ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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ちなみにドルマゲスは現在も三角谷で手に入れた「ふぶきのつるぎ」をメインウェポンにしているので、右手に剣、左手に杖という某〇チェロのような戦闘スタイルで戦っています。







Chapter3 トラペッタ地方 ②

住む者が口をそろえて道化師ドルマゲスは私の友人だ、と主張する奇妙な町、トラペッタ。極悪非道な道化師ドルマゲスの正体について一行は考察するも、町民の逆鱗に触れてひと悶着を起こしたトロデを筆頭にトラペッタの町を半ば追い出されるようにして出発することになってしまう。これ以上有力な情報は得られない、と判断した一行は次の町へ向けて歩を進めるのであった。

 

 

 

 

一行は『滝の洞窟』がある山を登っていた。なにかドルマゲスの手掛かりはないかと情報を欲したトロデが山の上に一軒家を見つけ、渋るヤンガスを引きずって一軒家を次の目的地としたのである。

 

「へ、平坦な道に比べて山はやっぱり疲れるでがす…」

 

「いやお主、山賊じゃろ?」

 

「もう少しの辛抱…ほら!家が見えてきた!」

 

エイトが指さした先をヤンガスが見ると古いあばら家がひっそりと建っていた。家の前まで来た一行はしばし息を整えてから、山小屋の戸をノックする。

 

コンコンコンッ

 

「ごめんくださーい…」

 

家の中では大柄な老人が一人、テーブルでくつろいでいた。丁度食事が終わったところなのか、卓上にはまだ片付けられていない食器が乱雑に重ねられている。

 

「ん?こんなところに客人が来るのは久しぶりだな。まあいい、せっかく来たことだ。大したもてなしはできねぇが、ゆっくりしていけや。」

 

「んじゃ、お言葉に甘えるとするでげすよ。」

 

そういうとヤンガスはどかっと床に座り込み、エイトも勧められて椅子に腰かける。

 

「それで、兄ちゃん達はこんなところに何の用なんだ?」

 

「お主…ドルマゲス…という名に聞き覚えはないかの?」

 

「おっさん!いつの間に!?」

 

ヤンガスが独特なポーズで驚きを表現するも、トロデは無視して老人の返答を待つ。老人は特に動揺した様子も無く、だがしかし何も知らないという雰囲気でもない、こちらを探るような胡乱な表情に変わった。

 

「…そいつがどうかしたのか?」

 

「奴はトロデーン王国を滅ぼし、トラペッタの高名な魔法使いとリーザスの村の嫡男を殺したはずなのじゃ。しかし、トラペッタの町では奴はまるで英雄か何かの様に持て囃されていた。もしやドルマゲスは町全体に何か魔法をかけたのやもしれんと思い、町から離れたところに家を構えるお主を見つけて尋ねに来たというわけじゃ。」

 

「(…。)…いんや、悪いがそんな男は知らねぇな。なにしろ、こんな辺境の家には噂も流れてこねぇもんでよ。」

 

「…そうか。時間を取って悪かったの。…エイト、ヤンガス。休んだら先へ進むぞ。」

 

知らないのなら仕方あるまいという風に肩を竦めて家を出ようとするトロデの姿、そしてエイト…の服の中のトーポを見て、老人は口を開いた。

 

「…その、ドルマゲスって道化師は知らねぇが、あんたたちも訳あって旅をしてるみてぇだな。これを持ってけよ。」

 

「(?ドルマゲスが道化師ってことは言っていないような…?)あっ、ありがとうございます!」

 

老人は一行に服や食料、毛布に薬など旅に役立つ色々なもの、そしてチーズもくれた。老人の言葉が一瞬引っ掛かったエイトだが、好物のチーズを貰い、それ以上気にすることをやめた。

 

「いいんでげすかい??こんなにたくさんのもの…」

 

「気にすんじゃねぇよ。こちとら老人の一人暮らし、処分に困ってたところだ。逆に引き取ってくれて助かったぜ。」

 

「うむ、感謝するぞ。さあ二人とも出発じゃ!」

 

三人は老人に礼を言って家を後にし、山を下って行った。再び静かになった部屋の中で老人は椅子を軋ませ、チーズを食みながら独りごちる。

 

「…すまんな、()()()()()。どちらかだなんて、俺にゃ選べねぇよ…」

 

 

 

 

 

「でぇやっ!!」

 

「どらぁ!!」

 

「はあ…はあ…兄貴、ここいらの魔物はいやに速いでがすね…」

 

「うん…かなり長い戦いになりそうだ…」

 

エイトとヤンガスが対峙している魔物は2匹。数こそ同じだが奴らはこれまでの魔物とは一味違う。「サーベルきつね」は手に持つレイピアで連撃を繰り出してくるが、彼に気を取られすぎると「おおきづち」の狙いすました木づちの一撃が致命打を誘う。さらに、この場にはいないがこちらの素早さを下げてくる「スキッパー」や守備力を上げて持久戦を狙ってくる「リリパット」も厄介だ。ヤンガスのオノなら一撃で伸せるのだが、そのオノも当たらなければ意味がない。

 

「はっ!」

 

エイトがおおきづちの木づちを踏んづけて動けなくした隙に、ヤンガスがオノでおおきづちを屠る。残ったサーベルきつねは挟み撃ちにしてなんとか姿を捉えた。

 

「うーん、疲れた…」

 

「お疲れ様でげす、兄貴…」

 

「どうやら、このあたりからはリーザス地方になるようじゃな。魔物の生態系も変わって、今までとは一味違う戦闘になりそうじゃ。二人とも、気を抜くんじゃないぞ!」

 

「そんなことわかってるでがす。…おっさんも馬車から降りて戦ってみたらどうでげすか?」

 

「ば、ばかもの!わしは王様じゃぞ!なぜわしが魔物と戦わねばならんのじゃ!!」

 

「へーへー。悪かったでげすよ。それより兄貴は大丈夫でげすか?」

 

トロデの説教を聞き流し、ヤンガスは何かを悩んでいるエイトに声をかけた。

 

「ケガはないんだけど…ちょっと僕の火力不足で、ヤンガスの足を引っ張っちゃってるかもな…って。」

 

「そんなことないでがすよ。兄貴のサポートなしじゃ、アッシはいつまで経っても魔物と追いかけっこでげす。」

 

「うむ、エイトが足手まといなわけがない。」

 

「足手まといと言うとおっさんのほうでがす。」

 

「なっ!!何を…!!」

 

エイトを慰めようとフォローしたのは良かったが、ヤンガスが余計なことを言うのでいい雰囲気も台無しになってしまった。また口論を始める二人をよそにエイトは一人佇む。エイトの武器は未だ「兵士の剣」。レベルも低く、リーザスの魔物たち相手では少し攻撃力が頼りない。

 

落ち込むエイトを見かねたのか、馬姫ミーティアが頬ずりをしに来た。

 

「姫…そうですね。いつまでも落ち込んでないで、僕も頑張ります!」

 

姫の激励(?)で元気を取り戻したエイトは、やいのやいのと騒ぐヤンガスとトロデをたしなめて冒険を続けるのであった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

時は少し遡り、トラペッタの町。天気は良いが、町民たちの顔は晴れやかではない。その理由は明白で、昨日町にやってきた、「ドルマゲスがトロデーン城を滅ぼし、マスター・ライラスを殺した大悪党である」と根も葉もない噂を流した旅人たちのせいである。ほとんどの者は所詮余所者の与太話、と気にも留めず笑い飛ばしていたのだが、その一方で笑えない者たちもいた。占い師ルイネロとあの日酒場にいた十数人の町民である。

 

エイト一行がトラペッタを訪れる前日、ルイネロは何かを不安がっているユリマにせがまれてドルマゲスの現在を占っていた。……後にルイネロはユリマの前でドルマゲスを占ってしまったことを後悔することになる。水晶玉に映ったのはイバラに包まれたトロデーン城、物言わぬ植物となった国民、腹部に貫通穴が空き倒れている青年、そして暗黒のオーラを身に纏う道化師とそれに立ち向かうトラペッタの大魔法使いの姿だった。

 

「こ、これは…」

 

「…!!ド…」

 

ライラスが何かを投げ、ドルマゲスがライラスを杖で貫いたところで水晶玉に映る映像はブツンと途切れた。杖が人体を貫通するところを直視してしまったユリマはショックで気を失ってしまう。ルイネロはユリマを寝室に運んでから、リビングに座ってずっと悩んでいた。今のルイネロは占い師としての自信を取り戻し、先程の占いにも手を抜いたつもりは無かった。故に()()が真実だと分かってしまうのだ。しかし一人で抱え込むにはあまりにも大きすぎる真実。打ち明けるべきか、一人で無かったことにするべきか。

 

ルイネロは悩みに悩んだ末、今日の夜、酒場にいる仲間たちにだけこの占いを打ち明けることにした。

 

 

 

 

「なんだいルイネロさん。改まっちゃって。」

 

突然ルイネロに今から大事な話をするので十数分ほど窓や鍵を閉めてくれと頼まれた酒場の店主が言われたとおりにしながらも訝しむ。

 

「ルイネロちゃーん、何か嫌なことでもあったの?」

 

バニーや他の面々も少し心配そうにルイネロを見ている。

 

「…ああ、とても嫌なことだ。聞いてくれお前たち、俺は今日ある占いを行った。今日はその内容をお前たちだけに伝えたくてわざわざ戸締りをしてもらった。先に行っておくが…俺が今から話すことは到底信じがたい話になる。しかし俺はこの占いに絶対の自信を持っている。『絶対の』だ。なのでこれらは真実だと思って聞いてほしい。」

 

これはただごとではない。いつにないルイネロの真剣な顔からそれを感じ取った酒場の仲間たちは黙って頷いた。

 

「ドルマゲス…数日前に姫の生誕祭に招かれてこの町を出た道化師ドルマゲスだ…。あいつがトロデーン城を魔法で滅ぼし、マスター・ライラスをその手で殺害した映像を俺は見た。娘のユリマがその証人だ。」

 

「!!??」

 

「気持ちはわかる。当然俺も目を疑ったが…間違いない。あの奇抜な服、高い背丈、そして顔。どれをとってもドルマゲス本人だった。マスター・ライラスも後ろ姿のみだったが、あれはライラス本人で間違いあるまい。 …俺がドルマゲスのことが気に入らないからこんな世迷いごとを言ってるわけではない。むしろ奴は俺の恩人だ。恩を仇で返すほど俺は落ちぶれてはいない。勘違いしてくれるなよ。これは……真実だ。」

 

「…」

 

誰も何も言わない。それもそのはず、ここにいる全員が一度や二度ルイネロの占いの世話になったことがあり、その占いの腕は信用に足るものだと思っている。そしてルイネロはその気難しい性格から、決してこのような場面で冗談を言うような男ではないことも分かっていた。故に話の衝撃を受け止めきれず、誰もがショックを受けているのだ。

 

「…ユリマちゃんは、占いの内容を知っているのかい?」

 

「ああ、ユリマは昼間にこの占いを見てショックで寝込み、今もベッドの中だ。起きたらどうなるか分からん。」

 

「そんな…ドルマゲスが…」

 

「この話は内密にしてもらいたい。今のトラペッタにドルマゲスは欠かせない存在なのだ。」

 

これまた全員が頷く。話さない、話せるわけがない。第一この町でそんなことを言ったところで狂人扱いが関の山だろう。

 

「…ここからは俺の個人的な見解だが、奴には何か思惑があってあんなことをしたのだと思う。」

 

「誰か悪い奴に操られちゃってたとか~?」

 

「うむ。その線も十分にあり得る。俺たちがまだ奴を信じることは可能なんだ。奴が善人の皮を被った悪党だと決まったわけではない。」

 

「そうだな。今俺たちにできることはドルマゲスを信じて待つだけだ。あいつが帰ってきたときに全て話したくなるような雰囲気を作ってな。…ルイネロよ、よくぞ俺たちに話してくれた。」

 

結局ドルマゲスを信じて待とう、という結論になり、皆は酔いが醒めたと言ってまた飲みなおすのだった。

 

 

 

そして次の日の夜、トロデーンから来たと言う若者が現れた。

 

ルイネロの話を聞いていた面々が抱いた感情は衝撃と納得が半々といったところだろうか。旅人はドルマゲスを完全な悪とみなして話をしていたが、やはりドルマゲスは何か理由があって城を滅ぼしたに違いない、という気持ちが揺らぐことはなかった。

 

そして現在。グラスを磨いている酒場の店主の前の椅子に一人の男が腰かける。

 

「…今は開店準備中なんだけどな。」

 

「…俺も客じゃないから心配するな。」

 

「はあ…とりあえず、水しか出せないけど。…ユリマちゃんはどうだい。」

 

「あれ以来すっかり元気がなくなってしまってな。町の正門が開くたびに顔を輝かせて飛び出して、しばらくしたらしょげて帰って来るのがお決まりだ。俺にはどうすることもできん。唯一ユリマをなんとかできる人間がいるとしたら…世界でたった一人、()だけだろう」

 

「…」

 

出された水に口もつけず俯いてしまうルイネロに、今まで何人もの悩みを聞いてきた店主もかける言葉に迷い、ただ黙ってグラスの水気を拭き取ることしかできなかった。

 

 

 

 

 




原作との相違点

・チーズおじさんがドルマゲスの事を知っており、かつエイトたちに情報を提供しなかった。
おじさんにとっては、この世界で生きていく術など色々なことを教えたドルマゲスも、昔から見守ってきた同族のエイトもどちらも大切な仲間なのでどちらかを選ぶことはできなかった。なのでドルマゲスの情報は秘匿し、代わりにエイトの旅の援助をした。

・トロデも普通に民家に入って来る。
まだ「魔物だから」という理由で拒絶されていないので町にも家にも入る。チーズおじさんもまた人間ではないので、トロデに対し特に動じてはいない。

・レベルが低いのでリーザス地方の魔物に苦戦している。
滝の洞窟を攻略していないのでレベルも低く、「どうのつるぎ」も拾っていない。エイトは現在ヤンガスに戦闘を任せている状態。

・トラペッタに若干活気がない。
ルイネロの話を聞いた人間は秘密をしっかり守っているのだが、少し町が静かになったような気がする。


エイト
職業:勇者
レベル:7

ヤンガス
職業:戦士
レベル:7
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