ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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今回と次回は視点がドルマゲスと勇者で転々としていますのでご注意ください。最初は勇者視点から始まります。











新・第二十六章 謝り倒しP.A.R.T.Y. 前

神鳥の試練を突破したことで見事レティスに認められ、神鳥の子ラミアを新たな仲間に加え入れた一行。しかしディムからの視線は依然として冷たく、彼からドルマゲスについての話を聞かされる。ドルマゲスが自分たちを凌駕する善性を備えていることを聞かされ、彼に対する認識を改めつつ光の世界に戻って来た勇者たちを待ち受けていたのは渦中の人間、ドルマゲスその人であった。

 

 

 

 

「改めてごきげんよう、勇者の皆様」

 

「ど…」

 

光の世界、隔絶された台地。エイトはドルマゲスを前にしばらく口を開くことができなかった。ドルマゲスから発せられている凶悪なまでの威圧感のせいである。レティスやディムから話を聞かされていなければ反射的に剣を抜いていた可能性すらある、そんな強烈な覇気だった。

 

「なんつー威圧感だよオイ…久々だなドルマゲス、オレたちに敵対の意思はない。まずはそのおっかないオーラを何とかしてくれると助かるんだが…」

 

「…威圧感?私がですか?…!あっ違っ…コラ!ユリマ!やめなさい!」「はぁい」

 

ドルマゲスが隣にいたユリマに声をかけると、一行を圧倒していた覇気が消え、ようやくエイトやククールは胸を撫で下ろした。が、そのことでより一層難しい顔になったのがヤンガスとゲルダである。反対に目を大粒の涙を浮かべ、その顔を綻ばせたのはゼシカである。

 

「…ッ『魔王』……!」

 

「おい、『魔王』てめェ…よくもオレたちの前にのうのうと姿を現せたもんだな!」

 

「に…い…さん…?ほ、本当に兄さんなのね…?」

 

「ああ…お前の兄、サーベルトだよ、ゼシカ…!」

 

「ミーティアや!大丈夫か!?ワシはさっきの威圧で気を失いそうになって…お前は大丈夫かい!?」

 

『父さまーーー!♡』

 

「だっれっが!あなたのお父さんですか!!鳥の分際で…ドルマゲスさんにくっつかない…っでぇ!!」

 

『ひぃん、父さまー!この人怖いよー!』

 

 

 

「ああ…いい感じに雰囲気出して再会したかったのに…」

 

それぞれが感情の赴くままに行動しながらひしめき合う様はさながら真昼の百鬼夜行である。諦めたようにドルマゲスが「なんたるカオスか…」とポツリと呟くと、エイトとククールもそれには素直に同意し、しばらく場が落ち着くのを待つことにした。

 

 

「さて、皆様お楽しみの所恐縮ですが、そろそろお話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 

先程の混迷はミーティアの無事を確認したトロデが静かになったことと、ゼシカとサーベルトが二人で抱き合って泣くだけになったことでだいぶ落ち着いた。ヤンガスとゲルダもまた、後で必ず説明を求めるからというエイトの言葉ですんなり拳を収めた。二人とも気は短い方だがそれでも年長者、感情と行動を切り分けることくらいわけもない。ドルマゲスはそれを確認すると、ラミアの尻尾の羽を毟ろうとしていたユリマを引き剥がした。ユリマは一瞬不服そうな顔をしたが、ドルマゲスが目で制すると大人しく彼の右側に戻ってきた。

 

「そうですね。僕たちも貴方に謝らなければならないことがありますし…」

 

「ほう。あなた方からも。それは気になるところですが…まず前提として、あなた方は私を恨んではいないのですか?」

 

そして自然とゼシカとサーベルト、トロデとミーティアも元の位置へと戻り、改めてお互いが向かい合う形になった。

 

「…正確には恨んで()()()()。トロデーンを滅ぼした貴方のことを…」

 

瞬間、ユリマが今にも噛みつかんとする猛獣ばりの眼光でエイトを睨むが、エイトは怯むことなく続ける。この数分の間で、ドルマゲスとサーベルトにこちらへの敵意はないこと、唯一敵意を隠そうともしていないユリマは完全にドルマゲスの制御下にあることを見抜いたからだ。同じくそれを見抜いたククールも今はかなりリラックスしている。

 

ドルマゲスは左手でユリマの額をちょんと小突き、エイトに目線で軽く非礼を詫びる。エイトはその時になって初めて彼の右腕が存在していないことに気がついた。

 

「…ですが、トロデーンを滅ぼしたのは貴方ではなかった。そうですね?ドルマゲスさん」

 

「仰る通りです。それは誰から?」

 

「ここにいるゼシカからです。」

 

「ということは、つまりラプソーンの思惑についても?」

 

「ええ。ある程度は。」

 

「重畳。では…お茶でも飲みながら話しましょうか。」

 

「茶…ですか…?」

 

「そこまで分かっていらっしゃるならこちらとしてもありがたい限りです。…皆様全員紅茶は嫌いではなかったですよね?…ゲルd…そちらの女性はお初にお目にかかりますが…。怒りも謝罪もテーブルの上で…私達は敵同士ではありません。冷静に、公平に、建設的に、お話をしようじゃありませんか。」

 

ドルマゲスは何も無いところから折り畳まれた円卓と人数分の椅子を取り出すと、空中で展開して並べて置いた。それはかつて『ディム』…光の世界で共に旅をしていた彼の不思議の技の数々と同じものであり、ゲルダを除く一行には彼らのよく知るディムの正体がドルマゲスであることを再確認させられる。

 

エイトもトロデもサーベルトもユリマも、この場にいる全員が着席し…天高くそびえる台地の平原で、魔性の道化師による奇天烈なティーパーティーが始まった。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

「まずは、トロデーンの滅亡から今までの私の所業について…今回、私の一言目が謝罪でなかったことをお詫びさせてください。」

 

俺は勇者たち全員が席に着いたことを確認するとすぐに頭を下げた。昔から何度も師匠に頭を下げてきた甲斐あって、謝罪の作法はほぼ完璧に近いと自負している。

 

「そんな!顔を上げてください!ドルマゲスさんは悪くありません!」

 

ユリマ、気持ちは嬉しいがそういうセリフはあんまりこっち側の人間が言うことじゃないのよ。

 

「そのことについては僕らは…少なくとも僕は何も気にしていません。何事も認識の齟齬をすり合わせてからが本番ですので。とりあえず、続けてください。」

 

エイトは努めて冷静に振舞ってはいるが、その首筋に汗が伝っているのはこちらからでも見える。かなり緊張しているようだ。

 

…やっぱり勇者たちが来る前にもっとユリマに言い含めておくんだった…。なにが「冷静に、公平に、建設的に。(キリッ)」だよ、これじゃあこっちが威圧して話し合いを有利に進めようとしてるようにしか見えないじゃんか。

 

俺は一度頭を上げると今度は卓に手をつき、先ほどよりももっと深く頭を下げた。連れの不手際は代表者の誠意でリカバリーする他ない。

 

「そしてこれはトロデ王、ミーティア姫、エイト、そしてトロデーン王国民の皆々様に対する謝罪です。本当に、私の未熟さから取り返しのつかないことをしてしまい、申し訳ございませんでした。」

 

「…」

 

「頭を上げよ、ドルマゲス。そしてワシから話す前に一つ頼みがある。…ミーティアもこの茶会に参加させてやることはできんか。先程からミーティアが訴えかけるような目でワシを見てくるものでな。おぬしならできるのじゃろう?」

 

「…姫様がそれを望まれるのなら、喜んで。…トロデ王はどうなされますか?」

 

「ワシのことはよい。気にせんでくれい。」

 

俺は顔を上げると席を立ち、懐から「ふしぎなサプリ」を取り出して馬姫ミーティアに献上した。ミーティアは俺の目をしばらく見つめると、差し出された錠剤をペロリとのみ込む。

 

瞬間、ミーティアの身体が光り輝き、かつて絶世の美女、深窓の王女、と持て囃された美しい姫君の姿へと戻る。ミーティアの真の姿を久々に目にするサーベルトはほう、と改めて感心したように息を吐き、ユリマの顔は能面のような無表情のまま、眉だけがピクリと動いた。

 

「感謝いたしますわ、ドルマゲス様。」「感謝するぞ、ドルマゲスよ。」

 

「滅相もございません」

 

俺はすぐにミーティア用の小綺麗な椅子も用意し、カップに紅茶を注いだ。…スムーズに話を進めるためにこういう茶会の形で話し合いをすることは予め決めてたんだから、キラちゃんも呼んどくんだったなあ。あの子なら俺なんかよりもっと優雅に、もっと美味しく、紅茶を淹れてくれていたことだろう。

 

ミーティアが座り、俺もまた席に戻ると、今度はトロデが両手をついて頭を下げてきた。

 

「!」

 

主君の姿を見て即座にエイトも同じように頭を下げる。ミーティアも一拍遅れて頭を下げた。

 

「ドルマゲスよ、おぬしからの謝罪は受け取った。今度はワシからの謝罪も受け取ってほしい。…ワシらはリブルアーチでゼシカからラプソーンの真相を聞かされるまで、ずっとおぬしのことを王国滅亡の下手人だと思っておっておった…。己が導いた災厄だっということも棚の上にあげてじゃ。一国の王として何と情けなく、腹立たしい失態か……。申し訳ない、この通りじゃ。」

 

「…見なかったことにしましょう。頭をお上げください、トロデ王。」

 

国家元首たる王の謝罪というものは非常に重い意味を持つ。おいそれと下げて良いものではない。…おそらくトロデはそこらへんも分かった上で謝罪という選択を採ったのだろうが…。

 

そもそもその濡れ衣を進んで着たのは俺の方であって、それを信じて彼らがここまで…仲間を集めながらレティシアまで来てくれたことにはむしろ感謝したいくらいだ。それに、断っておくが元凶があの暗黒デブとはいえ、俺だってトロデーンの滅亡の片棒は担いでいる自覚はある。その相手から謝罪されるなんてとんでもない。

 

「私は私の望みを叶えるために行動したまで…謗られこそすれ、謝罪されるようなことはございません。」

 

まあ、流石に未来を知っているだとか、勇者の行く末を多少コントロールしたとか、そういうことは言わないでおく。それを暴露するには向こうからの信頼がまだまだ足りないからな。トロデが考え込むように顎に手を当てて閉口すると、入れ替わるようにしてミーティアが口を開く。

 

「トロデーンからの道中、お父様やエイトたちはドルマゲス様を疑っていらっしゃいましたが…ドルマゲス様が悪い方だとは…このミーティア、どうしても思えなかったのですわ。」

 

「ミーティアはまだまだ若輩者ですが…それでも人を見る目はあると自負しております。ミーティアの生誕祭にいらしたドルマゲス様に、我がトロデーン王国を滅ぼすような深い悪意は見えませんでした。」

 

「はっ、そんな後からいっくらでも並べられるような美辞麗句に一体何の意味があるって言うんですか」

 

「ミーティア姫…そのようなお言葉を姫様から頂けるだけで、私の心は救われます」

 

さっきからユリマの貧乏ゆすりがとどまるところを知らない。独り言、しかも小声に留めてくれているのは俺に気を遣ってくれている証左ではあろうが…できれば誰の耳にも入らないよう内心にしまっておいてくれるともっとありがたい。

 

「ワシらは空を飛び回るラプソーンを追うため、このレティシアまでやってきた。そして闇の世界でレティスとディムからおぬしの事を聞いたのじゃ」

 

「…ほう。」

 

えっ、何それ。何言ったの??ちょっとレティスさん!?余計なことまで言ってないでしょうね!?あとなんでディムまで勇者たちに会ってんの?俺が言えた口じゃなさすぎるけど、原作乱すの控えて欲しい。

 

…いや、うん。ホントに俺が言えた口じゃなさすぎるんだけどさ。

 

「おぬしは義憤に駆られただとか、復讐の為だとかではなく、本当にこの世界のことを案じてラプソーンを討伐するための旅をしておると。…ワシはレティスの言葉にウソはないと思っておる。…そして、この手紙。今なら分かるぞ。これもおぬしが書いたものじゃな?自ら悪役を買って出てワシらを焚きつけようとしてくれておったのじゃろう?」

 

手に持った手紙をひらひらと揺らし、トロデは悦に浸っている。てかあの手紙最初にトロデーンが滅んだあとトロデたちが目覚める前に置いてきたやつだよな!?よくもまあそんなキレイな状態で保存できたもんだ。

 

というか、レティスの過大評価を間に受けないで欲しい。切実に。めちゃくちゃ美化されてるし…

だがまあ…いいか!わざわざ上がった評価を下げるような事も言うまい。

 

「…そうですか、レティスから…。そしてあなた方はレティスの試練を突破してこの光の世界に戻って来たというわけですね」

 

トロデは黙って頷く。俺は紅茶を啜った。こうも標高が高いと気温は低いし風は強いしですぐ冷めちゃうな。

 

しかし…ふむ。状況は悪くない。レティスが俺のことをやたら持ち上げようとするのはちょっとやめて欲しいが、彼女が闇の世界で俺に関する誤解を粗方解いてくれたのは大変助かる。本人から身の潔白を証明するのと、第三者…しかも強い権威と力を持つ神鳥が証明するのとでは全く説得力が違う。事実、トロデの言葉にもレティスがそう言ったから信用したという雰囲気は感じ取れる。まあ持つべきものは神鳥の知り合いってことで。

 

「しかし、トロデ王がこの私めに謝意を示してくださるというのならば…どうでしょう、これまでのことは互いに水に流し、これからは共に手を取り合って戦うというのは?」

 

「…ちょうど同じことを考えておった。おぬしがそれを認めてくれるのならば、是非とも頼みたい。」

 

「願ったり叶ったりでございます。」

 

ふふふ…よし。これで自然な流れで勇者との協力関係を結ぶという目的は達成だぜ。

 

「もちろんタダでとは言わぬ。ラプソーンを倒し、世界が平和になった暁にはトロデーンから褒美を取らせようぞ。ゴールドでも、土地でも、なんでもよい。…まあ、いくらおぬしでもワシの可愛いミーティアはやれんがな!」

 

「ちっ」

 

はいそこ、舌打ちしない。俺はサーベルトにアイコンタクトでヘルプを求めると、サーベルトはため息をついて立ち上がり、ユリマをずるずる引き摺ってテーブルを離れた。お説教タイムである。ちなみにサーベルトにはユリマに説教をする際は俺の名前を効果的に使ってくれと言ってある。

 

「褒美などとんでもございません。見返りを求めて私はラプソーン討伐の旅をしているわけではないのですから。」

 

「おお…おおお…やはりレティスの話に違わぬ見上げた男よ…!…そのような名士にワシはなんということを…」

 

「王様、ドルマゲスさんはもう水に流すと言ってくださったじゃないですか。」「そうですわ、お父様!」

 

トロデには悪いが…本音を言うと、もうゴールドも土地も足りているのだ。三大国の一つであるアスカンタ王国と、世界一の歓楽街ベルガラックの全面的なバックアップを受けているU.S.A.を擁する俺にとっては少々魅力に欠ける申し出である。そもそも王城が崩壊して国力が著しく削がれているトロデーンからさらに何かを搾り取るのは良心も痛む。

 

「ドルマゲスさん」

 

「エイトさん、何か?」

 

「王様が一度頭を下げた手前、僕から改めての謝罪は控えます。しかし…感謝を。動機こそ異なりますが、僕らの旅に協力していただけること、心からの感謝を申し上げます。」

 

エイト…なんか、見違えた?見た目こそそう変わらないが、なんか雰囲気が…。こうやって目の前に立たれると、謎の迫力を感じる。「ドラゴン」と相対した時のような………竜?まさかね…。

 

「感謝、確かに受け取りました。そして私からも全く同じものを返させていただきましょう。これからもどうぞよろしくお願いします。」

 

頭を下げたエイトの胸ポケットからネズミがじっとこちらを覗いている。トーポ…前からそうだが、お前はいつも俺の事を怪しんでるよな。正解だよ!

 

だがまあ、これでトロデとミーティア、エイトへの申し開きはひと段落…さて次は。

 

「ドルマゲス、次はアッシらの話も聞いてもらっていいでがすかね」

 

話の終わったエイトが椅子を少し引くと、ヤンガスとゲルダが立ち上がった。てか、なんでゲルダはしれっと仲間に入ってんの?原作でゲルダって仲間に…え?ならないよね?ラミアと同じ、また原作崩壊の余波か…??……いやそれはこの際いい。…ふむ。この二人ね…なるほど。じゃあまあ、あの事だろうな…

 

俺はサーベルトに叱られて不貞腐れているユリマを呼び戻した。

 

 

 

 

 

 




・ふしぎなサプリ
ドルマゲスがサザンビーク地方「ふしぎな泉」の解呪成分を抽出し、固形化したもの(第三十一章参照)。短時間に限られるが、暗黒神の強力な呪いも解くことができる。流石にエイトにかけられた竜神の呪いは強すぎて解呪できない。



エイト「あとドルマゲスさん、闇の世界のディムから言伝が。『センスないですね』と。」

ドルマゲス「はい?」

エイト「(きっと二人だけに通じる暗号のようなものなんだろうな…)」

ドルマゲス「(え…なんで急にディスってきたのあの子…普通に傷つくんだが…)」



長くなったので分けました。次回は!一時間以内に!投稿できれば!という所存です!
追記:ちょっと遅れましたが投稿できました!
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