ドルマゲスに転生してしまったので悲しくない人生を送りたい   作:えにぃ

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どうも前回の終わりが中途半端だったので、短めですが続けてドルマゲスサイドを書きます。
次回はエイト視点です。








第十四章 修道院襲撃と院長密会 後

夜が明けるか明けないかの時刻になったところでやっとサーベルトの説教は終わった。オディロは目に見えてしょげかえっており、最初は俺も相槌を打ったりしていたが途中から別のことをして時間を潰していた。

 

「それではぜひ!!よろしくお願いしますね!貧しい人、恵まれない人こそ救われるべきなのです!教会とはそうあるべきなのです!」

 

「うむ…うむ…善処しよう…。」

 

「(うわ。両方ともキャラがおかしなことに…)サーベルト、そろそろお暇しましょう。ね?」

 

「ドリィ…ああ、そうしよう。俺も少し眠くなってきた…」

 

「ではオディロ様。私たちはこれにて失礼します。」

 

俺がそろそろ帰ることを伝えると、疲れ切っていたように見えたオディロはしゃんと背筋を伸ばして居住まいを整えた。寝間着のはずのその姿からは威厳すら感じられ、改めて目の前の人物がどれだけ偉大な人物なのかを俺は分からされた。

 

「…此度はわざわざ済まなかったの。私はこの命を神にささげた身、共に世界を救う旅にでることはできないが、せめて君たちの旅の無事を祈らせてくれ。…おお神よ!この者たちにあなたさまのご加護のあらんことを!」

 

オディロは十字を切って天に俺たちの無事を祈ってくれた。

 

「ありがとうございます。では、後のことはよろしく頼みますね!」

 

「うむ、承知した。時々話を聞かせてほしい…と言いたいのじゃが、君たちは随分騎士団に目をつけられているようだから難しいかの…」

 

「…ああ、もし私と話がしたいとオディロ様が仰るのならばこちらを差し上げましょう。」

 

俺は手のひらサイズの石板をオディロに手渡した。

 

「これは?」

 

「それは『携帯念話(フォン)』というアイテムで、世界のどこからでも私と会話することができるという優れた魔道具です。」

 

「な、なんとも珍しい…こんなものを一体どこで?」

 

「さっき作りました。」「流石はドリィだ!」

 

この『フォン』はサーベルトがオディロに延々と説教している間、暇つぶしがてら石板を作って弄っていたら偶然完成したものだ。『胎児の見る夢(エーテル)』で色々やった末に残った自分の魂魄の残滓を大理石の石板に込めてみたらなんか…その…できた。…申し訳ないが俺にも何が何やらなのでこれ以上の説明は出来そうにない。しかしその使い道はまんま携帯電話と同じであり(俺としか会話できないが)、せっかくなのでオディロに渡すことにした。

 

「さっき、とな…!ほ、やはりドルマゲス、君はただの人間じゃないようじゃのぉ…」

 

「無論です。私はただの()()()なのですから…」

 

「ほっほっほ、やはり君たちは面白い子たちじゃ。くれぐれも無理をすることのないようにな。」

 

「ご厚意、感謝します。ではごきげんよう!」

 

「院長殿!どうか息災で!」

 

俺は窓を開けると、サーベルトを連れて飛び立った。ふう…これで俺のマイエラ地方での仕事は終わりかな。俺は聖堂騎士団を引き付けている泥人形にかけた呪術を解いた。これで泥人形はまた土に戻るだろう。いい仕事をしてくれた。

 

今日オディロ院長と会話する中で、少しだがラプソーンや師匠についての対策の道が見えてきたような気がする。次は誰のところに行こうか…。

 

「っと。ドリィに抱えられるのは少し恥ずかしいが、空からの景色というものは素晴らしいな!いつか俺も自分の力で空を飛べるようになれば良いのだが…」

 

「心配しなくてもサーベルトがご所望ならいつでも空中散歩に付き合ってあげますよ。」

 

「いやその、俺は…ま、いいか。それで、次はどこへ向かうんだ?」

 

「…このまま流浪の旅を続けるのも悪くないですが、少々物資が心もとないですねぇ…アスカンタの方に少しアテがあります。アスカンタで拠点を構えてから次の賢者の元へ向かいましょう。」

 

俺たちは川岸に降り立ち、さっそうとその場を後に…したかったが、徹夜していたことを思い出し、急にどっと疲れが出たので、また変装してドニの町で宿を取るのだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「…」

 

「…」

 

「団長様直々の招集だって言うから来てやったのに…なんだお前ら、いつにも増してしけた面なんかしやがって。貧乏人をいじめ足りなかったか?」

 

「…」

 

「な、何だってんだよ…お、おいマルチェロ…」

 

「…ククール、少し黙っていろ」

 

「何なんだ…?」

 

次の日の昼、修道院の雰囲気はハッキリ言って最悪だった。昨日の夜、宿舎にいた聖堂騎士団はぐっすり眠っていたククールを除く全員が不審人物確保に乗り出し、見事該当人物を発見することはできたもののその強さは一般人の範疇を出ない聖堂騎士団では到底太刀打ちできないもので、ついに諦めて逃げ出してきたのだ。本来は不審な人物を発見した時点で団長に報告し指示を仰がなければならないのだが、団員たちは名声欲しさにその手順を無視し、独断で行動して、しかも失敗したのだ。彼らの顔は真っ青だった。そもそも人間二人を前に大勢の騎士が逃げ出すなど、プライドの高い騎士たちにとっては大恥ものである。今回の醜態はマイエラ修道院の過去にも類を見ない。騎士団は揃って俯き暗いオーラを漂わせていた。

ではそんな騎士たちに「聖堂騎士団の名に泥を塗る気か!!」と叱責するはずのマルチェロはと言うと、朝からずっと浮かない顔をしている。その落ち込みようは彼の嫌味のあまりのキレの悪さにククールが困惑するほどだ。昨夜院長棟にいたマルチェロたち院長の護衛部隊は、先の騒動に全く気付くことすらなく朝まで眠りこけていたというのだ。しかも頼りない騎士たちに代わって昨夜は院長が夜の間ずっと()()()()をしていたらしく、院長は昼刻を過ぎた今も熟睡している。これまたマルチェロにとっては耐え難い屈辱だった。事情を知らない神父や修道士も下手なことを言うと騎士に殴り飛ばされる恐れがあるので、隅でおろおろしているだけだ。誰も何も言えず、その空気が泥のように重いので息苦しい。

 

そんな中、マルチェロの側近が勇気を出して口を開いた。

 

「…」

 

「…ま、マルチェロ様、招集をかけたということは皆に何か伝えたいことがあったのでは…」

 

マルチェロはそんなことは分かっているとでも言いたげに顔を上げると、ゆっくりと口を開いた。

 

「…ああ…本当なら私がここで貴様らに説教をするつもりだったのだが…私の自分に対する怒りの方が大きくて今はどうにもそんな気分にはなれない…おい貴様ら!!」

 

『は、はいっ!』

 

「…今日は安息日とする。各々瞑想の時間を取り、昨日の自分自身を省みるがいい。私も今から自室に籠る。…今の私は非常に気が立っているので用事は後にしろ…だが、次に怪しい人物を見かけたらくれぐれも勝手に行動することなく私に伝えること…!以上だ…。」

 

それだけ言うとマルチェロは奥の部屋へ消えた。

 

「…」

 

「(一体全体なんだってんだ???)」

 

一人、また一人と騎士たちがとぼとぼと重い足取りで自室に戻っていく中、唯一事態を把握できていないククールだけはよく分からないまま自室に戻って普通に昼寝の時間を取るのであった。

 

 

 

 

 

 




聖堂騎士団に一泡吹かせられたので満足です。
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