ちっ…あのヤロウ、アタシたちの戦術を逆手に取って()()()()()()()()()()ね…」

 

「ハハハ…どうした?われがいつまでも良い様にされているだけだとでも?」

 

スーパーハイテンション(100)での攻撃、最も警戒すべきそれをこの土壇場でククールに命中させられ、ククールは戦闘不能になる。それまでの戦闘が順調に進んでいただけに、咄嗟に誰も対応できない。

 

「ここでさらに司令塔を潰せば流れは止まる!さあ、どうする!」

 

クロウはそれまでよりも数段素早い動きで一気にエイトへと肉薄する。実際、司令塔とククールが倒れた際の蘇生(『ザオラル』)役を兼任しているエイトをここで倒されるのはパーティーとして何としても避けなければならない事態だった。

 

「兄貴ーーー!!!」

 

「(きっとこの一撃は耐えられない…ッ!竜闘気(ドラゴニックオーラ)は…くっ、間に合わないか…!)」

 

エイトは必死に考えを巡らせるも打開策は思い浮かばず、クロウは既に振り下ろし始めている。レベルが届かなかったか…エイトはそう悔やみながら剣を受け容れようとした。

 

「だめーーーっっ!!!」

 

「ゼシカッ!!」

 

寸前、一番近い位置にいたゼシカがエイトを突き飛ばす。標的の位置がズレたクロウは体を捻ってなおもエイトを狙おうとするが、斬りかかった勢いは止まらず…

 

 

 

ぽふんっ

 

 

 

「モガッ!?」「ひゃんっ!?」

 

「!?!?!?」

 

不本意に…誠に不本意ながらクロウはゼシカの豊満なバストに飛び込んでしまった。突き飛ばされたエイトも、突き飛ばしたゼシカも、そして当のキャプテン・クロウも、全員の時が一瞬止まる。ククールが健在だったなら皮肉気に口笛を吹いていたことだろう。

 

「なっ、ななな…っ!」「ム、ぐぐ…」

 

「こんのッ!どヘンタイッ!!」

 

ゼシカ怒りの鉄拳がクロウを痛烈に叩き落とし、一歩遅れて駆け付けたヤンガスが突っ伏したクロウの横っ腹を『なぎはらい』壁に叩きつける。体勢を整えたエイトはすぐに『ザオラル』を唱え、ククールを蘇生させた。全滅の危機はゼシカの()()でなんとか脱したわけである。

 

「ふゥー…今のは肝を冷やしたね…だが…ハッ、こりゃケッサクだ。名うての大海賊も一人のオトコだったってワケかい。」

 

「ゼシカぁ!今のはナイスだったでがす!今のをもう一回やってくれればきっと楽に勝てるでげすよ!」「ばっっっかじゃないの!?!?」

 

「でもチャンスは生まれた!ゲルダさん!」

 

「ああ、波動も真空波もしばらく来ないよ!次で決めちまいな!!」

 

キャプテン・クロウは瓦礫を払い立ち上がる。先程は少々情けない姿を晒してしまったものの、その瞳は依然妖しい輝きが宿っている。

 

「ゼシカとククールはヤンガスに『バイキルト』をっ!時間は僕が稼ぐっ!はああああ……っ!!」

 

エイトは自身の魔力を振り絞り『竜闘気』を発動。黄金の龍を纏ったエイトは幾重もの残像を残しながら高速で移動しつつ、全方向からクロウを攻撃する。

 

「ぬゥ…見たことのない技だ…この我でも受けきれぬ…だがっ!其方の身は持つかな!」

 

「倒しきれなくてもっ!いいっ!僕の役目はっ!」

 

「なにっ!?」

 

目にも止まらぬ連撃で生まれた一瞬の隙をつき、エイトはクロウを殴り飛ばした。その先には…

 

「キャプテン・クロウ!この勝負、オレの…オレたちの…」

 

「……フッ」

 

「勝ちだああああぁぁ!!!」

 

『バイキルト』で強化されたヤンガスの『大まじん斬り』が炸裂。吹き飛ばされたキャプテン・クロウは反対側の壁にめり込むような勢いで衝突し、ついに倒れたのだった。

 

 

「……クックック……本当に我を打倒するとはな。見事な戦いぶりよ…。汝らを資格持つ者と認めよう」

 

起き上がったキャプテン・クロウに既に戦闘の意思はなく、剣もいつの間にか鞘に仕舞われていた。エイトたちも戦闘態勢を解き、ゲルダはまた壁に寄り掛かった。

 

「猛き者ヤンガス…そして『勇者』たちよ。我が財宝を引き継ぎ、我の果たせなかった夢を叶えてくれ……」

 

「夢…それって…?」

 

「な、なあっ!キャプテン・クロウ、オレは…」

 

「クク…ヤンガスよ…我の…俺の夢を託せるのがお前のような気骨ある男で良かった…ぜ…」

 

そう言い残すと、キャプテン・クロウの幽霊は再度青白い光となり、その光もほどけて消えてしまった。あとに遺された宝箱を開ければ、そこに入っていたのは一枚の古びた紙切れ…「ひかりの海図」だった。

 

「キャプテン・クロウ…オレが最初に憧れた男…オレも、アンタに会えて、競えたことは忘れないぜ」

 

ヤンガスは消えゆく光を少し名残惜しそうに見つめていた。

 

「これが…『海図』」

 

「世界地図と照らし合わせてみるか?」

 

「うーん、大体一緒に見えるけど…違いはこの白い線が引いてあることくらいね」

 

「なんだいその紙切れは。まさかアンタら、こんなしょっぼい紙切れの為に戦ってたのかい?このアタシが一肌脱いでやったってのに?」

 

エイトから海図をひょいと取り上げたゲルダはまじまじとその紙を見つめると心底がっかりだという風に大きなため息を吐いた。

 

「おいっゲルダ!それはだな…」

 

「いちいち声がデカいねえアンタは。アタシだってこれがただの紙切れじゃないってことくらいわかってるさ」

 

「…」

 

「でもそれとこれとは別。アタシが欲しいのは珍しい紙なんかじゃなくて金銀財宝。あー頑張って損した!これはアンタらにやるよ」

 

「お、おう…」

 

「……ま、これでアタシらの同盟も晴れて解消だね!分け前はいつもより少ないけど、ま、悪かなかったよ。じゃあね」

 

いつの間に用意したのだろうか?ゲルダはきっちり半分にされたアイテムやゴールドを床に並べると、踵を返して来た道を戻り始めた。短い間だったとはいえ、ここまで一緒にやってきた関係にしてはあまりにも淡白な別れ。しかしゼシカやヤンガスではゲルダを引き留めるための言葉が思いつかなかった。

 

「…『ただの紙切れ』か。どうやらオレたちはパルミド一の女盗賊とやらを少々買い被っていたみたいだな」

 

「ククール?」

 

一見無用にも見える煽りを引っかけるククールに訝し気な視線を向けるエイト。しかしククールは目配せで返した。ゲルダはピタリと足を止め、振り返る。

 

「ふ~ん…なんだい伊達男、それはアタシへの挑戦かい?言いたいことがあるなら聞いてあげるよ」

 

「この海図は『ひかりの海図』。閉ざされた島と接続する唯一の手段を記すものさ。閉ざされた島…あのキャプテン・クロウですら辿り着けなかった島には一体何が眠っているんだろうな?」

 

「…」

 

「いやいや、挑戦なんかじゃあないんだ。ただ『ハングリー精神』なら誰にも負けないと豪語していたアンタほどの盗賊が、未知の島へと繋がる手掛かりを金にならないと放棄するのが少し意外でね。若者の戯言と思って聞き流してくれ」

 

「(相変わらずイヤな言い方するわね!)」

 

ゼシカはエイトの耳元でこっそり苦言を漏らす。だがしかし、正面からの勧誘ではきっと天邪鬼なゲルダは聞く耳を持ってくれないだろう、ということはゼシカも薄々感付いていたことだ。

 

「…こりゃ一本取られたね。伊達男、アンタの言う通りさ。…よし、気が変わった!アタシもアンタらについてくよ」

 

「な、おいゲルダ!それってどういう」

 

「ヤンガス、アタシゃてっきりアンタが伊達男の代わりにアタシに声をかけてくれるもんだと思ってたよ。ホントに情けない男だねえ」

 

「な、なんだとぅ!」

 

「ゲルダさん」

 

「エイト。アンタからはお宝の匂いがプンプンするのさ。盗賊のアタシがついて行っても文句はないね?」

 

「…こちらこそ、よろしくお願いします」

 

今回のチームアップを経てゲルダは、その成果以上に大きな充実感を得た。このままエイトたちと縁を切っても問題は無いが、後ろ髪を引かれる思いが多少なりともあったことは事実である。

その一方で、海賊の洞窟の攻略、そしてキャプテン・クロウ戦におけるゲルダのサポートは、エイトからしても大変な助けになった。実際、ククールが声をかけていなかったらエイトはゲルダを勧誘するつもりだったので願ったり叶ったりである。

 

「その代わり、僕らから物を盗むのは無し。当然王様からもです」

 

「チッ、バレてたか。意外に聡いんだね」「姫の近衛兵ですから。」

 

ゲルダは懐から財布を取り出してヤンガスに投げ渡した。当然彼の財布である。

 

「うおおっ!?てんめぇ、いつの間に!」

 

「さっきアンタがハイタッチしようとしてきた時だよ、マヌケ」

 

「それと、僕たちのパーティーに加入してくれることは歓迎します。ですがゲルダさん。敵は強大だ。貴方にも最低自分の身を守れるくらいの力はつけてもらいますよ」

 

「…わかったよ。それが条件ってんなら仕方ない。なあに、鉄扇があれば今にアンタらをあっと驚かせてみせるさ」

 

自分たちから何も盗まないこと。自分の身は自分で守ること。それを確認したエイトは表情を崩し、右手を差し出した。

 

「では…ようこそゲルダさん。僕らのパーティーへ。歓迎します」

 

「…フン。それじゃあしばらく厄介になるよ。」

 

 

 

▼ ゲルダが 仲間に加わった!

 

 

 

「ゲルダさん!私『ゲルダ姉さん』って呼んでいい?」

 

「できればやめて欲しいね」

 

 

 

 

 

 




原作との相違点

・ゲルダの加入経緯が変わった。

PS2版では仲間ではならないが、3DS版では仲間に加わるゲルダ。原作ではこちらの言い分を無視し半ば強引に仲間に加入してくるが、本作ではダンジョン攻略やキャプテン・クロウ戦での共闘を経てお互いに利のある形で正式に仲間になった。ゲルダはまだヤンガス以外のメンバーのことをよく知らないが、ヤンガスが認める仲間なら少なくとも信頼できるお人好しではあるだろうとは思っている。(もちろんそんな風に思っていることは言わない)

→エイト:「ヤンガスの兄貴分。とぼけた顔をしちゃあいるが、ありゃやる時にはやる男だね。」
→ゼシカ:「魔法使いの若い娘。気が強そうだが、いいとこのお嬢サマかなにかかい?」
→ククール:「聖職者の伊達男。食えないタイプだが、敵に回さなきゃ意外に気は合いそうさ。」

エイト
レベル:32→33

ヤンガス
レベル:32→33

ゼシカ
レベル:34→35

ククール
レベル:33→34

ゲルダ
レベル:36


・キャプテン・クロウ
「海賊の洞窟」のボス。たたかう、ためる、しんくうは、いてつくはどうの四つしか行動パターンが無いが、その単純さゆえに強力な相手。ボスの中で唯一『ぱふぱふ』が効く。彼も人の子ということだろうか。



「オレが死んでる間にゼシカ、お前随分おもしろい特技を編み出したらしいじゃないか。ちょっとやってみせてくれないか?」
「二度とやんないわよ!!ねぇククールに教えたの誰!?!?」

本作のゼシカは「おいろけ」にスキルポイントを割り振っていません。そりゃあ名家の御令嬢ですからね。
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