ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい 作:えにぃ
マルチェロ愛、そしてニノ大司教愛(?)が感じられる感想をたくさんいただけて嬉しいです!私もマルチェロはドラクエⅧでは特に好きなキャラクターです。悪ではあるんですが、その中にも悪なりのカリスマを感じるというか、そんな魅力がありますよね。一方のニノ大司教も、富と名声に執着する小物ではあるものの、追い詰められることで根底にある善性を現すという中々味のある人物で、こちらも好きなキャラクターです。
8/25
大変お待たせしました…!
あまりに久々の更新で全然内容覚えてないよ!という方もたくさんいらっしゃるかと思います。
あらすじは置いてありますが、それでもさっぱり!というかたはぜひ前話(前々話かな?)をさらっと振り返っていただけますと幸いです…。それでは、今後ともどうぞよろしくお願いします!
10/25
↑この二か月何があったの…?どうなってんだ…?とにかく、お久しぶりです…。大変、大変お待たせいたしました!!
次回分も明後日までには更新します!!私は!絶対にこの小説を完結させます!
魔性の道化師ドルマゲスの導きによってサヴェッラ大聖堂に到着した一行。大聖堂で出会ったニノ大司教から賢者であり偉大な父オディロに危機が迫っていると知ったククールは動転して我を失いそうになるが、自分が院長を想うのと同様に法皇を想っているニノ大司教の気持ちにあてられて冷静さを取り戻す。そして院長のもとに駆け付けたククールは因縁の兄弟であるマルチェロと再会し、怒り狂う妖魔を前に剣を抜くのだった。
…
抜かるなよ、と釘を刺すマルチェロにククールはあたりめーだろ、と軽く言い返す。しかしその顔にいつもの皮肉気な笑みはなかった。マルチェロとククールの前に立つは怒髪天を衝く妖魔。三つある眼球の二つを潰してなお光るその眼光は、見る者の足を容易に竦ませるほどの迫力がある。
「…!」
「…来るぞッ!マルチェロ!」
「さァ死ね!すぐに死ね!あっけなく、死ねェ ェ ェ !!!」
刹那、迸る黒い稲妻。ゲモンのその圧倒的なスピードを活かした突進が二人の腹に風穴を空けんと襲い掛かった。
ギイィンッ!!
鋼が限界まで軋む金属音が鳴り、マルチェロとククールは衝撃で吹き飛ばされる。ゲモンはくるくると回転しながら後方に飛び退いて折れた柱の上に降り立ち、興味深そうに眼を細めた。
「ほお…今のを防いだか……」
舌なめずりをするゲモンの漆黒の爪が、燃え上がる大聖堂に照らされてゆらゆらと艶やかに輝く。
「防げた…のか…!?」
「ただのまぐれだ…!次は…おそらく躱せん」
マルチェロの言った通り、二人がゲモンの初撃を剣で防げたことはほとんど偶然、奇跡に近いもの。封印を解除してさらなる闇の力を得たゲモンはそれほどまでに俊敏かつ強力だった。
「まぐれ?…まぐれか、グハハハ…そうだろうなァ。なら、次で死んじまうかァ!?」
「ヤンガスッ!頼む!!」「応ッ!!」
ゲモンが先ほどと同じ体勢を取ったのを見てククールは叫ぶ。既に局面を把握していたヤンガスは「岩石おとし」の要領で大岩を投げつけ、ゲモンとククールたちの間に落とした。
ガゴンッ!
「グヌッ!?」
既に地を蹴っていたゲモンは目の前に突然現れた大岩を避けきれず、左翼が岩を切り裂いて減速する。その隙をついてククールは『精霊の矢』を、マルチェロは『かまいたち』をそれぞれ全力で放ったが、ゲモンは涼しい顔で躱す。
「『メラゾーマ!』」「『ギガデイン』!」
「ンしゃらくせェ!!」
間髪入れずゼシカとエイトの魔法が続けざまに浴びせられるも、ゲモンの余裕は崩れない。火炎系の高等呪文とレティス直伝の雷撃を受けたため流石に無傷とはいかないようだが、それでも目に見えてダメージを与えられているようには思えなかった。
「ウソ…この前戦った時だってもうちょっと堪えてたはずよ!あれから私だって強くなったのに…!?」
「それ以上に向こうの強化が上回ってるってこった。考えてもみろ、前に俺たちが奴と戦ってた時からメディばあさん、院長、法皇、三人分の封印を解除してんだ。封印を解くたびに闇の力が増大してるってんなら…その伸びは計り知れないぜ…。」
「悪夢ね…。」
「…お前たち、あの化け物と戦ったことがあるのか」
エイトたちが修道院に来た時にはマルチェロは既に聖地ゴルドへ赴いていたため、彼らが顔を合わせるのはこれが初めてとなる。その素性やククールとの関係、目的、どうやってこの
「ええ、雪山地方で一戦、ね。もう説明はいらないと思うけど、あり得ないほど強いわ。」
「弱点は?」
「光と炎の魔法…でもさっきの私の呪文の効き具合を見るに、炎の方はもう克服されてるみたい…」
「なァにくっちゃべってやがんだァ?」「でやぁっ!」
ククールの身体をその爪で引き裂かんとするゲモンを、エイトが横から切りつけて軌道を逸らすことでなんとか回避する。
「…どうやら対策すらも練らせてもらえないらしい」「そうみたいっ、ねっ!!」
ゲモンの飛ばしてきた漆黒の羽根を避ける形でマルチェロとゼシカは左右に散開する。安全圏から一方的に攻撃してくるゲモンに攻撃を当てるためにはまず相手の機動力を落とさなければならないが、冷気に完全耐性を持つゲモンには敏捷性を奪う追加効果を持つヒャド系の呪文は意味をなさない。それを前回の戦いで学んでいるゼシカは冷静に『メラミ』を、ククールに向けて放った。
「ククール!気流を乱すわ!お願い!」「撃ってから言うな!!!」
ゼシカの蛮行に悪態をつくククールだが、即座に『バギクロス』を唱えて火球を受け流し、そのまま真空の刃ごと上空を舞うゲモンにぶつけてみせた。
屋内である大聖堂内では自然と気流の流れは乱雑なものになる。熱により暖められた乱気流をまともに受けたゲモンは、バランスを崩してわずかによろけた。ダメージは微細だが、ゲモン自身もこのまま空中を飛び回るのは悪手と判断したか、ゆっくりと翼を畳んで降りてきた。
「キサマら…その面、覚えているぞ…あの時確かに全員八つ裂きにして殺したはずだ。どうやって戻ってきた?」
「はっ!!」
相手の問いには答えず、エイトが「ツインスワロー」を投擲してゲモンの視線を誘導。その隙にククールは軽やかに飛び上がり、『ムーンサルト』でゲモンの後頭部に連撃を繰り出した。ちからの値がそこまで高くないククールは徒手空拳が不得手である。だがそれよりも一度見せた技を使い続けて相手に見切られることの方がマズイと判断しての行動だった。ゲモンの反撃は戻ってきた「ツインスワロー」によって中断されたため、即座にククールは追加で『ばくれつけん』を叩きこんで後退―――。
しかし、ゲモンも当然なすがままではない。ニヤリとその口元を歪め、攻撃を焦って欲をかいたククールの人中に痛烈に拳を叩きこむ。
「がはあっ!」
殴られる前からバックステップを取っていたためダメージは抑えられたものの、それでも勢いよく壁に激突したククールに、衝撃で割れた大聖堂の窓が降り注いだ。
「無視か?…まあいい、どうせ全員殺すんだからなァ…」
「くぅっ…!」
ゲモンは左側から音を殺して斬りかかってきたエイトを一瞥もくれず跳ね飛ばし、口から灼熱を吐いて追撃を加える。ククールによって左目が潰されたことは痛手ではあったが、それはゲモンが左側の世界を知覚できないことを意味するわけではない。そのままゆっくりと歩を進め、ゲモンはゲルダの前に立った。
「キサマは…見ねェ顔だなァ?」
「あ……!」
…圧倒的な脅威との対峙。ククールとマルチェロが吹き飛ばされたゲモンの初撃で戦闘が始まった時から、ゲルダはかつて『魔王』ユリマが自身のアジトに侵入してきたときの記憶がフラッシュバックし、その場から動けずにいた。
「あ…あぁ……」
「なんでもいいが、とりあえず死んどけ」
「く…そ…!私は…わたしは…っ」
ゲモンはなおも恐怖で竦んで動けないゲルダの両足をその鋭い足爪で地面と固定し、涙と恐怖で歪む彼女の顔面目掛けて剛腕を力任せに振りぬいた。
「ゲルダさんッッッ!!!!」
「ゲルダぁっ!!!」
「くっ…あの女はもうダメか…」
「大丈夫だ!オレたちには…“加護”がある!『ザオリク』ッ!」
「!?」
ククールの唱えた『ザオリク』により激しく損壊した遺体は瞬時に再生し、ゲルダは息を吹き返す。
「!?なにィ…?」
「う…」
「ゲルダ!よかった…オレはお前がもし生き返らなかったらと思うと…」
「ヤンガス…?…ああ、アタシは…死んだはずじゃ…」
ゲルダが戦闘で死亡するのはこれが初めてのこと。ククールにとってもゲルダが復活するかどうかは賭けだったが、よろけながらも無事にゲルダが立ち上がったことで胸を撫で下ろした。“神の加護”はゲルダにも付与されていたようだ。
「(あの状態から生き返っただと…!?)ククール貴様、何を…」
「オレたちにもわからない。ただ一つわかることは、オレたちは周りのやつらとは違うってことだ。この世のワルを倒すまで安らかに眠れないってことさ」
あえて自虐的に加護を表現したククール。それは幼いころから彼のことを激しく憎み、その一方でその境遇を羨んでもいたマルチェロを慮ってのことだったが…
「グハハハ…なァるほど、そういうカラクリだったか…今代の『勇者』はあの道化ではなくキサマらだったわけだな?」
「なに…アイツ…?」「兄貴、気を付けてくだせぇ!ヤツの雰囲気が変わったでがす!」
「く…ッ」
…ククールのその自虐はゲモンによって最悪な形で解釈されてしまうことになった。
「確実に雪山で殺し尽くしたはずのキサマらが何故ここにいるのか、それを警戒していたが…『死んでも生き返ることができる』、こうもシンプルな理由だったとはな。警戒して損したぜ…グハハハ!」
死者の復活なる奇跡の中の奇跡を、ゲモンはなんてことないかのように語る。…エイトたちには知る由もないことだが、ゲモンは数百年前にも『勇者』と呼ばれ神の加護を得た者たちと一戦を交え、辛酸を舐めさせられたことがあった。しかしあの七賢者と比べ、エイトたちは数も少なくひ弱で、加えてレティスの援護もない。また、ドルマゲスのようにゲモンの理解を超えたあの手この手でこちらを陥れようとする搦手もない。七賢者亡き今、ドルマゲス一派の残党でもないただ生き返る能力を持つだけの相手など、恐るるに足らずであった。
「道化の手の者かと思って警戒していたが…カラクリがわかればなんてことはねェ。殺せねぇなら、壊すまでだ。壊れるまで、殺し続ける」
「!!!ククールの兄ちゃん!!危ねぇ!!」
「なっ!?」
黒き稲妻、再び。さきほどのように大岩に邪魔されることもなく、一直線にマルチェロへと飛び掛かってきたゲモン。それを迎え打とうとしたマルチェロを、ヤンガスが突き飛ばした。前方に意識を集中させたがまでにヤンガスのタックルをなすがままに受けてしまったマルチェロはヤンガスを強く睨みつけたが…直後、ゲモンの突撃をモロに食らって弾け飛ぶヤンガスの肉体を目の当たりにして表情を歪めた。
「…ちっ」
そこからは、ひどく一方的な蹂躙だった。
…
「ハァ…ハァ…」
右腕を押さえて浅く息をするマルチェロ。ゲモンなりの意趣返しなのだろうか、執拗に狙われた右目は爪によって咄嗟に庇った右腕ごと深く抉られ、瞼を開くことができない。
…ヤンガスがゲモンの一撃に散った後、すぐにククールは彼を蘇生させた。それを見たゲモンは最優先でククールを仕留め、まだ完全に覚醒していないヤンガスもまた冥土に送り返した。全滅の危険を感じたエイトはトーポとチーズをゼシカに託し、『
「グハハハ!気付けばキサマで最後だなァマルチェロ!!」
「ハァ…ハァ………ハハ」
白々しい。ゲモンはわざと自分を最後まで生かしておいたのだ。これでは先ほどの焼き直しではないか。十数分前の自分と状況が変わっていないことにマルチェロは自嘲気味に嗤ってしまう。それどころか、自分は目と腕を負傷し、転がる死体は増え、前よりも状況は悪いのだ。
「(ククール…)」
勝ち誇って笑うゲモンから視線を逸らし、マルチェロは物言わぬぼろ雑巾と化したククールの遺体を視界にとらえる。…彼らがマルチェロの足を引っ張ったとは思わない。ただ、無駄に命を散らした愚か者だとは思っていた。彼はククールのことを憎んでいたが、死んでほしいとまでは思っていなかった。二度と自分の人生に関わってくれなければ、それ以上のことは望んでいなかった。なんの恨みもないククールの仲間たちに至ってはなおさらだ。
「(チッ、結局状況も変えられなかったくせに余計なことだけはするやつだ…。……ククール、私は本当にお前のことが最後まで好きになれなかったよ)」
ククールがマルチェロを弓矢の一撃で救ったあの瞬間。きっとあの瞬間が走馬灯には映るのだろうとマルチェロは確信していた。脳裏に焼き付く、颯爽と自分を助けに来る弟の姿。マルチェロは人生最後の思い出が最も憎悪するものになることだけを嘆いていた。
「ああ……殺せ。今度こそ完全に打つ手なしだ。私にはもう、歩くことすらもままならない」
マルチェロは決して目を閉じてなるものかと奮起していた十数分前とは反対に、今度はゆっくり目を閉じた。最後の景色は自分で選ぶ。二度と気分の悪い走馬灯を生み出さないように。
「……最後まで一片の恐怖も持たない、実につまらんニンゲンだな。」
「…」
マルチェロの脳裏に思い出が流れ出す。全てを奪われた幼少期、奪われたものを取り返そうとしてきた修道院、悪の道を走り始めた大聖堂、憎悪する弟に助けられた屈辱、そして…
「(院長……)」
自分を愛し、悪の道から引き戻してくれた好々爺の―――
「『バギ』!」
一陣の風は弱弱しいながらも振り下ろさんとされたゲモンの腕を押しとどめた。
「『イオ』!」
収縮した空気はバギによって体制を崩したゲモンの胴体で炸裂し、ゲモンを一歩後退させた。それを皮切りに『メラ』『ギラ』『ヒャド』、魔力の塊が次々とゲモンに降り注ぐ。
「ぐっ、ごっ、お」
マルチェロは寸前で死を免れながらも、目を開ける気にはなれなかった。
「死力を…尽くせ!」「マルチェロ隊長を援護せよ!」
何が起きたのかは目を開かなくとも彼にはわかる。どこに潜んでいたか、逃げていた聖堂騎士団の残党が戻ってきたのだ。
「法皇様を死なせてはならん!逃げ延びて後悔を背負うくらいならば、その身を捧げて信仰に殉じるのだ!」
悲鳴にも似た叫び声で騎士たちを指揮しているのはニノ大司教だ。信心の欠片もない最も唾棄すべき存在だと考えていたニノ大司教が、どんな思惑があろうと戦線に戻ってきたことはマルチェロにとって幾分意外だった。だが、それも賢い生き方とは言えない。
愚か者め。
何をしたってもう無駄だ。ゲモンは黙って魔法を受け続けているが、反撃できないほど押されているわけではない。新しく入ってきた邪魔者に対しただ静かに怒りを募らせているだけだ。
「我々は一度信仰を捨てて逃げ出した身!どうなっても構わない!今はただマルチェロ隊長を援護し、法皇様と院長殿をお助けするのだ!」「マルチェロ隊長!今のうちに体制を立て直してください!」
愚か者たちめ。
わかっているだろう。勝てるわけがないと。だからこそお前たちも逃げ出したのだろう?なぜ今更、勝ちの見えない戦いに身を投じる気になったのか。
「マルチェロ隊長!!」「マルチェロ!動け!動いてくれ!!わしらがあのバケモノを食い止めているうちに、法皇様たちを…!」
愚か者どもめ。私はもうここを死に場所と決めたのだ。これ以上私に指図をするな。
「黙って聞いてりゃ、誰が何を食い止めてるってェ…?あァ?」「マルチェロ隊長!はやく…」
やめろ。それ以上私の名を呼ぶな。私はもう十分やっただろう。院長や法皇ならばいざしらず、お前たちのような愚者と同じにしてくれるな。
不貞の子に生まれ、血の繋がった弟を憎み、権威主義の世界を憎み、あの手この手で成り上がって、最後はちゃちな正義に目覚めて巨悪に敗れる。
自分自身そう意識してきたわけではないが、ここまで劇的な人生だと若くして死ぬことへの諦めもつく。劇的と言っても滑稽な喜劇でしかないのだが。
…何のことはない、自分があらゆる悪に手を染めてまで夢見てきた『実力主義の世界』は最初からここにあったのだ。世界中のどんな権力者だろうが卑しい者だろうが、このバケモノの前では等しく虫けらなのだ。
ああ、こんな簡単な事実にも気づかず、今まで私はなんと……
私は…
…!
「…」
「ウゼェ虫共はあとでブチ殺すとして、まずはキサマだ、マルチェロ」
「…そうか、そうだな」
「なにゴチャゴチャ言ってやがる…まあ、なんでもいいが」
今の妖魔に油断はない。不意打ちという手段を一度見せたマルチェロは目下最大の警戒対象であり、外野の雑兵よりも優先して対処すべき存在である。なにより、手負いの人間が一番危険だということは、リブルアーチでの一戦でゲモンも思い知っていた。その失敗を活かさなかったが故に先刻は三つある目のうちの一つを失うことになった。
ぶつぶつと何かを呟くマルチェロに対し、ゲモンは何度目かの、今度こそ確実なとどめの一撃を…
その一撃を、マルチェロは正面から受け止めた。
「……ッッ!!!(なんだと…!?)」
「……そうだとも、私も、愚か者だ。愚か者なのだ。奴らと、同じだ。」
ゲモンは全身の毛が逆立つような怖気を感じた。そう、それはまるで…
「キサマ……ッ!!何度目だッ!!!何故死なねェ!!!なんなんだキサマはッ!!!!!」
「さあな。貴様の神にでも尋ねてみればどうだ?きっと素敵なお告げをくださるだろうよ」
「…!(ありえねェ…そんなはずは…)」
当然、ゲモンが全力で放った攻撃を生身で受け止めて無事なわけもなく、マルチェロの右腕は衝撃を受けてありえない形に折れ曲がっていた。しかしマルチェロは不敵な笑みを崩さない。しかもその笑みは先ほどまでの諦めの混じった冷笑ではなく、この期に及んでまだ勝利を諦めていない獰猛で強欲な……。
その表情、その姿に『道化』が重なって見え、ゲモンは思わず後ずさった。
「魔導部隊!私の傷を癒せ!司祭たちは『祈り』をこの者たちに!理屈は知らぬが、この場に斃れている旅人たちはそれで生き返る!彼らは外様ではあるが私と肩を並べて戦ったものたちだ!私を信じて復活させろ!!」
「…」
一瞬の静寂。死に体の状態から突如これまでにないほどの勢いでまくし立てたマルチェロの剣幕に呆気にとられていた聖堂騎士たちだったが、すぐに我に返ると彼の指示通りに各種魔法を唱え始める。マルチェロ隊長は黒い噂が絶えず、何を考えているかわからない怪しい人物だということは騎士たちも当然知っていたが、同時に彼が戦いにおいてどんなに優秀な指揮官であるかも良く承知していた。
「おお、マルチェロよ…!」
「ククールの兄の言った通りじゃっ!ワシの家臣たちは何度斃れようとも不屈の闘志で蘇る!皆の者、蘇生を頼むッッ!!」
司祭たちの祈りは『ザオ』にも満たない微弱な儀式ではあったが、人海戦術で重ね掛けすることで続々とエイトたちは復活していく。思いもよらない方法で蘇生したエイトたちは、同じく初めて人間を生き返らせることができた司祭たちと顔を見合わせて驚いていた。
魔導部隊の回復魔法により致命的な外傷を一旦回復したマルチェロはレイピアを抜き、指揮棒のように振りながらその切っ先で騎士たちに的確に指示を飛ばしていく。
「手の空いたものから攻撃に移れ!強い魔法を唱えようだなどと考えず、ひたすら小さな魔法を連発して足止めに徹しろ!」
「「はっ!!」」
「…私たちが死んでる間にいったい何があったの…?」
「王様が応援を呼んできてくれたみたいだけど…だとしてもマルチェロさんのあの変わりようは一体…?」
「…」
ククールは目線の先に兄を捉えたまま黙り込む。
「考えてても仕方ねぇでがすよ、兄貴!まだ戦闘は続いているでがす!……いけるか?ゲルダ」
「ああ…死ぬことをちっとも怖がってないアンタらを見てたら段々自分が馬鹿らしくなってきたよ。いいさ、どこへでもついてくよ!」
「…よし!みんな、行こう!ここでゲモンを倒すんだ!!」
「…オーケイ、じゃあお前らは先に行っといてくれ。オレはマルチェロに指示を仰いでくる。アイツは自分の思い通りに動かない存在が大嫌いだからな、余計なことをして後ろから撃たれちゃかなわないだろ?」
エイトは頷き、ククールを除く三人と共に前線へと向かう。
…
「マルチェロ」
「…」
「なあ、一体何があったんだ?さっきとはまるで別人じゃねーか。」
「…」
マルチェロはククールと目を合わせようともせず、指示を飛ばし続ける。
「……まさか、ラプソーンに操られてるってことはねぇよな。…だとしたら」
オレは、ここでお前を止めなきゃならない。そう口に出す代わりにククールは腰に下げた剣に手をかける。マルチェロは背を向けたまま大きなため息をつくと、ゆっくりと振り返った。
「……相も変わらず傲慢な男だな、聖堂騎士ククール。別人だの操られてるだの、それは全て貴様の主観だろう。私は私だ。他の誰にも己の主導権を握らせたりなどしない。」
「なら……」
「私は…ただ気づいただけだ。」
「…?」
「自分が特別な存在でも何でもない、どこにでもいるような愚か者だったと。奴らのような…貴様のような。…そして愚か者には…愚か者なりの生き様があることにも。」
「…!」
「理解したか?なら早急に前線へ戻れ。貴様と肩を並べるのは癪だが、今は猫の手も借りねばならん状況だ。」
そう言うとマルチェロはまたククールから背を向ける。ククールはしばらく黙っていたが、ふいにマルチェロへと笑顔を向けた。
「…そっちの方がさ」
いつもの冷ややかな笑みではなく、幼い悪ガキのような笑顔。
「そっちの方がずっといいと思うぜ、兄貴」
それだけを言ってククールは前線へと戻っていった。
「…チッ」
マルチェロは心底不快そうな表情を浮かべたが、それ以上の悪態を返すことなく騎士たちの指揮に戻った。
原作との相違点
・妖魔ゲモンの超強化。
封印4個解放ラプソーン+一般人=原作ドルマゲス(闇の遺跡)
封印6個解放ラプソーン+普通の犬=原作レオパルド
というパワーバランスを考えると、元々強力な力を持つゲモンに封印6個解放ラプソーンの力が加わればかなりの強さになる。万全のコンディションならラプソーン(暗黒魔城都市)くらいの強さはあると思われる。
・ニノ大司教が援軍を連れてきた。
原作ではオロオロしているだけの大司教だが、今回は事の大きさが大きさだけに何もしないわけにはいかず、トロデと共に、散り散りになって生き残っていた騎士たちをかき集めてきた。一度はゲモンの前から逃げ出した身である騎士たちの多くはニノの誘いを断ったが、ニノの情や信仰、誇りに訴えかける説得に心を動かされた十数人の騎士がマルチェロを援護するために戻ってきた。聖堂騎士たちの平均レベルは18程度、装備はサヴェッラ大聖堂で購入できる最も高性能なもの。
レベル(変化なし)
エイト
レベル:36
ヤンガス
レベル:36
ゼシカ
レベル:36
ククール
レベル:36
ゲルダ
レベル:37
臨時メンバー
マルチェロ
レベル:41