ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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(もうとっくに新年度ですが)新年度に入っても頑張っていきます。

うおっ、気づけば合計文字数100万字超え…思えば遠くへ来たもんだなあ…。








新・第二十九章 燃えよ○○○○

ハロー、絶賛防衛戦の真っただ中にいる道化師ドルマゲスです。闇の魔物を使役するだけじゃなく、まさか光の世界の魔物にも洗脳を施して襲わせてくるとは…ラプソーンもいよいよなりふり構わなくなってきたのでしょうか?ならその鼻っ柱を折って、私の鮮烈な復活劇の幕開けに利用させてもらいましょうかねえ!

 

 

 

 

「グルルルゥ…」「ギギギ…ギギ…」

 

「…インパクト?迫力?凄いですね師匠…」

 

ギャリング邸が大きく揺れるほどの地響きと共に飛来した二体の魔獣「レッドオーガ」と「ブルファング」。彼らもほかの魔物同様、瞳の奥に紫炎が妖しく揺らめく。原種である「バッファロン」と「モヒカント」は昔一人で世界を周遊していた際に見たことがあるが、コイツらは原種よりも一回りも二回りも大きい。流石にあの「アルゴリザード」には及ばないものの、俺の身長の倍は優に超える怪物二体を前に、久々に身体が武者震いするのを感じた。

 

「軽口を叩く暇があるのか?…行くぞ。コイツらの狙いは我々ではないのだからな。」

 

「…ええ。」

 

師匠の言う通り、この二体は周りの魔物とは違いむやみやたらに暴れる様子はない。先ほどからも注意深く周囲を観察していることから、おそらく賢者の血を持つギャリングの居場所を補足しようとしているのだろう。

 

「神鳥の杖」は…持っていないな。なら目的はギャリングの生け捕りか?賢者が封印を解く前に死ぬのはラプソーンとしても避けたいだろうからな…。

 

原作では何も喋らずに襲い掛かってきていたことから知能はほぼ皆無であろう二体だが、ラプソーンの影響下にある今はどうなってるかわからん。人質を取られなどしたら厄介だし、ここは師匠の言う通り先手を取って……叩く!

 

「行きますよ!」

 

力強く大地を蹴りだし、大きく振りかぶって突き出す拳。通常なら容易く避けられる攻撃だろうが、相手の注意が逸れている今なら…入る!

 

「!!!硬ったぁ…」

 

棒立ちのレッドオーガの経穴に渾身の一撃をお見舞いしたつもりだったが、あの様子じゃてんで効いちゃいなさそうだ。…てかなんなんだよあの硬さは!?こっちの手が先にイカれそうだ。

 

「素手で殴ったりするからだ、馬鹿者!『マヒャド』!」

 

間髪入れず師匠の唱えた魔法により氷塊が降り注ぐ。

 

「!…グググ…」

 

「むっ…」

 

師匠の氷結高等呪文(マヒャド)にもレッドオーガはひるんだ様子を見せない。魔法の知識なら世界一と言っても過言ではないほど魔法に知悉している師匠の魔法がほぼ通用していないとなると、やはりコイツらはただのボスモンスターではない。

 

「師匠、この魔物らはただの魔物ではありません」

 

「…とりあえず続けろ」

 

俺と師匠はレッドオーガの反撃を間一髪躱すも、その隙をブルファングが狡猾に狙う。俺が避けきれずに頬の薄皮を一枚切られたのを見た師匠は即座に『ピオリム』を唱えた。細かな気遣いに感謝しつつ続く言葉を述べる。

 

「やつらはラプソーンの配下です」

 

「そんなことは賢者を狙って襲ってきていることからも一目瞭然だろうが」

 

レッドオーガが両手で繰り出すスレッジハンマーを躱し、先ほど「キラーパンサー」を両断した「きせきのつるぎ・レプリカ」でその腕を切りつける……あまり効果はないか。だが傷はつけられている。無効というわけではなさそうだ。

 

「奴らの紫色に輝く目を見てください。明らかに正気ではありません。奴らはラプソーンの配下に『させられた』。つまりはラプソーンの闇の力の影響を強く受けているということです」

 

「…なるほど。お前やユリマがそうだったように、コイツらも原種から大幅な強化を遂げているというわけか。ならばこの異常な強さも納得できよう。」

 

所詮は人間に過ぎない俺やユリマ、あるいはゼシカですらラプソーンの力を受けてあれほどまでに強くなるのだ。元々強い力をもつボスモンスターに、さらにラプソーンの力が加わったらと考えると恐ろしい。

 

…なお、その恩恵を最も受けているのがあの妖魔ゲモンだ。奴もラプソーンの闇の力を借り受けていなければ俺とサーベルトの二人だけで十分に完封できる程度のステータスしかない。

 

「そして…」

 

俺は二匹の間にぬるりと入り込み、『まばゆい光』を放つ。強烈な光に目がくらんだ二体は苦悶の声をあげながらめちゃくちゃに腕を振り回す。偶然その腕は互いの顔面にクリーンヒットし、二体はもんどりうって体勢を崩した。

 

「闇の魔物は冷気に強く光と熱の攻撃に弱い。」

 

「それだけ聞ければ十分だ。」

 

師匠は倒れているレッドオーガに向けて『メラゾーマ』を放つ。周囲の影響を考慮して威力の抑えられたメラゾーマではあったものの、先ほどのマヒャドよりは確実にダメージが入っていた。

 

「グルルルア!!!」

 

「師匠の邪魔はさせません、よっ!」

 

「グルァァオ!?」

 

眩んだ視界が元に戻り、レッドオーガの援護に回ろうとするブルファングの動きを『やけつく息』で止める。流石はボスモンスター、マヒからの復帰も相当早い…が、その一瞬で十分!俺はキラちゃんの新作「プロト・ほしくだき」を大きく振りかぶってブルファングを殴り飛ばした。オリジナルの「ほしくだき」には敵わないだろうが、この「プロト・ほしくだき」の棘部には闇の世界で入手した「ヒヒイロカネ」が使われている。威力は申し分ないはず。

 

「ガルルル…」

 

「!」

 

マジかよ!

 

「目立ったダメージはなし、ですか…。これは少々、骨が折れそうですねぇ…」

 

かなりいいのが顔面に入ったはずなんだけどな…俺は長期戦を覚悟し、大きく息を吸って吐いた。

 

 

 

 

 

それからしばらく。結論から言うと、俺たちはかなりの苦戦を強いられていた。相手が強すぎるというわけではない。当然二体合わせたところで単純な戦闘力ではゲモンに大きく劣るだろうし、一体だけで見るならさらに大したことはない。問題はこいつらが異常にタフであるということだ。

 

ダメージは入っている。俺が相手をしているブルファングには既にいくつもの傷が刻まれているのがその証拠だ。だがブルファングはそれを全く気にしない。みのまもりが高いというよりかは、HPが途方もなく多いといったところか。

 

もう一つの問題はその戦いにくさだ。二体はこちらを「面倒な相手」と認めたのか、積極的に攻撃を仕掛けてこなくなった。だが、それは戦意を失ったわけでも降伏したわけでもなく、元々の使命に専念することを選択したということ。つまり俺たちを無視してギャリングを狙うということだ。だが、そう見せかけておいて時折ランダムに反撃やカウンターに転じることもあり、非常にやりにくい。

 

元来のタフさと相まって、俺と師匠は非常にスタミナ消費の激しい戦闘を強いられることとなった。

 

「ギャリング様を安全な屋敷の奥に待機させるというのは!」

 

「元々こやつらの息で吹けば飛ぶような屋敷!閉じこもって逃げ道を塞ぐのはむしろ愚策だっ!」

 

『ジバルンバ』の重ね掛けで地盤を操作しレッドオーガの動きを封じようとする師匠だが、赤鬼は強引に地面に固められた足を引き抜き、その地面の破片を勢いに任せて師匠に投げつける。師匠はそれを難なく躱すが、残りMPに余裕がないことを知っているのだろう。その表情には珍しく僅かな焦りが見られる。ギャリングには現在屋敷のエントランスで待機してもらっている。どこから魔物が侵入してきても逃げ道を確保できるようにするための水際対策ではあるが、そのためには屋敷の四方を魔物に近づけさせないという前提が必要となる。

 

「それよりもユリマだ!あいつの『イデア』でギャリングをU.S.A.まで運ばせろ!」

 

「無理です!ユリマが今持ち場を離れると北部のベルガラック住民に危険が及びます!」

 

「ちっ、そうだったな…!」

 

町中を伝書鳩のように飛び回っているキラちゃんからの報告で、ベルガラックへ襲撃をかけている魔物が増えたということを知らされた。おそらくは先ほどの話にも出ていた本隊の到着だろう。それまでは「シャドウパンサー」「ダークスライム」など下級の闇の魔物と「キラーパンサー」「メタルライダー」などベルガラック地方の魔物だけだったのが、「デスターキー」「闇の司祭」といった中~上級の魔物、「ベルザブル」「ドラゴンソルジャー」のような本来竜骨の迷宮に生息しているはずの魔物まで姿を見せ始めた。当然、奴らはラプソーンにより大幅な強化を受けている。

 

報告によればサーベルトとユリマによる住民の避難・防衛は順調とのことだが、こちらにまで手を回せるかというと難しい話だ。

 

ブルファングの突進を避けきれないと判断した俺は「プロト・ほしくだき」で受け止めることを選択する。鈍い音と衝撃が手にした大槌越しに伝わってきた。失った右手の働きは念力でカバーしているとは言っても、結局直接力を籠めやすいのは自分の腕。片腕の状態では完全に勢いを殺しきれず、俺は吹き飛ばされて屋敷の外壁に叩きつけられる。

 

「痛っつ……っ!」

 

「ドルマゲスっ!…っ!ぬぅ…!」

 

「グルァァオォォォォ!!!!」

 

「くっ!行かせませんよ…!」

 

「やけつく息」は…ダメだ、耐性ができてる!「あしばらい」「おたけび」ともに効果なし…仕方ない。「呪いのきり」…必中で相手を行動不能にできるこの技は一体につき一度きりのジョーカー……だが、ここで切らずしていつ切る!

 

俺は迷わず瘴気のこもった霧を吹きだし、それは確かにブルファングに命中した。

 

…が、霧は不思議な力によって弾かれ、青鬼は一直線に屋敷へと突進していく。

 

「しまっ……!」

 

 

 

 

「既に呪いを受けている存在は別の呪いにかからない」

 

 

 

 

すっかり失念していた。竜神の呪いを受けている勇者エイトがいい例じゃないか。レッドオーガとブルファングは、()()()()()()()()()()()()()()

 

師匠はレッドオーガから手を離せない。俺が身体を起こしてもう一度止めに入るには距離がありすぎる。投擲できるようなアイテムは周囲にも被害が出る。……くそっ、プランAはここまでか!

 

ブルファングが激突し、鈍い音と土煙が上がる。

 

俺がギャリングを敵に近づけさせない作戦(プランA)から、敵からギャリングを奪還する作戦(プランB)に頭を切り替えて動き出そうとした瞬間……()()()()()()()()()()()()()()

 

…え?

 

跳躍したわけではない。ブルファングは吹き飛ばされたのだ。体重およそ1トンにも迫ろうかというあの巨体を。いったい誰が?…そのあまりに現実離れした光景に師匠も、さらにはレッドオーガすら動きを止めて呆然とする。

 

刹那、戦場に流れる静寂。それを破ったのは拡声器によって反響しながら聞こえてきたキラちゃんのアナウンスだった。

 

「ドルマゲス様!ユリマさんより送られてきた援軍です!ドルマゲス様の正式な許可は保留とされていましたが、有事によりマニュアルに従って私が指示を出しました!私への処罰は全てが終わった後に如何様なものも受ける所存です!!今はどうかご武運を!!」

 

援軍?今動かせるセキュサは全て動員しているはず……いったい誰を…

 

俺の疑問は、土煙を晴らすように大きく振るわれた戦斧(ハルバード)によって容易く氷解する。

 

 

 

 

「!!!ドランゴか!!!」

 

「……」

 

俺の“もう一人の師匠”であるバトルレックスは、俺を一瞥して「相変わらず情けないヤロウだ」という風に軽く鼻を鳴らすと、滾る闘志に身を委ね、吹き飛ばされて動揺しているブルファングへと飛び掛かっていった。

 

「グオオォ!グオオオオ!!!」

 

「…」

 

ドランゴはブルファングの攻撃を、持っている戦斧「ボルカノブレイカー」の刃で全て受け止めて逆にダメージを与えていく。

 

…U.S.A.には多種多様な魔物が暮らしている。それだけ多くの魔物が一緒にいて血みどろの殺し合いにならないのは、そうならないように統一言語と倫理を教え込む、飴と鞭を織り交ぜたプログラムを新規の魔物には受けさせているからだ。U.S.A.で規定された幾多のプログラムを修了し、安全と認定された魔物が人間を無暗に襲うことはないが、やはり魔物は魔物。こちらの命令通りに動くセキュリティサービスやプロトオートマターのように従順に動くとは限らない。

 

どこかで反旗を翻したり、魔物としての本能が戻ってくるかもしれない、という懸念があり、町の防衛に起用することに俺は消極的だった。そのためキラちゃんの考えていた案も保留していたのだ。

 

だが、俺と最も長く同じ時間を過ごした魔物はドランゴだ。だからこそわかる。彼の興味は常に強者との闘争のみにあり、万一にも町を襲うことはあり得ない。キラちゃんにユリマ。実にナイスだぞ!

 

「グルァァ!?」

 

攻撃を加えたはずが逆に傷だらけになってしまった自分の拳にブルファングが驚いたのも束の間、ドランゴは口から「しゃくねつ」を吐き出し、青鬼の顔面を焼き焦がさんとする。ブルファングの強靭な皮膚はたとえ灼熱であっても容易に焼け落ちるようなことはないが、生物的本能として、反射的に腕で顔面を防御してしまう。

 

そしてその隙を逃すドランゴではない。

 

「(…入る…っ!)」

 

「!?!?」

 

轟音と共にドランゴはハルバードをブルファングに叩きつけ、深いダメージを与えた。「だいまじん斬り」だ。さしものブルファングも今の一撃は相当堪えたのか、思わず深く唸った。

 

「何を呆けている!ヒマならこっちを手伝え!」

 

「あっ、はい師匠!」

 

ドランゴとブルファングの怪獣バトルに見とれている場合ではない。ブルファングをドランゴに任せ、俺は師匠と相対しているレッドオーガの背後から「おかしな薬」を投げつけた。「混乱」を付与する効果を持つこのアイテムは、ボスモンスターであるレッドオーガにはほとんど効果がない。しかし混乱はあくまでも入ればラッキー、狙いはレッドオーガの気を俺と師匠から逸らすことだ。

 

「ギギッ!?」

 

「師匠!首尾は」

 

「暗黒神の力で強化されているとは言ってもこの戦闘時間の長さ、かなり体力は削れているはずだ。本気の呪文を叩きこめばおそらくそれを決定打にできるだろう」

 

「OK!では最高のフィナーレと行きましょう!」

 

レッドオーガは自慢の角に付着した液体に強い嫌悪感を示し、必死に頭を振り回している。今がチャンスだ。俺は師匠に「ふしぎなタンバリン」を手渡し、しばらくそれを鳴らしながら準備をしておいてくれと頼んだ。師匠は非常に嫌そうな顔をしたが、ため息と共に応じ、気だるげにタンバリンを叩き始める。

 

「ギアオ!ギアオォッ!!」

 

予想に反し、レッドオーガの足止め効果はかなり持続してくれているようだ。俺は無防備なレッドオーガの前に立つと『やみのはどう』で呪文耐性を下げ、『賢滅の刻』でかしこさの値を限りなくゼロに近い値に下げる。『賢滅の刻』は使用者にも影響を与える術だ。俺のかしこさもまた激減したことで頭の中に霞がかかったようになり、思考がまとまりにくくなるが、今の俺は魔法を使えないのでどのみち関係はない。

 

「師匠!終わらせます!」

 

「ようやくか。…む、お前もやるのか?」

 

「ええ!」

 

師匠は持っていたタンバリンを後ろに放り投げる。…めちゃくちゃ貴重なアイテムなんだけどな。…とにかく、タンバリンの効果で俺と師匠、そしてドランゴのテンションが二段階上昇する。己のステータスの変化に気が付いたドランゴはこちらをちらと見ると、自分でさらにテンションを上げ、ハイテンション状態になった。

 

「フン。わしの邪魔はするなよ」

 

俺は元々魔法が使えなくて、それでもなんとかこの世界で楽しく生きていきたくてこれまで泥臭く小細工を重ねてきたのだ。今更こんなものはハンデにもならない。

 

俺は「ふぶきのつるぎ」を道具としてつかった。

 

あたりに冷気が迸る。「闇の魔物に冷気は効かない」?そんなことは知っている。ならば別の属性に変えてしまえばいいだけの話だ。俺は冷気に指向性を持たせ、師匠の『メラゾーマ』に集中させた。

 

「ふむ。魔力を用いない魔法でも合体魔法になるか否か、か。興味深いな。」

 

「では、行きますよ!!」

 

「「はあっ!!」」

 

「ギギアアアァァァッッ!!!!」

 

炎と氷が融合した魔法。大きな『メヒャド』あるいは小さな『メドローア』のような歪な大きさのそれは、我に返ったレッドオーガを飲み込み、大きく爆発した。同時に背後で重なる二条の斬撃音が響く。ドランゴの最も得意とする特技「はやぶさ斬り」だ。

 

煙が晴れ、意識を失った状態のレッドオーガは前のめりに倒れる。ブルファングもまた仰向けに倒れ、俺たちの戦闘は終結した。遠くでキラちゃんの声が響く。住民は全て無事に保護され、襲撃をかけてきた魔物の残党も間もなくユリマとサーベルトによって全て鎮圧されるだろうとのことだ。

 

「師匠、なんとか終わりましたね。」

 

「ドルマゲス貴様、最後のあのしょぼくれた氷結魔法はなんだ!わしの『メラゾーマ』に合わせるならば最低でも『マヒャド』クラスの冷気を用意しろ!」

 

流石の師匠もこの大規模な防衛戦を終えた後ならねぎらってくれるかと思いきや、いつも通りに怒鳴られてしまった。…そんなこと言われても、「ふぶきのつるぎ」をアイテムとして使って出る氷の魔法はせいぜい『ヒャダルコ』レベルが限界だしさあ…。

 

「まあまあ、過ぎたことはいいじゃないですか」

 

「……次こそ究極の呪文を完成させるぞ。わしは魔法研究家で、お前はその弟子なのだからな」「もちろんです」

 

そう言うと師匠はいそいそとカバンから試験管やスポイトを取り出し、早速レッドオーガとブルファングの血液や皮膚を採取し始めた。バイタリティ…。…まあ、ご老人がエネルギッシュなのはいいことか…。

 

さて。俺は斧を下ろして遠くを見つめているドランゴの方に向き直る。

 

「…」

 

「(ドランゴ、危ないところを助けていただいてありがとうございました)」

 

「…」

 

ドランゴは顔を合わせない。しかし耳だけはこちらを向けて俺の言葉を聞いてくれている。

 

「(戦場での貴方の姿を見たのは実に久しいですが……本当に強くなりましたね。)」

 

「…」

 

「(…って、私が言うのもヘンですけど。)」

 

「(………お前もな)」

 

「!」

 

ドランゴはドラゴン語で小さくそう呟くと、ズシンズシンと地面を揺らしながら北の方へと向かっていった。おそらくキラちゃんとの取り決めで用が済んだらすぐにU.S.A.に帰投することになっているのだろう。俺はもう一人の師匠の大きな背中を、角を曲がって見えなくなるまで見送った。

 

 

 

 

 

 




・「ほしくだき・レプリカ」
U.S.A.の技術力を駆使してドルマゲスが作り出した最強のハンマー「ほしくだき」の模造品。片腕のドルマゲスでも扱えるようにグリップ部分含む柄全体が短くなっている。しかし片手で振るえるような重さにしてしまっては意味がないため、ドルマゲスは念力でその超重量を支えている。「ほしくだき」を作成できる素材がDQⅧの世界には存在しないため、ドルマゲスのうろ覚えの記憶から再現されたなんちゃってハンマーではあるが、希少鉱物「ヒヒイロカネ」を使って錬金されているため性能はそれほど悪くない。

・「ボルカノブレイカー」
DQMJで登場するオノ系武器。「エビルスピリッツ」のレアドロップとして登場。本来はDQⅧには存在しないはずの武器だが、キラ率いるドルマゲス捜索隊が闇の遺跡をマッピングしている途中に遺跡の奥深くに安置されているところを発見、元々魔物が装備することを想定されているものなのでそのままドランゴに譲渡された。「魔獣系」「自然系」の魔物に対するダメージが1.75倍される。当初ドランゴは慣れ親しんだ戦斧を手放すことを渋ったが、今は新しい斧にも徐々に順応している。
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