ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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前回の前書きでお伝えしました通り、ACT2に含まれる話を推敲しました。ご覧いただけると嬉しく思います。次回更新は近日を予定しているため推敲をはお休みしますが、次々回更新時までにACT3の推敲を行っておきます。

前回に引き続きあらすじを長めにしております。新・第十七章のあらすじと大体同じなので続けて読んでくださっている方は飛ばして読んでいただいても差し支えありません。








新・第二十章 黒に乗るまでは船に乗れ‐レティシア‐

不慮の事故で命を落とした男は、ドラゴンクエストⅧの世界に転生を果たす。しかし彼が憑依転生したのは全ての元凶である『魔性の道化師』ドルマゲスの肉体だった。ドラゴンクエストⅧの世界で起こる数々の悲劇を阻止し「悲しくない人生」を送るべく、ドルマゲスは暗躍を始める。「魔物の使う不思議の術」を「呪術」と称し身に付け、彼が師事する大魔法使いマスター・ライラスの導きにより強大な魔法の数々を修得し、正史ではドルマゲスに惨殺されてしまう剣士サーベルトと絆を結ぶ。さらに本来なら深く関わるはずのなかった者たちとも仲を深め、彼ら彼女らと協力しながら原作の知識を行使しつつ、起こりうる悲劇を次々と食い止めていった。

 

……しかしそれでも、暗黒神ラプソーンの力は強大であった。魂だけの存在でありながらドルマゲスの肉体を操り、一度目はライラスを殺害、サーベルトを瀕死に追い込み、二度目はドルマゲスを慕う町娘ユリマの肉体を乗っ取ってドルマゲスたちに小さくない傷跡を残す。さらに三度目は魔法使いゼシカの肉体を乗っ取り勇者エイト一行&ドルマゲスたちと激突。町全体を人質に取られ不意を突かれたドルマゲスはついに完全なる敗北を喫した。だがこれまで幾度も辛酸を舐めさせられたラプソーンもまた、ドルマゲスの底知れなさに脅威を感じ、敢えてドルマゲスを殺すことはせずに『闇の世界』にドルマゲスを拉致、さらに強力な封印を施して二度と干渉されないようにした。

 

そんな死の間際、ギリギリで利かせた機転と数々の偶然の重なりにより奇跡的に一命を取り留めたドルマゲスは、ラプソーンにより自身に施された封印を解いて完全に力を取り戻すこと、そして『光の世界』への帰還することを目的に、過酷な闇の世界で命がけの旅を続けていた。

 

ドルマゲスは闇の世界で「別世界の自分」である少年ディムと出会い、彼の故郷である「ドニの町」へ向かう。程なくしてラプソーンの手先に町が襲撃されるも、ディムと力を合わせてこれを防衛し、報酬として船を手に入れる。闇の世界のサーベルトたっての要望により闇のメダル王国で開かれる武闘大会に立ち寄ったドルマゲスは、そこで幸運にも目当てのアイテムである「海図」を手に入れられたのだった。

 

 

 

 

「(『やみの海図』…)」

 

あの後、闇のアスカンタ王国へ帰るという黒ライアンと別れて闇のメダル王国を発ち、数刻。闇のトラペッタへと向かう洋上で俺は古びた海図をもう一度眺めていた。青天の霹靂?あるいは棚から牡丹餅?なんにせよ今一番重要なのは喉から手が出るほど欲しかった「やみの海図」をこの場で手に入れられたということだ。それはつまり厄介な「海賊の洞窟」の攻略をスキップできたことを意味する。

 

いや、恩恵はその程度では収まりはしまい。そもそも、俺はこの闇の世界を「光の世界と鏡合わせのように存在している瓜二つの世界」とはもはや考えていない。大陸や島の位置こそ同じだが、そこに住む人間は違うし、人が違えば歴史も違う。歴史が違えば何もかもが違ってくる。そも「やみの海図」が闇の世界の「海賊の洞窟」にあったのかすらも怪しい。既に人の手に渡っていたら?あるいはとっくの昔に消滅していたら?そう考えると今俺の手の中に海図があることは本当に大変な幸運だと言えよう。

 

「…地図の上に黒い波線が描いてあること以外は普通の世界地図と変わりなさそうですね、おじさん」

 

俺が地図を開いて物思いに耽っていると、その地図を覗き込むようにディムがひょっこりと顔を出してきた。

 

「ええ、そのようです」

 

「ただの落書き…ってことはまあ、無いんでしょうね。となるとこの線は航路を示している…?」

 

「おそらくはその通りでしょう。波線の始まりは聖地ゴルドの北の海…そして末端がここ。」

 

「『閉ざされた島』…ですか」

 

この船の舵を取っているのは相変わらず黒ユリマ。だが彼女の操舵技術も多少は上達したようで、闇ドニから闇メダル王国への道のりのような酷い航海にはなっていない。黒サーはそんな黒ユリマとお喋りに興じている。いつも大事な話をしていると首を突っ込んでくる彼らが二人で大人しくしていてくれるのは素直にありがたい。こちらも真面目な話に集中できるってもんだ。

 

「この航路通りに航行すればこの島に到達できると?俄かには信じがたいですね。」

 

「そうですとも。船であんな高い島になんて辿り着けるわけがない!と、誰もがそう思い込んでいるからこその『閉ざされた島』なのですよ。」

 

「む……。」

 

実際、閉ざされた島で集落を形成している「レティシア」の民も、誰も外の世界に出たことがないということはないし、外へ出てはいけないというしきたりもなかったはず。むしろ漂着した神父をそのまま村に置くなど、外の世界の人間を積極的に受け容れてきた柔軟な民族だったはずである。もしかしたら「ひかりの海図」というマジックアイテムは村の民が漂流者を元の大陸へ送り返した帰りに迷わず村まで戻ってこられるように作られたものなのかもしれない。

 

であればそれは闇の世界においても同様、と考えるのが妥当だろう。先程は光と闇の世界は全くの別物だという話はしたが、事実に基づく推測くらいはできる。なにせ、闇のレティシアは闇の世界に存在する街や村の中で唯一原作に登場した場所なのだから。

 

「でも、おじさんの世界と違って、その航路通りに進んでもレティシアに辿り着かなかったらどうするんですか?」

 

「…。考えないようにしてください。その時はその時です」

 

「え?次善の策どころか、その後どうするかすら考えてないんですか?そんな行き当たりばったりでよく生きてこれましたねおじさん…」

 

「耳が痛いですねえ」

 

もー、ちくちくしやがって。俺にとっては闇の世界に連れてこられたこと自体が最大のイレギュラーなのよ。…ここが光の世界だったらもうちょいまともな策も講じられるのに!

 

「二人とも、もうすぐ北の大陸に到着するぞ!」

 

「了解です。じゃ、準備しましょうか」「はい」

 

「ねぇねぇサッちゃん、わたしの運転どうだった?」「はっはっは、接岸するまでが運転だぞユリ」

 

まあ…今の俺にできることが、この海図通りに船を進めて闇のレティシアに無事到着できることを祈ることくらいしかないのは間違いない。

 

 

「見送りはいらないぞ」

 

さいですか。

 

トラペッタ近くの浜に錨を下ろした船は、多少の波では動じない。黒サーは黒ユリマをお姫様抱っこした状態で颯爽と船から飛び降りた。重さを感じさせない完璧な着地。ふわりと風に揺れるワンピース。黙っていれば本当に絵になる二人だ。黙っていれば。

 

「ここまで私を守っていただいてありがとうございました!」

 

「ああ。俺がいなくてもお前が生きていけるのか少し心配だが…いつまでも俺が傍にいたんじゃお前の為にならないからな。寂しいがお別れだ」

 

「…。」

 

やめなさい。何も言ってくれるなよディム?俺は隣で不満そうな顔をしているディムが何かよろしくないことを言う前に彼の口を塞いだ。

 

「…まだ何も言ってませんが?」

 

「それはこれから何か言う人のセリフなんですよ」

 

「しかし、俺はお前を本当に評価している!スライムや羊男と戦うのが精一杯だったお前が船だなんだと言い出した時は本当に呆れたが…。実際お前は船を手に入れ、俺たちを送ってくれた。俺の念願だったメダル王国にも連れて行ってくれて、俺は本当に満足している!ありがとうドルマゲス!ディムも元気でやれよ!」

 

その節はこちらとしても本当に感謝している。彼がメダル王国に行きたいと突然言い出した時は命の恩が無ければ船から降ろしてやろうかと考えたくらいだが…黒サーがそう言って、そして武術大会で勝利してくれたからこそ今ここにこの海図や素材があるのだ。彼に対して感じている恩義はみせかけだけのものではない。

 

黒ユリマにしてもだ。弁当に髪や血を混入させたり、自分の愛する人に近づこうとする者全てに牙を剥いたり、どこか光の世界の彼女を彷彿とさせる黒ユリマだったが、ドニの防衛戦での避難誘導であったり、闇メダル王国での一幕であったり、同行することで彼女も根底では心優しく無邪気な少女であることが分かった。あの時彼女に発見してもらって、身元も不明な死に体であった俺を黒ライラスのもとへと運び込んでくれていなければ俺はとっくにお陀仏だった。

 

「ねーサッちゃん、そろそろ帰ろう?お父さんも心配してる…かもだし」

 

闇の世界のサーベルト、そしてユリマ。頑固で身勝手かつ傲慢で人の話を聞かない彼らにはこれまで随分と振り回されたが、それでもトラブルこそあれ一人で闇の世界に放り出された寂しさは終ぞ覚えることはなかった。出会えたのが彼らでよかった。と今となっては本心から言える。

 

「ハハハ、そうだなユリ。…じゃあな二人とも!達者でな!」

 

「ばいばーい。わたしも結構楽しかったですよーぅ。」

 

「サーベルトさん、ユリマさん!色々お世話になりました!二人ともお元気で!いつかまた!!」

 

「……また。」

 

俺は二人に精一杯の感謝を述べ、ディムも最後は気怠げにではあるが手をひらひらさせて二人に別れを告げた。二人が背を向けて闇のトラペッタへと歩き始めたのを見届けると、俺たちも錨を上げて今度こそ闇のレティシアへと出航した。

 

 

波は穏やかで魔物も今は現れていない。俺は海流を読むだとか操舵だとか、航行技術についてはからっきしだったのだが、ディムは長い事船の用心棒をやってきていただけあって多少は航海にも覚えがあるようだったのでありがたく操縦を任せ、代わりに俺はお茶の準備をしている。隻腕だって出来ることはある。

 

「思っていたよりあっさりしたお別れでしたね、おじさん」

 

「んー…そうですか?」

 

「おじさんのことだからもっとこう、形だけでも名残惜しむものかと」

 

「まあ、別に一生会えないってわけじゃないですからねー。」

 

「…え」

 

「会おうと思えば会いに行けますし」

 

「んえぇ?!」

 

ディムはしっかり舵を取りながら素っ頓狂な声を上げた。器用なことするもんだ。

 

「闇の世界と光の世界は言わば表裏一体。レティスの協力さえ取り付けることができれば二つの世界の行き来自体は容易いものですよ。」

 

まあそれも所詮推測の域を出ないが。現在レティスは数百年前の戦いでラプソーン共々摩耗した状態なので、いくらレティスが『世界を渡る鳥』と言えど自由な行き来は難しいはずだが、彼女はその力の残滓で世界に『破れ目』を作ることができる。それこそ俺一人くらいなら楽々通れるくらいの。それに俺が魔力を取り戻したなら『ルーラ』も唱えられるので、そうなれば何も問題はない。事が落ち着いてから黒サーと黒ユリマに改めてお礼の品でも持っていけばいいだろう。

 

「…そう、なんですか。僕はてっきり…」

 

「それは私の言い方が悪かったですね。申し訳ありません。」

 

「まあ…はい。……そうですか。」

 

ディムは闇の世界から出ればもう二度と戻れないと思っていたのだろうか?しかしそうではないとわかって安心したのだろう。少し高くなった声色からそれは窺い知れるが、それをいちいち指摘するほど俺も野暮ではない。

 

「ディム君、あの岩礁群が見えますか?あそこが海図の起点です」

 

ディムが船を上手く操って岩礁の中心部まで進むと、海図と海が反応し、辺りが黒い光に包まれた。

 

「うわっ!?」

 

「大丈夫。敵ではありません」

 

光は一気に収束し、闇のレティシアへと向かう道を作り出した。闇の世界とは言えど、闇トラペッタを発つ前に黒ライラスが言っていたように「流転するもの」には色がある。青い海の上で黒い光はしっかりと目印の役目を果たしていた。よし、後はこれを辿ればきっと着く。

 

「これは…すごい…なんというか…驚き…ですね…はァ~、こんなものが…」

 

ディムはしきりに驚いては感心している。まあ、神鳥の杖やら月影のハープやらの不思議現象にすっかり慣れっこの俺や勇者たちと違って、彼はこういうの初めてだろうしな。

 

「この道を辿っていけばそこがおそらくレティシアです」

 

「…道の先には断崖絶壁が待ってますが?」

 

「問題ありません。進んでください。」

 

「……いくらこの船が兄さんの持つ中で最高のものとはいえ、あれにぶつかれば大破すると思いますが?」

 

「構うこたぁありません。行ってください。」

 

「…ちっ」

 

ちょっとディムさん、今舌打ちした??……まあどの道これでレティシアに行けないんなら八方塞がりなんだし、こんなとこで躊躇していても仕方がないのだ。関係ない、行け!

 

「…一応聞いておきますが、死んだら恨んでいいですか?」

 

「恨むなら私じゃなくラプソーンでお願いします」

 

俺とディムを乗せた船は、その勢いを衰えさせることなく隔絶された台地の岩壁に突っ込み…その瞬間またも黒い光に包まれた。

 

少し経って光が収まり、俺が目を開けると船は地底湖のような場所に浮かんでいた。開けた前方以外は全て断崖に囲まれており、来たはずの道は無くなっている。つまり…

 

「成功ですね」

 

無事、「隔絶された台地」…あるいは「閉ざされた島」ことレティシア地方に到着した。俺はニヤリと笑う。しばらくぶりの不敵な笑みである。

 

「すごい…崖に突っ込んだはずなのに本当になんともない…じゃあここが…」

 

「さて、レティシアはこの先…もうここまで来られたなら後はこっちのもんですよ。ディム君、魔物の相手は頼みます!」

 

「は、はい!」

 

闇のレティシア地方の魔物に危険な技を使う個体はほとんどいないが、弱いわけではない。俺は今出せる最高位のセキュサを4体展開し、俺の四方を固める。闇の世界に落ちてきてから少しずつ減っていき、そして闇ドニの防衛戦で大幅に消耗してしまったセキュサのストック。もう後がない。セキュサが無くなると紙装甲の俺の命が本当にまずいので、可能な限り戦闘は避けつつ、ディムの『トヘロス』をすり抜けて襲い掛かってくる好戦的な魔物はディムとセキュサで追い払ってもらう形で闇のレティシアへと向かった。

 

 

「おおっ!?あんた、もしかしなくても島の外から来た人だよな?」

 

「ええ。そうですね」

 

「だよな!?いや~断崖絶壁に囲まれたこの島に外から人が来るなんてオドロキだぜ。…さて、ここはレティシアの村だ。レティシアってのは『神鳥レティスを崇める者』って意味さ。」

 

「神鳥レティス…神話も本当にあったんだ…」

 

元からこちらの世界出身のディムはもちろん、俺も今は『妖精の見る夢(コティングリー)』で黒い見た目に変装しているので闇のレティシアだろうと怪しまれはしない。光の世界のレティシアに訪れた時と同じ、『珍しい来訪者』レベルの歓待である。

 

…うーむ、原作でここを訪れた時はもうちょっと荒れ果てていたような気がするが…?いや、よく見ると村の奥の方はいくつか壊された建物が見える。だが、既に復旧は進んでいるようだ。

 

「もし、すみません。先程仰られました『神鳥レティス』ですが、もう少し詳しいお話を伺いたくてですね…」

 

「ああ、レティス様の話を聞きたいのか。なら、長老の所へ行くと良い。長老はレティス様とは旧知の中でね、先日もレティス様がこの村に降り立ちなさった際にも応対していたよ。」

 

そう言うと親切な村人は長老の家まで案内してくれた。…ふむ。俺の記憶の中にある闇のレティシアとは少々異なっているが、先程の「先日もレティス様がこの村に降り立ちなさった」という言葉から何となく話は見えてきた。

 

「長老、長老~!なんか、旅の方がレティス様の話が聞きたいってよ~!」

 

「ほお、旅の方がレティスの?これは珍しい。まあ入りなされ」

 

「お邪魔します」

 

「すみません、いきなりお邪魔させていただき…」

 

「いいんじゃよ。丁度わしも暇を持て余しとったところじゃて。」

 

やはりというかなんというか、闇のレティシアでも外から人が来るのは珍しいことのようで、珍しいお菓子でもてなして貰ったり、時折村人が俺たちの姿を覗きに来たりした。身の上話や軽い雑談などを経て、長老はついにレティスについて語り始めた。

 

「レティスはわしが生まれる前から村の外にある大きな石像…通称『止まり木』にいた。わしが大人になってもじいさんになっても、レティスはそこにいたのじゃ。そうして村の者をいつも見守ってくれていた。わしは何度かレティスとも言葉を交わしたこともある。どこか人を安心させるような、気高く穏やかな声じゃった。」

 

「じゃが、数年前からレティスはこの村を襲うようになった。彼女は何も言わずに建物を壊し、去っていく。それが何度も起こった。村の者はレティスに酷く失望したようだったが、わしはそうは思わんかった。レティスは何度村を襲っても、決して村の者や家畜、食料には手を出さなかったのじゃ。」

 

「そしてつい最近のこと、レティスがこの村の中央に舞い降りた。村の子供たちの中には恐れ逃げ惑う子らもいたが、大人たちはレティスを見て今までとは何かが違うと一目見て感じとっていた。」

 

俺は頭の中で記憶のピースを当てはめながら長老の話に相槌を打っていた。日頃は何にも興味のなさそうな顔をしているディムも、神鳥レティスの話には興味が惹かれるのか、話に聞き入っているようだ。

 

「レティスはこれまでの非礼を詫びた。…そう、レティスが村を襲ったのは本意ではなかったのじゃ。彼女は自分の卵が悪い魔物に奪われ、我が子を守るために仕方なく村を襲っていたのだと語った。」

 

「だが、その悪い魔物はある日突然姿を消した。卵は無傷のままレティスのもとへと戻り、解放されたレティスはこうして詫びるために村へやって来たわけじゃな。それからはレティスも我が子を見守りつつ、この村の復興に協力してくれておる。村の者の中には外の魔物から命を救われた者も多く、今では皆がレティスを崇めておる……と、こんな次第じゃ。なにせわしも年寄りなもんで思い出せんこともあるが…どうじゃ旅人さんや。面白かったかのう?」

 

「ええ!とても興味深く聞かせていただきました!ありがとうございます!」

 

「僕も…初めて聞いた話ですが…面白かったです」

 

そして、成程。闇レティシアの置かれた状況にも合点がいった。これまで俺やサーベルト、ユリマにキラちゃん、そして師匠が光の世界で大暴れしたせいでラプソーンの計画は狂いに狂い、闇の遺跡を通して闇の世界から自身の腹心であるゲモンを招聘するに至った。我が子を人質に取られ、ゲモンに指示されてこの村を襲っていたレティスだが、ゲモンがラプソーンの突然の呼び出しに応じていなくなったため、もう卵を守るために村を襲う必要が無くなったわけだ。

 

「長老殿、一つお聞きしたいのですが…レティス様は今日もこの近くに?」

 

「うむ。今日は村にはいないが…『止まり木』か『巣』にはいるじゃろう。旅人さん、もしやレティスに会いに行くおつもりかの?」

 

「ええ、そのつもりで…ああいえ、もし余所者の私たちがレティス様に会うのがマズければ控えますが…」

 

まあ、その場合は村人に変装して会うだけだが。しかし、長老は笑ってそうではないと否定した。

 

「レティスに会いなさるおつもりなら、『村のことは気にするな』と是非彼女に伝えてくださらんか。ここの所、レティスはずっと浮かない顔をしておる。我が子が解放され、憂いの無くなったはずの今でもじゃ。わしらにできることなら協力は惜しまないつもりなのじゃが、レティスにはわしらの村を襲った負い目があるようでな…その点、村人ではない旅人さんの口からならレティスも受け入れてくれるやもしれぬ」

 

「伝言ということですね。確かに預かりました。早速レティス様に伝えてまいりましょう。では、色々とありがとうございました!」

 

「こちらこそ、楽しく話させてもらって感謝いたしますわい。」

 

俺は餞別に闇メダル王国でたくさん買っておいたりんごあめを村人たちに配った。村を少し見た時にこういう類の菓子は無さそうだったので丁度いいかと思ったのだ。…そして見事に大好評だった。りんごあめ片手に手を振ってくれる村人たちに見送られながら、俺たちはレティスの止まり木を目指して出発した。

 

 

 

 

 

 




新・第十八章で「次の次で闇の世界編は終わる」と言ったな?あれは嘘だ!(終わらなかった)

・闇のレティシア
原作では闇の世界で勇者たちが唯一訪れることのできる村。レティスが神として崇められているが、原作ではレティスが村を度々襲撃していたため村人たちに敵意を持たれているが、今回はゲモンが闇の世界を去ったために早期にレティシアとレティスの和解が成り、村人たちは今日も変わらぬ畏敬の念をレティスに捧げている。レティスはレティシアの復興にも積極的に力を貸しているようだ。
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